『マッドサイエンティストの手帳』593
●マッドサイエンティスト日記(2014年12月前半)
主な事件
・ふろしき×ろうけつ展(2日)
・はやぶさ2(3日)
・SF検討会(5日)
・GATOS Meeting@ワイルドバンチ(6日)
・播州龍野いたりきたり
・忘年会的株主総会(11日)
・創サポ講義(13日)
・大阪ジャズ同好会(14日)
12月1日(月) 穴蔵/菅原文太の訃報
小雨が断続的に降る。
終日穴蔵。
少量ながらマジメに仕事もするのであった。
午後のニュースで菅原文太の訃報。
高倉健に続いて、これで任侠路線、実録路線が終わったことになる。
菅原文太については、むろん「仁義なき戦い」「県警対組織暴力」「ダイナマイトどんどん」など繰り返し見ているが、高倉健の「ギャング」と同じく、好きになったのは、新東宝時代のややこしい役柄のを観てである。
作品名が思い出せない。新東宝の「ハンサム・タワーズ」のひとりで、吉田輝雄や高宮啓二が「好青年」を演じたのに対して、文太は与太者的な印象だった。
何しろ新東宝だからなあ。まさか「女体渦巻島」とか「女奴隷船」ではなかったと思うけど。
当時(中学時代)の龍野劇場は各社ごちゃまぜの二番館・三本立だったから、新東宝のいかがわしい作品も時々は観られたのである。
いい時代であった。
12月2日(火) ふろしき×ろうけつ展
寒波襲来の予報である。
午前6時、外は9℃、室温19℃。それほどでもなし。
エアコン稼働させることもなく、マジメに机に向かう。仕事の量は別である。
午後、地下鉄で昭和町へ。
わ、外に出ると寒い。風が強く、体感温度は真冬である。
文の里商店街を抜けて、カフェ「miss evans」へ。
矢木明さんの「ふろしき×ろうけつ」展が開催中である。
*
ろうけつ染めによる風呂敷……この着想が面白い。
蝋纈染めについてはまったく知識がなかったが、白部分に蝋を塗って染める技法で、「白い」部分に面白さがあることを知った。
一方、風呂敷については、以前かかわった民事訴訟の時に、弁護士が裁判所へ行くときに書類を風呂敷に包むのが面白くて、それがヒントになって、「宇宙風呂敷」というのを思いついた。
それを書く時に、風呂敷は「wrapping cloth」と思っていたが「furoshiki」で世界に通用することを知った。
ろうけつ染めの表現媒体として日本独自の布を選んだ矢木さんのセンスは秀抜である。
展示は12月6日(土)夕刻まで。
ふろしき展とは別に、「miss evans」はいい雰囲気のジャズ・カフェである。
* *
静かな住宅地に、目立たないように看板もなし、奥ゆかしい店である。
音量を抑えたジャズが流れ、店名入りのコーヒーカップのセンスがいい。
ランチも旨そうで、今度は昼に来ることにしよう。
12月3日(水) 穴蔵/はやぶさ2/竜太郎
早寝したら午前2時に目が覚めた。
マジメに机に向かう。
なぜか集中できて、午前8時前に懸案のことが片づいた。
晴。さわやかな朝である。仕事はするものだ。
穴蔵から30メートル、野々村竜太郎の生家前のイチョウがきれいである。
*
竜太郎、階段や道路を「直角に曲がっていた」ガキ時代、窓の外にこのイチョウを見ていたのである。
どうしとるのか。住之江の母の部屋に蟄居かな。
中田カウスじゃないけど「やるんなら早よやってちょうだい」気分だろうな……などと愚考する。
一仕事できたので、朝は自宅で総菜類を並べてビールを一杯。
朝寝する。
昼過ぎに目覚める。
13時過ぎからはやぶさ2の打ち上げ中継を見る。
「分離」がまだなのに「打ち上げ成功」の連呼が気になるが……15時半に分離成功、軌道に投入されたとネットでの報道を確認。
なによりであった。
これで、あと6年は健康に留意して生きねばと思うのであった。
ついでながら……
「野々村前県議を書類送検へ」というニュースも。
竜太郎くん、よかったではないか。とりあえず年末年始は代用監獄で過ごすことはなくなったのだから。
懲役1年半、執行猶予3年ってとこかな。もう選挙に出ることはないだろうけど。
近いうち、住之江の住居を見学に行くからね。
12月4日(木) 穴蔵
雨である。
午後に雨はやむが、散歩に出る気分にもならず。
