『マッドサイエンティストの手帳』817

●マッドサイエンティスト日記(2023年11月後半)


主な事件
 ・KLL例会(17日)
 ・河合良一氏を偲ぶ会(19日)
 ・播州龍野いたりきたり


11月16日(木) 穴蔵
 晴。後に陰。終日穴蔵にあり。
 おとなしくしていることにする。
 幸い少しは書ける。
 夜はカジキのフライ、アスパラなどでビールを少しばかり。
 断腸亭の呪縛はどうにか通り過ぎられそうである。

11月17日(金) KLL例会
 目覚めれば「断腸亭の呪縛」を拭け出していた。ひとまずホッ。
 本日から動くことにする。
 昼前に出て阪急で越境、三宮へ。
 梅田はやっと雨があがったと思ったら、神戸は秋晴れであった。
 東遊園地をしばらく散歩。
  *
 先月と同じ位置から撮影するが、もう冬枯れである。
 午後、神戸文芸ラボ(KLL)の例会に出席。
 本日は出席者6人。議論はやや低調であった。
 合唱団のエッセイ。「暗譜」するかしないか。記憶術色々。その音楽的効果は。暗譜の能力と年齢など、今まで気に留めなかった問題が色々あるのだった。前の団員の背中に楽譜を貼りつける方法……最前列の団員は優秀なのである。
 合唱を視覚的に楽しむ方法を教えてもらったような。
 午後4時過ぎに建物の外に出ると、とつぜんの雷雨。地下街の入口までの100メートルでかなり濡れた。
 梅田についてもまだ雨。天気急変の日であった。
 帰館するとややこしいメールあり。
 数年前のわが担当業務に関する内容。
 明日から色々動かねばならぬ。1週間さぼっていた反動であろう。

11月18日(土) 穴蔵/西長堀
 朝、地下鉄で西長堀へ。9時過ぎに中央図書館に入る。
 午前中「勉強」。古い工業規格を探して最新版と照合する。
 幸い1994年版まである(保存期間30年ということか ?)。本当は40年前のを見たいのだが。
 昼に帰館。午後は穴蔵にこもり資料作製。なんとか形になってきた。
 余禄とでもいうか……異星で遭難した老朽宇宙船の修理マニュアルの作成を依頼された退役技術者という設定を思いつく。
 あるいは、タイムマシンの検定基準をでっちあげる設定の方が面白いか。
 などと愚考するうちに、たちまち夕刻。
 夜はおでんで一杯。
 熱燗を一杯やって、今日が寒い一日であったことに気づく。
・「大麻グミ」のニュースを見て、製造会社(製造業とは思えないが)が近所のビルの一室らしいことに気づく。
 S病院の阪急隔てた北側にあるMビルと思う。
 見物に行ってみたいが、面白いこと(報道陣が押しかける騒ぎなど)はもう終っているだろう。

11月19日(日) 河合良一氏を偲ぶ会
 昨日とは打って変わり、晴れて穏やかな日。
 昼前に出て、京橋のホテル・モントレへ(専任料理人は先に出て受付を手伝っている)。
「河合良一氏を偲ぶ会」
 8月に亡くなられた河合良一さんの「お別れ会」である。
 ロビーにはジョージ・ルイスから贈られたクラリネットなど貴重な展示もあり。
  *
 ニューオリンズ・ラスカルズのリーダーという以上に、ジョージ・ルイスの後継者であり、海外との交流も広く、トラディショナル・ジャズの世界的クラリネット奏者だったから、東京や地方など遠方からの出席者も多く、ODJC会員だけで満席である。
 クリスの司会で、ODJC会長・住友さんの挨拶、黙祷、福田恒民さんの音頭で「献杯」あり。
 あと、ODJCのメンバーバンドはじめ、多彩なグループによる追悼演奏が行われた。
  *
 曲目は当然ながら讃美歌、ゴスペルが中心になる。
・平祐バンド(加藤平祐さん中心のグループから始まり、
・ニューオリンズ・レッドビーンズ
・サウスサイド・ジャズバンド
・阿部寛(gt)さんのグループ
・ニューオリンズ・フォーティーズ
・マホガニーホール・ストンパーズ
・ハイタイム・ローラーズのメンバーにTonTonが参加
 ……これらにゲストも参加したりで、とても書ききれない(詳しいレポートはODJC-HPに掲載される予定)。
 河合さんを敬愛するメンバーが全国から集まった雰囲気だった。
 演奏の合間に、海外からのビデオによる弔辞や、過去の貴重な映像も流される。
・そして最後にニューオリンズ・ラスカルズ登場。
 河合さんのブランクをどうするか……この日は早稲田きっての後継者というか愛弟子というか、アルバート式を吹く加藤平祐さんが務めた。
  *
 福田さんとの「Burgundy Street Blues」が泣かせる。
 最後に、最後の演奏となった7月22日のニューサンでの映像が流され、ご家族からの挨拶で閉会となった。
 寂しいことだが「こちら側での演奏」はもう聴けない。
 挨拶に「今頃は先に逝った世界中のメンバーたちとの演奏を楽しんでいるだろう」という声が多かった。
 参加者の多くが「そろそろ向こうでそれを聴くのも悪くないな」と感じる年齢なのであった。

