『マッドサイエンティストの手帳』862

●マッドサイエンティスト日記(2025年10月前半)


主な事件
 ・播州龍野いたりきたり
 ・同窓ランチ会(4日)
 ・森山威男ジャズナイト2025@ala(11日)


10月1日(水) 大阪←→播州龍野
 目覚めれは10月であった。10月1日では遅すぎるのであった……と毎年同じことを書いている気がする。
 わたくしはOctober CountryよりもOctober the First Is Too Lateを評価するものだが、『伊藤典夫評論集成』(SFスキャナー)を読んだ今年は特にその思いが強い。
 さらに、わたくしがSFを読み出した初期、大きな影響を受けた科学者はガモフ(『不思議の国のトムキンス』)とホイル(『暗黒星雲』)で、その後、ガモフ(ビッグバン)は認められホイル(定常宇宙論)は否定されたが、『10月1日では遅すぎる』は、定常宇宙論が否定された後(むしろ否定されたからこそ)、さらに凄みを増している、と、わたくしは思う。SFの本質は「IFの文学」であり、定常宇宙論が正しいかどうかは関係かったのである。
 ……などと考えながら、早朝の電車で播州龍野へ移動する。
 忙しい日である。
 午前、某社で某行政書士氏を入れて負の遺産についての相談。地籍を調査してもらった結果、問題は想像以上に大きく、解決には1年から最長2年ほどかかるという。あるピンポイントが確定していないだけで、影響は相当広い範囲に及んでいるのである。
 ともかくあと2年は生きねばならぬ。
 午後は実家の改造問題。某社に来てもらって打合せ。「あと2年」かかるなら、やはりこちらも居住可能にしておかねばならぬ。
 打合せ後、しばらく座敷で休憩。雑草に覆われた庭を眺める。
 市から「空き家対策の助言」が届くはずだ。
  *
 しかし、ここに机を置いて文豪気分で過ごすのも悪くない。
 思わぬかたちで「二地域居住」が実現する可能性がでてきた。
 ……そうか、ホイルの名作は「多地域居住SF」でもあるのだ。
 こちらも、あと2年間、ピンポイントが広域に拡大する二地域居住SFに挑んでみるか……と思いつくが、10月1日では遅すぎる気もする。
 夕刻の電車で帰阪。ともかく疲れた。

10月2日(木) 穴蔵
 東北は大雨らしいが、こちらは秋日和。
 穴蔵にこもって昨日の事後処理、各方面への連絡など。
 雑用が多いのはボケの進行をとめるには有効……と思うしかない。
 午後、少し運動。ジュンク堂経由して食品スーパーへ。液体系重量物の運搬手伝い。
 おや、「串樽」のあとに「食堂ニューベイブ」がオープンした。
  *
 串樽は「先代」が元気な時は隠れた名店だったが、じりじり衰退。限界だったのだろう。
 ニューベイブはどうなのか。近所(豊崎南公園前)のトンカツ屋の姉妹店らしいが、カウンターの居酒屋?
 トンテキ・豚串が売り物のようだが、職人仕事の店ではなさそうな。
 どうなることやら。しばらく様子見。
 週刊文春がスクープ2本。
・小泉進次郎側近が高市派の党員826人を勝手に離党させていた!
・前橋市長・小川晶(42)の乱倫すぎる私生活を「奥さま探偵団」が暴いた!
 この2記事に対して、
 小泉は即刻文春に抗議。
 小川は「乱倫すぎる」に抗議もせず。
 本日市議会で非公開の説明会。会見はなし。辞任表明もなし。
 ラブホ密会の相手は「年上の秘書課長」という。秘書課長といえば最も近い距離にいる相談相手。なぜわざわざ「密会」の必要があったのか??
 伊東市とともに、とうぶん楽しめそうな。

10月3日(金) 穴蔵
 曇。肌寒し。動くのが面倒な季節になるなあ。コタツに潜りこむには早いが。
 終活がらみで色々やらねばならんのだが、面倒になる。
 終日穴蔵。結局ボケ状態で過ごす。
・夕刻に珍妙なニュース。
 河村たかしが百田尚樹を告訴?!
 百田が河村に「俺が殴ったら死ぬぞ」と脅迫、ペットボトルを投げつけたと、告訴状を東京地検に提出したという。
 日本保守党の内紛? 百田が攻撃をしかけたらし。さすが「みじめアタッカー」だけのことはある。

