『マッドサイエンティストの手帳』707

●マッドサイエンティスト日記(2019年6月後半)


主な事件
 ・播州龍野いたりきたり
 ・神戸新聞文化センター(21日)
 ・シンギュラリティサロン(22日)
 ・G20@Osaka


6月16日(日) 拳銃強奪/中津風景画展@空白
 早朝のニュース。千里山の交番で警官が刺され、拳銃が奪われたという。
 11時、町内放送(防災無線?)で「外出を控えるように」とアナウンスが流れる。これが1時間ごとに繰り返される。
 電車で逃亡の可能性もあるらしい。阪急で来れば、うちの近所にいても不思議ではないからな。
 他府県から大勢の警官が来ている中で、大阪府警の面目丸つぶれだな。
 勝田清孝みたいなやつでないことを祈るばかり。
 びくびくしつつ、午後、アナウンスに反して「外出」する。
 歩いて中津商店街のアトリエ「空白」へ。
 企画展「中津風景画展〜失われゆく時代のスケッチ〜」が本日までなのである。
 7人の画家が出展、中津(一部豊崎も)の風景を描いている。
  *  *
 それぞれ個性的な画風で楽しめた。
 北梅田周辺はタワーマンションの建設や梅田貨物線の地下化、淀川左岸線の工事などで、大きく変わっていく。
 風景画を残すのはいい企画だと思う。野々村竜太郎の生家がないのは残念だが。
 寄り道せずに帰館。あとは施錠して過ごす。
 夜は色々並べてもらって一杯。
 21時、拳銃強奪犯、依然逃亡中。

6月17日(月) 穴蔵/ウロウロ
 午前7時、拳銃強奪犯・飯森裕次郎(33)を箕面山中で発見、逮捕のニュース。大阪市内ではなかったのか。まあ、ほっ。
 G20で何かやろうというタイプではなかったらしい。
 ということで、昼、安心して市内うろうろ。金融機関、書店、ヨドバシなど。
 久しぶりにステーションシティ「風の広場」に上がる。
  *
 新駅工事は相変わらず。花壇とバーベキューのスペースは撤去された。
 当分こんな景観がつづくのであろう。
 7000歩ほど。4日歩いていないとひどく疲れる。
 夜は集合住宅の理事会。たいした議題はないものの、ややこしい住人(約1戸)の話、ひどく疲れる。
 遅めの晩酌。ひどい疲れを癒すために、ビール、酎ハイ。寝る。

6月18日(火) 大阪←→播州龍野
 早朝の電車で播州龍野へ移動する。
 大阪北部地震から1年である。震度6弱を体験した7時58分、今年は姫路駅の姫新線ホームであった。
 9時前に本竜野着。
 タイムマシン格納庫にて相棒の某くんと打ち合わせ。
 あと実家へ。
 こちらの書斎その他の夏モードへの変更。
 あまり仕事はしないものの手間だけはかかるなあ。
 庭の雑草処理も。
 刈り得ざる種とは「光の塔」の原題である。
 ウチの種は……
  *
 『捨てるな、うまいタネ NEO』に触発されて、2010年6月11日に埋めたビワの種が、2013年11月7日には1メートルくらいに育ち、9年かけて実がなるようになった。
 ただ、食べられるビワにするためには、選別して、袋を被せたり、手間をかけねばならぬそうな(シルバー人材の某氏から聞いた)。
 とてもそんな面倒なことは出来ず、ほとんどヒヨドリに食べられてしまったようである。
 枇杷の木は残った。
 夕刻に帰阪。
 龍野泊でもよかったのだが、調理がだんだん面倒になってきたのである。

6月19日(水) 穴蔵
 薄曇りで涼しい朝である。
 快適な穴蔵に終日こもる。
 集合住宅の過去の修繕履歴の精査に1日かかって、半分ほどしか進まない。
 60代の前半、老母の介護と重なって、よくこんなしんどいことをやってきたものと、われながら感心する。
 これから2年、もう一度は無理だな。
 あとは野となれ大和男児で行こう。
 夜は専属料理人が並べた6皿でビール、安ワイン。
  *
 メインはプルーンと豚肉のワイン煮込み、泥状で気味悪いが、まあまあいけた。
 早寝する。