これといった仕事はしないまま終日穴蔵。
夜は鶏の煮込みとかサラダなどで安ワインを少しばかり。
20時から、ちょっと思い出して、NHKで「ぼんくら」というドラマを見る。
春日太一が『なぜ時代劇は滅びるのか』(新潮新書)で名指しで批判している(時代劇を「自然体で演じたい」と発言した)岸谷五朗という役者、いったいどんなものかと、妙な興味で見たのだが、確かに見るに耐えない。
生理的に耐えられない。
10分ほど見て、穴蔵に戻る。
時代劇は滅びたのである。
12月5日(金) 忘年会的SF検討会
終日穴蔵。
雑事あれこれ。
Eメールを使用しない数氏に珍しく手紙を書く。切手が余ってきて、消費税分の貼り足しなど面倒だしで、このままだと無駄になってしまいそうな事情にもよる。
外出はポストまでの往復のみ。
年賀状の季節らしい。ポストに「年賀状受付は12月15日から」と貼り紙してある。
おれは年賀状は前回(2014年1月)で終わりにして、その旨書き添えたのだが、喪中ハガキがぼちぼち届きはじめた。
大量の賀状が来たらどうしようかと、ちと心配になる。
夕刻、かんべむさし氏穴蔵。
ちょっと早めの忘年会的・定員2名内容非公開のSF検討会を開催する。
くろうまの湯割り飲みつつあれやこれや。
現代の小説が映画から影響を受けていないはずはないのだが、映画的(テレビ番組的)演出で小説を書くのとはまったく別であって、その事例検証みたいなことがメインになった。
気がつけば3時間半ほど経過。
また来年に持ち越しである。
12月6日(土) GATOS Meeting@ワイルドバンチ
穴蔵にて粛々と雑事。
昼過ぎに、遠方に住む友人Sくんから電話があり、恐る恐るという感じで「元気か」と訊ねてくる。
某名簿のおれの欄が「逝去」となっているという。
昨年夏に行った近未来擾乱の効果である。
一部でお騒がせしたようで申し訳ないが、おれは「業者に丸投げ」名簿に住所氏名電話を掲載されるのが嫌で(いいことはひとつもない)、しかも住所非公開にできず退会もできぬ以上、「逝去」とするのが唯一の方法なのである。近い将来、そのとおりになるのだしさ。くだんの名簿の信頼性を低下させるのに少しは効果もあったようである。
おれの名が載っている(業者丸投げ)名簿はいっさい信用しないように。
夕刻、天六のワイルドバンチへ。
林栄一さん率いる「GATOS Meeting」のライブである。
林栄一(as) 吉田隆一(bs) 後藤篤(tb) 石渡昭廣(g) 岩見継吾(b) 磯部潤(ds) + ゲスト 横沢道治(per)
2ndステージには有本羅人(tp)さんも加わって8人編成となる。
*
初めて聴く。林さんも10年ぶりくらいかな。
「ジャズ・インプロ・ファンク・ロック・ワールドミュージックが混然一体となった音楽曼荼羅!」というが、むろんジャズ臭濃厚。林さんの名曲「回想」なんか、アレンジの面白さで、まったく別の曲のような雰囲気である。
ジャズ界の鬼才・吉田隆一さんとはじめて話す。
吉田隆一さんは文筆面でも面白い作品があり、山下洋輔〜菊池成孔につながるミュージシャンになるのではないか。
来年2月にはなんと新垣隆(!)さんとのデュオCDが出るという。しかも「皆勤の徒」の社歌(スコアは酉ビュートに掲載)も収録されるという。せっかくだから「ゴースト」も演奏したらどうであろうか。
21:30頃まで。充実したステージであった。
12月7日(日) 穴蔵/ウロウロ
穴蔵にて粛々と雑事。
午後に散歩を兼ねて梅田うろうろ。
寒い。
ちょっと見たい映画を思い出して、ツタヤ梅田店に寄る。「健さん文太コーナー」が出来ているが、見たい作品は貸出中であった。
岡本喜八の『暗黒街の顔役』『暗黒街の弾痕』がDVD化されてたので借りる。『暗黒街の対決』が見当たらず。あと『顔役暁に死す』と『地獄の饗宴』のDVD化をたのんまっせ。
ロフトの前で大道芸人ががっばっていた。
*
カキツバターズ。
健闘を祈る。
ということで、午後、久しぶりに『暗黒街の顔役』……田中春男の悪役ぶりがよく、佐藤允の殺し屋が新鮮だ。
夜はキムチ鍋で湯割り。
これから『暗黒街の弾痕』を見て寝る……つもり。
