『マッドサイエンティストの手帳』686
●マッドサイエンティスト日記(2018年8月後半)
主な事件
・神戸新聞文化センター(17日)
・SF検討会@穴蔵(18日)
・播州龍野いたりきたり
・創サポ講義(25日)
・ラスカルズ@ニューサン(25日)
・百怪一首(29日)
8月16日(木) ウロウロ
曇天で涼。
10時前に(久しぶりにボンサラ・スタイルで)出かける。
天満の某社へ。
長年つき合いのあるタイムマシン業関連の専門商社である。
「事業終活」関連で、業界事情を色々と聞く。
同業の数社、事情は似たようなものらしい。経営者の高齢化、後継者不在、特殊な加工の外注先減少……大阪近傍で数百坪の敷地あり、社長は84歳、従業員4人それぞれ年金生活だから、事業は畳んでもいいのだが、特殊なマシンなので、なんとか残したいとか。そんな事例を幾つか聞く。
うちも似たようなものか。惜しまれて消えるのが美学かもしれんなあ。
あと、北浜からぶらぶら歩いて本町、ボンサラ時代の勤務先あたりまで。
三休橋筋の歩道が広くなり、電柱電線が消えて、快適である。
*
綿業会館、相変わらずの佇まい。
ボンサラ時代からの馴染みの店で昼飯。
12時半に入ったが、客ゼロ。まだ休みの会社が多いらしいが、それだけでもなさそうな。
昼ビール一杯。
本町界隈、建築中のタワーマンションが多く、10年ほどしたら雰囲気が変わりそうだ。
8月17日(金) 神戸新聞文化センター
晴れて涼。
朝、近所の某院で定期検診。ごく正常であった。
昼前に出て阪急で三宮へ。
神戸新聞文化センター、眉村さんから引き継いだ講座である。
エッセイ4篇、小説3篇を題材にあれやこれや。
「豪雨の話題」「父の記憶」「鬱病を克服した体験」「名城に関する蘊蓄からエレベータの是非、車椅子で天守閣へ登れるか」「動物たちが登場する童話」「SF2篇/地域の住民のスマホスピーカーを管理するAIに異状発生/引きこもりの擬似社会体験装置を別人生体験装置に転用する話」と多彩である。
それぞれ面白く、時間かなり超過、16時近くまで。
夕刻帰館。
30℃を少し切る気温だが、おれにはちょっと寒いほど。
冬遠からじ。
8月18日(土) SF検討会@穴蔵
晴れて涼。朝は26℃。直射はあるが、昼間は31℃以下。冬遠からじ。
昼間、痴呆状態で過ごす。
夕刻、かんべむさし氏来穴蔵。
久しぶりに定員2名内容非公開のSF検討会を開催する。
ビールから始めて、米焼酎「しろ」酎ハイ、最後は呉春特吟。
やたら議論が弾んだわりに、内容はほどんど覚えていない。
読んでない作品の(極めて的確な)批評、現桂春団治、居合い抜きの先生……あたりは覚えてるが、ともかくアホな話をずいぶんして、気がつけば4時間経過していた。
たぶん有意義な会だったのだろう。
8月19日(日) 穴蔵
晴れて涼。
終日穴蔵にて痴呆状態で過ごす。
花登筐『私の裏切り裏切られ史』を読む(1983刊/小雁さんの『笑劇の人生』関連で)。
人間関係すべて裏切りか裏切られかに二分する筆致は確かに「爽快感なく湿っぽい(新野新)」……その新野評(たぶん連載中に書いたのだろう)に対して、「君の師匠とはいわないが、私なりに教えてきた先輩のはず」「君を批判したことはみじんもない」「どうしてこんなことを書くのか」「これは歴史なのである」「死に直面した人間ほど強いものはない」……いいねえ。新野新も「裏切られ」のひとりに分類されている。
爽快感はないが、怨念の凄まじさを楽しむべきだろう。
もっとも、おれは「番頭はんと丁稚どん」は見たが、あとの花登作品はまったく見ていない。昭和38年〜46年はテレビ受像器なしの生活だったし、そう興味もなかった。……享年55歳とは。60以上と思っていた。
たちまち夕刻。
夜は枝豆、翁豆腐のヤッコなど数皿。
*
あと、ピザでビール、ワイン。
最後の晩餐のように気がするなあ。
8月20日(月) 穴蔵
朝、専属料理人が荷物をまとめて出ていった。毎度のことながら、愛想尽かしではなく、家庭の事情。
しばらく楽しき独居老人生活となる。
穴蔵にこもり、痴呆老人と化す。
たちまち夕刻となる。
夜は集合住宅の理事会。
気の重い議題多し。だんだん憂鬱になってくる。21時まで。
21時半から、専属料理人の作り置きの総菜類並べて独酌。鬱々とビール、酎ハイを飲む。
いかん、痴呆の独居老人が鬱になってどうすんのよ。
明日こそホリは羽ばたく……つもり。
8月21日(火) 穴蔵
晴れたり曇ったり。雲の動き急である。
本日も穴蔵。
