HORI AKIRA JALINET

『マッドサイエンティストの手帳』219

●マッドサイエンティスト日記(2001年11月後半)


主な事件
 ・京都SFフェスティバル(17日)
 ・滝川雅弘VS坂井原正光 2clセッション(19日)
 ・滝川雅弘4SUBライブ(20日)
 ・「題名のない番組」ふたたび(27日)
 ・カジシン来る(28日)
 ・今年最初の忘年会(30日)

2001年

11月16日(金)
 朝6時、ちょっと寒い。秋冷である。ルン吉くんはいない。階段下の駐輪場、自転車の買い物籠に野良の仔猫がうずくまっているのであった。秋冷でんがなの猫であった。こういうのは田中啓文にはかなわないのであった。
 忙しい日である。タイムマシンで大儲けした大金を某所に移したのであった。(←あまり本気にしないように、エシュロンくん)
 あと、市内を自転車でウロウロ。スーツにネクタイで自転車というのは少し寒くなってきた。
 夜になって書類の不備が発覚、あわてて作り直し。限りなく深夜に近い夜、自転車で中央郵便局へ走る。某所に明日には届くか? ……と、往路、ルン吉くんが東洋ホテルの前を意気揚々と帰宅してくるのとすれ違う。堂々と車道を歩いているのであった。
 中央郵便局、まだ混んでいる。どうやら年賀状の受付開始のためらしく、ダンボール箱を抱えた人もいるが、今頃からとはねえ。何かメリットがあるのか?
 ヨドバシカメラの工事、いよいよ大詰め。陳列棚の搬入などまだやっている。

11月17日
 京阪特急で京都へ。丸太町下車、京都教育文化センター。
 京都SFフェスティバルである。何年ぶりかなあ。
 黒丸尚氏がゲストで来ていた時にちょっと覗いて以来かな。
 80人ほど。しかし、ここに来るファンは恐ろしいのが多いからなあ。
 企画はじめは「あの人は今……」
 大野万紀、加藤逸人、山岸真、かつきよしひろ(司会)
 驚いたなあ、ったく。のっけがシルバーバーグ、あと、ルグィン、ジャック・ヴァンス、シェクリー、ディレーニ、ハーラン・エリスン。NW系に打つってトマス・ディッシュ、ムアコック……。サンリオ系でプリースト、イワン・ワトスン。さらにヴァーリイやベイリーとくると、こりゃぼくにとっては精神的に全部現役。あ、シェクリイがノベライズものをやってるなんて、嬉しい話だ。
 作家生活の厳しさは洋の東西を問わず、いや、日本はまだましなのかな。
 午後の企画が「SFのロボットはどこまで実現するか」で、「この人は今……」の堀晃の出番はこの企画である。
 浅田稔、星野力、司会が菊池誠氏と、全部教授と名誉教授。
 この企画、本当は若いSF作家に出てほしかったのだが、星野先生(初対面)が来られるのと浅田教授登場とあっては、やっぱり断る理由がない。
 off off
 左から、浅田、星野、堀、菊池
 星野先生は主に人工知能について。
 わが発言に関しては、あとでSFサイドから、ちょっと弱気であるとの意見があった。確かにもっともで、昨年来、ジャンルSFでいう「狭義のロボットSF」は一度ご破算で願いましてはではないかと考えているので、ある種の挫折感が出てしまったのだと思う。今の若手作家はもっと進んるから、先にそちらを紹介すべきだったかもしれない。発言一巡の後、では今後のロボットSFはというあたりで時間切れである。アシモフ型の延長で色々試みている草上仁さんと、従来の枠組みのとらわれていない瀬名秀明さんの比較は話したかったことではあるのだが。
 ともかく、圧倒的なのはやっぱり浅田稔さんである。
 ハンス・モラベック『シェーキーの子どもたち』を前日から読んでいたところなのだが、モラベックの顔写真が浅田先生のパソコンにはちゃんと入っていたのにびっくり。……ともかく、その話題の豊富さと展開のうまさ、抜群の話術と、これはロボフェスタなどで何度か聴いているが、まったくほれぼれする。
 宇宙SFにおける松田卓也氏や福江純氏のように、ともかく日本のロボットSFと星野力名誉教授、浅田稔教授との接点が生まれたというだけでも、京フェスの意義はあったのではないか。
 会場、気がつけばおなじみの顔多数。柴野さんご夫妻や岡本俊弥、水鏡子、SFでは林譲治、野尻抱介、小林泰三、田中啓文、大森望、ミステリーから我孫子武丸や小森健太郎の各氏も。「合宿」の賑やかさが想像できる。
 あと「15歳以下は両親の付き添いを要する」という、森奈津子×牧野修「バカとエロ」も聞きたかったが、昼飯抜きであったのこともあって、コソコソと退散したのであった。
 夜、FMでセッション505を流していたら「大熊ワタルとシカラムータ」というグループ登場。大熊のクラがリーダーの「チンドン屋バンド」でちょっとびっくりするなあ。不思議なことをやるグループがいるものだ。トルコのようでトルコでない、ジンタのようでジンタでない、それがなにかと尋ねたら、あ、チンドンヤチンドンヤ……。ラストはモロにチンドン屋。ああびっくり。

