『マッドサイエンティストの手帳』703
●マッドサイエンティスト日記(2019年4月後半)
主な事件
・尼崎/四貫島(16日)
・神戸新聞文化センター(19日)
・創作サポートセンター(20日)
・播州龍野いたりきたり
・グリーン交響楽団@芸術文化センター(28日)
・ボンクラ息子の帰還(28日)
4月16日(火) 尼崎/四貫島
朝からニュースがふたつ。
午前5時、早朝からノートルダム寺院の火災の映像。今まさに燃えてる最中らしい。
最後に見たのは20年前か。メトロがストで、歩ける場所しか行かなかったが、またまたホテルがノートルダムに近かったのだった。
海部宣男氏の訃報。
年齢はおれとそう変わらない。天文学会でもごく気安く話していただき、「ぜひ野辺山へ見学に来てください」と声をかけていただいたのが忘れられない。結局、野辺山へは行けずじまいになった。
播州龍野へ行く予定であったが、進路変更。
目的地は阪神尼崎となる。
急いで処理せねばならぬ案件あり、龍野でなくても、兵庫県内の金融機関であればいいので、いちばん近い尼崎の支店へ行く。
10分ほどで終了。
ついでに駅の東南にオープンした尼崎城へ行ってみる。
*
姫路城を見慣れた目で見ると、やはりチャチ。どこかのおっさんが個人で建てた天守閣風家屋か、天王寺から見える「茶臼山の連れ込み」に毛の生えた程度。維持費はだいぶかかるらしいが、がんばってほしい。
一巡して駅に戻り、阪神なんば線で市内へ向かう。
出来島を過ぎ淀川を渡る。伝法の手前、淀川左岸の堤防で原稿を書いてはる酉島伝法さんの姿がちらっと見えた……ような気がした。
千鳥橋で下車。
『大阪 都市の記憶を掘り起こす』を読んで、どうしても「葦の地方」周辺の新開地を歩いてみたくなったのである。
四貫島・梅香あたり、商店街や路地を1時間ほどうろうろ。
* *
ただ、いちばん気になっていた「住吉神社の前を斜め南東」のあたり、もう私娼窟の名残りもない。
(このあたりは3年ほど前にロザーナさんが歩いてはり、この路地についても、すでに拡張工事が行われたことを指摘されている。さすが街歩きの達人である。)
西九条まで歩き、環状線。大正〜津守方面まで行くか迷うが、1万歩を越したので、大阪へ。
午後に帰館。
4月17日(水) 穴蔵
定刻4時に目覚める。
朝からいささか呆れたニュース。
「ノートルダム寺院火災で旅行会社対応追われる」だと。
火災で旅行会社はツアー内容の変更など対応に追われているという。代替の観光地を検討中とか。
こんな火事場見物は一生に一度あるかないかの機会だろうに。野次馬は不謹慎? 神妙な顔して黙祷すればいいんだよ。火事見舞いというのは、昔からそういうものだろうが。
などと愚考しつつ、終日穴蔵。
早くも集合住宅の案件。さらにタイムマシン事業関係。雑事多発。
SF系は何もなし。
明日は少し落ち着いて原稿と本を読むつもり。
4月18日(木) 穴蔵
定刻4時に起きて、パジャマのまま机に向かえるのはありがたい。いい季節になった。
終日穴蔵。
明日、明後日のための原稿を読み、メモを取って過ごす。
たちまち夕刻。
専属料理人の並べた粗食(でもないか)で一杯やって早寝。
毎日こうありたいものである。
4月19日(金) 神戸新聞文化センター
定刻に起床、雑事色々のあと、昼前に出て、阪急で三宮へ。
神戸新聞文化センターにて講座。
いつもエッセイや短篇が提出されて、合評会的な雰囲気になる。
本日は、不思議に「記憶」に関するテーマのものが多い。
思い出の映画、懐かしい「円形校舎」、忘れたい記憶と忘れられない記憶、語り部なるものへの疑問……その他、記憶の内容はまちまちだし、アプローチもさまざまだが。
