『マッドサイエンティストの手帳』562
●マッドサイエンティスト日記(2013年9月前半)
主な事件
・ニューオリンズ・レッドビーンズ(1日)
・金子隆一氏の訃報(2日)
・創元系@マーガレット(7日)
・建造物侵入(9日)
・イプシロン打ち上げ(14日)
・創サポ講義(14日)
9月1日(日) レッドビーンズ@アゼリア
わ、夜更かししたら、午前6時まで寝てしまった。
涼しかったせいもあり。
本日も曇天、やがて小雨となり、昼前にとつぜん激しい雷雨となる。
「九月の雨」なんてものじゃない、ドシャ降り、近くに落雷もあったような。
ドチャ・オリバー「雷鳴と雨のもとに」……ちょっとちがうか。
20分ほどでやんだので出かける。
阪急で石橋、アゼリアホールへ。
ニューオリンズ・レッドビーンズが年2回ほどやってきたトラッド・ジャズを聴く会(LBRB)の20回記念ライブである。
池田文化会館のイベントスペースで……おお、なんとロビーには飲み物(普通の飲み物から、ビール、酒、ウィスキー、バーボンなども。缶ビールのみ「できれば200円寄付」)も用意されている。
ちょっと迷うが烏龍茶をいただく。
*
200人くらい。満員の盛況。
司会はクリス、本日、バンジョーは白木くんである。
賛美歌、ブルース、小唄、マーチなどおなじみの曲。2ステージ。
最後は「アラビアの酋長」で、池本さんのヴォーカルに「パンツはいてねえぞ!」と合いの手入れたら、周囲から奇異の目。別に酔っぱらってたわけではないのだが。上品なファンが多いのである。
夕刻帰館。
明日某検査があるので夕食は粗食。
昼間の口直しでと雰囲気を変えて、シアリングの「九月の雨」を聴きつつ。
早寝するのである。
9月2日(月) 金子隆一氏の訃報
朝、近所のY医院へ定期検診に行く。
ありがたくも、諸数値はすべてが正常域にあり。
ならば、やる気満々、仕事バリバリかというと、そんな気分にもならず。どこか悪いのか。アタマか……あ、そう。
勘定合って銭足らずとはこういう気分をいうのか。ちょっとちがうか。
なんとなく憂鬱な気分でいたところに訃報。
(書くべきかどうか、ちょっと迷ったが、SF関係では大きな事件だし、一夜明けたらあちこちに記事が見当たるから、ここでも弔意表明させていただきます)
午前、金子隆一さんが亡くなられたという知らせを受ける。8月31日未明に脳出血で。
ずっと前から糖尿で体調が悪いことは知っていたが……倉田正也さんと同じパターンではないか。
葬儀は故人の遺志により身内で行われたという。
金子さんは、サイエンス・ライター、科学ジャーナリストだが、おれはもう少し狭義に「SF科学研究家」と思ってきた。
出発点はSFファンであり、ハードSFの熱烈な支持者だった。
『スペース・ツアー』(講談社現代新書)、『ファースト・コンタクト』(文春新書)など、むろん科学解説書であるとともに、センス・オブ・ワンターに満ちたSF科学の紹介でもある。
そういえばコンタクト・ジャパンの支援者でもあった。
アニメの監修や科学考証も多い。
が、金子さんの代名詞といえば、軌道エレベーターと恐竜だろう。
石原藤夫氏との共著『軌道エレベーター −宇宙へ架ける橋−』(裳華房)はわが国での代表的解説書で、つい先月も短い作品のために読み返したばかり。地球との「連結」にちょっとしたアイデアを思いついて、先行例がないか問い合わせてみようかなと思ったところだった。金子さんは宇宙エレベーター協会の名誉会員でもある。
そして恐竜ブームでは中心的存在だった。
金子さんのカバー領域は広く、代表作はやはり『新世紀 未来科学』(八幡書店)であろう。
日本のハードSFは金子さんにずいぶん助けられてきた。頼もしい支援者をとつぜん喪ってしまった気分だ。
