『マッドサイエンティストの手帳』515

●マッドサイエンティスト日記(2011年11月後半)


主な事件
 ・ミニ同窓会(18日)
 ・創立記念日(22日)
 ・創サポ講義(26日)
 ・天下分け目の抗争(27日)
 ・小松左京さんを宇宙に送る会(29日)


11月16日(火) 穴蔵/ウロウロ
 定刻午前4時に起床。
 秋冷なり。
 穴蔵にこもって資料を読む。
 先日来、色々読んできたが、昼前で「活字関係」は一区切りとなる。某選考のためであって、来月上旬に再度チェックすることに。
 あと、映像関係のがあるが、これは明日に送ることにする。
 秋晴れなので、午後は散歩。
 月末の上京などあるので、チケットショップ経由、大阪駅で指定の手続き。
 ついでに、ステーションシティの上階へ上ってみる。
 14階「天空の農園」からの眺望。
  *
 北側にビルが迫り上がって、視界は半年前の半分に狭まっている。
 早くも圧迫感がある。こんな風になるらしいが、結局は高層ビルがずらっとならぶだけ。
 ヨドバシの北側も商業施設になるらしいし、これで「カマボコ型貨物駅」の一帯がビルになったら、大阪駅は高層ゴルの中に埋没、どこにも広場のない一帯となる。
 つまらん街になるなあ。
 西側の貨物駅は「開放された廃墟」として残してほしいところだ。
 とぼとぼ帰館。
 本日は約7,600歩。

11月17日(木) 穴蔵/ウロウロ
 秋晴れなり。
 穴蔵にて、本を読んで過ごす。
 主に「追悼本」である。
 まだ拾い読み段階なので、明日にでも紹介することに。
 昼は、専属料理人が出かけので、外食。
 自転車で天六へ。「玉一」にて豆腐チゲ定食を食す。
 スタミナつけなきゃなあ。
 帰路、許永中の豪邸跡(いまは駐車場)を通過する。
 宴のあと。
  *
 向かい側の怪しげな神社?に「木登り猫」がいた。
 許くんの生まれ変わり(まだ生きてはりまっせ)とは思えない可愛らしさである。
 野良か地域猫か……苦難の多い猫人生だろうが、がんばって生き抜いてほしい。

11月18日(金) ミニ同窓会
 穴蔵にて粛々と雑事。
 夕方這い出て、梅田へ歩く。
 ミニ同窓会というか、MIT留学からJAXA経由、今は少年探偵団……じゃなかった日本宇宙少年団の理事をやってるI田くんが来たので、都合のいいのが梅田のビアホールに集まる。
 おれ以外、フサフサのやつばかり。嗚呼。
 
 I田くんは、35年ほど前、山田正紀さんが、スペースシャトルが東京に突入する話を書くときに協力してくれたことがある。
 今はボランティアで宇宙少年団の親玉である。
 おれも某組織に誘われるが……できれば地球侵略少年団の黒幕の方がいいなあ。
 あっという間に3時間ほど。
 それにしても、諸氏の海外勤務の多さに驚く。
 海外生産の「先遣隊」みたいな仕事がメインだった某くんなんて、南極ギリギリのところまで赴任していて、動いた範囲は小松さんよりも広いようである。

11月19日(土) 穴蔵
 朝だ。雨が降っている。浅田飴がないので、のど飴をなめるのであった。
 終日穴蔵。
 本格的な降りで、出歩く気分にならない。
 終日、本を読み、DVDを見たりしながら過ごす。
 昨夜、おれがビアホールでオダあげてる間に、読売の清武が解任されたらしい。
 まあ、これについては、今しばし見守ることにする。
 ナベツネ居座りになるのかねえ。
 清武くん、きみ犬死にたもうことなかれ。
 夜は専属料理人の並べた、オムレツ、サラダ、ピラフなどでビール、白ワイン。
 
 雨は上がり、霧にむせぶ北梅田を眺めつつ、バド・パウエル師匠、トミフラ師匠、デフランコ師匠などを聴く。
 早寝するのである。

11月20日(日) 穴蔵/ちょっと散歩
 朝だ。雨は降ってないから、飴も関係ないのであった。
 穴蔵にて本を読んで過ごす。
 日曜だから、すべての仕事を明日に送るのである。
 晴れたり曇ったり。
 運動不足なので、夕方に近い午後、散歩に出る。
 丸善ジュンクドー〜紀伊國屋〜ヨドバシ。
 
