『マッドサイエンティストの手帳』705

●マッドサイエンティスト日記(2019年5月後半)


主な事件
 ・神戸新聞文化センター(17日)
 ・シンギュラリティサロン(25日)
 ・Jimin Park@プチ・エル(25日)
 ・播州龍野いたりきたり


5月16日(木) 穴蔵
 5時過ぎから直射光射し込みたちまち室温28℃、着替えせずに過ごせる快適な季節になった。
 終日穴蔵にあり。資料を読んで過ごす。
 阿部牧郎さんの訃報。
 おれはデビュー作「蛸と精鋭」から読んでいる。初期のサラリーマン小説(というのかな、エリートサラリーマンの屈折を描いた作品)が好きで、特に地方工場で生活していた時期だから、感じ入るところが多かった。今でも最高傑作は『われらの異境』だと思っている。

5月17日(金) 神戸新聞文化センター
 朝から直射光、快適な日である。
 昼前に出て阪急で三宮へ。
 神戸新聞文化センターでの講義の日。
 エッセイ、ショートショート、短篇、それぞれ面白い作品多し。
 一例のみ……今年初めNHK-BSで、戦時下、敵性スポーツが日本語表記されていた時代、東大と京大のラグビー(闘球)部が内緒で定期戦を行った秘話「キミに最後の別れを」が放映された。いい題材だが、肝心のところで「ラグビーのルールが変わっているのを知らず」、美談だが実に間の抜けたドラマになっているという指摘。
 これは公共放送局に指摘すべきという意見が大半であったが……どうなることやら。
 NHKはおれが小松左京作品の扱いについて致命的なミスを指摘しても放ったらかしだからなあ。
 帰路、4月21日のバス事故(市バスが横断歩道に突っ込み2人死亡6人が重軽傷)の事故現場を通る。
  *
 毎回通る歩道……大阪では大阪駅の東側歩道に匹敵する、いちばん人通りの多い場所である。
 今も献花台に花多し。黙祷。

5月18日(土) 穴蔵
 朝、晴れて直射光。
 穴蔵の模様替え、最終ステップである。
 机の下のカーペット、椅子のクッション、その他、冬関連のものすべてを洗濯。
 穴蔵はすべて夏バージョンとなる。すっきりした。
 午後は曇ってきた。
 夏来たりなば秋遠からず、秋来たりなばたちまち冬である。
 鬱陶しい季節が近い。
 仕事する気分にならず、昼寝。
 たちまち夕刻。
 専属料理人の並べたオムレツその他色々でビール、ワイン。
 早寝するのである。

5月19日(日) 穴蔵
 晴れて暖なり。終日穴蔵にあり。
 世間は日曜日で、人出が多いだろうから、散歩に出る気分にならず。
 一応机に向かう。
 たちまち夕刻。
 専属料理人の並べた6皿(小鉢含む…が、ちと多いね)でビール、酎ハイ。
 早寝するのである。

5月20日(月) 穴蔵
 早朝から屋久島の「50年ぶりの豪雨」ニュースばっかり。二百数十人は救助されておる。
 大阪は、朝は晴、昼前から曇天、午後に小雨が断続的に降る。
 終日穴蔵にあり。
 夜、集合住宅の通常集会(総会)。
 これから1年間、管理組合の理事長を務めねばならぬ。嗚呼。
 21時頃から、やっと晩酌。グラタンなどでワインを少しばかり。
 雨が本降りになったような。
 寝る。

5月21日(火) 穴蔵/ちょいウロ
 午前4時に起床、夜来の雨はやんでおり、午前曇天、午後には急速に晴れ、夏空が広がる。
 ほぼ終日穴蔵にあり。
 集合住宅のややこしい事案について、資料の整理、管理人からのレクチャーなど色々。
 ちょっと聞くだけで鬱陶しくなる。常識外れの住人が5%ほどいて、それが諸々の案件の障害になりそうな。
 こんな連中の対策に1年間知恵を絞らねばならぬのか。嗚呼。
 SF系の仕事はからっきし。嗚呼。
 夕刻に近い午後、自転車で梅田へ。
 所用あって開店前のハチに寄る。マスターと10分ほどあれやこれや。
 まだ公表はできないが、夏には注目間違いなしのセッションが実現しそうな。決まればここでもお知らせする……予定。
 帰館。
 夜は専属料理人の並べた初夏パスタ中心のメニュー。
  *
 中本酒店推奨格安バカ旨白ワインを少しばかり。
 うまっ。
 早寝する……つもり。

