『マッドサイエンティストの手帳』649

●マッドサイエンティスト日記(2017年2月後半)


主な事件
 ・播州龍野いたりきたり


2月16日(木) 穴蔵
 晴れて暖。
 朝10時頃に大淀税務署に出頭して確定申告の書類を提出する。
 提出だけなのに5、6人の列。15分ほど待たされる。
 今年からマイナンバーの記入やコピーの貼付などが必要で、確認事項が多いためらしい。
 婆さんへの説明だけで10分近くかかっておる。お金持ちの独居老人なのであろう。身なりがまるで金持ちに見えないところがいかにも大阪。用心してくれよ。
 ま、今年も還付金で秋にはalaへ森山御大を聴きに行けることになった。ありがたいことである。
 穴蔵にもどり、金正男暗殺報道を断続的に見つつ、ボケーーーーッと過ごす。

2月17日(金) 穴蔵
 曇天、小雨。
 終日穴蔵にて、本日も金正男暗殺報道を断続的に見るが、現地(マレーシア)警察の会見がなく、憶測ばかりが拡大して退屈……してきたところに、サムソンの実質トップ・李副会長逮捕のニュース。
 半島、北も南もたいへんだなあ。
 トランプも石原もかすんでしまったではないか。東芝は知らぬうちに消滅か。まあ、どうでもええことだが。
 船村徹の訃報。
 夜は専属料理人に、クリームシチュー、ポテトや新玉葱にちりめん乗せてベークしたなんとか、トマトサラダなど並べてもらって、ビール、安ワインを飲みつつ、坂田明の「別れの一本杉」を聴く。
 泣けてくるなあ。

上田早夕里『夢見る葦笛』(光文社)
 「SFが読みたい! 2017年版」の国内部門、第1位は『夢見る葦笛』で、これはまことにめでたく喜ばしい。
 その他、ランクイン作品、すべて順当で、2016年は収穫の多い年であったことがわかる。
 つけ加えれば、田中啓文『地獄八景』と福田和代『緑衣のメトセラ』も上位にあるべき作品と思う。
 渡邉利道さんによる「上田早夕里全作品解題」もあって、ちょっとした上田特集号である。
 で、今頃だが『夢見る葦笛』について。
  *
 昨秋、某創作講座で上田さんインタビューを行った。『夢見る葦笛』収録作品が、すべて本格SFで、しかも多彩。そこでわざわざ姫路から来ていただいて、近年の上田SFの「進化と深化」について、創作方法中心に話していただいたのである(これは何らかのかたちでまとめられる予定)。
 上田さんの短篇には、見事な結構のものとイメージ凝縮型があって、ともに面白い。
 それぞれの作品については「SFが読みたい!」で触れられてるので細かくは書かないが、見事な短篇の代表格は、土星の輪でサーフィンをやる「氷波」だろう。アイデアと描写のバランスが見事。
 イメージ凝縮型は……おれは、短篇「魚舟・獣舟」を読んだ時、たいへんな傑作と思ったが、これは長編化すべき作品と思った。長編が凝縮されたものと思ったのである。ところが長編化された『華竜の宮』に圧倒された。「魚舟・獣舟」は大長編の一部だったのである。これは優劣ではなく質の違い。「魚舟・獣舟」はアイデアのイメージが詰め込まれた短篇であり、『華竜の宮』は壮大なドラマである。ともに年間ベスト作品。
 こういう凝縮型も数編あり。
 「上海フランス租界祁斉路三二〇号」は異色の題材だが、長編『破滅の王』に展開されつつある。
 おれは「滑車の地」にいちばん凄みを感じる。この背景には、オーシャン・クロニクルとは別の未来史があるのではないか。この泥世界のイメージは圧倒的だ。この未来史も読みたい。