10月4日(土) 同窓ランチ会
 朝だ雨である。肌寒し。10時頃にはやんだような。
 昼前に出て、阪急で越境、三宮へ。
 イタリアンの店に中高時代の同級生10人ほど集まってランチ。
 数年前に、公式的には最後の同窓会があったが、コロナその他の事情で行けなかった。
 その後、姫路〜神戸〜大阪あたりに住むメンバーに適当に声をかけて、時々集まっているらしい。
 数十年ぶりに会うメンバーも数人。
 久しぶりに一献……と思ったら、本当にランチ会で、ピザやパスタが並ぶが、ワインはなし。
(飲めるものだけ)ビール1グラスというつつましいもの。
 全員80を過ぎているし、昼間だし、幹事が健康志向・安全運転だから、まあよろしかろう。
 近所で「三宮と元町が境界をめぐって綱引き大会」をやっているという。へえ。
 誰かがスマホで見て「元町が勝った」と報告。
 ガヤガヤとあれやこれや。
 誰それの娘が酒心館に嫁いでいて、次回はそこでといつた話も出たから期待できる。
 と、今度は「自民党の総裁選」をやっているという。
 誰かかスマホで見て、高市と小泉の決選投票になったという。ほう。
 高市が新総裁らしい……という報告あたりでオヒラキとなる。
 ランチ中に、似たようなレベルの闘いが始まって終わっていた。
「コップ一杯の戦争」を思い出すなあ。

10月5日(日) 穴蔵
 曇時々雨の予報だったが、終日曇。肌寒い1日であった。
 終日穴蔵。
 終活をやらねばならぬが、気乗りせず。
 播州龍野関係が2年ほどかかるとなると、すべて2年先でいい気がしてくる。
 むしろ2年間の財政を見直さねばならぬ。
 ボケーッとしていてはいかんのだが、ボケ状態で、たちまち夕刻。
 夜は鶏のトマト煮などが並ぶ。昨日のランチよりだいぶ豪華な。
  *
 専任料理人の特別な日なのであった。後期高齢者まではまだ数年あるが。
 ありがたくビール、久しぶりにワイン。

10月6日(月) 穴蔵
 晴れた秋日、終日穴蔵にこもり、色々ある終活のひとつに集中する。
 集合住宅がらみ。
 この30年ほど、理事会とは別に、管理規約の担当を務めてきたのだが、痴呆症が進行してきたので退任させてもらうことになり、過去の資料整理である。
 主な仕事は数年に1度改訂する管理規約(冊子)の版下作りだが、続けているうちに、規約外のややこしい問題の相談も受けて、管理規約には入らない「内規」の方が増えてきた。
 小は集合住宅内の慶弔事項から、大は認知症の独居住人問題とか、隣接する市営住宅のブロック塀問題とか。
 数年前に民泊禁止を明記したのは功績であろう。
 夜、理事会にゲスト出席。事情を説明して了承される。ただ、後任はいそうにない。
 次の改訂版の版下作成まで担当して、関連資料とともに引渡して終了。データ(事例集)の活用は理事会で検討していくということで落ち着いた。
・遅めの晩酌。
 おっ、1ヶ月ぶりに揚げ物が並んだ。
  *
 専任料理人の左手火傷は天ぷら油が原因であった。まだ包帯はとれず。
 大丈夫かと聞くと、怖いけど、たまにはフライも食べたいから……ということらしい。
 こちらは串カツ屋が恋しくなっていたところ。ありがたくいただく。
・と、長男からメール。田園都市線が事故で運休。渋谷から横浜に帰るのに、日吉から地下鉄グリーンラインに乗り換え、最後は某駅から2.5キロを歩くコースを選んだという。
 ところが、似たことを考える横浜市民は多く、日吉駅が大混雑で、乗れるかどうかもわからない、と写真入りで中継メール。
 がんばってくれよ、と画像を楽しみつつ、こちらは気楽にビールを飲む。
 いかんなあ。

