『マッドサイエンティストの手帳』708
●マッドサイエンティスト日記(2019年7月前半)
主な事件
・播州龍野いたりきたり
・SF検討会(5日)
・シンギュラリティサロン(7日)
・創サポ・夏の創作講座(13日)
7月1日(月) 穴蔵
朝だ。雨が降っている。龍角散のど飴をなめる。セクハラ社長の会社の製品らしいから、今のが終われば浅田飴に戻そうと思う。
播州龍野へ行こうか迷うか、兵庫には大雨注意報が出ている。
相棒の某くんと相談、明日以降に送る。
終日穴蔵。
雨は9時頃にやみ、曇天、夕刻には晴れてきた。
生産的なことは何もできず。
天気予報は信用しない方がいいようだ。
7月2日(火) 大阪→播州龍野
未明までの雨が朝にはやみ、曇天。
ちょっと迷ったが、播州龍野へ行くことにして、朝のラッシュの終わった時間に電車で移動する。
播州龍野は薄曇り……ほとんど晴である。
実家にて雑事あれやこれや。
雑草の処理はシルバーにお願いするとして、その他の屋外作業。
別荘の維持もたいへんである。
解体も視野にはあるのだが、大地震で大阪の集合住宅が倒壊した場合を想像すると、やはり避難場所は確保しておきたい。
夕刻、揖保川左岸を散歩。
数ヶ月前からの大工事は「災害復旧工事」であったらしく、ほぼ終わっている。
*
巨大な構造物はコンクリートブロックの基礎だったのか? まあ、2、3年すれば普通の護岸になるだろう。
久しぶりに播州龍野泊。
夜は、大阪から持参の総菜とこちらのスーパーで買ってきた串カツやサラダを並べて独酌。
鴨居から降り注ぐゲッツ師匠、モンク師匠を聴きつつ。
こちらにこもって原稿に専念するのも悪くない気がしてくる。
7月3日(水) 播州龍野→大阪
午前5時、播州龍野にて目覚める。
室温26℃で、窓を閉じていても涼しく、まだしばらく別荘使用はできそうだ。
曇天だが、九州は記録的大雨、近畿も午後には雨になりそうなので、早めに帰ることにする。
昼の姫新線で姫路に出る。
久しぶりに重ねせいろで冷酒一杯と駅前地下の「石挽蕎麦・御座候」へ行ったら、なんと6月で閉店である。
そこそこ流行っているようだったがなあ。
播州一、おれの評価では関西一であり、閉店する理由がさっぱりわからん。本店は営業しているらしいが、あちらはクルマでないと行けないからなあ。
しかたなく、別の愛好店・新生軒のラーメンを食す(ちなみに、もうひとつ愛好麺に「えきそば」があり、これだけは閉店の心配はない)。
新快速で帰阪。
お、夕刻から雨になった。明日大雨になるか……
7月4日(木) 穴蔵
未明に雨はやみ、早朝曇天、空はだんだん明るくなり、午後は晴れる。
気分は正反対。
気分よく目覚めたが、播州龍野からの連絡(昨日のうちに連絡くれればよかったのに)やら集合住宅の雑事(北消防署関係)やら、色々重なり、だんだん気が滅入ってくる。夜、気分は梅雨空のごとく。
寝る。
7月5日(金) SF検討会
曇天。風やや強く、涼しい一日である。
夕刻、かんべむさし氏来穴蔵。
久しぶりに定員2名内容非公開のSF検討会を開催する。
酎ハイ飲みつつあれやこれや。
非公開というより、話題があちこちに飛ぶから整理のしようがない。
翁豆腐の値段からシンギュラリティ、その間に「楡家の人びと」の一場面とか、大阪城の再建事情とか、デンデンとか、血圧とか、脈絡なしに拡大するから、ほとんど記憶に残らない。
覚えているのは×助の名言くらいか。「春日はカスガと読むから、春団治は××ダンジと読むのが正しい」。
気がつけば4時間以上経過していた。
気分よく就眠。
7月6日(土) 穴蔵
終日穴蔵にあり。
午後に晴れ間あり。運動不足なので近所を散歩。
淀川堤、新御堂の西、通行可能になったが、水管の陸部分は残ったまま。セブリはそのままである。
3ヶ月以内に一波乱あるのか。
こんなことし楽しみがない。
7月7日(日) シンギュラリティサロン
晴。涼しい一日である。梅雨はどうなった。
昼過ぎに出てグラフロへ。
