『マッドサイエンティストの手帳』618

●マッドサイエンティスト日記(2015年12月前半)


主な事件
 ・播州龍野いたりきたり
 ・ライブ@マホガニーホール(6日)
 ・忘年会的SF検討会(11日)
 ・創サポ講義(12日)
 ・大阪ジャズ同好会(13日)
 ・青空書房(15日)


12月1日(火) 穴蔵/マーガレット
 インディアンサマーである。
 朝、洗濯をする。
 あとはボケーーーーッと「タドコロ状態」で過ごす。
 夕刻、ぶらぶら歩いて天六へ。
 マーガレットへ行き、てっちゃんやポテサラでハートランドを飲む。
 ジョージ・ルイスの1966年録音の小編成バンド(おそらくプレザベーション・ホール録音)を聴きつつ。
 ジワが来る名演。最晩年の演奏だが、おれより若いんだからなあ。
 夜道を歩いて帰館。

12月2日(水) 大阪←→播州龍野
 早朝の電車で播州龍野へ移動する。
 寒っ。キンタマが波動関数の収縮を起こしかける。パッチをはいてくればよかった。
 午前9時の実家書斎、7℃である。しかしまあ普通の12月の気温であろうか。真冬は5℃以下になるのだから。
 雑事色々。
 昼前から急速に暖かくなってきた。キンタマは蒸れんけどね。
 年内の雑務、庭木の剪定だけが残る。シルバー人材センターの作業は来週になりそうな。
 夕刻に近い午後の姫新線に乗り帰阪する。
 大阪駅のイカリでオードブルなど買い、豊崎西公園南側の中本酒店で格安バカウマワインを買って帰館。
 熱いシャワーでキンタマをほぐした後、ダラダラと独酌。井上淑彦(本年度の追悼である)参加の森山カルテットを聴きつつ。
 いいなあ、独居老人生活。

12月3日(木) 穴蔵
 雨である。
 終日穴蔵。ボケーーーーッと「タドコロ状態」で過ごす。
 原典「ダドコロ」と違うのは、本を2冊読んでいることくらいか。
 たちまち夕刻。
 コンビニメニューでビール、湯割り。
 ニュース雑感。
・相生赤穂の「かき祭」今年は中止という。広島の稚貝不作の影響という。播磨灘の牡蠣はオリジナルではなかったのか。おれは切実に牡蠣を欲するわけではないので、今冬は牡蠣抜きで過ごすことにする。
・はやぶさ2のスイングバイ、どうやら正常に進行したような。あと数年の楽しみが続く。生きてなければ。
・菅の安倍提訴(名誉毀損)を東京地裁が請求棄却。福島原発の海水注入について「菅元首相には、東電に海水注入を中断させかねない振る舞いがあった」と認定した。菅は控訴するとか。……おい、欲ぼけチンカス三百代言の五十嵐敬喜、菅の弁護しないで逃げたか。テレビで「(菅が)東京を破滅から救った」と発言したのはお前だろうが。金にならんと見るや、さっさと逃げ出す。人間のクズだな、五十嵐敬喜はよ。
 早寝する。

12月4日(金) 穴蔵
 わ、寒いのであった。
 布団から出るのがつらい。が、ともかく午前5時に起きて、ゴミ出しに出ようとしたら、玄関扉が風で押し戻される。
 北風が強いのである。駐車場のバイクが倒されている。
 ということで、外出する気分にならず、終日穴蔵。
 少しは仕事をと思いつつ「タドコロ状態」になってしまった。
 いかんなあ。
 夕刻、至近のコンビニ往復。
 パスタその他を買ってきて、中本酒店ワインで晩酌……うーん、ワインはいいのだが、イタリアン系は専属料理人のでないとだめである。
 シンプルなバジリコのパスタとかパエリアとかブイヤベースで一杯やりたい。が、弱音は吐くまい。

