『マッドサイエンティストの手帳』508

●マッドサイエンティスト日記(2011年8月前半)


主な事件
 ・大阪←→播州龍野、いたりきたり
 ・小山彰太トリオ(4日)
 ・創元SF短編賞(5日)
 ・山下洋輔ハチ・ライブ(8日)
 ・石橋飲み会(12日)


8月1日(月) 穴蔵
 暑いのであった。
 こんな日に、荷風のおっさんは、おれと同年の頃にどう生活していたのか。
・昨夜から暑気焼くがごとく、庭には南京の花が開き、胡瓜が盛りを過ぎ、茄子やトマトが熟しているが、おっさんは下痢がとまらない。(1945.7.31)
・翌日、粥をすすってちょっとましになったとか。(8.1)
 敗戦間近の時である。
 おれの場合、父の日にボンクラ息子その1がステテコといっしょに贈ってくれた腹巻き(サイケ調の柄!)がたいへんよろしく、下痢とは無縁の健康的生活を送っている。
 ただ、腹巻きは1枚しかないので、汗を吸い込むと、やはり洗濯をしなければ。
 ということで、昼、自転車で近くのスーパー・ライフへ予備の腹巻きを買いに行く。900円の古典的植木等型にする。
 ついでに天八から南下して、天五へ。
 昼は玉一で豆腐鍋の定食……この際、生中もいただく。うまーーーっ。
 午後は穴蔵に戻り、おとなしく雑事。

8月2日(火) 穴蔵/ちょっとウロウロ
 終日、穴蔵にて雑事。
 あまり生産的な仕事はできないままであった。
 運動不足なので、夕刻に近い午後に、自転車で東回り散歩コースをウロウロする。
 青空書房に寄り、扇町公園を抜けて……いつもなら「ミムラ」に寄るのだが、寂しいことである……ハチへ。
 ハチで8月8日(月)の山下洋輔ソロ・ライブのことなど確認。
 梅田の雑踏を抜けて帰館。
 「神の河」がカラになったので、豊崎西公園南側の中本酒店で買おうと思ったら、「五代」がメインだという。
 ちょっと目についた徳之島の黒糖焼酎「煌(きらめき)の島」にする。
 
 夜は専属料理人に枝豆・ピカタ・トマトサラダその他を並べてもらってビール。
 あと、某所からいただいた奈良漬で「煌の島」ロックをチビチビ。
 これがまろやかで、いけまっせえ。
 枕頭に本を数冊置いて、早寝するのである。

8月3日(水) 穴蔵/ちょっとウロウロ
 暑いのであった。
 急にカレーが食べたくなり、昼、専属料理人と炎天下を歩いて「BARBARA」へ。
 5月26日以来である。
 石窯カレーと海鮮パスタのランチをシェアすることにした。
 これにパン・サラダバー・ドリンクバー(ワインもあり!)がついている。
 夏場はドリンクバーに「かき氷」もある。
 デザートに「かき氷+白ワイン」のシャーベットを試作してみたら、これがなかなかオツでげした。
 専属料理人は買い物にデパ地下へ向かい、おれは堂山町〜曾根崎の路地裏探索。
 荷風○人さんが報告しておられるが、曾根崎の廃墟はなかなかの風情である。
  *
 お初天神通りをちょっと東に入るだけで、こんな風景が観賞できる。
 おそらくダンプが入れる道幅が東西南北どこにも確保できないからで、当分この景観は楽しめそうだ。
 旭屋〜ヨドバシ〜丸善ジュンクドーを回って穴蔵に戻る。
 と、タイムマシン関係で急用発生。
 某国のエージェントから急な連絡で「息子が大阪にいるからコンタクトしてくれ」という。
 指定されたアドレスにこちらの電話番号を送信して連絡待ちとする。
 夕刻、電話があった。
 「ハロー」
 「おお、Mr.○○……どこにおるねん」
 「メンバーだ」
 「メンバー? そんなとこあったかいな」
 「あ、ナンバーだ」
 「ナンバか。宿泊ホテルの名前は?」
 「なんとかかんとかホテル」(流暢過ぎて聞き取れない)
 「ホテルの電話番号を教えてくれよ」
 ……調べてみると「フレイザーレジデンスホテル」であった。
 ああしんど。今夜は別の予定があるというので、明朝ホテルを訪ねることにする。
 夜、軽くビールを飲んだ後、播州龍野の格納庫にいる相棒と連絡とりつつ英文資料の作成。
 あわただしことである。
 英訳の効率悪し。英語力の衰えを実感するなあ。