いちばん面白いと思ったのが、明治から戦前昭和までの、ビールの泡にからめた「寿像」に関する論考。清浦伯爵の名演説とか、金属回収令ではかなく消えていく銅像とか……宇和島の「銅像にて仰がるるより萬人の渡らるる橋になりたし」という穂積陳重(穂積橋)で締めくくられる痛快な構成。
銅像も「偉業」を後世まで「記憶」させたい(特に自分が生きているうちに作る場合は)から作られるに違いあるまい。
最近は銅像も減った……つうか、北朝鮮くらいではないか。
銅像といえば、わがボンサラ時代にもあったなあ。「持って帰ってもらえ! 庭にでも飾っといてもろたらええがな」……詳しく書きたいが、やめとこ。
本日は東京でSF大賞贈賞式。
山尾悠子さん、円城塔さんの大賞、ヨコジュンの功績賞。3氏とも知っているだけに行きたかったが、新神戸に16時過ぎでは、時間的にはやはり無理である。
遠く西方よりお祝い申し上げます。
4月20日(土) 創作サポートセンター
快晴で暖。穴蔵にて資料を読みメモを取って過ごす。
夕刻這い出て、地下鉄で天満橋へ。
エルおおさかで創サポ講義。
・明朝と清朝の端境期、諸国を遍歴する姉弟が出会う「漢字の霊廟」……そこには「宇宙の本質が記述されている」謎の漢字が封印されているらしい。はやくも「文字SF」の流れに呼応した?作品。謎の文字だけが手書きで挿入される怪作。
・インドのジャンヌ・ダルクを描く500枚の長篇歴史ロマン。史実と想像力のバランスがうまく、特に「対立側にいながらシンパシーを捨てきれない英国青年」の造形が見事である。生徒からも絶賛に近い声あり。なんとか形になってほしい作品である。
帰館後、遅めの晩酌。
さあ、10連休とかの前週、明日から体を動かねばならぬ。
4月21日(日) 穴蔵
終日穴蔵にあり。
播州龍野へ移動しようか迷うが、明日にする。
ボケーーーーツとQ状態ですごす。
本日、午後、ジュンク堂(堂島)で、注目のイベント。
『宿借りの星』刊行記念&『文字渦』日本SF大賞受賞記念 酉島伝法×円城塔 トーク&サイン会 である。
おれが行ったら「顔」で入れないではないだろうが、美学に反するし、おれが見えるところにいたのでは話しにくいかもしれない。
ま、ネットでのレポートを待つことにする。
たちまち夕刻。
専属料理人が並べた6皿(作りすぎだぜ)でビール。
*
ごちゃごちゃ煮込んだピアツトというのか、これとブルディガラのクレセントパンで安ワインがなかなか。
早寝するのである。
4月22日(月) 大阪→播州龍野
早朝の電車で播州龍野へ移動する。
3週間ぶり。今年の龍野の桜は見ぬまま、もう新緑の季節である。
* *
故郷は緑なりき。
わが家に近い揖保川河岸、工事の規模がさらに拡大している。いったい何を作るのか。
楠が伐られることはなさそうだが、景観はどうなるのやら、心配である。
雑事色々。
午後はタイムマシン格納庫にて相棒の某くんと「仕上げ」の作業。
客先の「立ち会い検査」が連休明けになったため、10連休中、「仮梱包」して保管する……これは相棒の意見である。
フィリピン〜台湾と地震が北上しており、プレートの動きが怪しく、連休あたり日本が危ない。精密調整まで終わって検収待ちなのに、ここで地震に遭うと、保険にも入っていないから大変である。連休中、タイムマシン完成機は作業台から降ろし、倉庫中央のパレットにクッション材で保護して置く……というのである。
大丈夫だと思うがなあ。
ま、5月のExGoDownまで、安全に保管するにこしたことはない。
夕刻まで作業。
味三昧の豪華弁当を買って帰り、実家で独酌。
播州龍野の夜は静か過ぎて、なかなか眠れない。
4月23日(火) 播州龍野→新開地→大阪
播州龍野にて無事に目覚める(龍野泊の場合、朝、必ず専属料理人から安否確認のメールがくる)。
酔っぱらって階段からの転落は自分でも心配だからなあ。
タイムマシン格納庫にて打ち合わせ。
昼前の姫新線キハ系で姫路へ。
