『マッドサイエンティストの手帳』884
●マッドサイエンティスト日記(2026年9月前半)
主な事件
・播州龍野いたりきたり
・上田早夕里『炎陽を撃て』(双葉社)
9月1日(火) 穴蔵
晴。雲あり時々陰る。
終日穴蔵。特に何もせず(できず)。不調……というより、落ちつかないのである。
明日、播州龍野行き。この1年ややこしかった諸々が片づきそうで、その準備作業色々。あと1日(であってほしい)。
・秋山豊寛氏の訃報。8月26日、84歳。
1990年12月にソユーズで「ミール」へ行かれたが、帰還後(アメリカの宇宙飛行士の多くと同様)エコロジーの方向に舵を切られたようである。
2000年代には日生の酒場「はましん」に時々顔を出されていた。
この店で、眉村さんと3人で飲みながら話を伺いたかったなあ。かなわぬ夢である。
9月2日(水) 大阪←→播州龍野
早朝の電車で播州龍野へ移動する。
忙しい日である。
・9時前にタイムマシン格納庫に着き、雑件処理。室温40℃を超えたので40分ほどで終る。
・実家に行き、こちらでも片づけ作業。ただし屋内のみ。
・昼前に芦屋から身内が到着、駅まで迎えに行き、スーパーの花売り場に寄ってから墓地に向かう。
前回は掃除だけだったので、本日は遅い盆か早い彼岸かわからんけど、一応墓参。
・午後、某工務店へいっしょに行き、昨年末からゴタゴタしていた案件の仮契約。
やっと「負の遺産」にならずに済みそうな。10ヶ月ほどかかったが、それでも筆界特定までやらずに済んだのだから、まだましと慰められる。
・あと、身内と金融機関に回り諸々の処理。15時前でギリギリである。
・その後、やっと実家に戻り、今後のことなど相談。
この実家、(二地域居住は無理としても)われわれの代では解体しない(できない)ということで意見が一致。
ここで生まれ育った「身内」が皆元気で、あと20年はそう変わるまい。
負の遺産にならぬ形で「次世代」に引き渡すしかあるまい。
庭は雑草ぼうぼうだが、本日の庭仕事はもう無理。
また来月にでも合宿をやることにするか。
夕刻の電車で帰阪。ともかく疲れた。一杯飲んで早寝。
9月3日(木) 徘徊域の変貌
・集合住宅の掲示に「市営住宅解体撤去工事」の説明書が貼り出された。
隣接する「市営廃墟」がいよいよ解体される。4年ほど前に住民が7丁目に引っ越し、以後フェンスで囲われたままだった。
その頃にトラ猫4匹が生まれ、広大なノラの楽園として使われてきた。
ネコたちの住処はどうなるのか。いずれにしても、60年数年ぶりに、大きく変貌することになる。
・午前、兵庫県へ越境する。阪神尼崎へ。
播州龍野の関係でB信金を使わねばならず、兵庫県内のいちばん近い支店がここにあるため。
手続きは5分で終る。これから実家近くの景観が(たぶん)3,4百年ぶりに変わることになるなあ。
久しぶりに尼崎中央商店街(マジック点灯でバカ騒ぎしているはず)を歩きたかったが、本日はパス。
・野田阪神まで戻り、地下鉄千日前線で西長堀へ。
中央図書館は休館日であった。借りていた区分所有法の本を返却のスロットに差し込む。
・あと、微雨?(傘さしてる人は半分らい)なので、木津川方向へ歩く。
いつもなら大正方向だが、本日は千代崎橋からまっすぐ九条方向へ。
鰻が食べたくなり「まつじゅう」へ行ったら閉店の貼紙。140年の歴史に幕である。
なんと斜め向かいの「吉林菜館」も閉店している。
九条商店街を抜けて、地下鉄九条南側の立ち食いうどん大和庵へ行ったら、ここも閉店!?