痴呆老人状態……などと書くと心配かける(ボンクラ息子その1が電話してきたりする)から本当のところを書いておくと……ずっと机に向かっているものの、アイデアが気に入らず、さっぱり進まないのである。昔と違って「呻吟」とか「七転八倒」とかはせず、寝ころんで本を読むから、結局だらだらと過ごしてしまう。いかんなあ。
と、郵便ボックスにゆうパックの不在連絡票が入っている。
再配達してもらっても、ずっと自宅にいるわけにもいかず。
こんな場合、専属料理人の不在は不便だ。
窓口での受取りとする。
当日の受取りの場合、22時以降となる。
21時40分に自転車で出て北郵便局へ。
こんなに夜遅くの外出は久しぶりである。
*
阪急中津からスカイビル東北エリアは人通りが少なく、強姦魔・桶田淳也が出てくるのではないかと期待しながら走るが、残念ながら遭遇せず。
ゆうパックを受取り、ついでにライフ大淀店に寄って食材購入、22時30分に帰館。
それからシャワー。色々並べてビール、酎ハイ。
深夜になり、HP更新が面倒になった。そのまま就眠。
8月22日(水) 穴蔵
晴れて酷暑復活。
朝6時から洗濯をするのであった。
下着4セットとポロシャツ1枚。この4日間、靴下ははいてないことに気づいた。梅田へ行くのもサンダルだからなあ。
東からの直射光で10時頃には乾いてしまう。
本日もアタマ低調でダラダラ過ごす。
眼下で騒音。
作業車が来て、百日紅や植木の枝を落とし、午後には片づけて去った。
*
きれいさっぱり。百日紅が満開であったが容赦なしである(ちなみに去年はこんな感じ)。
某営住宅、よろしいなあ。わが集合住宅は、こんな作業でもいちいち見積もりとって大変である。
野々村竜太郎の生家前に花は咲かないのであった。……竜太郎どうしとるのか。たぶん住之江公園の某営住宅にオカンと同居と推察するが、ゆめ「もう一花」などと考えるんじゃないぞ。
8月23日(木) 時々刻々
晴れて朝から直射光。3時間ほどエアコン稼働させる。
台風20号が今夜来るという。
午前、天八のスーパー(ライフ本庄店)へ行き、食材とビールを買ってくる。2日ほど籠城でも大丈夫である。
あとはヨレヨレのおっさん(痴呆よりちょっとマシ)状態で過ごす。
夕刻から断続的にテレビ報道を見るが……
既視感があるなと思ったら、2011年の台風12号と2015年の台風11号と同じだ。
2011年は静岡でのSF大会に行けなくなり、2015年は(電車はめちゃくちゃだが)たいしたことなかった。
今年はどうなるか。
色々(枝豆、ヤッコ、オムレツ・サラダなど)並べてビール、酎ハイ飲みつつテレビ。
大阪は防潮扉を閉めたりしているらしい。見に行きたいが、やめとくか。
こんな時にこそ強姦魔・桶田淳也が出てきそうな気がするが。
播州龍野に洪水警報とか避難勧告が出ているらしい。西播がいちがんヤバイそうな。
21時過ぎに「徳島県南部」(もろ徳島市あたり)に上陸という。
大阪、少し雨、風はたいしたことなし。
まあ、よほどの暴風雨でなければ目覚めることもなさそうな。
寝る。
8月24日(金) 大阪←→播州龍野
早朝に目覚めると雨はやんでいる。台風20号は深夜に姫路に再上陸、今は日本海に抜けている。大阪の降雨は6時間くらいか。
8時前には晴れてきた。天気はいいのに交通機関はズタズタ。
播州龍野が気になるが、JRも私鉄も始発から運転見合わせが多い。
このところ、豪雨や地震でも、電車がとまるのが最大の被害というパターンが多いなあ。
が……9時、阪神、山電、姫新線は動き出したようなので、播州龍野へ行くことにする。
阪神梅田9:26(9:35頃に発車となるが)、姫路で慌ただしく姫新線11:21に乗り換え、昼前に本竜野に着いた。
途中、淀川、武庫川、加古川、市川は濁って水量も多かったが、播州龍野・揖保川は静かなもの。
タイムマシン格納庫も実家も台風による被害なし。
門扉の横に百日紅が咲いている。
*
こういう品位は樹齢50年を超えないと出てこない。ツルツルの幹が太くないとサルスベリとはいえんだろう。うちの樹は60年前にはこの大きさだったから、100年を超えるはず。
たぶんおれの死後も残るだろう。
雑事色々片づけ、夕刻に近い電車で帰阪。
夕刻、JR神戸線が動き始めているようだが、ややこしそうなので、山電で帰る。
8月25日(土) 穴蔵/創サポ講義/ラスカルズ
快晴にして暑。昼間はベランダ34℃、湿度60%で、まあ季節感ありといえばそれまで。
室温は30℃で扇風機。
穴蔵にて、一応机に向かう。
夕刻這い出て天満橋のエルおおさかへ。
創作サポートセンターの講義。短篇4篇。