本日は山電特急で大阪に向かう。新開地で阪急に乗り換える時、昼飯ついでに近所をうろうろすることにする。
新開地から湊川にかけて歩く。意外にも初めてである。
喜楽館は予想外にモダンな建物である。
商店街を抜けると自然に湊川公園に出るが……ここには驚いた。
広い「屋上公園」になるのか。その地下(というより、もと地表というのか)に古く暗いミナエンタウンが潜んでいるのだった。
とくにミナエン商店街が不気味だ。
*
外は初夏の陽気というのに、暗く、人通りはなく、数軒がバー営業しているのである。
予備知識なしで迷い込んだが、さすがにおれでも気味が悪い。
それにしても、うどん屋、お好み焼き、串カツ店が多い土地である。立ち食いうどんは好きだが、さすがに回りきれない。
本日は荷物もあり、身軽な時にあらためて探検することにする。
商店街の南の方で好みの立ち飲み屋を発見。
わが嗅覚は衰えてなかった。うまさ、安さ、客への不介入、客同士の距離感、すべて申し分なし。最高ランクの店である。ちなみに店に入ったのは13時半頃である。
刺身、小鉢でちょっと一杯、鉄火の手巻きで仕上げ。
店名は書かないが、神戸の飲兵衛なら見当はつくのではないか。
播州龍野からの帰路、今後もちょこっと覗くことにする。
夕刻に近い午後に帰阪。
4月24日(水) 穴蔵
ちと疲労気味である。
終日穴蔵にて本を読んで過ごす。
外出はジュンクドー往復のみ。
おおっ、公園にヨレヨレのおっさんがいてはる。
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久しぶりに見る。今年初めてではないか。
心配していたのである。数年先のわが身を思うとなあ(おれより若いのかもしれんが)。
4月25日(木) 穴蔵
定刻4時に起きて机に向かう。
たいして生産的な仕事はできず、ほとんどタドコロ状態。人間のクズだな、おれは。
ああなりたくないと思ってた状態にだんだん近づいていく。嗚呼。
午後、中崎町界隈を散歩。
豊崎長屋の南側が工事中である。
*
ここは狭い駐車場だったはず。
何か建物ができて、長屋が遮蔽されることになるのか。
ま、長屋が路地の奥にひっそりと残れば、それでいいのだが。
4月26日(金) 穴蔵
曇天。長い連休の前日である。
終日穴蔵にてボケーーーーーッと過ごすから、おれの場合、平日も連休も関係ないようである。
晩酌時。毎日放送「爆報!THE フライデー」という番組で「妻に捧げた1778話」を見る。
眉村卓さんの近影。去年電話で話して以来である。滑舌は悪いが、話の内容も体の姿勢も、しっかりしておられる。
それにしても、再現ドラマの役者、もう少しマシなのいなかったのか。容貌の類似は無理としても「鋭さ」がまったくない。こりゃいかんぜ。
さらに、野村克也が愛読してるのはいいけど、克也・沙知代と「サンドイッチ構造」にする構成はいかがなものか。関係ないと思うぜ。特に沙知代は。
とはいえ、眉村さんの最近のお姿を見られるだけで十分に満足。
あと10年、おれも生きようという気分になる。
4月27日(土) 穴蔵
10連休初日である。基本的には穴蔵で過ごすつもりだが、運動不足であり、徒歩圏徘徊にとどめる。
昼間、久しぶりに自転車使用。淀川堤を十三大橋から毛馬閘門まで。
「淀川八景」の舞台確認である。
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意外に風が冷たい。
明日、身内が帰省するらしいと連絡が入り、毛馬橋から天五に進路変更、ぷららで専属料理人から頼まれた野菜と果物を買って自宅まで運ぶ。
走行範囲に「連休浮かれ」の雰囲気はなし。静かなものである。
4月28日(日) グリーン交響楽団@芸術文化センター/ボンクラ息子の帰還