 北ヤード、ナレッジ・キャピタル・ゾーンの高層ビルが迫り上がって、不気味な夕景なり。
 茶屋町界隈にはクリスマスのイルミネーションが増た。
 「ジングルベルの憂愁」という、おれにとっては「心がチクチク痛む」光景が増えてきそうな。
 センチメンタルになるぜ。
 夜は専属料理人の並べた粗食にてビール、湯割り。
 早寝するのである。

11月21日(月) 穴蔵
 朝刊によれば、職業野球はソフトバンクが優勝したらしい。
 さあ、ナベツネ〜清武の泥仕合再開だ。
 清武が解任され、それに対する反撃は日本シリーズが終わるまで待つといったらしいから、いよいよである。
 期待しとるよ。
 終日穴蔵にて雑事を片づける。
 今日明日とタイムマシン業の相棒が国内出張中であり、国内関係は携帯で連絡がつくが、海外関係のメールが数件。
 反射的に英文メールが返せなくなっており、ボケ、老化を実感するなあ。
 井上理律子『さいごの色街 飛田』(筑摩書房)を読む。
 感想はこちらに。

11月22日(火) 創立記念日/SF検討会
 穴蔵の朝の室温がついに20℃を切った。午前5時、19.5℃。
 秋晴れである。
 本日はわがタイムマシン業の創立記念日である。
 ちょうど10年前、法務局に登記申請したのであった。
 ヨドバシ梅田のオープンと同日。
 時速1時間で、なんとか10年間続けてきた。
 10周年記念セレモニーでもやりたいところだが、相棒は出張中だし、離れた場所で仕事しているメンバーもいるし、祝賀会は年末の忘年会をかねてやることにするか。
 そういえば、タイムマシン関係で最大の見本市ITMAがバルセロナで今日から開催である。
 前に行ったのは12年前である。
 出展はしんどいが、10周年記念で見に行くかどうか、ずいぶん迷ったが……今回は見送る。たぶんもう機会はあるまい。
 スペインも経済不安が伝えられているし、日本からの出展も少ないようである。
 ヨーロッパも冷え込み、これから出展するとしたら、シンガポールか上海となるか。
 同業者の動向が気になるところだが……。
 終日、穴蔵にて雑事の処理。
 夕刻、かんべむさし氏が焼酎をぶら下げて来穴蔵。
 久しぶりに、定員2名内容非公開のSF検討会を開催する。
 非公開といいつつ、テーマはどうしても小松左京師匠と桂吉朝師匠のことに集中していまう。
 あれやこれやあれやこれややってたら4時間経過。
 まだ議論が尽くせないが、来月に忘年会的検討会を行うことにして、21時過ぎに、むさしくん帰る。
 寝る。

11月23日(水) 勤労感謝
 勤労感謝の日なのであった。
 どう感謝すればいいのかわからん。本来なら、日頃労働しない「官」や「年金受給者」や「生活保護」諸君が、税金納めてくれる労働者に感謝すべき日なのであろう。
 おれの場合、立場が複雑なので、自分で自分に感謝することにして、本日は税金納める仕事はしないことにする。
 終日穴蔵にて本を読んで過ごす。
 夕刻のニュースで立川談志の訃報。
 11月21日に死にはったらしい。
 これで落語協会分裂騒動の真相を知る人間は誰もいなくなった。
 三島事件と並ぶ昭和(戦後)最大の事件は、多くの謎を残したまま幕引きである。
 専属料理人が何皿か並べた料理で晩酌。
 
 玉葱1個分を40分炒めたというオニオングラタンでワインを少しばかり。
 枯葉散るパリへ行ってみたくなるなあ。
 明日は播州龍野。
 早寝するのである。

11月24日(木) 大阪→播州龍野/「クローズアップ現代」の謎
 早朝の電車で播州龍野へ移動する。
 久しぶりの龍野。
 午前10時の書斎は9℃で、やはり大阪の穴蔵より10℃低い。
 雑事たくさん。
 主に書庫の掃除と、冬に備えての模様替えである。
 午後、ホームセンターへ行って電動草刈り機を購入。
 