・アロマセラピストの女性は、顧客から悩みを打ち明けられる。ある日、カフェで近づいてきた不気味な女に「呪い」をかけられたという。……安物のワインのラベルからその謎を解くパズラー。展開がうまい。
・頭と体がそれぞれ別の「義体」に取り付けられた二人? 自動車事故でU字鋼の直撃を受ける描写が凄まじい。十分面白いのだが、展開次第でさらに大化けしそうな。
・「幸福度」が経済指標より上位に置く小国を舞台にした情報戦争。
・事故死したメンバーの忘れ形見に「アンタがわたしの父親になるなんて、絶対認めないから」と怒鳴り込まれてとまどう中年ミュージシャン。優れた音楽小説でありラブコメでもある。
それぞれ個性的な作品で、しかも長篇化(シリーズ化)もできそうな。こちらも楽しませていただいた。
帰路……東梅田で気分が変わり、ニューサンへ行く。
どうせ独居中なんだし。
ニューオリンズ・ラスカルズの2ステージを聴く。
カウンター席、バンジョーの前だが、ここも音響はなかなかいい。
*
久しぶりに福田トローンボーン入りのバーガンディ・ストリート・ブルース。
感涙ものである。
それにしても……客席のひとりの女性客。
両手を振り上げてリズムに合わせて手を打つ大げさなパフォーマンスを延々2ステージに渡って続けるのだが……
これが見事にオンビートというか表拍というか、要するに民謡調。気になってしかたがない。
悪意はないんだろうけど。
8月26日(日) 穴蔵
晴。残酷暑などという造語を見かけるが、それほどでもなかろう。
相も変わらぬ独居老人生活。
朝、6時に、野菜ジュース、トースト、ハム、キャベツ、アスイティの朝食。
机に向かうがドタマさっぱり働かぬ。
昼前に自転車で天八のスーパー往復。食材を買ってくる。
12時に、十六穀米なんとかの小ぶりの弁当を食す。
午後も机に向かうがドタマさっぱり働かぬ。
日が傾いた頃にちょっと散歩。
公園ではヨレヨレのおっさんが公衆便所横の樹の下に座ってハトにエサをあげてはる。
今や仙人の境地であるなあ。とてもやつがれの及ぶところところではありません。
たちまち夕刻。
シャワー後、調理を行う。枝豆、オクラを茹でる。
19時から、枝豆、ヤッコ、コロッケ・キャベツ・トマトなど並べてビール。
あと揖保乃糸(黒帯)を茹で、オクラ・ヅケなどぶち込み、酎ハイをちびちび。うまっ。
*
専属料理人不要論が浮上しかけるが、あれが作るのはこんなシンプルなものではないわなあ。
毎日食べたいものではないけど。
ということで、本日も無為に過ごす。嗚呼。
8月27日(月) 穴蔵
朝である。洗濯をするのであった。
あとは痴呆老人と化す。
たちまち夕刻。
19時から集合住宅の臨時理事会。
気の重い議題である。
来年はさらにややこしい事案が控えている。
播州龍野へ引っ越すか。悩みは多し。
21時頃から独酌。
買い置きの食材があるから、昨夜と似たようなメニューとなる。
コンビニメニューよりマシと思うべきか。
片づけて寝る。
8月28日(火) 穴蔵/ウロウロ
薄曇りにして湿度高く、気が滅入る日である。
昨夜の理事会の議題が尾を引いて、1、2年先を考えると憂鬱になる。
その関連で、午前、近所の「某役所」へ防災関係の相談に行く。ま、予想通りの答弁で、何の役にも立たず。
それは想定内のことで、地震の被害にからめて「この敷地内に地震計が設置してありますね」と、いちばん聞きたい話題を振ると、「それは気象庁の管轄ですから」と、場所も有無もいっさい答えない。立派というべきか。
取材は難しい。銀行に「地下金庫への侵入ルートを教えてくれませんか」と訊くようなものだからなあ。ちょっと違うか。ただ、欠陥を見つけたい下心はあるからなあ。
その点、NASAは立派だった。『カプリコン1』を撮る時、「どうせ取材拒否しても、お前らはその映画を作るんだろう」と、ある程度の取材に応じたはず。
ま、おれは取材とはいわず、世間話で聞き出そうとしただけだけど。
昼になった。
最近は外食が面倒になり、御徳家の牛丼で済ますかと、前まで行ったら改装中。
*
閉店したのか。「海千山千 番長」という居酒屋チェーン店になるらしい。
御徳家は長続きした店と思う。色んな店が入っては2、3年で閉店。焼肉の御徳家になってから15年くらいつづいたのではないか。東洋ホテルに泊まった高校球児が晩飯食いに来たり、ボンクラ息子がアルバイトしたこともある。
380円の牛丼がなぜか懐かしくなる。
しかたなく、昼はコンビニ弁当。
あとはボケ老人と化す。
8月29日(水) 穴蔵
晴。残暑ざんしょ?
