『マッドサイエンティストの手帳』235
●マッドサイエンティスト日記(2002年4月前半)
主な事件
・歌之助師匠追善公演(1日)
・万博公園で花見(7日)
・ニューオリンズ・ジャズ・カーニバル(7日)
・滝川雅弘さんデキシーを吹く(14日)
2002年
4月1日(月)
タイムマシンを航空便で輸送することになる。
ややこしいことである。
それに加えて、「紙屑寸前」の証券を、「何の意味もない社名変更(一説によるとボンクラ社長が証券に名を残したいからという。落書き感覚だな)」による書き換えのため、貸金庫から出して書留で発送せねばならぬ。大阪市内、自転車でウロウロ。
夕刻、梅田の太融寺へ。
「桂歌之助三十五周年落語会」と称する歌さん追善公演である。
歌さん入院もあって、米朝独演会を除けば、落語会は久しぶりである。
2階の座敷、満員。
桂まん我「犬の目」……北村眼科で、助手が横田というあたりが笑わせる。
桂歌々志「佐々木裁き」……きちんとやっている。うまくなったなあ。
桂米二「茶の湯」……さすがに「旦那」がうまい。
桂小米「夏の医者」……さすがに笑わせる。
が、後の企画のためか、皆さん、はしょり気味である。
中入りのあと、「座談会・歌之助を語る」
出演は、一門から小米・米輔・米二・喜丸・歌々志さん、林家染語楼・旭堂南海さん
飛び入りで、千朝、吉朝、雀松さんも出てくる。
米輔くんが司会役で、話はどうしても「やけくそ5日間」の惨事、「事始め事件」、「歌コ事件」がメインとなる。
維久子夫人と挨拶。
それぞれに面白かったが、改めて歌さんの実力を知る思いである。
歌さんの好きだったネタということだが、やっぱり「三人兄弟」、ばかばかしさで「宗論」だろうな。それに小品だが『看板のピン』。それにしても、あの骸骨は誰が引き継ぐのか……。
4月2日(火)
タイムマシンを運ぶために自転車でウロチョロ、の2日目。
タイムマシンに空間移動の機能がないためである。
これは原理的にしかたがないのである。
阪神3連勝、巨人3連敗。いっとくが、おれは巨人ファンである。巨人のボロ負けを見るのが好きなのである。阪神については特にファンではないし、阪神ファンはアホが多いから、どちらかといえば嫌いだ。が、アホの阪神が巨人をやっつけるのは気分がいい。いい春である。
4月3日(水)
本日もタイムマシンを空間移動させるために自転車で市内移動。
ついでに、かんべむさしの仕事場に寄る。2時間、秘密作業。近日公開となろう。
夜、ビール飲みながらナイターを見る。阪神が6-1で横浜をリードしているが、巨人戦の方、巨人が2-1と逆転したところで、面白くなくなってテレビを切る。
かんべから借りた、橋本治『三島由紀夫とは何だったか』を読む。詳細な作品分析だが、前に別冊新潮に載った100枚の方が骨格はわかりやすい。
4月4日(木)
本日もタイムマシンを空間移動させるために某国と某国とへメールとFAX連絡色々。ああややこし。
4月5日(金)
本日もタイムマシンを空間移動させるために自転車で市内移動。
梅田のタワーレコード近くを通りかかったので、エディ・ダニエルズ『Swing Low Sweet Clarinet』と、坂田明『フィッシャーマンズ・ドット・コム』を買う。
午後4時頃、ハチに寄る。ちょうどハチママがいたので坂田明のCDをここで聴くことにする。
ぶったまげるなあ、これ。坂田明『Fisherman's.com』
「貝殻節」「音戸の舟歌」「斎太郎節」「別れの一本杉」の4曲。斎太郎節は、98年10月のハチでのライブにも登場したが、この時は「エンヤトット」のかけ声のみで、メロディはアルトだった。今度は「正調」である。
ライナーになかにし礼が「命の叫び」と題して「中央アジアの草原に立って坂田明が歌っている」情景を想起したと書いている。……じつはぼくも、かなり近い感想である。坂田さんの歌といえば、モントルーの「ゴースト」だが、そのずっと前、最初のヨーロッパ・ツアーの時に作った「カンウター・クロック・ワイズ・トリップ」の曲想に赤ゲット的ユーモア感覚があって好きだった。その後の著作が『ジャズ西遊記』である。孫悟空感覚か。つまり「中央アジア」経由なのである。この延長上に、いちばんストレートに体質が出たのがこのCDではないか。
最後の「別れの一本杉」に至って、もう、ハチママとゲラゲラ笑いながら、「こらえきれずに」ビールを飲み始めてしまった。
坂田学くんとの親子デュオは、アルトとアコースティック・ギターということもあって、ちょっと照れが感じられたけど、これはともかく本音だ。
口直し……じゃなかった、デザートにエディ・ダニエルズも数曲。こちらはビッグバンドでスタンダート。「ビギン・ザ・ビギン」から始まるが、バカウマ。谷口英治さんも今年はビッグバンドでやっているし、モダン・クラの傾向なんだろうか。
