『マッドサイエンティストの手帳』258
●マッドサイエンティスト日記(2002年11月後半)
主な事件
・タイムマシン格納庫の日々(18-21日)
・チャンタの会2002(22日)
・官のジャズで落ち込み、民のクラシックに癒される日(24日)
・やっぱり民のジャズはラスカルズである。(30日)
2002年
11月16日(土)
終日穴蔵のつもりが、ちょっと調べ事発生、自転車で中央図書館へ。
帰路、かんべ事務所へ寄って1時間ほど雑談。テーマはまたも北朝鮮。
夜、先日五月山コンサートへ行けなかったので、ニューオリンズ・ラスカルズを聴きに出かけたくなるが、今日は新宿トラッド・ジャズフェスィバルで河合さん木村さんは上京しているのであった。
野口悠紀雄『「超」文章法』……この本のエッセンスはその主張どおり2行で要約できるから立ち読みでもいいのだが……肉付け部分にアシモフやクライトンが援用されていて、そちらの方が面白い。『夜来る』の先行アイデアについては知らなかったので驚く。アシモフの単行本は図書館で借りられるが、文庫は見落としていたのである。
11月17日(日)
典型的な小春日和。
少しは出かけた方がいいのかもしれないが、明日からしばらくタイムマシン格納庫の「守衛」役をやるので、雑件片づけておかねばならぬ。
終日穴蔵。
夜、NHK「パミール街道1000キロ」。映像を見ているだけでも、なかなか優れたドキュメントである。
11月18日(月)
早朝の電車で播州龍野のタイムマシン格納庫へ移動。
某相棒が昨日からベトナム行きのため代務員である。
ノートパソコンを背負ってきたのでメールは可能。仕事もできるのであった。
実家泊。
19時を過ぎると何もすることなくなってしまう。
布団に潜り込んで本を読むだけである。
11月19日(火)
終日、タイムマシン格納庫。
ベトナムからの連絡はなし。替わりに、台湾とのやりとり数回。EMSで発送の必要が生じたが、なんと、こんな田舎町でもEMSは扱っているのであった。
実家泊。
20時過ぎると、何もすることがない。
布団に潜り込んで本を読むだけである。
11月20日(水)
終日、タイムマシン格納庫。
必要あって、朝から、20年前のジャズ喫茶に関するデータをパソコンに入力。全部で443軒分、6時間以上かかる。5枚の原稿用だが、手間のかかることである。肝心の原稿は2時間で第1稿。メールで送稿。
天気がいいので、午後1時間ほど、自転車で龍野公園へ紅葉を見に行く。
花鳥風月興味なしといいつつ、まあこれはきれいである。
しかしなあ……見に来ているのは老人ばかり。
実家泊。
21時過ぎると、何もすることがない。
布団に潜り込んで本を読むだけである。
11月21日(木)
朝からタイムマシン格納庫。
昼過ぎでベトナム帰りの相棒と交替番。
夕方帰阪。
こんな時に限って留守電が10件近くある。半数近くが集合住宅関係のことで気が重くなるなあ。
専属料理人、妙に張り切っている。4日ぶりに帰宅したおれのためにご馳走を作っているのかと思ったら、最終ののぞみでボンクラ息子その1が帰ってくると連絡があったかららしい。連休前に大阪での仕事が発生したらしい。
おれは粗食で早寝。
11月22日(金)
朝から市内ウロウロ、たまっている雑件処理。
夕方から「某所」で久しぶりにミニ同窓会。「チャンタの会」と称する、関西にいるメンバーのうち都合のつくものだけが集まる発作的飲み会で、前回が2000年2月7日だったから、1年9ヶ月ぶりである。
居酒屋が面倒なので、場所だけ確保、勝手に来て勝手に帰る方式にしたら、明日がゴルフだからと1時間で帰るものあり、出張の帰りだと2時間近く遅れてくるものあり、延べ13人と、まあ盛会であった。
11月23日(土)
朝8時過ぎに兄が来穴蔵。昨日来阪、近くのホテルに泊まっていたという。チェックアウト前、朝食後の散歩を兼ねての来訪である。
1時間ほど雑談。これから龍野の実家へ帰るという。
午後、NHK−FMで「オールディ・ジャズリクエスト」の日である。
2、3曲目にジョージ・ルイスの「バーガンディ・ストリート・ブルース」がかかるなんて、なかなかいいではないか。
小川もこさんの声もいいし。
これをつけっぱなしにしてずっと穴蔵で雑読雑件処理。
……食事と入浴以外、ずっと聴いていたら深夜1時である。メールで1曲リクエスト(森山威男だけどね)を入れたが、残念ながらかからなかった。
11月24日(土)
朝、某所(この際、特に名を秘す)から、今日中之島公会堂である「ユーロジャズ」コンサートのチケットが余ってしまったからと、チケット2枚が届く。
