『マッドサイエンティストの手帳』773
●マッドサイエンティスト日記(2022年2月前半)
主な事件
・穴蔵の日々
2月1日(火) 穴蔵
目覚めれば2月であった。
相変わらず変わり映えのしない日々がつづく。
晴れたり曇ったり。ドタマ不調でまるで働かず。終日穴蔵にあり。
石原慎太郎の訃報にほーーーーっと思った程度。
たちまち夕刻。
大阪のコロナ感染者は新記録(11,881人)だが、東京はピークを過ぎたのか? よくわからん。先が読めないな。
いずれにしても、出歩かない日がつづきそうな。
夜は専属料理人が早春パスタ(若ごぼう)を作った。
*
これでワインを少しばかり。
今回の若ごぼうはこれでおしまい。焼酎湯割り、日本酒上燗、ワインの3種類が楽しめた。
お楽しみはこんなことだけである。
2月2日(水) 穴蔵/ウロウロ
天気は晴。それ以外、この1週間ほど相変わらず。アタマはボケ状態、穴蔵を出る気にならず。無為徒食。
オミクロン蔓延だが、少しは体を動かさなければ。
午後、郵便局まで出向く用事あり、人の少ない豊崎郵便局へ行く。
ついでに本庄公園〜豊崎長屋〜南浜墓地と歩き、A先生研究所の横を抜ける。
日差しはあるが、日陰は寒く、体が冷えて来る。
「かんさいだき」常夜燈の前を通過(あえて関東煮といわない気骨!)。A先生も時々来られる老舗(40年ほど前はお初天神の路地にあった)である。
*
コロナ禍で、2年以上来ていない。申し訳ない、しかし、一杯飲りたくなるなあ……と思いつつ帰館。
と、夜はおでんの鍋が卓上に出てきた。
わかっているではないか。
上燗一献。お楽しみはこれだけだ。
2月3日(木) 穴蔵
晴。終日穴蔵にあり。
オミクロン猖獗をきわめ、とても出歩く気分になれず。
夕刻、大阪の感染者は19,615人という。東京は2万人超えで、大阪も明日には並ぶか……と思ったら、しばらくして、大阪は11,990人に修正された。7,625人はデータ入力の遅れで、これまで集計に反映されなかった分だとか。
ということは、この数日、1万1〜2千人で推移していたのは、1万4〜5千人だったということか。
感染者の推移が信用できなくなってくる。
1,000〜2,000人くらいは誤差の範囲に思えてくるから恐ろしい。
2月4日(金) 穴蔵
本日も晴。終日穴蔵にあり。
コタツでボケーーーッと過ごす。
大阪の本日の感染者は13,561人。ただし2921人は集計漏れを上乗せした数字という。本日は10,640人ということか。
過去のデータも信用していいのか迷うが、ここ数日、1万人を超えているのは、一応信用していいような。
出歩かなければ同じか。
高山羽根子・酉島伝法・倉田タカシ『旅書簡集 ゆきあって しあさって』(東京創元社)
高山さん、酉島さん、倉田さんという、まことに異色のメンバーが、それぞれの旅先から書簡を送り合った。
その旅先はまちまちで、高山さんは「東南アジアを思わせる国で、生活習慣や行動様式がどこか現実とずれていいる世界」、酉島さんは「泥の国で、なぜか苦役に巻き込まれている」、倉田さんは「飛行機の墓場みたいな場所で歩き回っている」。
これが、それぞれの旅のスタート。「得意な世界」から始まっているように読める。
*
ところが3人の旅先は、奇妙な階層世界や、高山地帯、戦地、巨大な河で分断された世界、寒冷地帯……次々と様相を変えていく。
それらは想像力で創られた架空の世界、昔風にいえば「内宇宙の旅」だが、それぞれが書簡に刺激されて次の「旅先」に影響してくる。 その変化の様相も面白いのである。
3氏は2010〜1年にデビュー、この「書簡集」はネットで2012年(まだ単著のない時期)から10年近くに渡って書き継がれてきた。