阪神6連勝はどうでもいいけど、巨人が負けて、楽しい日であった。
4月6日(土)
専属料理人に料理など作らせて、いっしょに千里中央から国立民族学博物館へ。
館長・石毛先生主催の「花見」である。料理か酒一品持ち寄りの会。桜はほとんど終わっているようだが、この日は前から決まっていたのでいたしかたなし。
地下鉄で料理評論家の岸朝子さんといっしょになる。ひょっとしたら同じ花見かなと思ったら、やっぱりそうであった。
11時に民博着。
先に館長直々のご案内で、特別展の見学。『2002年ソウルスタイル 李さん一家の素顔のくらし』……ソウルに生活する一家5人、3LDKの「住人以外の一切合切、ぜーーーんぶ」を「買い取って」移設した展示。よくぞここまで持ってきたものだと感心する。冷蔵庫の中身まで。生活道具を一新した一家は、やはり民族学者一家なので、展示に理解を示されたということである。アルバムとか、昔のラブレターまであるんだからなあ。鍵や運転免許、預金通帳、給与明細まで。
写真はチョゴリ試着の岸さんと石毛館長。小松左京ご夫妻も合流。
13時〜わずかに咲いている桜の下で宴会。土曜午後だが人出はそれほどでもなく、快適である。
かんべ、小松ジュニア2人とも、「ポンチ絵画家」(←おれがいったわけじゃないよ)古吟さんや、小山先生、杉田繁治先生、韓国の人間国宝・ハン先生など、えらい方々も。あ、むろん程一彦さんも。全部で50人くらいか。
15時過ぎまで。ワインをやや飲み過ぎである。
4月7日(日)
花見宴会につづいて、本日はジャズの日である。
13時から、梅田のビアホール「スーパードライ」を借り切りで「ニューオリンズ・ジャズ・カーニバル」
ここでニューオリンズ・ジャズを聴くのは、ビール、ワイン飲み放題、料理も十分とあって、気分最高である。
末廣光夫氏の司会。元気であるなあ。8バンド出演とあって、時間が押しがちになるところ、ラジオ出身だけに、実に厳格に進行する。これはなかなか大変な作業である。
出演バンドは、
ニューオリンズ・グローリーランド・ジャズバンド
ニューオリンズ・レッドビーンズ
YO・KIMURA・TRIO
マホガニーホール・ストンパーズ
東海林幹雄トリオ+ゲスト
野良青年団
ニューオリンズ・ラスカルズ
Usonia Jazz Band
半分はおなじみの関西バンド。……東京から来た野良青年団のソプラノがなかなかいい。
同じテーブルに、倉敷からの小野さん、名古屋からの今高さん、ヴォーカルもやる平川さん。それぞれ初対面だが、たちまち仲良しになってしまった。だいたいニューオリンズ系の集まりには紳士が多いのである(わしゃ例外ね)。ラスカルズの河合良一ご夫妻も同テーブルである。ありがたい特等席であったのだ。
最後は出演者全員が「聖者の行進」で会場練り歩きである。……大阪はやっぱりいいなあ。
16時30分終了。
で、終了後、ちょっと一息ついたところで、三重在住・ジャズ・フォト・ギャラリー主宰のK.Kurodaさんこと、黒田某さんが到着。……この日の夕刻、大阪の会員制ホテルに(九州から600キロを走って)到着と聞いていたのだが、なんと「スーパードライ」に隣接したホテルであった。こないだから「超近距離」というのが多いなあ。しかも終演時刻に合わせたみたいな到着である。
ただし、こちらはかなり酔っぱらっていて、黒田さんはシラフ。近くの「ポエムの樹」というちょっと照れくさい店でまたもワイン。1時間ほど。
黒田さんから森山威男さんの写真をいただく。【森山研】の看板にさせていただいている写真で、これの引き伸ばし印画紙。やはりデジカメでは出せない迫力がある。
(帰宅後、わが穴蔵の貧弱なオーディオ装置の上に飾る。……黒田さんは、素顔を出すのは照れくさいとかで、写真掲載は遠慮)
18時頃、自転車酔っぱらい運転で帰宅……の途中、ロイヤルホースの前に来たら、こちらも演奏が終わったあとらしく、路上に人だかり。と、なんと田中啓文さんが立っているではないか。「何やねん?」「ちょっと吹いてました」と、約5秒間ほど挨拶。
本日は無理であったが、演奏するのならちょっと教えていただきたいものである。田中さんは最近腕を上げられたらしく、「芸惜しみなさる」らしい。
さすがにジャズとビールで酔ったので、そのままだらしなく寝込む。
4月8日(月)
朝から某ワゴンで南港東のトラックセンター地区へ。このあたりは大阪港と関空の貨物を取り扱う乙仲密集地帯で、殺伐とした雰囲気がいい。
昼前にニュートラム、地下鉄を乗り継いで梅田に戻る。またややこしい業務の続き。
4月9日(火)
朝のうち小雨であるが、9時過ぎにあがったので、上町台地の頂点付近にあるお役所まで自転車で走る。
本町の某銀行経由、体にはいい日である。