文庫解説や科学誌の記事(たとえば『タウ・ゼロ』巻末の解説が代表例だが)に、独立したSF科学記事として重要なものが多い。折を見て読み返していこうと思うが、何らかのかたちでまとめられないものだろうか。
それにしても金子さんはおれより一回りも若い。
若いSF関係者が亡くなるのはつらい……こんなセリフは10年ほど前から大先輩の発言として聞くことが増えたが、それが実感としてわかるところまで来てしまったということか。
9月3日(火) 穴蔵/ああ貨物駅(3)
あまり眠れず、午前3時に目が覚め、そのまま起床。
午前中、マジメに机に向かう。
曇天にして涼。
13時に激しい降雨あり。相変わらずの不安定さだが、先週までつづいた日照りより快適ではないか。
テレビのアナも専属料理人もエレベーターで会う住人も、一様に「よく降る」と愚痴をこぼすが、あんたら先週まで何ゆうてはりましたんや、ったく。
「雨乞い源兵衛」を聴けといいたくなる。
雨が上がったので散歩に出る。
ヨドバシでサプライ品購入、ついでにステーションシティ「風の広場」へ上る。
風の広場は風であった。
積乱雲が見たかったが、残念ながら普通の曇天。
*
ああ、貨物駅の大カマボコ屋根は完全に取り壊された。
1ヶ月ちょっとの作業である。北側のレールも撤去されていくようだ。
「溺れた巨人」を眺める心境である。
9月4日(水) 穴蔵/西長堀
前線停滞で天候不安定。各地で大雨や増水、竜巻のニュース。
やたら警報が出たり解除になったり。
涼しくなり、穴蔵は快適である。
7月末にスマホ用のBluetoothキーボードを買ったのだが、これに合うケースが百均に見当たらない。
で、専属料理人が布製のを作ってくれた。料理以外のこともできるのである。
*
これをカバンに入れておけば、ノートPCをある程度カバーできる。
出張はめったになくなったから、播州龍野滞在かちょっとした旅行時に便利。いちばん役に立つのは入院時だろうが、そのためにわざわざ入院するのもなあ。
さっそく使いたくなって、資料返却もあり、西長堀の中央図書館へ行く。
数冊広げてメモ取りを少し。
うーん、本をしばらく読むと画面が落ちるし、効率はいまひとつだな。
周囲の人への自慢になる……くらいかな。
午後帰館。
14時半頃、えげつない土砂降り。
地下鉄の駅から100メートルほど歩くだけで、膝から下がずぶ濡れになる。
靴を干して手入れするいい機会になった……と、あくまでも天気の愚痴はいわないのである。
9月5日(木) 穴蔵
ろくに新聞を読まないものだから、フレデレック・ポールの訃報を喜多哲士さんのブログで知った。2013年9月2日死去、93歳。
フレデレック・ポールは1970年の国際SFシンポジウムで来日、ほんの一言ご挨拶した。
その時は『宇宙商人』の作者という認識だった。ポールの凄さはその後にある。
『マンプラス』(この男根切断シーンには衝撃を受けた)は還暦近くなって書かれ、『ゲートウェイ』シリーズは60代に、『最終定理』は(具体的な執筆作業はさておき)は90歳近い時であった。
アシモフと同じく10代から活動しているから、長いSF人生だ。見習いたい作家のひとりである。
晴れたり曇ったりだが涼。
午前中は穴蔵にて静かに仕事……のつもりが、11時、とつぜんスマホがけたたましくも「緊急速報メール」、びっくりするがな。
「大阪880万人訓練」なんとかの信号らしい。
おれは色々調べて、緊急時は避難しないのがましという結論を出している。スマホの設定を調べて緊急速報の受信を解除する。
仕事中断、あとは気乗りしなくなってしまった。迷惑なことである。
播州龍野のタイムマシン格納庫、激しい雨でちょっと被害が出ているらしい。
相棒の某くん、某工務店などと連絡あれこれ。
慌てて行くほどのことではないような。
9月6日(金) 穴蔵
終日穴蔵。
朝4時から、机(パソコン)2時間、寝転がって読書1時間、うたた寝1時間、途中で食事の繰り返しで4サイクルほど過ごしたら、たちまち深夜近くになった。