11月20日(月) 穴蔵/ウロウロ
・朝。近所の某院で定期健診。数値は極めて良好であった。
・昼。地下鉄で淀屋橋へ。市内でここにしかないATMで事務処理。
 天気がいいので、本町までブラブラ。
 しばらく(コロナ関係で3年ほど)来ないうちに、街並みがずいぶん変わっている。
 道修町通に神農祭(11/22〜23)の提灯「門」がずらり。恒久的な設備ではないはずで、それにしては大掛かりだ。本町勤務の時代に神農さんに来たことはなかった。
 三休橋筋の変貌が大きい。確か東*紡のビル跡がタワービルになっている。
 綿業会館だけは昔まま。
  *
 ほっとするなあ。
 旧勤務先の前を通り、御堂筋へ。両側、工事が色々進行中である。
 某規格協会に寄って書類購入。本町から地下鉄で帰館。
・午後。穴蔵にて工業規格関係の書類作成。
 少しはマジメな作業もするのであった。
・夜。豚肉のなんとかとパスタなどでワインを少しばかり。
 昨日に引き続きCDでラスカルズを聴く。

11月21日(火) 穴蔵/ネコ団体
 早寝したら深夜に目覚めた。ゴミ出しに出る。
 いつものエサやりオバサンが作業中。ネコはいない。
  *
 公園の半分が工事塀で囲われ、ネコのウロチョロ・スペースは市営廃墟に限られて、エサ場は狭められた。
 と、廃墟のフェンス内で作業中の人がいる。7月に見たことがある○○系の女性である。どこから入ったのか。
 ちょっと近寄ったら、向こうから話しかけてきた。
「ネコの罠を仕掛けてます。先日から5匹捕まえました」へえっ。やはり保護猫団体の一員であったのだ。
 先日から1,2匹しか見かけないのはそのせいか。
 どんな団体なのかは聞かなかったが、昨年の秋の「サクラ耳作戦」実施なのだろう。
  *
 罠を置いて、近くの路上から見守るらしい。
 寒いので付き合えず。
 穴蔵に戻り睡眠。朝6時に見たら、罠は消え失せていた。
 成果は不明。そのうちサララ耳が戻ってくることになるのだろう。
 いずれにせよ、かかる団体の活動の実態を初めて目撃したのであった。
 終日穴蔵。
 秋晴れの一日。たいしたこと出来ぬまま夕刻。
 晩酌。早寝。明日が早いのである。

11月22日(水) 大阪←→播州龍野
 晴。早朝の電車で播州龍野へ移動する。
・タイムマシン格納庫で在庫部品のチェック(相棒の代行作業)。
・実家の植木のチェック。
・シルバーセンターと打ち合わせ。
・金融機関。
・龍野東端の自動車会社まで行き、本竜野まで送ってもらう。
 姫新線は昼間のダイヤが1時間1本になって不便なことである。
 姫路まで出たら山陽本線はまともに走ってない(午前中は人身事故で運転見合わせだったらしい)。
 山陽電鉄〜新開地から阪急に乗り継いで帰宅。
 ちと疲れた。

11月23日(木) 穴蔵
 目覚めれば勤労感謝の日であった。
 晴。小春日和である。
 神農祭に行ってみたいが、御堂筋は某パレードあり、アホで大混雑であろう。
 日頃勤労されている方々に感謝して、本日は終日穴蔵にこもる。
 ベッドで読書。たちまち夕刻。
 専任料理人がほうれん草を豚肉で巻いて何やらトッピングしたようなものを作った。
 残り物の整理メニューだとか。
  *
 これでビール、ワインを少しばかり。
 早寝することに。

11月24日(金) 穴蔵
 早寝したら深夜(0時過ぎ)に目覚める。
 エサやりオバサンが作業中で、エサ場に4匹がウロチョロしている。
  *
 1匹は左耳先端がカットされているが、他はよくわからん。
 先日「5匹は捕まえた」ということだったから、術後、また戻されているのだろう。
 これから寒くなる。新サクラ耳たちは初めての冬を市営廃墟で迎える。どうなることやら。
 朝まで……というよりも、昼前まで小間切れ睡眠というか「分割睡眠」というか、寝たり起きたり何か読んだり。
 晴れて暖かいようだが、終日穴蔵。着替えもせず。
 どうも「断腸亭の呪縛」を通り過ぎてから、気が緩んでしまったような。
 健康上の理由もあり、来週初めまではこんな生活をすることに。いいではないか。

11月25日(土) 穴蔵
 晴。相変わらず寝たり起きたり。
 昼前に天八のスーパー往復。専任料理人のお伴をして重量物(液体系)のポーター役を務める。
 外出はこれだけ。あとは穴蔵にこもり「分割睡眠」。少しは本も読むのであった。
 たちまち夕刻。
 ローストポークなど並べてもらって晩酌。
  *
 ビール、ワイン少しばかり。
 あと2,3日、こんな日々を続けさせていただく……つもり。