その間の、それぞれの仕事と照らし合わせると、これはまことに貴重な記録であり、贅沢な成果といえる。
三人とも絵心があり、「土産」として添付されたイラストやフィギュアの写真も楽しい。
巻末に宮内悠介さんがエッセイを寄せられている(宮内さんも同時期のデビュー)。
2013年に高山さん、倉田さんらと、酉島さんのいる大阪へ旅した話で、これも「書簡」のひとつになるだろうか。
大阪での「文学フリマ」出展のためで、そういえばこの日、大阪で前夜祭があり、わたくしも参加している。
もう9年前になるのか。この時すでに3氏は旅の途上にあったのである。
田中啓文『元禄八犬伝4 天から落ちてきた相撲取り』(集英社文庫)
上記の記事を書いていて思い出したことがあり、田中啓文さんの最新刊について。
おなじみ「元禄八犬伝」4巻目。さもしい浪人・網乾左母二郎が活躍する(正義感からでなく、金になりそうだと剣を抜く)新釈八犬伝、ますます快調である。
*
今回は尾根を突き破って取的が落下してくることから騒ぎが始まるが……これはもう読んでいただくしかない。
相撲取りが落下してきたことに関しては、小松左京「空から墜ちてきた歴史」→横田順彌「空から墜ちてきた轢死体」→「空から墜ちてきた力士」とつながるのではないか、というのが山岸真氏の卓見である。
なるほどと感心したが、出所はもうひとつあるような気がする。
上記の「文学フリマ前夜祭」は2014年にも同じ場所で開催された。
この時(田中啓文さんや円城塔さんもきていて)「オブ・ザ・ベースボール」(空から野球が降ってくる)から逸脱して、みんなで「空から何かが降ってくる」SFを書こうかという話題でちょっと盛り上がった。8年前のことで忘れていたのだが、宮内さんのエッセイがらみで思い出した。田中啓文さんは頭のどこかでこの時のことを覚えていて、空から相撲を降らせたのではないか。
(作者ご本人の意見では、映画『シャークネード』(空からサメが降ってくる)からの発想らしい。2/5)
2月5日(土) 穴蔵/記録中断
晴れているが寒そうな。
朝から思い悩む。
本日、可児市alaで森山威男 JAZZ NIGHT 2021の日である(昨年9月の振替公演)。
森山ジャズナイトは第1回のJAZZ NIGHT 2001以来20年(前身ともいえる2年前の多治見コンサートを入れると22年)皆勤なのである。
しかし、この感染状況ではなあ……
記録が途切れるのは無念極まりないが、昼のニュースでは、北陸・滋賀・岐阜に大雪警報が出ている。行けても(新幹線の遅れで)帰れなくなりそうな。
15時頃まで迷うが、時間切れとなり、可児ala行きは断念する。
夕刻、大阪の感染者は1万人超え(正確な数字はまたも怪しいが)。可児市に迷惑をかけずに済んでよかったと、自分を納得させるしかない。
夜は専属料理人が湯豆腐、ピカタ、新ジャガのバター煮、サラダなど並べた。
*
ala、今頃は最高潮であろうな。
こちらは雰囲気を変えて、「hush-a-bye」「おぼろ月夜」を聴きつつ、ビール、湯割り一献。
しばらくはこんな生活がつづくことになろうか。
2月6日(日) 穴蔵
晴。寒い日である。6時、ベランダは4℃、正午に8℃。
気温よりも感染者の多さで、出歩く気分にならず。
ただし、食料品は買い出しに行かねばの娘、午前に専属料理人の従者として、重装備で天八のスーパーまでお供する。
重量物(ビールなどアルコール飲料系ね)の運搬である。
あとは終日穴蔵。
コタツで本を読んで過ごす。
2月7日(月) 穴蔵
晴れて寒し。オミクロン株猖獗をきわめ、終日出歩くことなし。