10月7日(火) 穴蔵
 晴。終日穴蔵。終活のひとつに集中する……つもりだったが。
 本の整理、これは10冊も進まず。いつものことなり。
 午後、市営廃墟に消防車と隊員20名くらいが到着。
 隊長殿が「これから消防訓練を行います」とこちら?にアナウンスする。
 南側棟の一室を火事場に見立てて訓練開始。
  *
 ホースも3本引き、どういう装置を使うのか、窓から煙が噴出し、ガスマスクの隊員数人が突入していく。
 部屋からは派手な音が響いてくる。中が見えないのが残念だが。
 ぶっ壊していい建物だからリアルな訓練ができるのだろうな。
 8月の道頓堀火災で隊員2名が死亡したのを受けての訓練なのかも。
 ハシゴを掛け、ロープをたらし、放水もあり、なかなか面白い。
 ノラたちは怯えてどこかに逃げているのであろう。姿見せず。
 また頻繁に……できれば恒久的な訓練施設として使用してほしいものだ。
・夜はBSで『口笛が流れる港町』を見る。渡り鳥シリーズの第2作。アキラは冒頭からギターを背負って馬で現れ、荒れ地で黒づくめのジョーと対決する。流れ者と殺し屋。ルリ子は寂れた牧場の娘。ついでに「港町」といいながら海も港も出てこない無国籍ぶり。白木マリの踊り子など、その後のパターンが出揃っていて、実質シリーズ第1作といえる。60年ぶりだが、覚えていたのは冒頭シーンだけだった。

10月8日(水) 某院往復
 晴。午前、歩いて天六の某院へ。年に一度の定期検査である。
 X線撮影の後、面談3分ほどで終了。簡単なもの。
 といっても、5年前拷問に近い入院生活を思い出す機会でもある。
 10月1日は手遅れではなかった。
 用心して生活しなければ……と肝に銘じつつ、来年10月の予約をして帰館。往復約5000歩、きちんと歩けた。
 午後は穴蔵。終活を少し進める。体が動くうちに片づけておかねば。

10月9日(木) 穴蔵
 秋日和。終日穴蔵。
 少しは仕事もするのであった。意外にはかどる。珍しい1日であった。
 午後、またも市営廃墟が騒がしい。本日も消防訓練。
  *
 北棟、激しい放水のなかを隊員諸君がハシゴをよじ登っていく。
 一昨日とは別部隊なのであろう。がんばるなあ。
 北消防署だけでなく、他の区からも訓練に来るのだろうか。
 掲示では「消防局総務部施設課」が来年3月末まで訓練施設として管理しているらしい。
 市民には大事な訓練である。恒久的に使ってほしいと願う。

10月10日(金) 穴蔵
 秋天、午後はしだいに曇る。
 終日穴蔵。一応マジメに机に向かう。
 明日は久しぶりに遠出する予定なので、それまでに一区切り。
 たちまち夕刻。
 夜は専任料理人が和風を並べた。
  *
 サンマは全身を載せる皿がないので途中で切ったという。
 それなら小骨を取ってほぐしてくれればいいのだが。
 などと無粋なことはいわず、久しぶりに冷酒を少しばかりいただく。
 うーん、呉春が飲みたいところだが……一升瓶は一生禁止、でもないが、微妙なところだ。
 秋の夜は更けゆく。

10月11日(土) 森山威男ジャズナイト2025@ala
 曇天。世間は3連休の初日である。
 普通なら穴蔵にこもっているのだが、本日は特別で、年に1度「新幹線に乗る日」である(正確には去年乗らなかったから2年ぶり)。
 午前、新大阪へ行き、名古屋まで行く。
 新大阪駅は大混雑。キャリアケース引いて降りてくるのが圧倒的に多い。
 新幹線の混み具合は、2年ぶりだから、よくわからん。ひかりの自由席にする。
・午後、千種駅前で名古屋在住のIさん(隠す必要はないか。今高英一さん)と会う。
 毎年、可児市に向かう前に会うのが習慣になっている。
 ジョージ・ルイスとコルトレーンについて(コレクションも含めて)日本でいちばん詳しい方で、ラスカルズの大ファン。
 河合さんを偲ぶ会以来、2年ぶりである。
 いつもはあれこれジャズ談義だが、河合さんのいない今、お互いの病気や終活の話が増えたなあ。
 しかし、来年も会いましょうということで、ひとり可児へ向かう。
・夕刻、可児駅からala(可児市文化創造センター)への長い一本道を歩く。今では懐かしの散歩道になった。
 幸い雨も降らず。
 夕暮れのalaもいい雰囲気だ(毎年9月だが、今年は1月遅い)。
  *  *
 森山威男JAZZ NIGHT 2025、今年で25回目だったかな。昨年欠席で、皆勤記録は途切れたが、めげずに復帰である。
 ロビーでおなじみの皆さんに挨拶。
 18時30分に開演。
 今年は、森山威男(ds )川嶋哲郎(ss,ts)田中邦和(ts)魚返明未(p)須川崇志(b)のカルテット。
 小編成だが、企画が面白い。
・第1部はメンバーそれぞれの音楽歴紹介とそれにちなむ自薦曲。
 威風堂々(魚返明未)
 Night & Day(田中邦和)
 You Don't Know What Love Is(魚返明未)
 Giant Steps(川嶋哲郎)
 なぜこの曲か。エピソードの紹介が(森山さんの絶妙の誘導もあって)面白いのだが、とても書ききれない。
 塩之谷さんのレポートに期待(何しろ森山おっかけで北京上海のブルーノートへ行き、来月はロンドンまで行くというのだから)。
 曲想がすべて異なるのも見事な構成。
・ジャンケン大会挟んで、第2部は、森山さんの「自伝的」話になる。
 子供の頃のことを書き出したら面白くなり、noteに「怪物の目に涙」と題して連載開始らしい(帰路の電車内でちょっと見たが、おもしろそうな)。
 それにちなんで、演奏歴の節目になった思い出の曲が演奏された。
 Softly As In a Morning Sunrise(学友だった加古隆さんの思い出)
 Greensleeves(山下洋輔トリオを離れる最後の欧州ツアー)
 Gratitude(井上淑彦さんの思い出)
 そしておなじみの定番、
 Sunrise 〜 Goodbye
 終演は21時。
 皆さんと終了後の雑談を楽しみたいが、ここ数年のパターンで、直ちに今渡まで歩き、犬山〜名古屋と名鉄を乗り継ぎ、最終に近い新大阪行のぞみで深夜の帰宅となった。
 久しぶりの新幹線だったが、疲労感もなく、いい強行軍だった。

