『マッドサイエンティストの手帳』539

●マッドサイエンティスト日記(2012年10月前半)


主な事件
 ・大阪←→播州龍野いたりきたり


10月1日(月) 穴蔵
 10月である。
 台風一過の雰囲気はないが、まあまあ涼しく、室温は27℃。
 朝、西梅田の某院へ検査を受けに行く。
 通勤時間の梅田、衣替えのはずが、サラリーマン諸君の8割は白いシャツのみで、半袖も結構多い。
 ボンサラ時代、おれは繊維関係のメーカー勤務で、非繊維部門であったが、9月になれば秋ものを着るのが習慣であった。繊維部門の営業となれば、どんなに残暑が厳しくても「秋冬もの」着用が鉄則である。
 今は無理する必要はなくなったのか、繊維関係の会社員が激減したのか。
 これも時代であろう。
 診察の結果……これからは2月間隔でいいでしょう。
 「今日来ても手遅れでっせ」(October the first is too late.)といわれたらどうしようとヒヤヒヤだったが、ほっ。これも日頃の摂生の成果である。
 仕事関係で数ヶ所回って午後帰館。
 夜は、とようけの湯豆腐、根野菜のごちゃごちゃなどで盛大にビール。なぜかガンボが食べたくなり、急には無理なので、かわりにミニカレーで白ワイン。
 早寝。

10月2日(火) 穴蔵/阪急コンコース
 秋晴れである。
 播州龍野へ行こうかと迷っていたが、身内が行ってくれるというので、来週に延期する。
 終日穴蔵。
 少しは仕事をするつもりが、たいしてはかどらないのであった。
 腰痛再発予防のため、歩かねばならぬ。
 夕刻に近い午後、梅田ウロウロ。
 JR東口の横断歩道の東側、阪急百貨店1階の「東西コンコース」が本日再オープンである。
  *
 2009年9月に閉鎖されて以来、3年ぶり。
 解体工事の遅れで、予定よりだいぶずれ込んだはずだが、意外に早かったなという印象である。
 3年前から新梅田食道街の南通路はごったがえし状態。その割に食道街の店に客は入らなかった。
 阪急百貨店の建築が始まったのは1年半ほど前からである。昨年3月には、地下がえぐられた爆心地状態であったのだからなあ。
 地下通路も再開。
 さらに新しく2階にも歩道橋に直結の東西通路が出来たが、イラチの関西人がそれほど利用するとは思えない。
 ま、それでも3層の東西通路が一挙にオープンだから、人の流れはだいぶ変わるだろう。
 おれとしては、新梅田食道街がゆっくり歩ければ十分である。
 ということで、夜は専属料理人に、骨付き豚肉のステーキ、ごちゃごちゃ野菜のサラダなど並べてもらってビール。
 テレビニュースによれば、同志社女子大の同僚刺殺犯天野祐一(文部省からの天下り)の血液DNAが現場の血液と一致、自供どおり凶器の包丁が川底から発見されたという。
 あとは「動機」の解明である。
 旧文部省の役人はストーカーになりやすいという構造的問題があるのではないか。
 田中真紀子に期待するのは、この事件の解明だけだな。他のことは何も期待せんからね。

10月3日(水) 穴蔵
 いかん。
 眠れないまま明け方まで本を読んでいたら(いや、本を読んでいたら眠れなくなったというべきか)、ともかく夜が明けてしまった。
 終日穴蔵。
 アタマはボケ状態。
 うたた寝したり、何か読んだり、ちょっと机に向かったり。
 生産的なことは何もできない。
 一杯飲んで早寝……のつもり。