8月4日(木) 穴蔵/ナンバ/小山彰太トリオ
 炎天なのであった。
 久しぶりに通勤ラッシュ時(8時半頃)の地下鉄御堂筋線に乗るが、思ったほどの混雑ではない。
 混むのは、梅田〜淀屋橋間だけで、それも他人と接触するほどではなし。心斎橋を過ぎれば立ってる客の方が少ないほど。
 これでチカンが出現するというのが不思議だ。
 9時前にナンバの某ホテルへ。
 初対面の某国・某社の若大将は29歳の好青年であった。
 親父同士が似たような年齢で30年以上のつきあいだから、こんなものか。
 ただ、うちのボンクラ息子より遙かにしっかりしている。嗚呼。
 友好的かつ生産的話し合いとなり、2時間ほどで終わり、昼前に帰館。
 午後は穴蔵にて雑事の続き。
 夕刻這い出て、天六のワイルドバンチへ。
 小山彰太トリオのライブである。
 
 小山彰太(ds) 石田幹雄(p) 立花泰彦(b)
 フリーフォームのようで意外にも正統派のピアノトリオでもある。
 石田幹雄のやんちゃなピアノを今や大御所の小山彰太がけしかけ、大人の立花ベースがコントロールする雰囲気で、バラード風?の2曲目「永遠の赤霞」(というタイトルと思う/石田作品)なんて名曲・名演奏であった。
 22時過ぎまで。
 会場に旧知の人たちが色々。
  *
 記念撮影。↑右から田中啓文さん、おれ、呉からきた旧友「トミフラ師匠」である。
 あと、ガヤガヤと一杯飲みたいところだが、明日上京するので失礼する。
 帰館して書いたのがこれ。

8月5日(金) 上京/東京創元社イベント
 久しぶりに上京する。夏の新幹線はガキが多くて騒がしいことである。
 昼過ぎにホテルに荷物を置いて、都内ウロウロ。
 浅草から吾妻橋を渡り、源森橋まで。
  *
 前にこの位置から撮影したのは去年の5月で、379メートルの時であった。
 あと、銀座へ移動。もうCDは増やさないことにしたものの、やっぱり山野楽器へ。CDは1枚だけ購入。
 秋葉原の石丸2号館は閉店というか閉館というか、建物全体が営業終了のようである。
 夕刻、東京創元社へ。
 近くのベルサール飯田橋で「第2回創元SF短編賞」の関連イベントがある。
 「新人賞選考の舞台裏をセキララに語る」という物騒なタイトルがついているが、贈賞式のあと、大森望さん、日下三蔵さんとのトークイベントで、小松さん追悼、それに年間SF傑作選『結晶銀河』の話題がメインであった。
  
 受賞者の酉島伝法さんと、長谷川社長から賞状を受け取る佳作の空木春宵さん。
 酉島さんの「皆勤の徒」(『結晶銀河』の巻末に掲載/これが昨年度の傑作選に並んで、まったく遜色なしである)を読んだ人は、いったいどんな(不気味な)人物かと警戒するらしいが、じつに穏やかで明るい人である。
 空木さんのは王朝文学風の耽美的な作品だが、これが見事に「顔文一致」、なかなかの美青年である。
 午後8時半まで。
 あと、飯田橋近くのしゃれた酒場「でこや」の2階を貸切にして飲み会。
 昨年の受賞者の松永有理さんや、山田正紀賞の宮内悠介さん、今年の大森賞の片瀬二郎さん、堀晃賞の忍澤勉さん、候補作でおれが注目した山本ゆうじさんら、新進気鋭のメンバーも多く参加していて、たいへん楽しい会になった。
 それぞれが別に専門的な分野で(イラストとか言語の専門家であるとか)活躍されているようである。
 
 堀晃賞の忍澤勉さんと。ブルーノートのTシャツが渋い。
 気がつけば23時を過ぎている。
 深夜の帰館。

8月6日(土) 昼ビール/帰阪
 チェックアウトギリギリまで寝た。
 ホテルのロビーに降りると、ボンクラ息子その1が来た。
 土産にと「EATALY」のグリッシーニを持ってきてくれたのである。
 ちょっと歩いて、秋葉原駅前のビルの食道街で遅い朝飯というか早めのランチというか。
 「すし源」という店へ。
 「玉手箱」なるランチメニューがあって、ミニ海鮮丼が3つセットになっている。
 
 おれは冷や奴(トロとイクラがどさっと乗っている)にトマトのルイベ、さらに鰺のなめろうを追加、これらをシェアして生ビール。よろしいなあ。
 仕上げに「ミニちらし丼」をいただく。
 午後ののぞみで眠って帰阪。
 夕方に帰宅……と、近所は淀川方面へ向かう人でごったがえしている。
 そうか、本日は淀川花火の日であったのか。
 疲れていて、見物に行く気になれない。
 20時過ぎ、轟音が響くなかで、グリッシーニに生ハム巻いて、ワインを少し。
 花火の音が静まった頃に早寝。