以前から断続的に進めてきた「幻のハードSF作家」に関する書誌的研究が完成に近づいた。
CDかDVDで電子書籍風にするか、少し方式を調べてみることにしよう。
9月7日(土) 穴蔵/マーガレット
穴蔵にて終日マジメに机に向かう。
先日来の資料の構成を色々と試みるが、今ひとついい方式がない。
限られた「学会」での資料だから、PDFファイルを並べてインデックスをつけるかたちでいいか。
ともかく散逸しないことが大事なのである。
夕刻、ぶらぶら歩いて天六へ。おなじみマーガレットへ。
創元SF系の関西メンバーが集まるというので声がかかったのである。
第4回創元SF短編賞受賞の宮西建礼さんが来る。
受賞作「銀河風帆走」は、テーマは本格、表現はフレッシュな宇宙SFである。
さらに酉島伝法さんの『皆勤の徒』が出たばかり。
お祝いも兼ねての飲み会。
*
左から酉島さん、理山貞二さん、おれ、オキシタケヒコさん、宮西建礼さん。
創元系、不思議に関西が多く、今回は高槻真樹さんも日下三蔵賞を受賞している。
宮西建礼さんは京大院生で23歳。SF研でなくワンゲルの主将だったという。(専門は農学部だが)宇宙好きで、種子島へも二度行ったとか。しかも「大伯父?」に当たる方が元新潮社の編集者でハードSFも好きな方という。名を聞いてびっくり。おれもお世話になったが、井上ひさし氏が『吉里吉里人』第2回SF大賞の受賞式の挨拶で、「多くの方に鍛えられてここまで来たが」と真っ先に名を挙げられたSさんである。お元気で頭脳明晰らしい。(ちなみに、よく書けているがどこか既視感があるという評価だとか)
酉島さんのデビュー作、これはベストセラーは(おそらく)期待できないが、ヒットしてほしいと思う。
ともかく特異な作家であり、量産は望めそうにないが、長く活動してほしい人だ。
それにしてもこの人は「天才!」より、アルサロの呼び込み風に「社長!」と呼びたくなるねえ。嘘だと思ったら『皆勤の徒』ご一読を。
SF方法論を中心にガヤガヤ。それにしても皆さん、よく読んでいるなあ。理山さんの読書量はわかっていたが、オキシさんのカバー範囲の広さ(と、それを話題にするときの作品要約のうまさ)に驚く。
こういう議論が血肉になる時期というのはあるんだよなあ。
おれはもう歳だし、あまり飲めない事情もあるので、少し早めに失礼する。
9月8日(日) 穴蔵
終日穴蔵。
やむを得ぬ事情により(身から出た錆とも申せましょう)、本日は本を読んだりCDを聴いて、静かに過ごす。
ま、こういう日もいいではないか。
夜は粗食……でもないか、専属料理人が並べたアクアパッアなどでドライゼロ。
*
うーん、ノンアル・ワインはないのだろうか。甘みなしのジュース? あ、そう。
歌やんが禁酒したら、酔っぱらいの噺ががぜん面白くなったのを思い出す。
おれも酔っぱらいSFを書くべきか。
早寝するのである。
9月9日(月) 不審者侵入
早寝熟睡で本日に備えるはずが、あまり眠れず。
昨夜、眠りかけたところを携帯電話で起こされて一騒動あったためである。
詳しくは書かないが、住人のあとから自動ドアを通って不審者が侵入、意味不明のことをいいつつ廊下を徘徊したのである。
通り魔事件が未解決のところに、またも大淀署と色々。
3時間ほどしか眠れなかった。
朝の通勤ラッシュ前の時間に、桜橋の某院へ向かう。
umegleバスはまだ動いてないので、グランフロント西側の道を歩く。
午前8時だが、人通りはほとんどない。
と、ステテコのおっさんが自転車で通過していった。
* ※拡大→
秋晴れ、爽やかな朝の空気のなか、気持ちよさそうである。
おれもやってみたくなる。ボンクラ息子その1がくれたカラーのステテコなら、短パンと変わらんだろう。
「老SF作家、ステテコでうめきた徘徊」などと叩かれるだろうか。