※ニュース雑感。ノーベル賞授賞式が近づいて、現地からの報道あれこれ。某夫人、はしゃぎ過ぎではないか。『山頂の椅子』のようなことにならぬことを祈る。
12月8日(月) 穴蔵
終日穴蔵。粛々と雑事。
昼、自宅で専属料理人がなんとか教室をやっとるので、何か食べに行こうかと外出するが、寒くて面倒になり、たこ焼きを買ってきてビールを飲む。
豊崎西公園の少し南にある「蛸丸」。
*
あまり話題にはならないようだけど、ここは40年以上の歴史がある名店と思う。
近くの行列ラーメン店「弥七」なんて、蛸丸に較べれば新参者である。
ボンクラ息子その1が幼稚園児の頃から好んでいたからなあ。
別にこれといった特長はない。
普通のたこ焼きである。
しかし、たまに買ってきて食する。やっぱりうまいのである。
うちの界隈では「河春」「正ちゃん」「串樽」と並ぶ老舗である。
12月9日(火) 穴蔵
穴蔵にて雑事。主に資料読み。
午後、ツタヤ梅田店にDVD返却し、ツタヤ天六店まで歩いて数枚借りてくる。
久しぶりに『日本暗殺秘録』を見る。1969年に見て以来。
笠原和夫によれば「天下の珍品」で「自民党の保利茂幹事長から中止してくれという電話」がきたという(『昭和の劇』)。
桜田門から226までの暗殺オムニバス。ただし千葉真一(好演)主演の血盟団事件がほとんどで、健さん文太は短い事件に(しかし主役として)テロリストとして出てくる。文太の凄味が光る。ドスを構えた殺気はただならぬもの。
初見から45年になるのか。千葉真一が純朴な青年(役柄)だったのだからなあ。
映画の内容はほぼ正確に記憶していて、役者だけがわがアタマの中で老けているのが不思議だ。
12月10日(水) 穴蔵
穴蔵にて雑事。主にタイムマシン事業の決算準備。
午後、DVDで『暗黒街の対決』を見る。
これは何度見ても傑作。
天本英世やミッキー・カーチスの「殺し屋コーラス」が素晴らしい。
夕刻、ツタヤ天六店まで往復。
『野獣死すべし』『斬る』『暗黒街最後の日』を借りてくる。各108円/週。
『花と嵐とギャング』がない。
12月11日(木) 大阪→播州龍野/忘年会的株主総会
朝の通勤ラッシュが終わった頃に出て、播州龍野へ移動する。
タイムマシン格納庫へ。
相棒の某くん待機中、もうひとりの相棒の某某くんも到着する。
これで久しぶりに株主兼経営者兼作業員全員集合……といっても3名だけど。
タイムマシン格納庫にて棚卸など年度末の作業を行う。
部品ケースの奥にお宝発見。
*
40年前のIntelのROM(256バイトで金メッキである)を発掘したのである。
当時1万円ほどしたはず。どうやらレアものらしい。
他にも同年代のセラミックのRAMなど数品種あり、当面、大事に保管しておくことにしよう。
諸々の作業を片づけ、夕刻、3人で赤とんぼ荘へ移動する。
忘年会シーズンだが、本日は空いているらしく、大浴場は貸し切り状態である。
あとは(品数は多いが味はC級の)会席料理で一杯。
忘年会を兼ねた株主総会である。
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最上階の見晴らしのいい部屋を用意してくれた。
といっても、田舎だから、夜景は寂しいものである。
二次会に行く場所もなし。
某某くんは赤とんぼ荘泊。
おれと某くんは、そう寒くないので、夜道を歩いて帰る。
午後9時前だが、町は寝静まっているような。
12月12日(金) 播州龍野→大阪
播州龍野にて気分よく目覚めた。
たまには入浴もするものだ。
朝、タイムマシン格納庫にて、同じメンバーで来年度の計画など話し合って、昼前に解散。
おれは昼の姫新線で姫路へ。
「石挽蕎麦」か「新生軒」か迷ったが、久しぶりに「赤心」へ。
Bセット。チャーハンと豚汁である。いつもはトンカツ+豚汁のAセットだが。
*
赤心の豚汁は、トンカツ半分くらいの厚切り肉をぶち込んであるので、おれの年齢になると、肉は豚汁だけで十分なのである。
なかなか。
ちなみにオムライス+豚汁もお勧めである。サラダがあればいいのだが。
午後の新快速で帰阪。
夜は、専属料理人が地域のなんとかで出ていったので、並べてあるメニューで一人酒盛とあいなる。