 ご近所の約1名がうるさいので、前に畑地の雑草をなぎ払う。
 20分ほどで片づいた。
 肉体労働の1日であった。
 ということで、シャワーの後、ひとり寂しく、ひとり鍋でビール、「神の河」湯割り。
 19:30〜『クローズアップ現代』小松左京特集を見る。
 直前に北海道で地震というのが小松さんらしいが。
 「想像力が未来を拓く」……まあ、それなりにまとまった構成であると思う。
 予告にあった「世間に受け入れられず精神を病みながらも」というのが気がかりだったが、これは阪神大震災後の「ある科学者の一言」であったらしく、瀬名さんが科学者の立場をきちんとフォローされていた。
 その限りではいい番組と思うが……
 番組スタッフに『虚無回廊』を読んだ人はいないのか?
 おれの聞き間違いだったら直ちに訂正するが、番組の中で『虚無回廊』について「作者の分身と思える老科学者が宇宙へ行く」物語と説明されたのではないか?!(※)
 まさかと思うが……ちょっと酔ってたから、聞き違いの可能性がある。
 その後の部分にも、違和感を覚えるところが幾つかあったけど、『虚無回廊』を読まずに作った番組なら、それ以上のケチをつけても何の意味もないわけだし。

※正確には「小松さん自身を投影した老科学者が果てしない宇宙を旅します…」だったようだ。
 どんなアホが台本書いたのよ。
 とりあえず、おれの耄碌ではなかったのでホッ。
 メールくださった方、ご教示ありがとうございました。(2011.11.25)

11月25日(金) 播州龍野→大阪
 寒いのであった。
 播州龍野、午前4時の室温は9℃である。
 厚着、机下のハロゲンヒーターでしのぐ。
 真冬には、これからまだ7、8℃寒くなるはずである。
 昨年までの6年間、よくこんな環境で生活できたものよ。
 老母がいたから複数の部屋を暖房したのであって、100畳にひとりというのは、寒さがこたえるなあ。
 雑事色々。
 昼間の電車で帰阪する。
 姫路駅の姫新線ホームからの眺望。
  *
 駅ビル解体が終わって、あとはどうなるのか。地下駐車場を作るとなると、また数年の工事?
 いずれにしても、姫路城と姫路駅が大手前通を介して向かい合うわけで、これは大阪駅のせせこましさより遙かにいい。
 姫路城の改修工事が終わるときには駅の工事も完成だろうが、それまで生きてられるかどうかは微妙だ。

11月26日(土) 穴蔵/創サポ/海の彼方
 終日穴蔵。
 創サポ専科の講義のため、作品を再読、メモをとる。
 夕刻這い出る。
 天気がいいので、散歩を兼ねて、天満まで歩くことにする。
 夕刻より創作サポートセンター専科の講義。
 提出作品4編を中心に。
 それぞれ面白いので、この際、タイトルも紹介しておこう。
・『誰でもあって誰でもない つまりは、まあスーツ』……家族がつぎつぎと何者かに憑依されていくホラーSFなのだが、憑依された主体が無自覚で、放火など犯罪を繰り返しては自己正当化する詭弁を述べる。それがモノローグで書かれる趣向が面白く、確かに不気味である。
・『断崖の街にて』……地中海をモデルにしたらしい、海に面した急斜面の街で年に一度ランタンを飛ばす祭りがある。階段状に作られた街の描写がよく、絵画的でハートウォーミングな短編。
・禁野真『人事の神様』……どんな会社にでもありそうな「会社伝説」ショートショート。人事を司る「神」の造形と登場の仕方が笑わせる。
・『踊る時間線』……冗談ショートショートを短編に拡大したタイムSFで、軽い書き方だが、意外に時間ものの盲点をついている。改稿を薦めたので、アイデアについて書かないが、昔おれが書いた短編と重なるところがあって、つい長いコメントとなった。
 20時まで。
 帰路、久しぶりに天六のワイルドバンチに寄ってビール1杯。エリントンを聴く。
 本日は事情があって、夕食は外で。
 ということで、天六から徒歩で帰る途中、沖縄料理が食べたくなり、本庄の店に寄る。
 ここは以前「寿」という名の店だったが、今は若い店主が引き継いで「海の彼方」 になっている。
  
 カウンターで三線を練習しているグループがいたりして、いい雰囲気である。
 ミミガーとチカの天ぷらでオリオンの生ビール。
 ソーキそばも食べたかったが満腹になってしまった。つぎの機会にする。
 市長府知事のダブル選挙前日……やっと静かになった夜道をほろ酔いで帰館。