外観は変わらないが店名が「壺中天」に変わっている。最古の立ち食いうどん店も店主交替か。
せっかくだから、ここで昼食。味はそう変わらないようであった。
・九条から地下鉄で堺筋本町、乗り換えて扇町へ。
北区役所に寄ったあと、中崎町商店街の入口まで。
青空書房の跡は司研堂の倉庫?になって、もう面影もなし。
東側の中恒ビルがテナントビルになり、電動モビリティの店が入っている。
中恒さんは古い機械部品商社で、半世紀以上のつき合いだった。何よりも三ツ星ベルトのカレンダーがいただけるのが嬉しかった。
ビル名は中恒ビルだから、機械部品の扱いは静かに閉じられたということであろう。これも時代である。
中崎商店街を西へ。旧青空書房の向かい側、信州そばに貼紙。
ここも閉店かと思ったら、店主夫人の療養のため1ヶ月ほど休業ということであった。ほっ。
どこもかしこも大きな変貌期にあるようだが、味覚だけは変わらぬまま残ってほしいものである。
本日は久しぶりに1万歩超え。
9月4日(金) 穴蔵
小雨が降りつづく。
終日穴蔵。
この2日間の反動か、これといったこと出来ぬまま、ベッドで本を拾い読みして過ごす。
たちまち夕刻。
専任料理人が数皿並べた。
余は昔(独身時代)から、夏場は、枝豆とヤッコ、あと1品で十分であった。本日のメニューくらいがいちばんよろしい。
これにクレッセントパンを加えて、ビール、ワインを少しばかり。
早寝させていただく。
9月5日(土) 穴蔵
晴。夏日というより秋晴れである。
昼、液体重量物の運搬役として食品スーパーを往復。
それ以外は終日穴蔵。
集合住宅の管理規約の改訂作業を進める。
細かい条文の変更が面倒で、ChatGPTに令和7年改正の区分所有法に従っての書き直しを命じてみたら、あっという間に出来上がった。
細部のチェックは必要だが、数バージョン試作して理事会にあげれば、わが作業は終了となりそうだ。
生成AI恐るべし。定型的な文章は楽勝。司法書士や行政書士の失業は必至だな。
9月6日(日) 穴蔵
曇。涼しく、先日からエアコン(冷房)不要の日がつづく。
終日穴蔵。書籍の整理(例によってあまり進まない)をして過ごす。
本巣市のケーキ店で放火殺人事件(詳細はまだ不明)。
岐阜県本巣郡はいつの間にか本巣市に出世していたのだ。
半世紀近く前、本巣の工場で泊まり込みで仕事していた時、少し北にある根尾谷断層を見物に行ったことを思い出す。
その関連で、地学ガイドとか山地形成論の本を拾い読みしはじめたらとまらず、気がつけば夕刻であった。
ややこしい事件を起こしてくれるぜ。
9月7日(月) 穴蔵
定刻4時に目が覚める。
こちら大阪は曇空で静かだが、東海から関東にかけて大雨の予報。
新島村に「レベル5土砂災害特別警報」が出ている。
「命に係わる危険」「今から避難所に向かうのはやめて」「すでに災害発生の可能性あり」……もう手遅れということか。
大雨も大変だが、本巣市のケーキ店放火殺人事件が気になる。
終日穴蔵。
地質学関係の書籍を読みつつ、時々ニュースを見ながら過ごすが、一向に進展しない。
どうやら……
・8月5日夜、本巣のケーキ店「さんらいず」で閉店後、中学時代の同級生10人(65〜66歳)が集まっていた。
・そこに「招かれていない」葬儀会社経営・林寛至(70)が入ってきた。
・林は男性の腹部を刺し、ガソリンをまいて放火した。通報あり消防車が駆けつけた。
・男性は失血死。女性ひとりが一酸化炭素中毒死。あとの8人は屋根などに逃げ、救助された。
・林は半裸で駐車場のクルマまで逃げたが(ヤケドで?)その後死亡。
・動機不明。聞き取り調査が進まないのだろう。誰に何の恨みがあったのか。
事件発生から2日経過して、報道からわかるのはこの程度。
この地はかつて濃尾地震に襲われている。尾根谷断層はその名残りだ。