10月4日(木) 穴蔵
 いかん。
 眠れないまま明け方まで本を読んでいたら(いや、本を読んでいたら眠れなくなったというべきか)、ともかく夜が明けてしまった。
 悪循環である。
・ちょっと気になるニュース。
 原辰徳が週刊新潮の「もう一人の愛人が告白『原辰徳』ヘソの下は紳士じゃない」という記事に対して、「この女を氏名不詳のまま刑法の名誉毀損容疑で告訴する告訴状を警視庁に提出した」という。
 コンビニへ行って週刊新潮を立ち読みしてきた。
 どっちもどっち。
 アホばっかり。
・原はアホ。そもそも「女性関係で一億円を暴力団関係者(と思われる男)に渡した」疑惑男・原が「紳士じゃない」のはその通りではないか。
・週刊新潮もアホ。単に原と(金銭抜きで)寝たというホステスの「告白」なんて、記事にするに値する内容か。それでなくても週刊新潮は先月時任玲子の恐喝事件の片棒をかついでいるのに、ぜんぜん反省しとらんじゃないの。原くらいもてる男がホステスとなんとかなんて、褒められたことではないけど、そうやっかむことでもあるまいに。
・氏名不詳で告訴されたホステスについてはノーコメント。実在するのなら、金銭抜きの恋愛だったのだから、心変わりして悪口をいう分にはかまわんではないか。「告白」を金にしようとしたのなら問題だけど。
 結局、こんな記事を読んだおれがアホか。
 もっと原の1億円「暴力団への提供」疑惑事件を追うべきだろう。
 ナベツネ、なんとかいえ。
 などと愚考しつつ、一杯飲んで早寝したいのだが、熟睡できそうにないなあ。
 嗚呼。

10月5日(金) 穴蔵/ウロウロ
 いかん。
 0時過ぎに目が覚めて、色々資料を読んでいたら朝になってしまった。
 読むぶんにはアタマははっきりしているからいいが、机に向かうのはしんどい。
 昼間は机に向かえるが、アタマはボケーーーッとしている。
 どうも意識の時間と体の時間とが完全に分離して進行しているようである。
 これが逆転する話は書いたことがあるが、ズレを経験するのは初めてである。
 「取材」と割り切って、しばらくこのまま生活するか。
 昼、専属料理人と歩いて梅田へ。
 新地のむつごろうで、ふだんより豪勢なランチ。
 年に何度かある「記念日」のひとつで、だからといって特別のことはしないのだが、本年はひとつの節目ということで。
 軽く昼ビールも。
 午後は穴蔵にて2時間ほど仮眠。
 睡眠時間が小刻みになってきたなあ。
 夜は軽く、カナッペなどで、専属料理人の実家方面からいただいたワインを飲む。
 
 「ムーラン・オーラロック」……神の雫とかいうらしいが、まあ、なかなか結構な。
 ともかく早寝するのである。

10月6日(土) 穴蔵
 いかん。
 またも午前1時前に目が覚めて朝まで眠れず。さりとて机に向かう体力はわかず。困ったものだ。
 岩波洋三氏の訃報。心不全という。79歳はまだ若いのになあ。
 朝食後に寝たら、午後1時頃まで寝てしまった。
 専属料理人が心配して穴蔵まで様子を見に来たので目覚める。
 不審者の侵入に気づかなかったのである。嗚呼。
 ボンクラ息子その1が昨夜遅くに大阪出張で帰ってきて、すでに仕事で出かけたという。
 親父はその間惰眠をむさぼっていたわけで、情けないことである。
 ちょっと心を入れ替えて、夕方まで、少しは仕事もするのであった。
 夕刻、ボンクラ息子その1が帰館。
 食事に出かけるのも面倒になり、専属料理人が色々並べて家呑みとする。
 カジキマグロのソテー、サラダ、秋パスタなどで本日もワイン。
 インコのPiPiがボンクラ息子その1に妙になついて、肩に上がってじっとしている。
 