5月22日(水) ウロウロ
 午前4時起床、夏日の予感、5時過ぎに直射光射し込み、7時半には室温30℃となる。
 快適な日である。
 雑事もあり、10時過ぎから市内うろうろ。
 本町〜上町台〜商工会議所〜天五の部品屋に寄り、天五中崎商店街を歩いて帰る。
 おや、青空書房の跡。
 閉店後しばらく空き家だったのが「黒崎水産・あっ韓」という海鮮の店になり、流行らず、2年前に「お魚と生パスタのお店」と、節操のない変更を行った。
  *
 やっぱりダメで、今度は「Poussin」という店に改装かよ。焼鳥屋になったわけではない。オムレツが加わったくらいで、変わり映えしない。経営者が同じかどうかは知らず。
 ま、健闘を祈る。
 おれは向かい側の信州そばが好きだけど。

5月23日(木) 穴蔵
 午前4時起床。5時過ぎに直射光射し込み、7時過ぎには室温30℃となる。
 昨日と同じ。
 ただし本日は不調。何もする気力がわかず、終日穴蔵にあり、鬱々と過ごす。
 たちまち夕刻。無口な晩酌。
 こんな日が増えるのであろう。

5月24日(金) 穴蔵/ウロウロ
 午前4時起床。5時過ぎに直射光射し込み、7時過ぎには室温30℃となる。
 昨日と同じ。
 ただし本日は専属料理人の体調いまひとつ。近所の医院へ行き、クスリどっさり貰ってきた。
 おれは出かけることにする。
 所用あって梅田うろうろ。熱中症でんでん云々の暑さではなし。
 午後、鶴野町のJRガード下にできた食品スーパーに寄り、食材を買って帰る。
 ここは近所の某店より遙かにいい。
 豊崎2丁目あたりを抜けることになる。
  *
 ここは週1度は通る道。A先生、お元気であろうか。
 いつも静かである。特に東の事務棟は。
 ということで、夜、軽く一杯やって、早寝することにする。

5月25日(土) シンギュラリティ/Jimin Park
 午前4時起床。5時過ぎに直射光射し込み、7時過ぎには室温30℃となる。こればっかり。
 昼過ぎに出てグラフロ、ナレッジキャピタルセンターへ。
 シンギュラリティサロンに出席。
 本日の講師は岡崎・生理学研究所の吉田正俊先生。
 演題は「自由エネルギー原理と視覚的意識」
  *
 自由エネルギー原理でネット検索すると、多くが吉田先生の書かれたものである。
 イギリスの脳神経学者フリストンが提唱した「原理」で、「脳が外界を正しく認識していく過程」と「行動によって曖昧さを排除していく過程」の組み合わせであり、意識とは、推測と生成モデルを照合するプロセスそのものである。この考え方はフッサール現象学における意識の構造とも整合的である(中途半端な理解で申し訳ない。こちらなどご確認を)。
 物理でのハミルトニアンに近いのではないかという質問があり、これには納得できた。
 もう少し勉強したいと思う。
 あと、梅田をうろうろし、夕刻、天満橋のエルおおさかへ。
 地下にプチエルという小ホール(レッスン・スタジオ)がある。創サポで15年以上来ているのに、今まで知らなかった。ちゃんとスタンウェイまである。
 ここでジミン・パークを迎えてのライブ。
 「超絶的技巧」のピアニストの日本初公演である。
  *
 滝川雅弘(cl) Jimin Park(p) 中嶋明彦(b) 佐藤英宜(ds)
 まずジミンがソロで4曲。ショパンのジャズアレンジ、君去りし後をラグタイムやスイングスタイルで弾き分けたり、ブギウギのあとにはバラードと、ともかく多彩。ストライド・ピアノもうまいらしい。2ステージ目にはヴォーカルも披露。
 カルテット演奏ではボサノバからパーカーの「ドナ・リー」まで。
 韓国生まれでソウル芸術大からバークリー、現在はニューヨークで活躍中。まだ22歳である。滝川さん、どんな縁で呼んだのか、ソウルへの里帰りのついでに来日だそうで、秋の神戸ジャズストリートも決まったらしい。
 気分よく、近所の焼鳥屋で一杯飲んで帰館。