11月18日(日)
 あかん、またアタマが働かなくなった。
 虚航船団パラメトリック・オーケストラの公演最終日に行こうかと思っていたのだが、動く気になれない。
 北野勇作の「女装」があるとかで、新車に乗った巨根とどう違うか見たかったのではあるが、結局、終日ボケーーーーっとしているのであった。

11月19日(月)
 目覚ましを掛けていたわけではないが、2時半頃に目が覚める。しし座流星群の日であるが、ベランダからみると東の空は雲に覆われている。どうもわが人生は流星運には恵まれていなかったようだ。そのままふて寝。
 ※あとで専属料理人に聞くと、晴れた半分の空でも長い尾を引いて空を横切る流星は幾つも見て、その後、東の方の雲も少なくなったそうである。わが「穴蔵」の視界の不運を嘆くほかない。
 次は30年後といわれても生きているはずなし。
 10時過ぎ、16日の深夜に発送した書類が宅配便で戻ってくる。
 またも市内をウロウロセカセカ。
 慌ただしい日である。
 夜、専属料理人と歩いて梅田へ。
 ロイヤルホースで2clライブである。
 滝川雅弘(cl)、坂井原正光(cl)、八木隆幸(p)、中村尚美(b)、岡野正典(ds)
 「クラリネットの野口五郎」坂井原くんの企画によるものらしく、女性ファンが多い。
 「But Not For Me」から……この曲のアレンジはジョン・デンマンによるものだが、そのデンマン、先週亡くなったと滝川さんが報告。昨年、ちょうど一年前の来日が最後であったことになる。その後半年ほどで体調悪化、癌であったらしい。
 off off
 グッドマンやデフランコ・ナンバーなど。多くはデンマンと谷口英治編曲のもの。……谷口さんの「弟子」を自認する坂井原くん、最初に聴いたのが4年前のクラリネット・サミット。ずいぶん成長した感じで、だが時に谷口フレーズが出てきてどきんとする。
 2ステージ、23時近くまで。
 歩いて帰宅。
 ルン吉くん、梅田センタービル前の「定位置」にもいない。また別の寝床ができたのだろうか。
 星の流れに身をうらなって
 どこをねぐらの今日の宿……
 空を見上げても、「残り流星」は見えず、願い事がかなうはずもないのであった……。

11月20日(月)
 天気晴朗なれど雑用多し。
 ちょっと落ち着いたのが午後9時頃である。
 昨日に引き続き、本日は滝川雅弘カルテットのSUBライブの日である。
 午後10時頃、2ステージ目の始まった直後に間に合う。お、本日は割と客も多い。
 NOW THE TIME まで5曲。快調である。
 終演後、いちばん後ろの席にいた「滝川夫人」を紹介されてびっくり。何にびっくりしたのかというと……うーん、まだ許可が下りないので、せっかく撮ったデジカメ写真、現在のところまだ非公開である。

11月21日(水)
 またも雑用山積。SFに関係ないのであった。嗚呼……。
 昼前に大阪版は片づいたので、直ちに播州龍野の実家方面へ移動。
 こちらにある「別荘3軒」のうちの「犬小屋」を「タイムマシン監視小屋」に改造中で、工事打ち合わせとチェックである。
 老母と1時間ほど雑談。
 慌ただしくも夜帰阪。と、大阪駅北側のヨドバシカメラ、なんだか騒々しい雰囲気である。明日オープンで、目玉商品狙いの徹夜の列がもうできているらしい。チラシではデジカメIXYが29800円だから徹夜の価値はあるか。旧型だから、実勢価格は4万を切っていると思うが、徹夜のバイトと考えればいいわけか。

11月22日(木)
 大安吉日である。
 法務局が開く時間に合わせて自転車で出発。一昨日が「三隣亡」、昨日が「仏滅」……日頃迷信なんてといいながら、やっぱり「記念日」となると縁起をかついでしまうところが情けない。
 梅田を抜ける前に、大阪駅側を見物に行く。ヨドバシカメラの北側広場、開店少し前……もう行列なんてものじゃない。大群衆で広場が埋まっている。ヘリが数機、飛び交いはじめた。大騒ぎである。まあ、しばらく近寄るまい。
 法務局から本町に下り、ゴソゴソと数ヶ所。
 帰宅してからも雑件多い。

11月23日(金)
 勤労感謝の日で、世間は三連休の初日である。快晴、典型的な小春日和。
 終日穴蔵に閉じこもって過ごす。
 順序が逆になったが、中村修二『怒りのブレークスルー』(集英社)を読む。これを読むと、前の畠山けんじ『反乱』の評価は割引かざるをえない。『反乱』はこの本の裏取り+訴訟以降の経過報告に過ぎないから。中村自身は、小川英治とか赤井勇など、個人名もきちんと出ているし、訴訟に至る「動機」もよくわかる。
 ボンクラ息子その1から相談を受けて、慌てて『ギリギリ合格のための論文マニュアル』という新書を読む。案外まともである。文系の卒論なんて、インターネットで資料を集めて形式を整えれば一丁上がりかと思っていたが、そうでもないらしい。まあ実験装置を組んでデータを取るのに2月頃までかかったのと較べれば、ちょろいものだと思うが。