8月7日(日) 穴蔵
 炎天なり。
 終日穴蔵にて過ごす。
 食事のために穴蔵と自宅を往復(片道約40秒)する以外、出歩くことなし。
 色々と読み、考え、しかし何の知恵も出ず。嗚呼。
 書くこともないので、世の中のために何の役にもたたないけど、本日のメニュー。
・朝 野菜ジュース、トースト、チーズ、トマト、アイスティ、梨2片
・昼 梅若そうめん(素麺に若布と梅干しのせてヒガシマルのぶっかけそうめんつゆをかけたもの)
・夜 枝豆、おくら山芋、板わさ、ボリュームだけは大きいチーズハムカツ、トマトその他のサラダでビール、あと、チーズとグリッシーニで「煌の島」水割り
 
 早寝するのである。

8月8日(月) 穴蔵/山下洋輔ハチ・ライブ
 立秋なれど炎天なり。新暦になって以来、毎年のことで、「暦の上では秋というのに……」というフレーズを聞くと腹が立ってくる。それなら実態に合わせて、二十四気をずらせばいいではないか、などと毎年愚考する。
 終日穴蔵。
 少しは仕事もするのであった。
 夕刻這い出て、専属料理人とハチへ。
 8月8日の恒例「山下洋輔ソロ・ライブ」である。
 例によって超満員。おれはチケット売り出し当日に入手したので、最前列、ピアノの正面である。
・I Remenber April
・YAWARAGI
・Elegy
・Chat in Dream
・Memory is a Funny Thing
・Rhapsody in Blue
・Bolero
 ラプソディにつづいて、アンコール曲としてボレロが演奏されるとは思わなかった。
 ただ圧倒された。
 山下さんは九州ツアーの帰路で、いったん帰京、また長崎へというハードなスケジュールらしい。
  *
 店の前で(タウン誌の取材があったので、ついでに後でおれも横に並んで)記念撮影してもらった。
 軽くビールを飲んで、早めの帰館とする。

8月9日(火) 穴蔵
 本日も炎天なり。
 終日穴蔵。ボケーーーーッと過ごす。(※)
 たちまち夕刻となった。
 「自宅」へ行って、枝豆、ヤッコ、カツオタタキなどでビール、焼酎ロック。
 早寝するのである。

 ※「終日穴蔵」と書くと、終日密室で痴呆状態で過ごしているような印象だが、それほどでもない。「穴蔵」は「わが書斎」と「タイムマシン製造業の大阪営業所」を兼ねているので、諸々の連絡業務(電話番ね)がメインなのである。たいした頭脳労働ではないので、ボケが進行しているのは間違いない。実際、わがボンクラサラリラーマン時代、(製造業にもかかわらず)電話好きというか、電話するのが仕事みたいなしゃべり好きが結構たくさんいて、40歳前後にしてボケているとしか思えなかったものなあ。おれも似たようなことになるのか。嗚呼。

8月10日(水) 大阪←→播州龍野
 早朝の電車で播州龍野へ移動する。
 2週間ぶりである。
 姫路駅の姫新線ホームから見る姫路城。
  *
 先月はじめから解体されていた旧駅ビルが取り壊されて、正面に修理中の姫路城が見える。
 普通のビルにしか見えないところがいいなあ。
 本日も炎天なり。
 午前9時頃に播州龍野に着き、午前中、タイムマシン格納庫にて少し作業。
 昼前に41℃になった。
 ちとやばいので、作業は中止。
 午後は実家関係の雑事の処理。
 夕刻に近い時間に大阪へ帰る。
 往復の車中、蓮見恭子さんの『無名騎手』(角川書店)を読む。デビュー作『女騎手』に続く競馬ミステリーで、相変わらず伸び悩んでいる主人公(女騎手)が魅力的だ。感想は近日中に別項に。
 ちと疲れた。
 専属料理人が並べてくれた粗食+ビールで水分補給、早寝するのである。

8月11日(木) 穴蔵
 炎天・猛暑なり。
 東からの直射光がひどく、さすがに7時から2時間、エアコンを稼働させる。
 終日穴蔵。
 少しは仕事もするのであった。
 確認したいことが色々出てくるが、蔵書の7割は播州龍野にあって、特に古い本を調べる場合は丸善ジュンクドーにもないので不便である。
 盆休み直前にJRで移動する気にもならないしなあ。
 夜は専属料理人が並べてくれた粗食(ゴーヤチャンプルなど)でビール、「煌の島」ロック。
 文藝春秋・臨時増刊号『吉村昭が伝えたかったこと』(長部日出雄氏による『破獄』のシナリオが掲載されている)を読みつつ早寝するのである。