5月26日(日) 穴蔵
 午前4時起床。5時過ぎに直射光射し込み、7時過ぎには室温30℃となる。快適な日がつづいていいけど、飽きてきたなあ。
 終日穴蔵にあり。
 ボケーーーーーッとQ状態で過ごす。
 さすがに運動不足なので、15時過ぎに散歩。徒歩7分のジュンクドーまで。
 東側の新御堂側歩道に出たところで、トートバック下げた専属料理人とばったり。
 デパ地下の返りで、ポーター役を引き受けさせられる。嗚呼。
 まあ、少しは役には立っているのである。
 夜、豚肉の煮込み中心に色々並べてビール、安ワイン。
 早寝するのである。

5月27日(月) 穴蔵
 午前4時起床。5時過ぎに直射光射し込み、6時に室温30℃となる。昨夜からずっと30℃だったらしい。
 快適な日がつづくが、本日は、午後に曇ってきた。
 15時頃に散歩に出る。
 お、公園の隅で剛球投手がピッチングしている。
 たぶん阪神の選手なのだろう。
  *
 公園の南側にT鍼灸整骨院があり、阪神の選手がよく来る。何人かのサイン入りユニフォームが飾ってある。
 通院ついでに、よく岩田という投手が公園で投げていると専属料理人がいう。
 これが岩田かどうか、職業野球に興味を失って長いおれにはわからない。藤川ならたぶんわかるが。
 阪神躍進のためにも、教条主義的おばはん(子供がハトにエサやるのを注意するおばはん)が来ないことを祈る。
 一応球技禁止の公園だからなあ。

5月28日(火) 大阪←→播州龍野
 早朝の電車で播州龍野へ移動する。
 午後から雨の予報が、明石あたりから降りはじめた。
 播州龍野……鶏籠山は小雨のなかにたたずむ。
  *
 鶏籠山と揖保川をはさんだ対岸のタイムマシン格納庫にて、相棒の某くんとあれやこれや。
 数ヶ月つづいたプロジェクトは本日をもって終了である。
 SFに復帰できるか……
 夕刻に近い午後に帰阪。雨は降りつづく。

5月29日(水) 穴蔵
 晴れた空、そよがぬ風。救急車のサイレンの音騒がし。
 終日穴蔵にあり。
 案外忙しい。理事長の業務に、大規模修繕関係のことが増えて、金にならぬ仕事ばかり。
 目の前に雑事があると、取りあえず片づけておくか……となるのがおれの悪いクセだ。
 たぶんどこか原稿を先送りしたいのだろう。
 たちまち夕刻。
 おや、三洋化成と日本触媒が経営統合のニュース。
 懐かしいなあ。70年代後半、三洋化成の京都工場にはタイムマシン関係でよく行った。京都から見えてるのに意外に遠く、国鉄の東福寺で降り、徒歩10分ほどだったかな。国鉄奈良線に乗ったのは1駅この時だけ。30年ほど行ってない。東福寺は見たこともない。
 仕事抜きでうろうろしてみたかった場所のひとつだ。一度行ってみようか。

5月30日(木) 穴蔵
 午前4時起床。5時過ぎに直射光射し込み、6時に室温30℃となる。ゴミ出しに外に出ると案外涼しいのであった。
 穴蔵の夏パターンである。
 雑事(非SF系)をあれやこれや。いかんなあ。
 午後、淀川堤を散歩。
 北図書館に寄って読んだ記事。
 先日、降旗康男監督が亡くなったが、その父は松本市の市長・降旗徳弥氏で、松本城で「月見の宴」を催して物議をかもしたことがあるという。
 これはよく覚えている。殿様に扮装して宴会をやったのだ。
 非難ごうごうだったが、ボイントがずれていると思った。おれにいわせれば、市の役人だけやったのがいかん。
 こんな面白いことは、市民に(できれば国民にも)開放しなければ。
 抜群のアイデアと感心したが……今は松本城で「月見の宴」が秋の恒例イベントになっているような。
 コスプレ宴会でないのが惜しい。

5月31日(金) 穴蔵
 曇天。涼しいというよりも、おれにはちと肌寒い日である。
 終日穴蔵にて非SF系雑事。月末だからなあ。だらだら。
 たちまち夕刻。
 ありきたりのメニュー数皿並べてもらってビール、酎ハイ。
 早寝するのである。
 無為に過ごした5月が終わる。嗚呼。


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