午後、BSで『遊星からの物体X』を見るが、20分ほど昼寝してしまった。10年ぶりかな。ぜんぜん怖くない。今の記憶では、小学時代に見た『遊星よりの物体X』の方が恐ろしかった。特撮技術は稚拙だし、あのヨタヨタ歩きも変だったが、怖さは一級品と思う。
夜、BSで『マッドマックス 怒りのデス・ロード』を見るが、設定がさっぱりわからず(シリーズをまったく見てないからか)、15分で断念。今の記憶では、中学時代に見た『地獄特急』(ショーン・コネリーが出ていた)の方が、よほどスリリングだった。
何事も初心であるなあ。
2月8日(火) 穴蔵/ウロウロ
晴……というよりも薄曇か。さほど寒くはなさそうな。
不調である。
なーーーーーんもする気力が沸いてこない。
明らかに運動不足。この10日ほど、ほとんど動いていないからなあ。
午後、専属料理人の買い物にお供して「重装備」で歩くことにする。
久しぶりに梅田方面。某ドラッグで買い物(コロナ関係ではなく、入浴剤など)。
阪急のコンコース近くだったので、2階の陸橋から、大阪駅東口の横断歩道を見物する。
ここは東の渋谷交差点と並ぶ、西の人出中継スポットである。
*
14時20分頃、1年ぶりに見るが、多いのか少ないのかわからない。専属料理人のいうには、日曜より遥かに少ないらしい。
感染者うろうろであろう。
某デパ地下で「決死的買い物」を敢行するという専属料理人と別れて、ひとり帰館。
久しぶりに4,000歩ほど歩いた。
夕刻……大阪の本日の感染者は11,409人。ただし、これとは別に9,200人の入力漏れがあるという。先日の13,000人とは別らしい。何が何やら。大阪の役人らしいアホさ加減。どのあたりで2万人以上の感染者入力漏れたのか。今月のデータにどう反映されているのか。さっぱりわからない。
肝心の時期に、ピークがどこにあるのか、まだ増加中なのか、まったく読めないのである。
余計な按分計算などやらず「○日〜○日の間に○○○○○人の漏れがありました」と注記して、当日の入力数だけを正確に残すのが、ベストとはいえないが、まだマシではないか。
役人の余計な判断よりは、市民府民に判断をゆだねてもらう方が安心できるからである。
2月9日(水) 穴蔵
晴。精神的不調。終日穴蔵。無為徒食。
以上、生存確認。
肉体的には好調。
*
夜はこの程度の標準的メニューで一献…と、ご報告のみ。早寝させていただく。
2月10日(木) 穴蔵
曇。不調。終日穴蔵。無為徒食。
食は昨日より多く、ちと飲みすぎ。いかんなあ。
生存確認……と書いたものの、自分で「生存確認」はおかしいな。とりあえず生存報告のみ。
2月11日(金) 穴蔵
世間は3連休で、本日が初日。
人出が多いことであろう。
晴れて暖かそうな日であるが、出歩く気分になれず、終日穴蔵。
生産的なことは何もできず。嗚呼。
2月12日(土) 穴蔵
3連休の2日目。出歩く気分になれず。
起居がひどく面倒で、明らかに運動不足が原因である。
ハガキを1枚書き公園南側のポストまで歩く。が、それ以上歩くのは面倒になり、すぐ引き返す。400歩ほど歩いた。
あとは終日穴蔵。
思うところあって、というよりも、最近老化を覚えることが多くて、『老人の美学』を再読する。
2年半ぶりだが、作者の執筆された年齢に近づいたせいか、諸々のことが実感をともなって迫ってくる。
筒井さんのノンフィクションは執筆年齢に合わせて読む(「腹立半分日記」の最初の章は、30歳の時に読んでいる)のがいちばん深く理解できる……というのが持論。その点で、わたくしはツツイストたちの中では、山下さんの次くらいの位置にいるのではないか。
「わたしのグランパ」に関する記述には涙が出かけた。
2月13日(日) 穴蔵