 べつの目張りする必要もないんだけど。

10月7日(日) 穴蔵
 3時間ほど寝て、午前1時に目が覚める。相変わらずのパターン。
 朝まで芦辺拓『スチームオペラ』を読む。
 午前6時前に「自宅」へ行ったら、ボンクラ息子その1が出かけるところであった。
 志賀でゴルフなのだという。
 朝食後、7時頃からやっと睡眠。
 本日は神戸ジャズストリート2日目である。
 10時に目が覚めるが、しんどくて起きられない。
 神戸行きは中止する。
 昼まで寝る。
 午後は、ちょっと机に向かうが、腰痛予防のため、1時間ごとにごろ寝。あまり生産的な仕事はできないのであった。
 生活のパターンを早寝早起きに戻さないといかんなあ。
 夕刻、ボンクラ息子その1から、ゴルフ終了後そのまま帰京するという連絡。
 ということで、本日は粗食にて晩酌。
 
 ハンバーグかグラタンか判別できないようなもの、その他でビール。
 早寝したいが、また熟睡は無理であろう。

10月8日(月) 穴蔵/山中伸弥教授にノーベル医学生理学賞
 午前2時前に目が覚めた。
 3時間ほど眠れたわけで、だんだん正常パターンに戻りつつあるのかな。
 朝まで読んだり寝たり。
 午前中はあまりアタマは働かず。
 本日も世間は休日だから仕事しなくていいであろう。
 昼、専属料理人と赤バスで天五へ行く。
 某店で蕎麦のつもりで行ったら休みである。
 方針変更、近くの「玉一」へ行く。
 焼肉定食で生ビールをチョット・ベーカーり。
 
 かなりのボリュームなり。
 あと、天満市場(ぷらら)に寄る。
  *
 野菜や果物が新鮮で、専属料理人は「近所の食品スーパーの半額!」と色々買い込む。
 大根やネギ、なんとか菜など色々持たされて、3,000歩ほど歩いて帰館。
 夕刻シャワー。
 さっぱりしたところに、山中伸弥教授にノーベル医学生理学賞のニュース。
 何よりであった。
 戸塚洋二先生みたいに、ノーベル賞絶対確実なのに不運なことになる例はあるから、こういうのは業績が確定したところで差し上げるべきだ。
 ということで、NHKニュースを見ながら軽く晩酌。
 iPS細胞解説に八代嘉美さんが登場、明晰なコメントである。岸本才三……じゃなかった岸本忠三先生も出てきはった。知人が次々出てくると楽しくなるなあ。
 昼が重かったので夜は軽くのはずが、つい飲んでしまう。「五代」水割りを3杯ほど。
 明日こそホリは羽ばたく…つもり。

10月9日(火) 大阪→播州龍野
 ほとんど眠れぬまま朝になる。
 早朝の電車で播州龍野へ移動する。車中熟睡。
 午前9時の龍野書斎、室温19℃である。冬は近い。
 彼岸花はほとんど萎れていて、もうコスモスの季節である。
  *
 タイムマシン格納庫にて雑事色々。
 昼前に専属料理人が龍野に到着。本日は専属掃除人としてなり。
 せっかくなので、昼は姫路の「石挽蕎麦・御座候」へ行く。
  
 播州ではここの蕎麦がいちばん旨い。
 姫路駅地下の店が駅ビル建て替えに伴って昨年閉店。本店はクルマでなければ来られない。
 「重ねせいろ」をいただく。が、冷酒は見送り。姫路駅店を復活させてほしいものだ。
 やはりうまい。姫路駅店も復活させてほしいものだ。
 午後は実家の大掃除。
 半年ぶりに書斎に掃除機をかける。
 あとは隣接する畑地の雑草処理。
 春に電動草刈り機でなぎ倒したのが裏目に出た。根から抜いてないから、凄まじい勢いで成長したのである。
 夕刻まで2/3ほど。あとは明日である。
 夜は、久しぶりに「入浴」し、常夜鍋(がいいほど涼しい)で盛大にビール。
 専属料理人が「金本の引退試合」を見るというので、久しぶりに野球中継を見る。
 アナウンサーも解説者もキレが悪い。「本当のところをいっちゃいかん」「触れない方がいい」(たとえばが「武士の情け」みたいなことね)ことが多すぎて、あいまいな物言いになるのだろうなあ。
 むろん金本が好漢であり大選手であることはいうまでもない。
 早寝。