12月5日(土) 穴蔵/湾岸区
 晴れて風なし。
 朝から洗濯をするのであった。
 雑事色々。
 運動不足なので、出かけることにする。
 西長堀の中央図書館へ。2時間ほどあれこれ調べる。
 湾岸区を歩きたくなり、新なにわ筋を南へ歩き、汐見橋から高野線、津守で降りる。
 西成公園を抜けて木津川沿いの道に出る。
 このあたり、寂れた工場地帯を期待してたのだが、もっと南の方が面白いのかも。
 落合上渡船場へ。
  *
 大正区へ渡りつつ、木津川水門を眺める。
 緑色のアーチはいまひとつ。尻無川の方がいいな。
 大正区に入り、千島公園へ。昭和山に登る。人はほとんどいない。
  *
 当然ながら天保山より高い。標高33メートルで大阪では(鶴見緑地に抜かれて)2番目である。特に感激はなし。
 きれいに整備された公園はおれの趣味ではない。
 西側に降りて、路地裏の「よしや」にて沖縄そば定食。うまっ。
 バスでなんばに出て、地下鉄で15時前に帰館。
 あとは穴蔵にて本を読んで過ごす。
 『モナドの領域』にとりかかる。
 緊張の一夜。

12月6日(日) ライブ@マホガニーホール
 日曜日なのであった。仕事はしないことにする。
 穴蔵にてボケーーーッと過ごす。
 昼過ぎに出て心斎橋・マホガニーホールへ。
 ジェフ・ブルが来日しているので、ODJCの内輪のライブ。
  *
 ラスカルズ・メンバーに加藤平祐さんも参加。ビール飲みつつ午後のライブを楽しむ。
 しかし、演奏者も客席も高齢化してきたなあ。おれが前列の席に座りたくないのは見ての通り。
 夕刻帰館。
 専属料理人が約3週間ぶりに帰ってきた。
 ということで、夜は、しらすおろし、黒はん+わさび漬け、なんとかの白身刺身などの静岡メニューでビール、湯割り。
 早寝するのである。

12月7日(月) 穴蔵/ああ「あかつき」
 終日穴蔵。
 資料を読んで過ごす。
 10時前、「あかつき」の金星軌道へ再投入……5年前に終わったものと思っていたが。ちょうど5年ぶり、どうやら成功らしい。母の死の2週間前だ。海老蔵の「顔面崩壊」から5年になるのか。この間、ずいぶん色々なことがあったような。
 「はやぶさ」にしろ「あかつき」にしろ、色々と興奮させてくれる。生きてなきゃいかんなあ。
 夜は静岡メニュー・イタリアン系。
 豚のなんたら、ほうれん草のかんたら、あと、しらすパスタ。
  *
 豊崎西公園南側の中本酒店推奨の格安バカうまワインを少しばかり。うまっ。
 夜のニュース。
 オリックスが球団設備・球場を2017に神戸から此花区(舞洲)へ移すという。「皆勤の徒」のご近所とは面白くなるではないか。

『続 次の本へ』(苦楽堂)
 一冊の本に出会った時、次に何を読むか。
 自分の10代を思い出すと、小説の場合、同じ作者の別作品を読むパターンがいちばん多い。科学解説書から科学者の評伝へというのも多かった。巻末の参考文献をたどることも多い。
 『続 次の本へ』は「2冊目の本にどうつながったか」をいろいろな人が体験的に書いたユニークな読書ガイドである。
 
 発行は神戸の出版社苦楽堂。たぶん本日あたりから発売。
 最初の『次の本へ』も面白かったが、今回も多彩。
 冒頭の天野雅之氏の本つながりは木下是雄『理科系の作文技術』→山口瞳『血涙十番勝負』。
 『理科系の作文技術』は(理系に限らぬ)文章読本の名著で、おれは『知的生産の技術』と書架に並べている。山口瞳もよく読んでいるが、この2冊がどうつながるのか……読んでみて、なるほどねえと感心する。
 その他、多彩なパターンが出てくる。一気読みでなく、3、4篇ずつ読み進めると楽しめる。
 ちなみに、やつがれも寄稿しております。

12月8日(火) 大阪←→播州龍野
 早朝の電車で播州龍野へ移動する。
 快晴で寒く、姫路駅ホームで姫新線を待つ間、キンタマが波動関数の収縮を起こしかける。
 午前9時前に実家に到着、シルバー諸氏はすでに庭木の剪定作業を始めている(昨日から作業開始)。
 ここ数年、松の木だけ剪定してたのが、木犀や梅や名も知らぬ雑木も枝が伸びすぎ。この際バッサリやってもらうことにする。
 タイムマシン格納庫で雑事片づけ。
 金融機関うろうろ。
 あわただしいのである。
 昼、「よこた」で日替定食の後、龍野公園へ行ってみる。
  *  *
 山の東斜面にある聚遠亭は、もう夕暮れの雰囲気。モミジは全体に色あせているが、局所的に鮮やかな紅葉もあり。
 庭木剪定は午後3時過ぎに終わる。
 シルバー諸君、がんばってくれるなあ。年内スケジュールぎっしりだとか。結構なことではないか。
 明日までかかると予想して一泊のつもりで来たが、夜は寒くなりそうで、夕刻の電車で帰阪する。
 三宮あたりで真っ暗になる。
 ルミナリエの見物客へのアナウンスがうるさいが、電車からは見えぬ。