3連休の最終日である。曇天、昼前から雨。
横浜にいるボンクラ息子その1からzoomランチの提案メールあり。正月以来である。
中津の「とりあん」で唐揚げを買ってくる。
専属料理人はサンドとサラダなど作る。
それらをPC前に並べて、昼過ぎからビール、ワインを飲みつつzoom。
*
話題はきわめて日常的なこと(ワゴン販売の野菜がどうたらとか、町内会の用事がこうたらとか)ばっかりで、主に主婦同士がしゃべっておる。
巣ごもり生活が長いと、こういう会話が息抜きになるのであろう。こちらもほっとする。
1時間半ほど。
けっこう飲んでしまった。
2月14日(月) 穴蔵
やっと世間の3連休が終った。
まだ出歩く気分にならず。
今週ワクチン3回目の接種予定なので、引きこもっていることにしよう。
外出は郵便ポスト往復のみ。
花のない季節であったが、豊崎西公園の隅で梅が開花している。
*
春は近い……のであろうか。
夜はヨコワの刺身で一献。
春は近いのであろう。
宮内悠介『かくして彼女は宴で語る』(幻冬舎)
宮内さんの最新作の副題は「明治耽美派推理帖」。
明治末期に若い詩人や画家が集まって語り合った「パンの会」が舞台。
場所は隅田川沿いの西洋料理店「第一やまと」、メンバーは北原白秋や石川啄木ら、それに耽美派の画家たち。
語り手は世話人でもある木下杢太郎。
目新しい西洋料理で酒を飲みつつ語り合うのだが、そこで話題に出た「謎の事件」について推理合戦が繰りひろげられる。
事件といっても、菊人形に日本刀が突き立てられていたとか、20年ほど前の浅草十二階かなの墜死事件とか、ニコライ堂での狙撃事件……色々な仮説が出尽くしたあたりで顔を出すのが、配膳係の女中あやのである。彼女が見事な推理を「宴で語る」。
見事に「黒後家蜘蛛の会」形式を踏襲しているのである。
*
木下杢太郎についてはほとんど知らなかった。医師で文人という経歴から小形の森鴎外という印象だったのだが(それは間違ってもいないと思うが、鴎外が大きすぎる存在だからなあ)、この形式で耽美派の群像を描くには杢太郎のどこかで「客観的」な視点が最適だったのだろう。
形式はミステリーで、その出来栄えも見事(画家や詩人の、いかにも口にしそうなセリフが伏線になっている)だが、若き日の白秋や啄木の描写も素晴らしく、各篇の「参考文献」を参照すると、ある時期の「文壇史」としてもきわめて興味深いのである。
宮内さんの大きな新境地である。
山田正紀さんがとつぜん石川啄木を登場させた時(『幻象機械』)にも驚いたが、宮内さんの試みはさらに広いと思う。
ミステリーであり、群像劇であり、文壇史であり……そして最後の一篇を読むと、これはSFといってもいいだろう。
全体がひとつの長篇として完結していると読めるのだが、(読者は欲張りであるから)これは杢太郎が自分の「方向」を決めるところまでであり、次の段階に歩きはじめる「続き」があっていいようにも思うのである。
パンの会はまだ6回まで。それからも続いたはずで、荷風のおっさん(まだ30くらいか)も登場するはずだし……
そのためにも本作が大きく評価されることを祈る。
2月15日(火) 穴蔵
薄曇り。そう寒くもなさそうだが、出歩く気分にならず。
終日穴蔵。
あれやこれや読んでいるうちに夕刻となる。
専属料理人が標準的メニュー(ありきたり…とも申せましょう)を並べる。
*
黒っぽい野菜炒めみたいなのが出てきたが、赤軸ほうれん草というらしい。
栄養がなんたらとか、講釈色々。よくわからんが、これらでありがたくビール、湯割り。
早寝させていただく。
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