10月10日(水) 播州龍野
 播州龍野にて気分よく定刻午前4時に目覚める。
 さすが肉体労働の成果。
 しかし、腰痛で、屈むのがつらい。
 午前7時から除草作業を開始。
 2時間ほどで片づくだろうと思ってたのが、効率が落ちたのと、樹木の間など予想外に広かったことが判明、昼過ぎまでかかってしまった。
  * →  *
 雑草の山が6つできた。
 乾燥したら焼却することになるが、また手間がかかるなあ。
 ススキの一群だけはどうしても抜けない。まあ、風情があっていいか。
 午後に帰阪のつもりだったが、動くのが面倒になり、専属料理人ともども明日に延期。
 シャワーを浴びて着替え。遅めの昼にビール一杯。うまーーーーっ!
 夕刻、揖保川沿にに散歩。
  *
 逆さ鶏籠山を見る。センチメンタルになるぜ。
 ということで、夜は、ヤッコ、トマトサラダ、ビール、カレーうどん、ハーフワイン、梨という不思議な組み合わせ。
 明朝冷蔵庫をカラにするためのメニューなのである。
 早寝。

10月11日(木) 播州龍野→大阪
 播州龍野にて午前3時に目が覚める。5時間熟睡だから、まあ正常パターンである。
 腰痛はさほどでもないが、慣れぬ作業を2日間やったものだから、脚の筋肉痛がひどい。
 朝から、夏物の片づけ、ゴミ出しなど軽作業。
 昼前に揖保川町馬場地区のコスモス畑を見に行く。
 
 広大なコスモス畑は毎年区画が変わる。連作障害を回避するためらしい。
 以前コスモス畑だった区画には米や枝豆が栽培されていたり休耕地だったり。
 専属料理人が20本ほど摘み、料金箱に200円投入する。
 ついでに峠を越えて「道の駅みつ」へ。
  *
 ああ播磨灘。
 牡蠣はまだ売ってない。地元のざく干しちりめんや煮干しなど、かさばらぬ数点を購入。
 龍野に戻り(あ、「みつ」も「たつの市」なんだけど、旧龍野市へ戻り)墓参。コスモスなど飾る。
 午後の電車で帰阪。
 夜は軽いメニューで晩酌。
 「道の駅みつ」で買ったってきた津田宇水産のちりめんじゃこが抜群にうまい。
 焼酎の水割りをずいぶん飲んでしまった。
 本日、朝から「ノーベル文学賞は村上春樹に決定」みたいなニュースが流れている。
 が、20時過ぎてもテロップ流れず。ネット見たら中国の莫言くんが受賞という。
 まあ、中国は大喜びで、だから尖閣も中国のものと世界が認めた……てことになるのかな。
 騒ぎすぎである。
 一時期、ノーベル賞の季節になると井上靖のところにマスコミが集まった騒ぎを思い出す。
 さすがに村上氏は記者を家に上げて飲むなんてことはしないだろうが。
 マスコミ各社に用意されている「予定稿」を思うと記者諸君が気の毒になるが。
 まあ、徒労にはならん。2、3年のうちに使えるよ。
 ともかく黙って待ちたまえ。