135年経過して、大地震で生じた歪みが「世代間の歪み」として発現したのか……その程度のことしか想像できない。
9月8日(火) 穴蔵
午前2時半に目覚めてしまい、テレビでNHK『 運転席からの風景』を眺める。小湊線、長良川鉄道、予讃線、肥薩線、宗谷本線が出てくる。
「ケーキ店放火殺人」のあった本巣市を通る樽見鉄道もロケしてほしいものだ。
9時頃から雨になり、小雨が降り続く。
終日穴蔵。
本の整理をしつつ、やっぱり拾い読みしてしまう、相変わらずのパターン。
しかし、地質学関係の10冊ほどはこの機会に「片づける」ことにした。
たちまち夕刻。
5皿ばかり並べてもらって、一杯飲んで早寝。
上田早夕里『炎陽を撃て』(双葉社)
『破滅の王』(2017)で戦争末期の上海を舞台に「幻の細菌兵器」を巡る戦闘を描き(直木賞候補作)、
『ヘーゼルの密書』(2021)で幻の日中和平交渉を描き、
『上海灯蛾』(2023)では戦時の上海からインドシナ半島までを舞台に、関東軍と青幇の暗闘に巻き込まれるサスペンスを描いく(日本歴史時代作家協会賞)、
……とつづいた上田早夕里さんの戦時上海を舞台にした三部作。
『炎陽を撃て』は、それにつづく近現代史小説と位置づけていいのかな。時代は「戦後」である。
戦争は終わった……はずだった。1947年夏、中国山西省の捕虜収容所に収容されていた加藤は、ある日、背広姿で独房に訪ねてきた日本人から、奇妙な「任務」を持ちかけられる。
秘密部隊を結成して、チベットで姿を消したアメリカ人学者を探し出す、その副隊長になれという。この前まで敵だった中国国民軍と協力してチベットへ向かうという。半ば脅されつつも、加藤は部下全員を解放して帰国させることと引き換えに任務を引き受ける。
秘密部隊は狙撃手や軍医を含めてクセのある隊員8名。共闘する国民軍はいつ裏切るかわからない。絶えず襲ってくる共産党軍の弾避けなのかもしれない。学者の持つ「重大な秘密」を守るためにアメリカ軍も動き出している。成都からラサ、そしてネパールに至る途中には山賊も待ち受けている。周囲はすべて「敵」なのである。
いや、秘密部隊内部も信用できない男ばかり。そもそもこのプロジェクトには裏で日本人「政商」がからんでいるらしい。
疑惑に満ちたチベットへの危険な旅が描かれるが、いったい何人が生き残れるのか……。
風景描写、戦闘描写も凄いが、上田作品らしく、登場人物のそれぞれが語る「戦争に関わった理念」が対等に描写される。裏切りが「正当」にも読める(読まされる)。手に汗握る……というよりも、息が詰まりそうな展開である。
上田さんの代表作のひとつとなる秀作。個人的には半年後を期待したい。
ついでながら、先日からネパールの土石流報道を見ていて、(作中のコースはもっと東だが)描写の迫真性に驚かされたことも付記しておきたい。
9月9日(水) 穴蔵
早朝曇、9時過ぎから雨になり夕刻まで小雨、あとは曇天。泉南から東北方向にかけては大雨だったらしい。
終日穴蔵。
本の整理、ダンボール詰めの作業で過ごす。
播州龍野の実家へ送る分、6箱。しばらく廊下に積んでおくしかない。
許永中や大林雅美など、ややこしい人物関係はすべて「処分」することにする。もう書くことはあるまい。
10数キロのダンボールを持ち上げるのは腰にこたえるなあ。
床に積み上げていた本の半分くらいが片づいた。
たちまち夕刻。
専任料理人がグラタンや南仏風サラダ(何が南仏なのかよくわからんが)などを並べた。
これでビール、ワインを少しばかり。
早寝させていただく。
9月10日(木) 穴蔵
久しぶりに晴。直射光が入るが涼しく、エアコン不要。秋日和なり。
終日穴蔵。CDの整理で1日が過ぎる。
中道が解体?とかのニュース。まだあったのか。
(つづく)
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