12月9日(水) 穴蔵
 晴れて風静なり。終日穴蔵。無事。

12月10日(木) 穴蔵/『エロ事師たち』
 陰。午後細雨。穴蔵を出でず、届きし某講座の生徒作品を読む。
 荷風のおっさん生活になってきた。
 ちがうのは専属料理人がいるから、大黒屋へカツ丼食べに行く必要がないことであろうか。
 おれの方が晩年の荷風より運動不足のような。
 ということで、夜は専属料理人が並べてくれたあんかけ豆腐、ひじきなどでビール。
  *
 レンコンはさみ揚げとサラダのプレートで、豊崎西公園南側の中本酒店推奨の格安バカうまワインを少しばかり。
 テレビニュースで野坂昭如氏の訃報。85歳。昨日、心不全で死去。
 作家としての経歴の紹介が『火垂るの墓』で直木賞受賞ばっかり。デビュー作にして最高傑作の『エロ事師たち』にまったく触れられないのはどういうことか。
 おれはここに書いてるけど『エロ事師たち』を初版で買って読んでいる。以後『好色の魂』『骨餓身峠死人葛』『てろてろ』など、70年代半ばまでの小説はほとんど読んでいるが、やはり『エロ事師たち』がずば抜けた傑作と思う。

12月11日(金) 穴蔵/忘年会的SF検討会
 夜来の雨強く、雨音で眠り浅し。
 定刻午前4時に目覚めはするが、起きて机に向かう気にもならず、午前7時頃まで布団で雑読。
 小雨になるが、出歩く気分にならず、穴蔵にて「タドコロ状態」で過ごす。
 夕刻、かんべむさし氏来穴蔵。
 本年度最後、忘年会を兼ねた定員2名内容非公開のSF検討会を開催する。
 専属料理人に簡単なつまみを用意させて、ビール→むさしくん持参の新潟吟醸酒→黒糖焼酎湯割りと進行しつつ、激論にはならず、ごく冷静に諸々のアホ状況を分析する。
 たちまち3時間。
 年末にふさわしい議論であった。昔なら明け方まで続けたものだが。
 ささっと片づけ、本を読みつつ早寝するのである。

12月12日(土) 穴蔵/創サポ講義
 終日穴蔵。少しは仕事もするのであった、いと少なしを。
 夕刻這い出て、地下鉄で天満橋へ。
 午後5時半の八軒家浜、もう真っ暗である。冬至まであと10日。
 18時から創作サポートセンター(専科)の講義。
 提出作品2篇を中心に。
・妻に先立たれ、大手銀行支店長の椅子を捨てて退職した50代後半の男。田舎に広大な山茶花の垣根で囲まれた邸宅を買って逼塞し、時々ローカル線で岐阜に出て、路地裏の小さな飲み屋に顔を出す。若い女がひとりでやってる「昭和の空気」が濃厚な不思議な店である。店の女は「山茶花の家」を見たいといいだすのだが……。雨月物語を現代に移した雰囲気の短編、と思ったら、作者は「鉄道員」に代表される浅田次郎作品を意識したという。モデルにしたらしい岐阜県揖斐郡は、樽見線「本巣」に工場があった関係で、土地の雰囲気はある程度知っているが、舞台設定はなかなかいい。元銀行員という設定が(じつは銀行員というのは退職しても言動に独特のクセがあるのだが)うまく生かされておらず、銀行員に限らず、色々な「職業」が作り出す人間の行動パターンの話がメインになる。おれが参考にしている「虎の巻」も公開。
・SF長編。内容は(今後のこともあるので)詳しくは紹介しないが、あるSFコンテストに、半世紀前に応募されたはずの作品が複数、手書き原稿で送られてくる。そこから編集部や選考委員の周辺に不思議な現象が多発する。侵略SF、タイムパラドックス、架空SF史が混然となった長編。これは読者を選ぶ作品で、SF大会のディーラーズルームに並べれば受けることは間違いないが……。ここでは実在の人物を登場させる時の注意点が議論になる。おれもひとつ素材を持っているのだが、構成のヒントが得られた。
 20時過ぎまで。
 まっすぐ帰館。
 21時過ぎからの晩酌となる。