2月18日(土) 穴蔵/ウロウロ
 晴れて、まあまあ暖。
 終日穴蔵。ほんの少し仕事らしいこともする。
 昼、運動不足なので散歩に出る。淀川堤を毛馬方面へ。
 途中で専属料理人からメール、天八のスーパーにいるというので、そちらで合流、ビール、焼酎などのポーターとして帰館する。
 夜は、白身のなんたら、ポテトのかんたら、温野菜のあほんだらなど並べてもらってビール、ワイン。
 フランスパンにニンニク味の強いサラミを載せたのがいちばんうまかった。
 金正男暗殺事件、北朝鮮籍の男が身柄確保されて、これが本命らしい。明日から面白くなるかな。

2月19日(日) 穴蔵/ウロウロ
 快晴で暖。体調もよし。やはり毎日歩かねばいかん。
 昼前に出て、近所の「豊崎町第6架道橋」から梅田貨物線に沿って福島方面へ歩く。
 豊崎から中津にかけて、重機が増え、工事が本格化してきた。
 大阪駅西側はまだ手つかず。工事の規模が小さいからであろう。
 うめきたの新駅(地下)は2ホーム4線。新大阪側は複線だが、新駅から西は単線である。「はるか」と「くろしお」しか走らないのなら、もったいない話である。おれは利用することなさそうだ。
 梅田ランプ西の踏切は地下化され、その先で地上に出る。
 ↓環状線「福島」のなにわ筋踏切はこのまま。
  *  *
 なにわ筋を過ぎて線路は上昇し、環状線と合流するが、この合流点がどうなのか気になっていた。
 福島駅の西、あみだ池筋の高架が合流点なのであった。単線の架線が、あみだ池筋の東では電架柱の外側、西で内側に入っている。
 なにわ筋とあみだ池筋の間が坂道とは、高低差的には面白い発見である。
 いずれにしても、新駅爆破には豊崎側から潜入する方がいいようだ(←あくまでもフィクションでっせ)。
 新駅完成は2030年3月で6年先。生きてられるかどうかわからん。
 野田まで歩き、環状線で大正まで行き、「いちゃりば」で遅めの昼食。沖縄そばとオリオン生。
 地下鉄で帰る。

2月20日(月) 穴蔵
 曇天、風強く、午後には雨となる。春一番らしい。
 終日穴蔵。
 色々と雑メール錯綜、たいして仕事はできないのであった。
 夕刻より、集合住宅の会合。耐震工事を進めるのに当たっての説明会。老朽化しつつある集合住宅には面白い工法ではある。
 おれはもう役職なしの身分だから気楽でいい。工事前に地震津波が来ても、どうっことなし……の気分。
 ということで、21時頃から晩酌。
  *
 メインはビーフシチューで、安ワインを少しばかりいただく。まあまあ。
 金正男襲撃の瞬間を防犯カメラの映像で見るが、おれには玄人はだしとしか思えんなあ。
 さあ、明日は早朝から動かねばならぬ。早寝するのである。

2月21日(火) 大阪←→播州龍野
 早朝の電車で播州龍野へ移動する。寒いのであった。
 午前9時前の播州龍野、粉雪が舞う。
 タイムママシン格納庫に寄って雑事処理のあと、近所の某社へ。
 新規の契約関係の打ち合わせ。
 時間がかかるかなと思っていたが、30分ほどで片づいた。
 実家に行き、7℃の書斎にて、防寒服のまま机に向かう。1時間ほどの作業だと、ストーブをつけても無駄なのである。
 あと金融機関を回り、昼頃に諸事項は片づいてしまった。
 1泊のつもりだったが、寒いので帰阪することにする。
 姫新線で姫路に出て、小溝筋のおなじみ灘菊に寄る。
 「オトーチャン、ひさしぶりやな」「いっつものや」
  *
 ということで680円の日替わり定食。水分補強も怠りなし。
 このところ、姫路に寄る楽しみはこれだけだな。
 夕刻に近い午後に帰館。