夕方に、友人から招待券を送ってもらったクラシックのコンサートがあるのだが、午後2時頃からのだとハシゴができそう。ただ専属料理人は別件あって行けないというので、おれだけ行くことにする。 このコンサートは知らなかった。ただ、フィンランドから来るウラジミール・シャフラノフというピアノは「ジャズ批評」で「伝説的ピアニスト」と紹介されていたはず。これは聴いてみたい。
午後、自転車で中之島へ。
と、公会堂前、すごい列である。昼の部・夜の部と2回やるらしい。
当日券を買う人も多いみたい。こちらは1枚余っている。
で、ここからが問題である。
列が入り口に近づいたところで、そばに当日券売場がある。
その売場に近づいて質問している、いかにもジャズ好きの青年がいたので、わしゃ「親切」から、ちょっと列を離れて「券が余っているけど、よかったら……」と声をかけた。
とたんに、売場にいた、紺のブレザーにメタルフレーム眼鏡の男から「売場の前でそれはやめろ」と怒鳴りつけられた。
むむむむ。……わしゃ余ったチケットを売りつけようとしたのではないのだが、ありゃ、あきらかにダフ屋に対する態度だな。まあ、こちらもダフ屋のおっさんに見られてもしかたのない風体だけど。
列に戻って、当日券(6000円!)を買ってきた青年とちょっとしゃべる。「余ってるからあげようと思っただけなんだけど」「まあ、しかたないですよ」
確かに非はこちらにある。売場の前で商権を奪おうとしたのだからなあ。
結局、嫌な気分のまま、1枚無駄にして入場。
と、わが席は2階最前列の中央であった。正確には「中之島公会堂2002年11月24日14:30開演」の「2FA列14番」券である。
左右の7席、全部空席。11番〜18番におれひとりである。
ここ「関係者招待席」であった。
1階は満席。2階左側にバラバラ。わが後ろの席も詰まっている。
書いておこう。
このコンサート、主催の「委員会」は「官」がメインであって、おれにあ「余っているから」と「招待券」をくれた「特に名を秘す」某所も「官」の筋である。
こんな贅沢な席が1列全部空いていて、当日券の青年その他諸君の扱いたるや……
当日券売場の男に怒鳴られたこともあって、気分が、釈然としない……どころか、なんとも嫌な気分である。
ダフ屋扱いされたものの、非はこちらにある。
なぜこんなに気分が悪いのか。
おれは不公平が嫌いなのである。むろん、誰だって不当な扱いを受けると怒る。
だが、おれは理屈に合わない「優遇」を受けるのも嫌なのである。
最初のトリオ、フランスからの「シャン・フィリップ・ヴィレ・トリオ」が始まる。端正できわめて技巧的なトリオ。が、気分が悪くて全然のれない。
そうか……わしゃ「官のおこぼれ頂戴」席で聴いているからこんな気分になるのだ。
「官のおこぼれ頂戴」するよりはルンペンやる方がましだよ、おれは。
それでもなあ……「官」の特権階級はこんな「贅沢」してるんだなあ。
贅沢を消費しきれずに、三文SF作家に恵んでくれる慈悲をお持ちなんだなよあ。
その慈悲を見知らぬ市民に分与しようとしたら怒鳴られるんだよなあ。
わしらの「特権」を愚民どもに知らしめるな、恵むよりはむしろ闇市に流せか、なあ……。
北朝鮮だよなあ……。
ということで、最初のトリオが終わり、つぎの「ヨス・ヴァン・ビースト・トリオ」が始まる前に、席を立った。
ジャズは官のおこぼれで聴かせていただくものではないのだ。
当日券売場の男、よく怒鳴ってくれたものよ。こんな「特等席」を「一般のジャズファン」にあげるなんて考えるべきではなかったのだ。ダフ屋に徹底して売りつけた方が「正解」だったのだ。
官の一部がこんな「浪費」をしていることを漏らしかけたのがまずかったのだ。
むろん、わしゃ、今後、残り少ない一生「官のおこぼれ」特等席でジャズを聴くことはない。
シャフラノフというのはすごいピアノなのだろうけど、最初の接触がこんな気分であってはなるまい。
たぶん今回聞けなければ一生聴く機会もないだろうけど、プライドを失ってまで聴くことはあるまい。……シャフラノフくん、いつかこちらの精神状態がいい場で聴けますよう。
で、会場を出かけたところで、ドアの横にいた女性から詰問。
「チケットを見せていただきます」「え、出るときにも?」「はい」
バックやポケットをゴソゴソするがどこだったか。すぐには出てこない。
「なければどうなるんですか」「お帰りになるのでしたらいいのですが」「帰ります!」