10月12日(金) 穴蔵
 午前3時に目覚める。寒くて目が覚めたのである。毛布を出して、また6時まで眠る。
 生活パターンは正常にもどったようである。
 朝からニュース色々(ゴミ出しのついでに、コンビニで週刊誌も10分ほどチェック)。
・莫言についてはほとんど報道なし。むろん村上春樹氏は(発表の前後すべて)いっさいコメントなし。当然とは思うが、やはり立派な姿勢という他ない。
・(昨日の読売朝刊のスクープらしいが)「森口尚史という日本人研究者が世界初のiPS細胞応用による人間の心筋移植手術に成功した」というニュースに、疑惑続出。ハーバード大や該当病院が「在籍」も「承認」も否定。本人のインタビューが放映されたが、その「言い訳」を見るに、これではなあ……。読売、引くに引けないのではないか。(※)
・田中慶秋の「暴力団幹部との癒着」……(このところ不調だった)週刊新潮のスクープで、法務大臣(悪い冗談かよ)という立場を考えれば辞任必至であろう。真紀子と併せて2田中が問題とされた組閣時の予想は早くも半分当たりである。
・それに較べると、週刊文春の「城島光力財務相『遺産相続トラブル』と『借金9000万円』」は取材不足。実家のある柳川市で「広大な土地」(たった1600uが広大かよ)を相続して、その一角に12部屋の賃貸ハウスを建てたが、9000万の借金で苦しんでいるというもの。……こんな話、○○建託がらみでざらにある話。播州龍野でもよく聞くし、亀山あたりでは破産者続出だろう。もうちょっと「ハイツ城島」の経営分析をやるべきだ。国家の財政と財務大臣の財政が重なって、大丈夫かいなとは思うけどね。
 これで田中真紀子が何かやったら野田内閣はパーあるよね。
 あとは終日穴蔵。
 少しは仕事もするのであった。いと少なしを。

 ※読売新聞2012.10.11朝刊の「世界初の心筋移植手術」記事について、2012年10月12日13時時点で、ネットではどうしてもたどり着けない。削除されたのか。これが「世紀の大誤報」だとしても、なぜそうなったかの検証のために、記事は残しておくのが読者に対する誠実な態度であろう。(おれは、自分の記事にミスがあれば、原記載は残し、訂正して詫び、その事情を説明するのを原則としている。)
 読売新聞は、そんな記事はなかったことにしたいのか。いかんぜよ。図書館へ行けばすぐわかることだし。
 ナベツネ、何とかいわんかい! 恥さらしめが。
 ま、読売新聞がどんな風にもみ消すのか、これからの数日、けだし見物であるなあ。

10月13日(土) 穴蔵/創サポ講義
 午前4時前に起床。
 昨日「読売の『世紀の大誤報』がウェブで削除されているような」と書いたら、さっそく知人が元記事を送ってくれた。○ちゃんに「魚拓」が残してあるらしい。
 よく出来た記事である。
 テレビニュースも断続的に見る。
 森口尚史氏が本日23時(日本時間)にNYで会見するらしいが、ホンマかいな。
 終日穴蔵。
 夕刻に這い出て地下鉄で天満へ。
 ここに来るのはたいてい17時30分であり、今はちょうど日没の時間である。
 八軒家浜から中之島先端・剣崎の噴水を撮ろうとデジカメを構えたら、大きな魚が跳ね上がった。
  *
 びっくりするなあ。
 18時から創作サポートセンターの講義。
 本日はストレートSFの提出はなかったが、冒頭5分ほどSF講義。
「不謹慎ながら、iPS心筋に関する森口尚史氏の虚構力はたいしたものである。クローン羊のドリー以来、『クローン人間誕生』というガセネタがよく登場するが、たいていが出来の悪いオカルトもの。信憑性において森口尚史氏の創作力はレベルが違う。科学考証力以上に『山中教授に研究予算が集中すると、周辺技術の研究とのバランスが崩れることが懸念される』といった政府批判にまで及んでいるところがいい。近未来SFを書く場合に参考にするように。……ただ、おれは森口尚史氏にSF作家への転身をすすめてるわけじゃないよ」
 本日は、提出作品7篇についてコメント。
 それぞれレベルが高く、コメントも「もしおれがこれをパクったら、ここをこう変えて、もう少し面白くする」という話になる。パクらんけどね。
 ネタバレにならない範囲で紹介すると……
・「端役とその鏡に映った役」を演じる双子の役者と女優のタマゴの奇妙な三角関係。サイコの双子版だが、設定がうまい。「吾輩はカモである」のミラーダンスを参考にといったが、見た生徒はいなかった。こちらが歳をとりすぎたのか。
・クラスが浮いた存在の「あたし」と薄汚い男子転校生の、野良猫を介した、ちょっといい話。小道具の使い方がうまい。
・金ヶ崎の合戦を背景に、歴史小説を一人称で書くという意欲作。一人称描写となると、合戦も見た範囲でしか描写できず、スケールが狭まるが、うまくクリアしている。
・他人の夢を操る能力を持った転校生がクラスに波紋を広げる。「逆予知夢」という設定の秀作。コリアか阿刀田高作品にありそうだが、おれは先例を知らない。
・猫にとらわれた青年の妄想と行動をモノローグで描いて、イメージの喚起力が凄く、生理的嫌悪感を感じさせるほど。「コレクター」の猫版とでもいうか。
・デパートで迷子になり、見つけられた時に、なぜか人形を持っていた。幼児期の記憶が成人してからの事件につながる。「ちょっとした謎」の設定が巧緻なパズラー。
・孤島の屋敷を舞台にした新本格。屋敷内に監視カメラやビデオ装置など最新機器がやたら多い設定がユニーク。
 ……「異色作家短編集」や「黒後家蜘蛛の会」を引き合いに出すが、これらの作品も、いまや古すぎるのかなあ。
 ちょっと迷うところだ。