2月22日(水) 穴蔵/ウロウロ
 快晴である。午後は天気下り坂というので、午前に歩くことにする。
 と、なぜか専属料理人もついてきた。
 中津周辺の「専門店」を何軒か偵察。
 高層マンションが増えたのにスーパーがなく、意外に不便なのである。パンや鶏肉など見て歩く。
 貨物線に沿ってスカイビル下まで。
 稲妻屋の弁当をと迷うが、屋外で食すにはまだ寒い。そのまま福島まで歩く。
 昼はホテル阪神近くの路地裏にて、こういうものをいただく。
  *
 竹。嗚呼。ま、年に2、3回の贅沢である。
 おれよりだいぶ年上の婆さんがヨタヨタ入ってきて、隣席にどっこらしょと座った。
 「ごはんは少のうしといて。明日から入院するねん」
 気持ちはわかるなあ。似たような身分か。
 2号線を東に歩き、ハービスで買い物するという専属料理人と別れ、大阪駅方向へ。
 おや、梅三小路のソフマップが閉店している。キタではヨドバシのひとり勝ちか。
 書店などうろうろして帰館。6,769歩になった。
 鈴木清順氏の訃報。93歳。
 夜、これからDVDで最高傑作『野獣の青春』を見ることにする。

2月23日(木) 穴蔵
 朝だ。雨が降っている。久しぶりに浅田飴だ。
 出歩く気分にならず、食事で自宅へ行く以外、穴蔵にこもる。
 たいして仕事はしないのであった。
 たちまち夕刻。
 夜は、揚げの焼いたん、キャベツとソーセージの蒸したん、ピーマンなど炒めたん、トマトの切ったん、パンの焦がしたん、ビールの冷やしたん、ワインの栓開けたん、などの晩酌。あ、今夜はたいたんの妖女が出てこなかった。
 明日は生活態度を改めるつもり。

2月24日(金) 穴蔵
 定刻午前4時に目覚め、普通の生活パターンに戻る。
 7時に朝食。
 午前中、机に向かう。少しは仕事もするのであった、いと少なしを。
 昼は専属料理人に焼魚定食的メニューを並べてもらう。
 14時頃に散歩に出る。
 西梅田の某店にて散髪。
 近くの「定点」から、うめきたを眺める。
  *
 新駅工事が本格化してきた。あと6年。
 15時半に帰館。5,403歩となった。
 ネット知人の某さんが、播州龍野の昭和初期「遊郭事情」に関する資料をPDFで送ってくださった。
 以前からの疑問点が、氷解とまではいかないが、ほとんど絞り込まれてくる。
 来週にでも現場検証することにしよう。
 夜は正男暗殺報道見ながら晩酌。
 早寝するのである。

2月25日(土) 穴蔵/庄内ウロウロ
 晴。そう寒くもなし。
 昼前、幾つかの興味が重なって、阪急庄内へ行く。
 まず、駅から徒歩10分ほどの森友学園「瑞穂の國 記念小學院」を見物に行く。
  *
 立派な校舎である。工事中だが、たいしたものだ。東は公園、西は大阪音大で、申し分ない立地である。
 東へ歩き、阪急宝塚線を渡るとパナソニックの工場。
 ここは池田勤務時代によく来た場所である。
 国道挟んだ西側は「さくら広場」という公開公園になってになっていて、OB数氏が手入れ中であった。
 しばし立ち話。
 「こないだから向こう側(線路西)にヘリが飛び交って、たいへんでしたんや」「ちゃんと開校するんでっか」「生徒、集まってないみたいでっせ」「どないなりまんねん」「そのうち養老院ちゃいまっか」
 なるほど。それなら昭恵が名誉院長になってもいいのではないか。ふたりで入ればいいのだし。
 あと、豊南市場へ。
 10年以上前にこちらに「大和うどん」として紹介している店。いまは「ささめ」という名で、肉うどんが人気らしいが、おれはやっぱりきつね。当時260円が今は290円で、良心的である。うまっ。
 ここは「味」に限れば、立ち食い最高峰であろう。「安さ」も大健闘。「早さ」はちょっと落ちるが、これは味とのバランスでむつかしいところだ。
 また来るからね。
 豊南市場で伊予柑など果実を買って帰館。