ナレッジキャピタルでシンギュラリティサロン。
本日の講演者は甘利俊一氏(理化学研究所栄誉研究員 東京大学名誉教授)。
演題は「脳と人工知能:シンギュラリティは起こるのか?」。
正直なところ、この年になって甘利先生の話を直に聴けるとは思ってもいなかった。
*
甘利先生の立場は「シンギュラリティはないだろう、人工知能に『心』が生まれず、人間を支配することもあるまい」と明快である。
(以下、おれなりの荒っぽい要約なので、詳しくは、たぶん出るだろうセーラー服おじさんのレポートご参照を。)
甘利先生は「漫談ですが」と断った上で、まず、宇宙の開闢(138億年前)以来の「脳の進化」を話し、対比して、囲碁AIを例に、深層学習によるAIの急速な発展を解説され、その上で深層学習の問題点を指摘される。1000層もの解析が可能なのはすごいが、これは実験式による機械的操作の結果で、原理を発見していないからである。人の脳は長い進化の過程で先付け(予測/Prediction)と後付け(Postdiction)を獲得した。AIはPredictionのみで、予測は早く合理的だが、多くの情報を統合する機能がない。つまり「心」がない。
ここから脳の機能を解明するための「情報幾何学」の話になるが、なにが「漫談」だ、(わが耄碌アタマでは)だいたいのイメージは描けるが、数理的にはとてもついていけない。後日、解説書を読むことにする。
で、シンギュラリティである。AIが人類を超えるか、その前に人類は何をなすべきか。
日本は「超大国」よりも「文化国家」を目指すべき……これにはいたく共感を覚える。
質疑になると、これが生々しい話題となり、「中国が圧勝する」「韓国も○億○年の引き抜きを開始している」など、恐ろしい話になる。
日本が文化国家になりそこねた世界(大いにありそうな)を書くのも一興か。リアル過ぎてSFにはならんか。
7月8日(月) 穴蔵/ウロウロ
朝の通勤ラッシュが終わる頃の地下鉄で西長堀の中央図書館へ赴く。
8年ほど前の雑誌と週刊誌を数十冊、4回ほどに分けて出して貰う(いずれも書庫資料/禁貸出)。
ちょっと知りたいコラムがあって、色々調べたが、徒労に終わる。
こちらの記憶力も衰えているからなあ。
昼過ぎで断念、筒井康隆氏生誕地に参拝のあと、木津川沿いに歩いて大正へ。
おなじみ「いちゃりば」で沖縄そば定食を食して帰館する。
無為に過ごしたというか、普通の一日というか。
こんな日が続くのであろう。
7月9日(火) 大阪→播州龍野
朝の通勤ラッシュの終わる頃に播州龍野へ向かう。
天候不安定。晴れ間もあるが時々小雨。
タイムマシン格納庫チェックのあと、クルマで市内うろうろ。雑用多し。
最近、クルマを放棄しようか迷う。
月に2、3度しか乗らないし、維持費はそこそこかかるし、高齢ドライバーの事故は多いし。
しかし、自転車は恐ろしいし、歩行はさらに怖い。歩道が整備されているのは幹線道路だけで、安心できる自転車・歩行の道はほとんどない。
いったんクルマを使用すると、自転車と歩行の危険性が実感できるのである。被害者にも加害者にもなりたくない。
田舎に住まないのがいちばんか。
……などと愚考しつつ、夜は大阪から持ってきた総菜類を並べて独酌。
鴨居のスピーカーから降り注ぐデフランコ師匠、ハンク師匠を聴きつつ。
播州龍野の夜は更けゆく。
7月10日(水) 播州龍野→大阪
播州龍野にて、午前3時に目覚める。
静かで涼しく、机に向かうには絶好の環境である。
仕事が進むかどうかは別の話だが。
昼前にタイムマシン格納庫。
昼過ぎの姫新線で姫路、えきそばを食し、新快速で帰阪。
専属料理人が昼間、某デンタルクリニックで奥歯を抜いてきたとか。
で、夜は自分の都合に合わせて、柔らかいメニューが数点並ぶ。
ちょっと硬いのが枝豆だけ。
まずくはないのだが……播州龍野で独酌すればよかった。
7月11日(木) 穴蔵
梅雨である。朝5時30分から雨になり、断続的に降る。夜は強くなる。
終日穴蔵。