8月12日(金) 穴蔵/石橋飲み会
 本日も炎天なり。
 このフレーズはええ加減あきてきたが、相手が天気だけにいたしかたなし。
 暑いのはまったく平気。変化がないから退屈なのである。
 穴蔵にて過ごす。
 夕刻に這い出て、阪急石橋へ。
 友あり遠方より帰省。3名集まり、格安海鮮居酒屋にて一献。盆と年末の恒例行事である。
 盛大に飲み食い。
 2時間でさっと切り上げて、20時過ぎに帰館。
 穴蔵にて名盤数枚を聴く。
 トミフラ師匠の「Over Seas」に落涙。
 早寝する。

8月13日(土) 穴蔵
 暑いのであった。
 暑さは平気といいつつも、午後2時、34℃になったので、エアコン稼働させる。
 終日穴蔵。
 仕事をする元気なし。食欲もなし。寝転がって、本を読んで過ごす。
 夜は専属料理人が数品並べたが、食材が複雑に混じり合ったメニューで、ほとんど食べられない。
 こんな日は、ヤッコとかトマトスライスみないなシンプルなのがいいのだが。嗚呼。
 
 自宅リビングから暮れゆく梅田を眺めつつビールを少し。
 ケニー・パロン師匠を聴く。

8月14日(日) 穴蔵
 暑いのであった。
 亡母の初盆ということで播州龍野へ行くかどうか迷っていたが、身内が行ってくれることになり、穴蔵にて過ごすことにする。
 動く元気なし。
 食欲もあまりなし。
 終日、本を読んで過ごす。
 14時、33.5℃で、昨日より涼しいが、エアコンは稼働させる。
 夜……専属料理人が「濃い味」のを並べたがほとんど残す。
 小鉢でビール、焼酎は飲むけどね。
 早寝。

8月15日(月) 穴蔵/ウロウロ/一斗缶事件の一考察
 暑くないのであった。
 本日は曇天で、朝の直射光は射さず、午前中は室温30℃だが扇風機だけで快適である。
 あまり仕事はしないけど。
 昼前から晴れてきた。
 午後、ちょっと外出。
 茶屋町アプローズ地下の郵便局まで、徒歩5分。
  *
 えげつない照り返しである。
 ついでに丸善ジュンクドーに寄るが、『国文学 解釈と鑑賞』9月号(筒井康隆特集号)はまだ並んでいなかった。
 30分ほど近所を歩くだけで、汗が噴き出し、シャツはビショビショ。
 豊崎西公園で、蝉がポタッと落ちてきた。
 
 蝉の声が喧しくなって2週間、そろそろ寿命のも多いのだろう。そこらに屍累々。
 蝉がパラパラ降ってくるのだから、これが本当の蝉時雨ではないかい。
 夕刻、シャワーの後、晩酌。
 枝豆・ヤッコ・サラダ少しは食せるが、ビーフシチューなんてほとんど無理である。
 ビールは普通に飲む。
 そろそろ早寝するのである。
・ニュース雑感。
 【大阪の一斗缶バラバラ死体事件】
 昨日東高津公園で手足首や頭部が詰められた一斗缶が見つかった事件、近くのコインパーキングでももう1個発見された。
 ニュースを幾つか見るに、目撃情報がバラバラ。
・作業服姿の男と白のワンボックスカーが目撃されている。
・最初はコインパーキングに2個テープが巻かれて置いてあった。
・東高津公園のはフタが開いていた? パーキングの方がはっきりしない。
・15日夕刻に3個目の一斗缶がコインパーキング近くで見つかる。
・腐乱した死体を犬が嗅ぎつけた。腐乱犬死体んである。苦しい。
 うーむ。
 おれが思うに、犯人も被害者も見当がつかないが、一斗缶を開封したのは別人であろう。
 それは、昨年10月におれが怒鳴りつけた「ゴミ漁り」男の類であると推量する。
 おれが怒鳴りつけたおっさんも、作業服みたいなジャンパーで軽トラを停め、普通ゴミとして紙袋に詰めて指定場所に置いた書籍封筒類を、袋を破って漁りだしたのであった。同一人物かどうかはわからんけど。
 おっさん、金目のものかと一斗缶を開けてみてギャーーーーーッと仰天、そのまま逃げたのではなかろうか。なぜすぐ警察へ通報しなかったのか? そりゃ普段から泥棒まがいのことをやっとるからよ。今頃は指紋を残したのではないかと、ビクビクしながら生活してるはずだ。まずこいつが任意同行を求められることになろう。
 おっさん、早めに出頭した方がいいぞ。

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