12月13日(日) 大阪ジャズ同好会/事始め
 昼過ぎに出て、片町線・放出へ。
 午後、ディア・ロードで大阪ジャズ同好会の例会。
・Fさんによる「ジャズ専門でない日本人の歌ったジャズソング」特集。
 1953年の美空ひばり「上海」から水前寺清子「Come On My House」まで15曲ほど。カツシンが抜群であるなあ。
・同じくFさんによる新譜紹介。
・持ち寄りのテーマは「テナーサックス」
 ロリンズ、トレーンがゼロなのは、さすがというか寂しいというか。
 コールマン・ホーキンス、レスター・ヤングからゲッツ、ジョー・ヘンダーソン、ジョニー・グリフィンと渋いところが揃う。マイケル・ブレッカーもあれば、ハンク・クロフォードあり、サム・テイラーの本格ジャズも。
 おれは今年3月に亡くなった井上叔彦さん(ラブリーでの「グッドバイ」)……最後にかけてもらった。
 片町線で北新地へ。午後6時頃、地下街を抜けて帰る。
 梅田はえらい人出である。
  *
 茶屋町界隈にもイルミネーションが増え、先日貨物駅跡にあった雪だるまがアプローズ前に来ている。
 「ジングルベルの憂愁」を覚える季節になったのだなあ。
 専属料理人に色々並べて貰って晩酌。
 夜のニュース。
 そうか、今日は事始めだったのだ。
 米朝一門の事始めはなくなったようだが、山口組が「六代目」系と「神戸」系、それぞれ開催している。
 誰がどっちに出席したのか、アサ芸、大衆、実話の速報が待たれる。

12月14日(月) 穴蔵/ウロウロ
 ほぼ終日穴蔵。
 午後、徒歩7分の阪急インターナショナルに出かける。
 KさんというかYっちゃんというか、要するに某氏と喫茶コーナーにて1時間ほど密談。
 SF関係で、半世紀前の珍しい資料が発掘されたということで、コピーをもらい、色々と鑑定する。
 よくこんな資料が残っていたものだ。
 うまくいけば来年には公開されることになりそうな。
 帰路、豊崎西公園南側の中本酒店に寄ったら、親っさん(現大将の親父/もう80歳を過ぎているが、英語ペラペラ、ふだん英字新聞を読んではる不思議な人である)が、「センセ、これ一度飲んでみてくんなはれ、わし惚れ込んでますねん」と白ワインを薦めてくれる。
 親っさんがいうなら間違いあるまい。
 ということで、ワイン持って帰館、急冷。
 夜は専属料理人に白に合うオードブルを作ってもらって一献。
  *
 専属料理人「これ普通のカリフォルニア・ワインよ」という。ただし「白は冷やせば高価なのもそう変わらないけど」
 うーん。そういうものか。
 まあ、結構いけるではないか。儲けようと思って440円のワインを推薦するはずもなし。
 良心の店・中本酒店に栄光あれ。

12月15日(火) 穴蔵/青空書房/すぐき/『人類学入門』
 平穏な日である。
 昼前に歩いて天五の青空書房へ。
 京都からSF友のYさん…などと伏せることもないか…山本孝一さんが来て、年末の恒例行事。特製のスグキをいただく。
 年の瀬を実感するなあ。
 坂本健一さんとしばし雑談。これも去年と同じである。
 坂本さんは92歳。ちょっと耳が遠くなりはったかな。
 あと「つる家」でビール。今年は焼きそばも食した。
 ぶらぶら歩いて帰館。
 夜はスグキで中本酒店推奨・安い割にうまい「吉乃川」をきりっと冷やして一献。たまらんなあ。
 野坂昭如追悼。
 ほぼ半世紀ぶりにDVDで『人類学入門』を見る。
 やはり『火垂るの墓』よりこちらである。散髪屋の騒動で客が「明治時代みたいな」頭にされてしまうあたりなど爆笑もの。原作「エロ事師たち」とは別の結末だが、これもいい。音楽は黛敏郎だったのか。


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