まずSF作家クラブに退会届を出しておいた方がいいかもしれん。
……などと愚考しつつ某院へ。
某検査を受ける直前、最中、結果を聞く前に、携帯電話に電話、伝言、メールが立て続けに来る。
相手は大淀署、管理人、専属料理人。
ややこしい時にややこしい連絡が錯綜。ともかく「全部午後にしてくれ」と怒鳴りつける。
血圧急上昇、体調がおかしくなったのではないか。
せっかく昨日一日静養したのに……
と、心配したが、結果はきわめて良好であった。
ほっ。
書店など回りたかったが、まっすぐ帰館。
午後は、理事長業務で、昨日の事件対応に当たる。
××剤の常習者らしいことをほのめかされた。
被害届(建造物侵入)はコピーが取れないことを初めて知る。
まあ、勉強にはなるけどね。
結局、本日は仕事にならず。
夜は盛大に飲んでもいいはずが、その気分にもなれず、粗食にて「秋味」1缶。
ゑひもせす。こればっか。
※ステテコ自転車について、見間違いではないかというご意見あり。一部拡大して追加しました。
決して推奨はしないが、大阪駅北100メートルで、これが街並みにとけ込んでいるところがいいのである。
オリンピック招致(外人観光客増加)にからんで、西の貨物駅跡の開発が前倒しされるかもなんてニュースを耳にしたが、「ステテコ禁止」なんて掲示はしないでほしいものだ。どうせ増えても中国人なんだからさ。
9月10日(火) 穴蔵/ウロウロ
昨日ほどではないが好天。
昨日ほどではないが、朝からまたも集合住宅関係でうっとうしい連絡1件。
おれは「自宅」から「穴蔵」に通勤(単身赴任か)しているのであり、理事長は「自宅」に順番が回ってきたから引き受けたのであるから、勤務中に連絡を受けるのはおかしい。前回(10年以上前)に理事長をつとめた時、会社まで電話連絡はなかったのであるから。
昼間の電話の遮断を申し入れることにしよう。
仕事にならん。
昼前から久しぶりに自転車で出かけることにする。
昨日のおっさんにならって、ステテコ自転車で出かけようかと思ったが……
管理規約(使用細則)の禁止事項の中に「ねまき、ステテコ等の姿で廊下、階段、屋上を歩くこと」とあるのを思い出す。
理事長という立場上、規約を破るわけにはいかず、実行するなら自転車置き場まで行ってからスボンを脱ぐことになる。こりゃいかんわなあ。
ということで、普通の格好で走る。
大阪の「SF風景」を書くための取材……といっても、よく知る場所の再確認。
*
グラフロの西側から貨物駅解体現場の遠景を眺める。
プラザ(小松事務所)跡地は更地のままである。
淀川堤に上り、毛馬まで走行。
都島橋から天六経由で帰館。
大正区の「サルガッソ海」へも行きたいが、環状線で日を改めてだな……
と思ってたら、夕方のニュースで、大正区の運河で船の火災が中継される。
残念。
9月11日(水) 朝顔とM資金
昨日から朝顔が急激に咲き出した。
今年はどことも遅いらしい。
「子供の夏休みの観察日記に間に合わなかった」とこぼした「お母さん」がいたらしいが、なんたるバカ親。
こんな年こそしっかり観察して、なぜ開花しないかを考察する絶好のチャンスというのに。
*
緑のカーテンから外向きに咲いているから、鑑賞するにはベランダから身を乗り出さねばならず危険である。
コンデジではこれが限界(CX4)。RX1がほしくなるなあ。
昼間、某社の試写室へ。
M資金がテーマの作品の試写を見る。
せっかく招待券をいただいたのだが時間の無駄。
公開前なので感想は控えさせていただく。
午後帰館すれば、また本日も大淀署から調査協力依頼。不審者侵入の方。
建物図面、管理規約などをお見せするが、質問にちょっと疑問を感じる。
起訴する場合の被害者認定か被害の特定?に関することらしいのだが、素人ではあるまいし、過去に「集合住宅への建造物侵入」で起訴した事例はないのだろうか。