11月24日(土)
 いい天気がつづくなあ。
 ボンクラ息子その1、昨夜から徹夜で並んで、ヨドバシで7000円ほどのプリンターをゲットしてきたという。むむ。確かにこれは安い。論文代作でおれのと交換……というわけにはいかないか。
 夕方から某居酒屋で某くんたちと「記念パーティ」を開く。
 祝いだから、この店でいちばん豪華なので飲もうと、ヒラメの活き作り、950円の松茸土瓶蒸し、伊勢エビの刺身なんぞを並べて盛大に飲んだが、ひとり6千円以下であった……。

11月25日(日)
 やや二日酔いである。
 朝、自転車で市立科学館まで散歩。午前中ここで会合があるという宇宙作家クラブの山田竜也氏から
「カシミール3D」のCD−Rを貰うためである。火星の地形図が表示されるという。
 直ちに帰宅。
 むむむ……これがフリーソフトとは!
 夜、NHKで「宇宙 未知への大紀行」を観る。が……「宇宙の終末」というが、真空エネルギーによる果てしない膨張という数十億年以上未来のテーマと、太陽系やスペースコロニーレベルとの混在がおかしい。最終的な「ブラックホールの爆発」というのがよくわからんなあ。

11月26日(月)
 今頃であるが、関口苑生『江戸川乱歩賞と日本ミステリー』を読む。いいたいことをストレートにいっていて気持ちがよい。
 タイムマシン関係の雑用が多い日である。

11月27日(火)
 午後、自転車で肥後橋のセンチュリー・クラブへ。
 小松左京マガジンの企画で「『題名のない番組』ふたたび」の収録である。
 これは、35年ほど前のラジオ大阪の伝説的番組である。もう記録も残っていないと思っていたら、東京で、広田忠計さんという方が、最終に近い頃の記録を残されていたことが判明。この際、当時の雰囲気を誌上に再現してもらおうということになったのである。
 したがって、「出演者」は、当時のまま、桂米朝、小松左京、菊池美智子の3氏。これにディレクターの本田粛正氏。と聴取者代表としてかんべむさしと堀晃……まあ、わしゃ構成者という立場である。
 結局4時間! 例によって半分以上は「独演会」なのだが、うーん、これ、どうまとめたらいいんじゃいな。
 しんどいことを引き受けてしまった。
 が、「題なし」復刻をいいだしたのはぼくだし、まあ、ここでは下の写真を自慢して、頑張るしかない。
 
off

 米朝師匠との2ショットはこれが3枚目である。
 帰路、ちょっと緊張をほぐすために、ひとりでニューサントリー・ファイブへ。
 サウスサイド・ジャズバントの日で、1、2ステージを聴く。
 帰宅午後10時。

11月28日(水)
 朝早くからウロウロ。朝早くから近郊市へ出かけたために、市内へ戻るのに、久しぶりにラッシュアワーを経験する。これが嫌で、わしゃボンクラ・サラリーマン時代は、出社時間の早いことでは指折りだったのであるが……。
 昼過ぎまで、上町台地の頂点あたり2往復。
 梅田で遅めの昼食の後、初めてヨドバシカメラを見学。CDやファッションはそれほどでもないな。特にCDの並べ方は無茶苦茶。要するにパソコンと家電の安売り店であって、パソコン売場はさすがに広い。食品は判定つかず、専属料理人にまかせるしかない。
 夜、カジシンがやって来た。
 石油関係の全国会議という。懇親パーティを途中で抜けてきたということで、久しぶりに居酒屋でバカ話。
 岡本喜八の新作。カジシン孫がいる! 義理の息子が8千円でバソコンを組んでくれるという。その他仕事の話色々。「わしは土下座は平気である」「土下座は日常であるとですよ」
 off
 ……瓢亭でソバと冷酒、あとサントリー・ファイブ閉店まで。
 半分以上は岡本喜八の話をしていたような気がする。

11月29日(木)
 終日ボケーーーーっと穴蔵に籠もる。少しは仕事もしたのであった。

11月30日(金)
 夕方から専属料理人と出かける。
 肥後橋の石原ビルの裏手という、あまり目立たない場所にある「庭の」という「和風レストラン」……不思議な場所にあるものだが、ここで本年度の忘年会1号。某タクマ顧問の若村さんとかんべむさし、それにゲストというか新地と不動産事業を昼夜かけもちしていたことがあるという菅野さん。
 あまり関係ないが、クジラが食べたいという話になる。
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 あと、4人でお初天神にお参りしてからニューサントリー・ファイブ。
 キャンディ浅田の出演日で、2ステージ目を聴いて、22時解散。
 本年度の忘年会はこれで終わり……のつもりである。
 12月は飲まない……つもりである。なぜかはわからんけど。


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