11月26日(日) 穴蔵
 相変わらず睡眠不規則。
 5時前に目が覚め、MBS「らくごのお時間」を見る。
 10周年記念で、先月の「動物園」につづいて、本日は「時うどん」を笑福亭鉄瓶が演り、小佐田定雄、今井の社長、歴史博物館の学芸員の3人が「深掘り」する構成。この企画、2話で終わりらしいが、面白いからぜひとも続けてほしい。「質屋」「花見」「天神祭」など、深掘りしてほしいネタは多いからなあ。
 晴。終日穴蔵。寝たり起きたり。無為徒食。
 いいではないか。

11月27日(月) 穴蔵
 早朝にBSニュース見てたら、とつぜん「ハブが逃げた」と大写し。慌てて切る……が、ど太いのを見てしまった。
 わたくしはニュースと映画以外、テレビはほとんど見ない。特に「自然」や「秘境」や「探検」系は、自宅での食事時間にも拒否している。
 おかげで、ここ数年、実物も映像でもS字型を見ない幸せな日々が続いてきたのに。嗚呼。
 しばらくはニュースも見られそうにない。これを最後にしたいものである。
 終日気分悪し。穴蔵にてふて寝。

11月28日(火) 穴蔵/ウロウロ
 晴れたり曇ったり。
 午前、近くの「風格ある建物」に行く。
 初めてここを訪れたのは9月はじめで、百日紅が咲いていた。
 もう紅葉の季節である。
  *
 手塚治虫さんの学び舎跡で、ここで人生を終えるのもいいかなと思っていたのだが……
 本日で「もう来なくてよろしい」と申し渡された。
 まあ、喜んでいいのであろうが。
 午後は穴蔵にこもって雑事の片づけ。
 もう11月が終ろうとしている。
 断腸亭の呪縛も含めて、ややこしいことからすべて解放された。
 12月は気楽に暮らすことにしよう。

11月29日(水) 穴蔵
 晴。終日穴蔵。
 午前。一応マジメに雑事をこなすのであった。月末と年末の処理事項が重なる。
 昼は専任料理人が、白エビ掻き揚げ・レンコン天、新蕎麦などを並べた。
  *
 これでビール、あと熱燗一献。たまらんなあ。
 昼間からこんなことやってていいのか。いいのである。一応「快気祝い」ということにする。
 しばらく午睡。たちまち夕刻。
 懲りもせず、夜はオムレツやサラダなど並べてもらってワインを少しばかり。
 年内は酒池肉林で過ごすことになりそうな。
 本を読みつつ早寝。

11月30日(木) 穴蔵
 晴。終日穴蔵。
 月末の雑事が色々あるところに播州龍野からの連絡もあり、ややこしいことである。
 たいした量ではないが、老化で処理スピードが低下しているから、やたら忙しく感じるのでろう。
 そこへニュース色々。
・18歳女性の死体遺棄で「堀」という男を逮捕。これと別に女性の交際相手が別件で逮捕されていて、こいつは名前が公表されない。
 堀が殺人犯みたいで、迷惑なニュースだ。もうひとり(たぶん殺人犯)も公表しろ。
・キッシンジャー死去、100歳。まだ生きていたのだ。某宗教家もだけど。残るは○○ツネか。
・万博まであと500日でチケット発売とか。へえっ。買うアホがいるのか? その一方、工事の遅れから、延期しろの声も多いらしい。わたくしは6年前から「来るな」で、これは今もまったく変わらない。まだ遅くない。即刻中止しろ。
 ……などと考えているうちに11月が終ろうとしている。
 ややこしい月であったが、断腸亭と体調不安は終った。来月からは気楽な余生である。

「断腸亭の呪縛」(追記)
・日記は作者と同年齢で読むのが面白い。これを筒井康隆「SF幼年期の中ごろ」で知って、それから「断腸亭日乗」に移った。断腸亭の享年を過ぎて、そうか、まだその先があると気づいた。『偽文士日碌』は笑犬楼師匠の86歳までの日記ではないか。むろん読んでいるが、わが年齢に合わせて読んで行く楽しみが残されている。さらに笑犬楼師匠は「波」に今も日記に相当するエッセイを連載されている。あと10年は保証されているのである。
・その「波」に川本三郎氏が『荷風の昭和』を連載中。完成すれば『荷風と東京』と並ぶ代表作になるだろう。
 12月号ではキャサリーン台風の後、浅草通いが始まる昭和23年頃まで。あと3年くらいかかるのではないか。これも楽しみである。
 川本氏はわたくしより数ヶ月若いはず。つまり年明けくらいが荷風の享年に当たるのではないか。無事を祈る。
・断腸亭を読み始めてから、タイトルの由来が大久保町時代に庭に生えていた秋海棠(断腸花)であると知った。それまでは勝手に「断腸の思い」だろうと思っていた。笑犬楼の由来は愛犬ピーター(セントバーナード)である。ともにダンディズムが感じられる。このふたつは日本の近現代文学に残る「名号」と思っている。


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