人権派かなにかがつきそうなんでっか?と訊いたが返事なし。
おれなりに調べてみることにしよう。
仕事にならんよ。
9月12日(木) 穴蔵
ええかげん飽きてきたが、本日も大淀署刑事課の来訪あり。
ずいぶん低姿勢である。
2名は昨日に引き続き防犯カメラの画像を管理人室でずっと見ている。
北堺署がガソリンスタンドの防犯カメラの「時刻ズレ」に気づかず、誤認逮捕した会社員を85日も拘束したものだから、大淀署も慎重になっているのであろう。
1名(昨日と同じ某氏)はおれ(理事長)と話す。30分ほど。
昨日の質問がピントはずれの理由が氷解、管理規約に沿って説明したら直ちに理解してくれた。
ついでに「建造物侵入」と「住居侵入」の微妙な線引きなど教えてもらう。
あとは防犯カメラについて調べなきゃいかんな。これは明日からのテーマとする。
ケーサツ小説を書く予定はないけど。
今回の2件(「通り魔」と「不審者」)に関わってつくづく実感するのは、ケーサツもお役所ということである。
推定時給×時間×人数は、わが集合住宅だけでも恐ろしい金額になる。
民営化してくれたら、おれなら(わが集合住宅だけなら)1/5以下でやりまっせ。
理事長がそんな随意契約をとってはいかんか。
しかし、ともかく……本日も仕事にならんなあ。
イプシロンの打ち上げ日時が決定したようである。
9月14日 13時45分。
宇宙作家クラブ関係がまたも騒然。
群雲、内之浦へふたたび……の様相である。
今度こそ順調な進行を祈る。
9月13日(金) 穴蔵/消えたホームレス氏
あまり眠れず、午前3時に起きる。
最近、わが趣味「早朝グルメ」ができなくなった。
健康上の理由ではなく、通り魔事件以来、未明(暗いうち)に出歩けなくなってしまった。
刃物もったやつが徘徊してるかもしれんし、職質受けるのは嫌だからなあ。
明るくなってから、近所の偵察に出る。
公園には誰もいない。
*
↑この場所に10年以上「野宿」していた石飛卓美によく似たホームレス氏の姿が消えた。
近所の公園事情がどうだったか思い出してみる。
わが友ルン吉くんが現れたのは2000年晩秋であった。
この頃にはすでに公園の一角にダンボールハウス(というよりも木造の小屋か)が5、6戸あり、5、6人が生活していた。
公衆便所と水道があるから住みやすいのである。
野良猫に餌をやるから、一時期野良がずいぶん増えた。
ひとりが万馬券を当てたと、朝から宴会やっていたこともある。
携帯電話持つのがいたり、飼い犬が2匹いたり、電気掃除機を持ってるのまでいた。
このような「住居派」とは距離をおいて、群れず、ひとりで野宿するタイプもいた。文字通りのホームレスである。
石飛卓美(似)氏もそのひとりであった。
7年前に公園工事の一角で防火設備の工事があり、その冬には、「住居派」と「野宿派」にはっきりわかれた。
やがて……5年前くらい、「木造ハウス」はすべて取り壊され「住人」たちはどこかへ去った。
そして石飛卓美(似)氏ひとり残った。(わが友ルン吉は住所不定で定住しなかった)
結局12年くらい住んではったのではないか。
昼間、じっとしているか寝ているだけで、寡黙、不在の時はゴミひとつ残されていない。その限りでは、まったく人に迷惑をかける人ではなかった。
だが、ここ3、4年、公園で唯一の定住者であった。
そこに「通り魔」事件である。
被害者の証言、防犯カメラの映像から、石飛卓美(似)氏が犯人でないのは確かである。だが、唯一の目撃者であった可能性はあり、相当時間繰り返しネチネチと(特に夜間の行動について)「質問」を受けたのは間違いない。
結局、どこかに移られたようである。
そして、公園には誰もいなくなった。
13日の金曜日である。
出歩かず、終日穴蔵。
資料を読んで過ごす。
9月14日(土) イプシロン/創サポ/マーガレット