6月20日(木) 穴蔵
 薄き雲懸かりて風涼し。
 終日穴蔵にあり。
 机に向かいて何もせぬこと例の如し。

6月21日(金) 神戸新聞文化センター
 昼前に出て阪急で三宮へ。
 午後、神戸新聞文化センターの講座である。
 ショートショート4編、エッセイ4編、それぞれ面白く、それぞれのテーマを中心に雑談会の雰囲気になる。
 いちばんの議論になったのが、マスコミの事件報道における「無職」という表記についてである。
 事故起こした高齢ドライバーも事件起こした「引きこもり」も専業主婦もすべて「無職」であり、これが立場によってはひどく「息苦しい」という。
 これはおれも感じる。おれの場合、何かの申告で職業欄に記入するのは「自営業」でも「経営者」でも「技術者」でも「講師」でもウソではないのだが、生活の実態は「年金生活者」に近く、「無職」と書くのが適切ではないかといつも迷う。
 職業は恐ろしく多様化しているし、収入を伴わない「仕事」も多い。
 議論はここからマスコミの報道姿勢や宗教にまで広がるが……以下略。
 面白く刺激的だが、これで「文章・物語」の講座になっているのか、いつも迷うのである。
 夕刻帰館。
 じつは、今日はちょっと特別な日でもある。
 敬愛する荷風のおっさん、おれとほぼ同年のこの日どうしていたのか。断腸亭日乗にはこうある。
 1954年6月21日「晴。後に陰。燈刻有楽町。食料品を購ひ日比谷劇場にて映画Le petit monde de Don Camilloを見てかへる。」
 おっさん「陽気なドン・カミロ」を見ていたのである。
 この映画、脚本がルネ・バルジャベル。
 60年代、フランスのSF作家といえば(ウェルズは別格として)ジョルジュ・ランジュランとバルジャベルの2人だけであった。
 不思議な因縁を感じるなあ。こじつけすぎか。どっちでもいいか。
 いずれにしても「正午大黒屋」まであと5年ある。
 がんばって生きようと思う。

6月22日(土) シンギュラリティサロン
 昼過ぎに出てグラフロのナレッジキャピタルへ。
 シンギュラリティサロン……前回に引き続き、自由エネルギー原理シリーズである。
 本日の講師は追手門大の乾敏郎先生。
 演題は「感情生成の設計図:自由エネルギー原理を基礎に」
  *
 乾先生は基礎工の生物工学科出身で、これまでの所属が理系(情報科学など)と文系(心理学科など)がちょうど半々だそうな。
 自由エネルギー原理について、フリストンは「数式を使いすぎて難解に見せすぎ(権威付け)」と、数式なしで進められる。
 実にわかりやすい……ように感じられるが、やっぱり難解。
 前回が吉田先生による「自由エネルギー原理と視覚的意識」だったから、今回が「感情生成」かと思っていたのだが、意識と感情は対義的ではないらしい。
 感情とは「内臓」からの信号に対する脳の「推論」という。この推論のベースとなるのがヘルムホルツの「無意識的推論」で、このあたりで意識と感情が区別される……ように思う。
 塚本先生が最初に紹介された通り「わかりやすそうでかなり手強い」。おれには、自由エネルギー原理は熱力学としては理解できるが、これを人間(特に精神活動)に当てはめようとするあたりから、面白いのだが理解が怪しくなってくる。科学法則の拡大適用(意図的誤解も含む)はSFが専門としてきた方法だったのだが……

6月23日(日) 穴蔵
 早寝したら午前3時に目覚めてしまった。
 机に向かってボケーーーーッと過ごす。
 7時。収監逃れの小林誠(43)を横須賀市内で逮捕のニュース速報。
 3日18時間の逃亡劇の幕が下りる。手助けした脇役のキャスティングを早く紹介してほしいものだ。
 いかがわしい「芋蔓」がぞろぞろ出てきそうで楽しみである。
 曇天。暑くはなく、過ごしやすい日である。
 終日穴蔵にあり。
 連絡事項がごちゃごちゃ。明日から1週間の調整を行うが……
 G20があり、迷うところだ。月末の4日間、難を逃れて播州龍野へ行くか、戒厳令下の大阪を見物するか。
 相手側の事情もあり、予定決まらず。なりゆきだな。
 夕刻、近所を散歩。
 梅雨入りせぬまま、アジサイはもう萎びている。
 路地には名もない花が開花していた。
  *
 いや、名前はあるのだろうけど、調べるのが面倒なのである。
 野々村竜太郎の生家近くにも花は咲くのであった。
 竜太郎、わかっとるね。

6月24日(月) 穴蔵
 終日穴蔵にあり。
 播州龍野へ行くか迷っていたが、相棒の某くんが週前半に詰めてくれることになった。こちらの雑事もお願いする。
 今週は大阪で戒厳令下の雰囲気を楽しむことになった。
 晴。梅雨入りは週の後半になりそうで、G20当日が大雨になりそうな。
 楽しみなことである。