10月14日(日) 穴蔵
・丸合田……じゃなかった、丸谷才一氏の訃報。
 おれは「笹まくら」以前、ジョイス翻訳時代、グロータース神父の『誤訳』(丸谷氏が誤訳した訳ではないよ。ユリシーズの中の一語について終日議論したエピソードなど)で知って以来の読者である。
 山下さんのライブなどで、何度かお見かけしたことがある。
 合掌。
・昨夜の会見で、森口尚史はウソを認めたようだが、「手術1件は去年6月にやった。医師の名は本人の要請でいえない」だと。たいした男よ。容貌は中国人にしか見えないなあ。千葉に家賃6万の賃貸に住んでいるらしい。
・このニュースを読売ナベツネ新聞はどう報じるのか。金払って読む新聞ではないので、そのうち図書館で誌面をチェックすることにしよう。
 終日穴蔵。
 少しは仕事も……と思いつつ、日曜なのでさぼることにする。
 昼は専属料理人に鍋焼きうどんを作ってもらって、ビールを一杯。
 BSで放映されている「ヤンキースVSタイガース戦」を9回裏から見ていたら、面白くて、2時間近く見てしまった。
 やはり野球は面白い。勝敗はどうでもいい。超人的プレイに興奮するのである。
 ではなぜ日本の職業野球に興味を失ったのか。ナベツネの影があるからだ。選手に罪はない。ナベツネが背後にいる興業なんてヘドが出るぜ。
 おれはよくよくナベツネが嫌いなんだなあ。今岡清・五十嵐敬喜・堀敏明・菅原哲郎の下等物件4個ほどじゃないけど。

10月15日(月) 穴蔵
 終日穴蔵。
 少しは仕事もするのであった。
 夜は専属料理人が地域のなんとかで出かけたので、インコを相手に独酌。
 「尼崎の住宅」から続々と死体発掘のニュースを見るが、人間関係がややこしくて、とても理解できない。シラフでも関係図がアタマに入らないだろう。動機となると見当もつかない。
 『毒薬と老嬢』みたいな背景があるのだろうか。
 じつは13日の「創サポ」のある短編について、本人は猫を溺愛しているつもりが現実は次々と女性を……と最後に明示する方がインパクトが強いとコメントしたところなのだが、なんだか気味が悪いなあ。
 「呪いの家」を思い出して、「星影のステラ」をエヴァンス、ゲッツ、キース・ジャレットとハシゴで聴きつつビール。
 もっとも詞は後づけだから、ステラは無実のはずなんだけどね。
 本日も歩数計は0歩。
 少しは運動しなければ。


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