鰺刺身、とようけの湯豆腐、ほうれん草に「龍野之刻」たらしたの、大根のタイタンの妖女などでビール、つづいて龍力「米のささやき」(龍野で買ってきてよかったぜ)を少しばかり。五目寿司とワカメの吸物で仕上げ。
昨夜の某会席よりはるかにランクが上である。
楽しきかな一人酒盛。
早寝するのである。
12月13日(土) 穴蔵/創サポ講義
晴れて風強し。寒いのであった。
終日穴蔵にて読んだりメモとったり。
夕刻に這い出て、天満橋へ。
創作サポートセンターの講義である。
本日は長めの作品2篇についてあれやこれや。
・SFを意識して書かれた作品ではないが、不幸な死を遂げて「あの世」へ行く話。
あの世のシステムが面白く、天国行きの人間と地獄行きの人間の間に「天使」いう役柄があって、一種のボランティア活動を行っているという設定。つまり、天使というのは、地獄直行ほど悪いやつではないが、この世で悪事を働いたやつが一定期間過ごす刑務所みたいな設定なのである。この連中が、不幸な死に方をした人間が安らかに天国へ行けるよう、奉仕活動を行うのだが……。SFというより宗教論的な展開。もう少しコロガリのいい展開ができないかという議論になる。
ついでながら、この作品には「死の天使」役にヒネリの効いたオチがついていて、この部分には太宰の「駈込み訴え」が絶対に参考になるはずである。
・草津(滋賀県)を舞台に、地味な派遣社員女性とノイズバンドをやってるミュージシャンのタマゴの同棲生活が、双方の視点から「饒舌体」で語られる中篇。話の展開と会話は面白いが風景描写・生活のデティルが弱い。
ともに「映像」を意識すれば大きく変わりそうで、映画との関連を話していたら、「あの世行き」作品に関して、生徒のひとりが、10年ほど前に、これに似た設定のスペイン映画を観たという。別の生徒がスマホで調べて『ウェルカム!ヘヴン』ではないかという。DVDもあるらしい。便利な時代になったものであるなあ。後日探してみることにする。
帰路、地下鉄で東梅田通過。
本日はロイヤルホースに森山威男カルテット出演中である。
が、今から行っても、2ステの途中からになりそう。残念、断念だんねん。
12月14日(日) 衆院選/大阪ジャズ同好会
早朝から専属料理人が出ていってしまった。
衆院選、地域のなんとかの関係で投票所に駆り出されたため。
この季節、小学校の体育館に13時間座っているなんて拷問であろうな。
おれは9時過ぎに投票に行く。
落としたいのしかいない選挙はむなしいものだ。
天六まで歩いて、久しぶりに「十八番」で豚汁の朝飯。この時間に食べると、昼は抜きだな。
午後は片町線の放出へ。
ディア・ロードで大阪JAZZ同好会の例会。
年末なので、持ち寄り企画は「私が選んだ今年の一枚」。
35年間探していたのを今年見つけたなんてのもあり。
おれはGolden Senior Trioの「Jubilee Cookin'」……ベスト演奏ではないなもしれんけど、米寿・傘寿・喜寿のトリオなんて今年だけのことだからなあ。
専属料理人の帰りがたぶん午後9時頃になるので、夜は正起屋で一杯やって帰館。
茶屋町界隈にもイルミネーションが増えた。
*
ジングルベルの憂愁というのを覚えるなあ。
ということで、20時から選挙速報をしばらく見るが、つまらない。
こちらは誰が落ちるかにしか興味ないから、結果が出るのは深夜になりそうな。
早寝するのである。
12月15日(月) 穴蔵/ウロウロ
朝の通勤ラッシュの少し前に、グラフロ〜大阪駅を抜けて桜橋の某院へ。
4月ぶりの検診。
異常なし……というか、極めて正常という診断。ほっ。
担当のS先生「つぎは半年後でもいいのですが、まあ、4ヶ月後にしましょうか」
桜の季節が過ぎてからである。……その時には異動しておりますが、きちんと引き継ぎしておきますから。
オランダへ行かれるという。若い医師(うちのボンクラ息子どもと同世代/えらい違いだ)だから「留学」に近いのかな。
言語は「ほぼ英語が通用する」らしい。
おれにとっては命の恩人だから、ちと心細くなる。
ま、SF好きの某部長はずっといてはることだから……
梅田うろうろして帰館。
午後は穴蔵にて、少しは仕事もするのであった、いと少なしを。
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