トドメを刺された気分だ。……2度と来るか、官の主催するのにはよ。
大阪市から引っ越したくなるなあ。本気で考えよう。日本どこへ行っても似たり寄ったりだろうけど。
自転車で梅田へ。阪神で尼崎へ。
18時からアルカイック・ホールでコンサート。こちらは友人(「民」である)から招待を受けているもの。
予定より早く着いたので、たぶんシャフラノフがピアノを弾いている時間、駅前の中華屋で餃子とビール。官のおこぼれジャズよりは民民の餃子である。
気分が良くなったところで、アルカイック・ホールでグリーン交響楽団のコンサート。
SFと落語の友人・菊川素子さんがバイオリンで参加している民間企業音楽家のオーケストラである。
曲目は、
モーツァルト 歌劇「魔笛」序曲
ストラビンスキー バレエ組曲「火の鳥」(1919年版)
ベートーヴェン 交響曲第3番変ホ長調「英雄」
指揮 船曳圭一郎
……わしゃクラシックに関しては、大フィルを何回か聴いた程度のド素人。
特に「火の鳥」をコンサートで聴くのは初めてであった。
この曲というか、ストラビンスキーに関しては、中学時代からの妙に屈折した思い出があるのだが、長くなるので省略して、ともかく、この年になって素直に感激できた。
「官」のジャズコンで気分を悪くして「民」のクラシックで癒される。
おかしな日であった。
21時帰宅。軽くワイン。
22時〜夜半過ぎまで、12chで「ナバロンの要塞」を、これは何度目か。今回の字幕がなってない。昔の方が絶対に良かった。特にデビッド・ニーヴンの「崖の上」でのセリフ。
11月25日(月)
終日穴蔵。
雨なので落ち着く……はずが、またも集合住宅のもめ事。嗚呼……
夕刻、かんべむさし来穴蔵。いろいろ「面白い」話をして、少し気分が晴れる。
11月26日(火)
小雨であるが、市内ウロウロする仕事。少しは仕事もするのであった。
11月27日(水)
終日穴蔵。
夕刻、某紙のO関記者来宅……記者といってもきわめて偉い方である。
某企画の打ち合わせと称する飲み会である。
O氏がかなりのジャズファンと判明して、企画なんてものはむろんそっちのけ、ビール、ワイン、焼酎とエスカレート。
途中、上山高史さんのドキュメント番組あり、山下洋輔さんのコンサートにゲスト出演とか、会場含めて「鐘の鳴る丘」を歌う場面など、感涙ものである。
23時近くまで。飲み過ぎであるかな。
11月28日(木)
終日穴蔵である。むろん。
11月29日(金)
『<光世紀世界>の歩き方』を読む。これについては別項予定。
金融的・経済的・ナニワ金融道的には本日が月末である。
わははははははははは。タイムマシン代金、巨額が15時に某国から振り込まれたと銀行から連絡があったぞ。ダハハハハハハハ……と、あまり本気にしないように、エシュロンくん。零細自営業は、その月を生き延びたというだけですごい喜びなのである。
カジシンならわかってくれるであろう。
と、週刊新潮を見たら、カジシンのグラビア写真。
「黄泉がえり」のロケ現場陣中見舞いということで、草ナギ(←ややこしい字だな)剛、竹内結子との写真。むむむ。カジシン、全然舞い上がっとらんではないか。昔ならかなりの躁状態になるはずが、カジシンも風格が出てきたのだなあ。
原作と映画がどう違うのか、興味しんしんとまではいかず。短い文章からは、どうもカジシン、双手をあげて喜んでいるとは思えぬ気配である。
裏事情はそのうち熊本まで聞きに行くことにしよう。
11月30日(土)
夕刻まで穴蔵。
午後、専属料理人、「一万人の第九」の「最後のリハーサル」とかで出かけてしまう。明日が本番なのだそうである。毎週火曜の留守はこるせいであったのだ。
「1万人の大工」なんて、まるでラファティのタイトルである。1万メートルほどある巨根に似た塔でも建てるのだろうか。
わしゃ、夕刻、天満へ。
某シナリオ学校専科で「長編プロット」に関する講座。
ここで伝授した「秘伝」は絶対にすごいはずである。
21時頃に梅田。久しぶりにニューサントリー5。
ニューオリンズ・ラスカルズのライブである。
ゲスト・トランペットがフランス、ポール・モーリア楽団の名前失念・なんとかいうトランペット。モーリア死して、楽団、フランスではもともとたいした評価はなく、アジア圏だけで人気なのだという。
しかし、それだけに、デキシー吹けばいい音色である。
最終ステージまで。
気がつけば、いよいよ師走である。
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