2月26日(日) 穴蔵
 午前3時に目覚めた。朝まで本を読んで過ごす。
 目が疲れやすく、文庫50ページほどが限界である。10分ほど「仮眠」して、また読む、の繰り返し。嗚呼。
 晴れて暖(なのであろう)。外の体感温度はわからん。
 終日穴蔵。少しは仕事もするのであった。
・第37回日本SF大賞。
 大賞 白井弓子『WOMBS(ウームズ)』  特別賞 『シン・ゴジラ』
 マンガには疎いのでなんともいえない。これを機会に読むことにする。
・辛島文雄氏の訃報。24日に膵臓がんで。68歳。なんと今月になっても演奏を続けられていたのだ。
 夜、ビール、安ワイン飲みつつ「E.J.Blues」を聴く。
  *
 何度か機会がありながら、ライブは聴けないままになった。

2月27日(月) 穴蔵
 定刻午前4時に目覚める。
 本日も晴れて暖(なのであろう)。外の体感温度はわからん。
 終日穴蔵。
 精神的に不調である。久しぶりに(アホの見本)タドコロ状態で、ボケーーーーッと過ごす。
 もう過ぎてしまったことだが……
 2月26日は特別な日であったことに気づく。
・ジャズ誕生100年の日。100年前のこの日 Original Dixieland Jass Band が初めてジャズを録音した日であって、正確にはジャズ・レコード100年の誕生日であったのだ。
・むろん日本では226事件。
・山下洋輔さんの誕生日で、恒例・江古田でライブ。
・じつはウチも特別な日(これは上記の日に合わせた結果だが)であったのだが、特別なことはしなかった。
 気がつけば数十年が流れ去っている。そして気づかぬうちに消滅するのであろう。
 そういうものだ。

2月28日(火) 穴蔵/ウロウロ
 正男暗殺のニュース、相変わらず憶測報道ばかりで、さっぱり進展しない。
 昨夜から未明にかけて流されたニュース。出所はともに「韓国・国家情報院」。
 ひつとは「事件の容疑者8人のうち4人が国家保衛省出身」というもので、前から報道されてたこと。
 もうひとつが「北朝鮮、保衛省幹部を粛清。金元弘国家保衛相が解任され、軟禁状態にある。保衛省の幹部5人以上が高射砲で処刑された」というもの。
 どうなってんだ?
 幹部が高射砲で処刑された直後にマレーシアから子分どもが逃げ帰ってきたわけだから、カリアゲ豚野郎が褒めるのか処刑するのか、さっぱりわからん。
 快晴で暖、花粉はまだ飛散してないらしい。
 昼、出かけることにする。
 月末の処理事項などあり、昼、金融機関など回り、ついでに梅田南東エリアうろうろ。
 梅田新道、異様にハトが多いなあ。どこで何を食べているのか。
 お初天神を抜け、瓢亭で夕霧そばを食す。
 お初天神通の東側、曾根崎小学校も含めて、ほとんどが更地(駐車場)になっている。
 6年前には、10年ほどは変わるまいと予想していたが、案外早く片づいたな。
  *
 あとどうなるのか気になるが、生きてるうちに見られそうにない。
 帰館。
 夜は久しぶりに中華メニューでビール、湯割り。
 テレビでR-1をちょっと見るが、笑いの感覚がまったくついていけない。笑えないというより苦痛である。
 SFに関してはそうでない……つもりなのだが。
 無為に過ごした2月が終わる。嗚呼。

※昨夜のR-1グランプリについて、朝、ネット見たらアキラなんとかというのが優勝している。これ、昔からある「はだか踊り」ではないか。両手に盆を持って「ひとつと出ました快男児、○○○○がよかチンチン」とやるやつ。
 「安心してください、穿いてますよ」が、もろフリチンになった。笑いの感覚が宴会芸レベルまで退化してしまったのかなあ。
 おれがR-1に期待してたのは「お笑いスター誕生」レベルなのだが、あれは80年代はじめだったから、もう35年以上昔になる。九十九一、イッセー尾形、大竹まこと(シティボーイズ)、ミスター梅介などが出てきたときには興奮したものであった。そういえば「ぶるうたす」もいた。はだか芸の嚆矢ではなかったか。お笑いも遠くなりにけり。(2017.3.1)


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