集合住宅関係の資料作成に昼間の数時間を要す。
夜は集合住宅の某委員会。またも気が滅入ってくる。
遅い時間に晩酌。
はやぶさ2の二度目のタッチダウン成功。これだけが唯一心安らぐニュースである。
寝る。
7月12日(金) 穴蔵
普通の曇天。終日穴蔵にあり。
午前は昨日の議事録、関連する資料づくり。数時間を要す。
午後は明日のための資料づくり。こちらは気分的に元気がでる。
午後は雲ひとつない晴天になった。
夕刻、近所を散歩。市営住宅のゴミ置き場横に、今年も赤い花が開花した。
*
モミジアオイだったな、確か。
野々村竜太郎の生家前にも花は咲くのであった。
もういいかなと思いつつ、つい口に出てしまう。竜太郎、ゆめもうひと花などとは……
7月13日(土) 創サポ・夏の創作講座
午後に出て地下鉄で谷四へ。
市民活動スクエアの大会議室で、創サポの夏の創作講座「やさしい小説の書き方」の第1回を担当する。
3回あり、第1回「空想を描くには」、第2回は蓮見恭子さんが「人と暮らしを描くには」、第3回は提出作品の講評である。
わが担当は「空想」である。
一応「はじめて小説を書こう」という方が対象だが、創サポ専科の生徒の方が多いような。
まず(SFを含む)小説の書き方を90分でというのには無理がある。
空想描写(と勝手に命名、要するに現実ばなれした舞台やキャラや行動や論理を描写するテクニック)に絞って話す。
例としてあげたのが、品位のある側で小川洋子、川上弘美、過激側でイーガン、円城塔、酉島伝法。この間に色々な作家の多くの作品がある。
(ちなみに、現実(体験)描写と空想描写の例として、川上宗薫と宇能鴻一郎を例として挙げたが、知る人はごく少数であった。)
空想を描写するのはSFやホラーに限らず、広く応用可能である……といった主旨で進めたが……ちょっとまとまりがなかったか。
へんな設定とかおかしなキャラクターの小説を書いてみたい方の参考になればうれしく、日常生活を描きたい方への刺激になれば、これも幸いである。
「空想」と「現実(人と暮らし)」は表裏一体というか、小説のなかに混在するので、申し訳ないが、収拾は次回の蓮見恭子さんにお願いすることに。
終わると小雨になっていて、帰館してからも降りつづき、晩酌時に雨脚が強くなった。
え、甲子園で野球やっとるのか?!
7月14日(日) 穴蔵
曇天。絵に描いたような梅雨空である。
終日穴蔵にあり。ボケーーーーーッと過ごす。
少しは本も読んでいるのだが。ま、そのエビデンスは明日からだ。
最近、何事をするのも面倒になってきた。
15時頃に眼下……野々村竜太郎の生家前に子供みこしがやってきた。
豊崎神社の夏祭りは今日であったか。雨が降らず、なによりであった。
おれは雨を願うほどひねくれてはいないのである。
*
休憩のあと、翁豆腐の前を通って4丁目方向へ去っていく。
竜太郎にもこんな少年時代があったのだなあ……
7月15日(月) 穴蔵
梅雨の中休みというか、薄曇、午後は晴れるが、出歩く気分にならず。
世間は3連休の最終日らしく、人出が多いに決まっている。
終日穴蔵。ボケーーーーッとQ状態で過ごす。
不調である。年齢のせいであろう。
時間感覚がだんだんおかしくなってくるし、空間(宇宙)感覚がさらにあやしい。
これは……そのうち整理したいが……ペンローズもホーキングも避けられなかった感覚ではないか。ホイル卿だけは別格だったが。
このことを書き出すと長くなるのでパス。
幾つかの対処療法(と信じるもの)はあり、そのひとつはウロウロしてあれやこれや好奇の目で見ることである。
で、夕刻、30分ほど近所を散歩。
参院選のポスター掲示板の「1」がほとんど空白だが、茶屋町のには貼ってあって「安楽死」とある。
政治・宗教・血液型については書かないことにしているので、妙に気になるということのみ。
歳だからなあ。
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