穴蔵にて、夕刻からの講義の準備。
ここ数日、仕事にならんよとぼやきつつ、これも仕事であり、難題(後述)が多く、しんどいが面白くもあり。
午後1時半から「ニコ動」でイプシロン打ち上げの中継を見る。13:45→14:00に変更になっている。
14時にはNHKでも中継された。
定刻発射。あとは「仕事」しつつ断続的に中継を見る。
14:56、第2PBS燃焼開始、14:59燃焼終了、15:02、SPRINT-Aの分離成功が伝えられた。ほっ。
ネットで見るだけでこの緊張と緩和だから、現地入りしている宇宙作家クラブの面々の忍従と歓喜は大きいであろう。
ぶんきちくんの故郷・肝付町に栄光あれ。
(しかし、打ち上げ翌日に里帰りとは、これも美学か)
夕刻、地下鉄で天満・エルおおさかへ。
創サポの講義。提出作品5篇を題材に行う。
・一人暮らしの老大工、雪の夜、死んだ妻と出ていった娘を回想しつつ独酌していると女が訪ねて来る。怪談めいた江戸の人情話。
・メンバーの一人が亡くなった合唱団。コンサートの最中に地震、会場が真っ暗になり、騒然となるが、どこかから歌声が……。ちょっと暖かい話。
・某隣国を思わせる独裁国家でテロを企む集団が密かに集結するが、そこに黒猫が紛れ込む。冒険小説の1エピソードとしては評価できる。
・「こぶ弁慶」と「あたま山」を合体させたようなショートショート。作者は落語は知らないというから驚き。
・新任の若い美人教師が小五生徒に作文の宿題を出すが、テーマは「家族」、兄妹のいる子はそれを書きなさいという。その男の子には障害をもつ妹がいた……。
……5篇中3篇は、おれにはコメントの難しい作品で、準備に正味3日かかった。
今回は「制約の多い」作品を書いた体験を事例に、おれが書くとしたらこれが限界というところまでのやり方を示すことにする(それでも商業誌では通用しないと思う)。これはこれで、おれにも訓練になるのである。
終演後、地下鉄で天満橋から天六へ移動。
ここで専属料理人と合流して、1週間ぶりにマーガレットへ。
先週借りた資料を返すためであるが、専属料理人が一度マーガレットのたこ焼きを食べたいというので同行。
とん平やたこ焼きでハートランドビールをいただく。いと少なしを。
白木くん、明日、加藤平祐さんら若手メンバーで広島へ演奏に行くという。
メンバーを聞いて、ついて行きたくなるが……関西での新グループになる可能性ありとか。
関西トラッドも代替わりが進行しているのである。
ドン・バイロンとディジョーネットが演じる「イン・ア・サイレント・ウェイ」(このCDは知らなかった)など聴きつつ22時過ぎまで。
通り魔に怯えつつ、歩いて帰館。
9月15日(日) 穴蔵
曇天、朝には晴れ間もあったのが、昼前から雨になり、午後は本降りとなった。
台風18号接近中。
出歩かず、穴蔵にこもって、少しは仕事もするのであった。いと少なしを。
と、夕刻、台風18号ニュースの最中に、日本新記録の56号ホームランが出たというテロップ。
おれとしてはどうでもええニュースだが、ナベツネの歯ぎしりが聞こえてきそうなのが嬉しい。品位があるとは思えぬ外人選手なおよし。そもそも、飛ぶ球に切り替えた黒幕はナベツネだろうが。
負けた 負けた
抑え切れずに負けたっけ
アイツに打たれた悔しさに
レフトのトラも泣いていた
一本足の 不動の四番のよ
桁外れ
……ん、49年前と混同したか。
本日は老人の日であったらしい。
老人用学芸会の世話に行ってた専属料理人がおみやげに赤飯など貰ってきた。
ということで、健康メニューに赤飯並べて「秋味」軽く一杯、いと少なしを。
久しぶりに坂田明「Fisherman's.com」を聴きつつ。
夜、雨いよいよ激しい。
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