6月25日(火) 穴蔵
 わ、昨夜21時前に寝たら、1時過ぎに目覚める。
 あと朝まで読んだり眠ったり小便したり。
 普通の老人生活であろうか。
 朝のニュース。
 吉本が芸人十数人を謹慎処分にした。5年ほど前に闇営業で特殊詐欺グループの宴会に出ていたとか。
 知らない芸人ばかりだが、中に田村亮の名があってびっくり。阪妻の息子が吉本に所属していたのか!
 ……と思ったら、同姓同名の別人であった。迷惑な男だ。消えるからいいけど。
 快晴である。
 終日穴蔵にあり。半痴呆状態で過ごす。
 たちまち夕刻。
 夕景を眺めつつビール、酎ハイ。
  *
 東洋ホテル跡のタワーマンションがいよいよ最上階まで迫り上がった。
 52階、今年11月竣工予定だが、間に合うのかねえ。ちなみに4年前の眺めに較べて、4倍の高さ、視界がふさがれ、かなりの圧迫感。
 東南方向を眺めて飲むことにする。
 トミフラ師匠、パキート師匠など聴きつつ。

6月26日(水) 穴蔵
 ほぼ終日穴蔵で過ごす。
 不調である。
 昼、専属料理人不在なので外出したが、日射し強く、脚が(この数日の運動不足で)ひどく疲れる。
 つるまるでうどんを食べて、40分ほどで帰館。
 あとは半痴呆状態で過ごす(読書はしているのだが、このところ本について書いてないなあ。明日から再開しようと思う)。
 天気は、午前晴、午後曇、夕刻から雨となる。絵に描いたような下り坂。
 明日は台風? 要人来日、おもろいことになるぜ。

6月27日(木) G20(前夜)
 ほとんど眠れず。不調である。
 終日穴蔵にあり。本を読んで過ごす。
 小雨が降りつづき、台風の気配もなく、静かなもの。
 ベランダから見る新御堂筋、クルマは少ない。
 市内はガラガラのようである。
 同じ区内にトランブ、習、プーチン、メイ、その他要人多数が泊まっているらしいが、一杯飲んだら出歩く気分にもならず。
 明日、グラフロから西梅田界隈を見物に行くことにしよう。

6月28日(金) G20(1日目)
 G20の初日である。朝、曇天がだんだん晴れてきた。面白くないなあ。
 10時頃、だらしない格好で出ようとしたところに電話あり、今月中(つまり今日中)に処理した方がいい案件が発生、あわてて着替え、梅田の某社へ出向く。
 昼までで片づいた。
 あと、梅田をうろうろすることに。
 要人宿泊のホテル周辺をうろつくのに、ビジネスマン・スタイルだから、警戒されず、ちょうどよかった……などと考えていたが、肩すかしであった。
 西梅田〜グラフロを歩くが、クルマは少なく(もともと少ない)ポリさんもほとんどいない。
 リッツ・カールトン、ヒルトン、インターコンチネンタル、いずれも警官は見当たらず、ぶだんと変わらない。
 静かなものである。
 トランプが別格なんだろう。
 大阪駅の南側、クルマがほとんど見当たらず、不思議な雰囲気である。
  *
 どこかで見たような……と思ったら、ゼネプロだったかダイコンフィルムだったかの作品の1シーンだ。「愛國戦隊大日本」ではない。
 無人の大阪駅前から中央郵便局の方へバイクで走り抜ける場面があった。確か1月1日に撮ったのではなかったか……どなたか覚えておられるだろうか。
 G20よりゼネプロの方が面白いとは困ったもの。
 うめきた2期地区の西、スカイビル近くの某ホテル見物はしんどくなり、まっすぐ帰館。

6月29日(土) G20(閉幕)
 昨夜いつもどおり早寝しようとしたが、深夜近くまでヘリ音が喧し。3機は目撃できた。
 本日、またも朝からヘリの音。南東方向、大阪城から大川周辺。報道なのか警戒なのか、よくわからん。
 大阪市内、クルマは少なくて静かだが、ヘリ音はかなわんな。
 昼前に出て、グラフロ抜け、スカイビルあたりを見物に行く。
 さすがに警官(ほとんど福岡県警)多し。近平ちゃん警護であろう。
 今回の交通規制、西梅田一帯はホテル集中でわかるが、JR福島周辺まで規制されているのがよくわからん。
 クルマ少なく人出は普通。
 たいして面白くもなく、大淀信州そばでコロコロ(中津店より安いのである)食べて帰館。
 G20が閉幕宣言したところであった。

6月30日(日) G20(後始末)
 朝から大雨注意報が出ているが、普通の曇天。静かなものである。
 G20関係の規制も昼頃には解除されたような。
 ヘリの音を除けば、静かで退屈な4日間であった。
 おかげで……というのもおかしいが、不調である。
 何もせず先行きを考えていると、暗澹たる気分になる。
 80歳で死ねれば理想的。
 85歳だと、まあ迷惑はかけないだろう。
 そこから先は日々地獄である。
 考えすぎてもいかんか。
 枝豆でビール、グラタンなどでワイン飲み、早寝することに。
 無為に過ごした2019年前半が終わる。嗚呼。


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