相も変わらずボケ独居老人生活。
昼、近所の集合住宅に住む某氏に連絡、近くの日影で20分ほど立ち話。「集合住宅の理事」として、極めて信頼できる方である。
集合住宅の管理について色々訊くが、どことも似たような事情(特に管理会社の営業方針)であるらしい。
困ったことと嘆くべきか、時代の流れというべきか。
高齢を理由に退任させてもらうのがいいようである。
SFも同じ……うーん、こちらはもう少し頑張ってみるか。
たちまち夕刻。
相も変わらずコンビニメニュー。
ヨレヨレのおっさんの境地まであと一歩。
百怪一首
−−妖怪狂歌カルタ−−
*
これは奇書?というべきか。あるいは傑作ショートショートというべきか。
百人一首の妖怪版である。パロディというより「異形版」とか漢語の方がふさわしい。
「蘆原のかりほの庵で外法編む 我が衣手を朱く濡らして」(蘆原道満)……むろん本歌は「秋の田の仮庵の庵の苫を編み わが衣手は露にぬれつつ」
「騙されてもはや伊吹のさしも草 さしも知らじな燃ゆる怨念みや」(玉梓)
「いつまでも帰らぬ夫待ちながら ながながし首一人伸ばさん」(ろくろ首)……本歌が人麻呂の「あしひきの山鳥の尾のしだり尾の ながながし夜をひとりかも寝む」
ともかく傑作ぞろい。
歌人は天羽孔明……おなじみ(鶏の唐揚げに目のない)天ちゃん……最近は天狐堂なのかな。
絵はなんばきびさん。
発行は日本妖怪研究所。
詳しくは百怪一首を。
昔から、ろくろ首などの妖怪を偏愛していた天ちゃんのパロディ精神全開である。
大ホームランになってほしい。
8月30日(木) 穴蔵
晴。終日穴蔵。独居生活。ドタマ働かず。「生産性」ゼロ。
机に向かってじっとしていても気が滅入ってくるので、斜陽の時刻に散歩に出る。
日影を歩くと風は涼しい。
久しぶりに豊崎長屋を抜ける。
*
中崎町をうろうろ。
ヤマタツでトンカツとポテサラを買って帰館。
たちまち夕刻となる。
夜は楽しき独酌。
枝豆とヤッコの定番、ヤマタツのトンカツ、ポテサラ、キャベツ・トマトのザク切りでビール、酎ハイ。
揖保乃糸(黒帯)で仕上げ。
うーん、根菜類(筑前煮とかキンピラ)の不足を体感する。これだけは専属料理人の味に慣れていて、出来合いのは食べられたものではない。
8月31日(金) 穴蔵
晴。終日穴蔵。
少しは仕事もするのであった。いと少なしを。
たちまち夕刻。
近所の食品スーパー・サボイへ買い物に行く。
おっ、途中でヨレヨレのおっさんとすれ違う。公園へ行かはる途中である。
*
スケスケおじさんというかペタシというか、谷岡ヤスジの描くキャラに似てきたなあ。
夜は相変わらずのメニューで独酌。
と、21時前、とつぜん専属料理人が帰ってきた。
委細は明日だが、ちと複雑なことらしい。
ややこしい8月が終わる。嗚呼。
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