4月10日(水)
ソリトン同人で名物男のひとり・帆羽英一くんからCD−Rが郵送で届く。……とつぜん引っ越し先不明になってしまい、ご心配かけたことと思いますとあり、同封のCD−Rに納められた300枚を越える「手記」で、事情の3割ほどはわかる。が、どうも前後の経緯がわかりにくい。要するに2年近く前の夏から冬にかけて、横浜から(大阪にも3日ほどいる!)鹿児島、沖縄、香港、オーストラリアと移動したことは確かなのである。この「道中」というのは、ともかく凄い。SF大会の時に、横浜から広島まで2千円で移動したなんてものではないからなあ。しかし、動機がよくわからん。
事情がもう少し判明すれば紹介したい。CD−RWのパソコンを使っているのは確かだから、ネットにも復帰してくれるのを待っているよ、帆羽ちゃん。
4月11日(木)
ここ数日、書類と連絡待ちが断続的で無駄な時間が多い。
が、幸い、午前中で区切りがついた。あとは「大金」の到着を待つだけである。ははは。……あまり本気にしないように、エシュロンくん。
昼から自転車でかんべむさし氏の仕事場へ。1時間ほど悪だくみ。
4月12日(金)
早朝の電車で播州龍野の実家方面に移動。
ごちゃごちゃとヤボ用ののち、夜帰阪。
4月13日(土)
終日「穴蔵」
海外とのメール交換の必要な案件が増えたが、どうも英文を書くスピードが落ちている。かなりええかげんなレベルで勢いでやれたのが、だんだん苦痛になってきているのである。定型文でやれることなら楽なのだがなあ。
翻訳ソフト、いいのを探してみるか。
4月14日(日)
終日「穴蔵」
月曜朝までに送るべき英文メール、だんだん面倒になる。
あ、菊川さんの出る「グリーン交響楽団」のコンサートへ行くつもりであったのだが、夕刻近い時間になってしまった。残念ながらパス。申し訳ない。
午後9時近くになってから、自転車で出かける。
「JAZZ・ON・TOP梅田店」開店記念で滝川雅弘さんが珍しくデキシーを吹くというので行ってみることにする。
なんと大阪ブルーノートの西隣といっていい立地の店である。……ドンショップの向かい。裏手にミスター・ケリーズがあるから、西梅田は今や大阪のライブハウス密集地である。
で、デキシーバンドというのは「ヴィンテージ6」と称する、今回が初めてという編成のグループ。
中山聖(cor)亀野徹(tb)滝川雅弘(cl)八木隆幸(p)魚谷のぶまさ(b)東敏之(ds)……なんだ、サントリー5に水曜日出演のフラット・ファイブと滝川さんのグループの混成部隊ではないか。客席には原田紀子さんも見えるはずだ。編成はデキシーだけど、アドリブになるとそれぞれの個性でやるから、ごくモダンな雰囲気。あ、これはけなしているわけではありません。ファイヤハウス5とかクリスバーバーとは時代が違うのだからねえ。3管編成のスイングバンドと解釈した方がよさそう。
たとえば、2ステージ目、「アラビアの酋長」「Someday Sweetheart」それから「Sweet S.G.Blues」だったかな、昔、右近雅夫がよく吹いた曲とか、3ステージ最後は「バイバイ・ブラックバード」とか、色んなスタンダード混在。
滝川さんから、「盗まれたグランドビアノが戻った」(なんのこっちゃ?!)とか、「近日、クラリネットが新しくなる」という話など聞く。これは応援ページでの記事として取り上げる予定である。
あ、八木隆幸(p)さんのCD(これがデビュー盤である!)
「THAT'S THE STYLE!」 が出たので早速購入。
八木隆幸(p)、橋本裕(g)、原満章(b)のドラムレス・トリオでスタンダード中心に12曲。滝川トリオの時のピアノとはちょっと雰囲気が変わって、ものすごく軽やかにスイングしている。よく聴くSUBのピアノはあまりよくないし、壁向きPAなしという事情もある。やっぱりピアノは楽器と場所が大事だ。音もだけど、端正な横顔が見える方がいいしね。その点、JAZZ・ON・TOPはなかなかよかった。このCD、ちょっと評判になるのではないか。
滝川さんと併せて、ぜひご一聴を。
たまたま同席の、東京から単身赴任中という方と話していたら、(会社勤務でもえらい方なのだが)ジム・トンプソン『サヴェジーナイト』の翻訳者・門倉洸太郎氏であることが判明。なんだか先日から不思議な遭遇が続くなあ。
4月15日(月)
またもタイムマシンの空間移動に関連して自転車で市内移動。といっても、朝、梅田往復。
あとは終日穴蔵なのであった。
……ここんところ、ジャズ関係ばっかりだな。
SFも書かねば。自分の作品もだけど、読むことは読んでいるのである。
SF関係はまとめて近日アップ予定。
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