定刻4時に起きる。一応マジメに机に向かう。生産的なことはやれず。嗚呼。
昼、穴蔵を這い出て、阪急・西宮北口へ。
ちょっと思うところあり、10分ほど歩いて、ネットで有名なカツ丼の店Tへ行く。
普通ネット人気の店には行かないのだが、佐渡裕氏の愛好店と聞くと興味をそそられる。
12時20分、5人ほど待っていたがすぐ入れた。
評判のカツ丼を食す。たいしたことなし。「すまし」も頼んだが食べ終わる頃に来るし、斜めのご夫妻は注文ミスだし、客扱いはいまひとつ。
もう来ることはあるまい。
14時前に芸術文化センター大ホールへ。
グリーン交響楽団のスプリング・コンサートを聴く。
・ブラームス「大学祝典序曲」
・メンデルスゾーン「スコットランド」
・ベートーベン「運命」
おまえの柄かといわれそうだが(そしてその通りなのだが)、たまにはおれもクラシックを聴くのである。
オーケストラで「運命」を通しで聴いたのは、この歳になって初めてであった。
夕刻帰還。
おっ、ボンクラ息子その1が配偶者を連れて帰省している。
なんと、柴犬を積んでクルマて来た。
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おとなしいが、気が弱そうな。
盛大に皿を並べての晩酌となるが、おとなしくパンの切れ端を待っておる。
扶養家族が増えた気分だ。嗚呼。
4月29日(月) 大阪←→播州龍野
朝8時過ぎに、ボンクラ息子その1のクルマに専属料理人とともに乗り込んで播州龍野へ向かう。
BMWの4人男女。犬は勘定にいれません。
新御堂筋を北上。空いている。箕面有料道路の長いトンネルを走り、止々呂美インターに出る。
ここは初めての場所。一度見たかったのである。以前の勤務先(池田市伏尾の谷間)から亀岡方面に5分ほど、なあーーーーんもなかった場所である。こんな複雑なインターが出現するとは(40年前には)想像もしてなかった。
宝塚北SAも見物し、10時頃に播州龍野の実家に着く。
とりあえず墓参。
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おお、何代目かの墓守蛙が堀の字のなかにいる。
この20年近く、蛙が切れたことはないなあ。
あと、犬を連れて市内散策。
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犬連れだと龍野公園の施設など立入は制限され、普通の路上を歩くだけ。
そうめんの里でのランチも断念し、味三昧の弁当を買って帰る。
夕刻帰阪。
予報どおり、雨になった。
またも色々並べてミニ宴会。
おれのみ早寝するのである。
4月30日(火) 宴会の日
朝まで小雨、あとは曇天。
終日穴蔵にて本を読んで過ごす。
昼、自宅からメール。蛸丸でタコヤキを買ってきたいう。
ボンクラ息子その1の「懐かしの味」で、(とくに東京生活ではタコヤキはそうお目にかかれないから)ここに勝るタコヤキはないという。
ということで、昼は一族でタコヤキ・パーティ。ビールを少しばかり盛大に飲む。うまっ。
半世紀の歴史を誇りつつ、それを自慢することもない蛸丸に栄光あれ。
午後、しばらく昼寝。
わ、たちまち夕刻。
夜、専属料理人とボンクラ息子その1の配偶者が色々並べた。
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翁豆腐のヤッコ、ナマ生姜、山葵漬け、メロン生ハム巻、イカ刺身、グラタン、マグロのカマ、野菜炒め、サラダなど。和洋ごちゃごちゃ。
これらでビール、安ワイン。
ボンクラ息子その1は飲まず。夜中にクルマで出て帰るからという。
最後の晩餐……みたいなものか。
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