10月12日(日) 穴蔵
 曇天。3連休の2日目。
 終日穴蔵。何もせず。
 昨日の反動であろう。睡眠が不規則になり、ただ眠い。
 昼前後に驟雨があったらしいが、寝ていて気づかなかった。
 台風23号の影響か。22号につづいてまたも八丈島に接近中らしい。
 大阪直撃なら面白かったのに。
 万博最終日に7年前が再現されれば、大屋根リングなど全部きれいに片づいたはず。

10月13日(月) 穴蔵
 陰のち晴。終日穴蔵にあり。
 3連休の最終日。終活をぼちぼちと進める。
 時々テレビニュースを見るが、万博閉幕とガザ人質解放ばっかり。前者はやっと、後者は明日見ればよい。
 唯一興味深いのが尼崎の老人刺殺事件。
 83歳の老人が自宅居間で近所に住む明石愛花(23)に包丁で首を切られて死亡。
 動機は不明。他人事とは思えんなあ。注目して見守りたい。

10月14日(火) 穴蔵
 曇天。
・朝、近所の某院へ。定期健診。数値は極めて良好であった。
・午後、かんべむさし氏が来穴蔵。100日ぶりである。
 仕事場を大阪から西宮に移して以来、連絡が途絶えていた。
 環境激変で何かあったのではと心配していたのだが、基本的に通信環境をPCからスマホに移行したためらしい。
 本日は茶飲み話……というか、互いの近況報告など。あわせて当方の終活について色々アドバイスを受ける。
 次回からは、ビール媒介のSF検討会スタイルに戻すことにする。お互い、もう以前のようには飲めないが。
・夜、BSで『渡り鳥いつまた帰る』を見る。65年ぶり。これは細部もよく覚えていた。
 アキラは馬で現れ、最初からジョーがからむ。ルリ子は被害を受けている家の娘。キャバレーのダンサーは白木マリ。
 渡り鳥シリーズの骨格が出来上がった作品で、この後の『赤い夕陽の渡り鳥』と『大草原の渡り鳥』をあわせた3本が面白かった。
 ジョーは『ろくでなし稼業』以降、主演にまわってシリーズを抜けるから、急に面白くなくなる。
 中三から高一にかけての、本当に短い期間だったのだなあ。

10月15日(水) 穴蔵
 午前1時に目覚める。このところ深夜(1〜2時)起床が常態化している。
 無理して眠ることもないが、熟睡できず、昼間うたた寝すること多し。
 要するに終日眠く、無為に時間を過ごすばかり。老化である。
 昼間は照り翳り。晴れ間の方が長いが、時々暑い雲が通過していく。
 予報では雨だったから、終活予定を変更したのに(晴天でなければできぬことあり)困ったものだ。
 終日穴蔵。
 外出は飲料系重量物の運搬のみ。
 たちまち夕刻。北梅田の空を眺めつつビール。
  *
 明日は曇時々雨の予報(また動けない)だがホンマかいな。


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