11月27日(日) 穴蔵/ダブル選挙
 ほぼ終日穴蔵にこもる。
 唯一の外出は、昼過ぎに、大阪市長選・府知事選の投票に行っただけ。
 投票所は毎日放送から近いので、出口調査に来ないかなと思ったが(時々来るのである)、本日は来てない。
 もし出口調査があれば、「市長は白紙、府知事はマック赤坂」と「正直」に答えるつもりだったのになあ。
 ということで、本日は遅めの晩酌。
 開票速報を見ながら一杯と思ってたら、20時すぐにネットで「橋下と松井の当確」が流れた。
 橋下はともかく、松井はちょっと意外。深夜までもつれるかなと思ってたけどなあ。
 ま、こうなった以上、橋下くん、大阪市幹部を(「十三人の刺客」じゃないけど)斬って斬って斬りまくってくれたまえ。それ以外のことは特に期待しない。
 大阪市の幹部は腐りきっている。
 おれの知る一例はここに書いている。ここで「官」と書いているのは「大阪市の幹部」のことである。10年ほど前から(もっと前からか)大阪市は北朝鮮みたいになっているのだからなあ。
 くどいようだけど、橋下くんに大阪市幹部の粛清以外のことは期待しない。
 下っ端は、幹部にいわれたとおりにサボってましたというに決まってるしさ。
 ということで、早寝。

11月28日(月) 穴蔵
 曇天なり。
 ほぼ終日穴蔵にてボケーーーーッと過ごす。
 生産的な仕事はほとんど出来なかった。
 運動不足なので、30分ほど散歩。
  *
 近くの散歩道にて。
 イチョウが「黄色い時間」を迎えているが、御堂筋まで歩くのは面倒になり、帰館。
 どうも身心ともに不調である。

11月29日(火) 小松左京を宇宙へ送り出す会
 朝の新幹線で上京。
 「小松左京を宇宙へ送り出す会」に出席する。
 ニューオータニの庭園に面した会場での午後のパーティ。
 
 盛会である。
 久しぶりに会う……星新一さんの葬儀以来、14年ぶりという人も結構いる。
 こういう人の場合、毎年会う人とちがって、おれが一瞬誰かわからないような反応……嗚呼。
 ともかく明るい会である。
  *
 会場には、生頼画伯による小松さんの肖像画が飾られて「献煙台」が設定されている。
 全テーブルに灰皿が置かれて、こんなに喫煙がおおっぴらな会も珍しい。
 米朝師匠のビデオ・メッセージ。
 米團治さんといっしょに映される。
 米朝「そない待たしまへんさかい……待ってておくなはれ」
 米團治「いつでっか?」
 米朝「そない待たさへんがな」
 瀬名さんが「小松左京を宇宙へ送り出す」ことの主旨説明。
 小松さんが「皆さんの笑顔をエネルギーにして」宇宙に飛び立つ15分の映像作品が上映される。
 これはよく出来ていて、何らかの形で公開されるべきではないか。
 
 毛利衛さんの司会で、小松さんが描かれたHUAが打ち上げられ、参会者の数百の「笑顔」が噴射されて加速していく。
 事前に「笑顔写真」を送るようにと求められたのは、こんな使い方をするためであったのか。むろんおれの顔も入っているはず。
 やがて小松宇宙船は「宇宙の本質」に遭遇するが……これは「2001年」のラストよりも感動的であった。
 ……ということで、午後のワインでいい気分になり、散会後、上智大横の堤防を四谷まで歩く。
 この道を歩くのは46年ぶりか。受験で上京した時、近くにあった上智大の寮に1週間ほど泊めてもらったことがある。
 お茶の水で下車、中野晴行さんに教えて貰った「DISK UNION」の新しい店を覗く。
 おお、さすが。中古でデフランコとジミー・ハミルトンを発掘できた。
 夕刻ののぞみで帰阪する。

11月30日(水) 穴蔵/御堂筋の秋
 よく寝た。午前5時半まで。新幹線移動はやはり疲れるのであるなあ。
 午前中、穴蔵にて雑事色々。
 月末の事務処理などあって、昼、金融機関関係など廻り、久しぶりに本町へ行く。
 珍しくもボンクラサラリーマン時代の知り合いと20数年ぶりに会う。
 ボンサラ諸君が昼飯を食ってる横で優雅にビール……なんて意地悪なことはせず、13時過ぎに昔なじみの店でランチメニュー+ビール。
 小春日和である。
 
 御堂筋をちょっと散歩して帰館。
 御堂筋のイチョウはまだそれほど散ってはいないが、年々葉の量が減っていく印象である。
 御堂筋(本町〜淀屋橋間)にも空きビル、シャッタービルが増えてきた。
 駐車場になった歯抜け空間も。
 本町界隈の地盤沈下はいかんともしがたいなあ。
 橋下くんになっても、この傾向に歯止めはかかりそうにない。
 大阪の吸血鬼ども(市役所の幹部ね)が市民から絞れ取れる金はないとあきらめるまで、トコトン低下していくだろう。
 橋下くん、吸血鬼どもを斬って斬って斬りまくってくれたまえ。


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