『マッドサイエンティストの手帳』639
●マッドサイエンティスト日記(2016年10月前半)
主な事件
・穴蔵移転
・播州龍野いたりきたり
・公開講座「時代小説の書き方」(8日)
・公開講座「SFの進化と深化」(15日)
10月1日(土) さらば、野々村竜太郎の生家が見える穴蔵
朝、某引越し社から荷造り担当(女性2名)が来穴蔵、引き続きロジスティックチームが大量のダンボールと包装資材を置いて去る。
仕分けして置いた本・CD・雑資料を梱包していく。引き続き本棚の本も。
(トラック使わない移動分も梱包するのであった/これは時間短縮のためらしい。)
この間、おれは机周辺の箱詰めされると困る雑品や堀晃さんの絵画などをシン穴蔵へ運ぶ。
本とCD・DVDばかりで、量は多いが、作業は楽な方らしい。
流し周辺、風呂場、トイレ、ベランダ、押入れ、なーんもないのに驚いている。
普通は、食器・台所用品・衣類・履き物・寝具・置物・玩具・その他雑多なものが多くて、たいへんらしい。
2時間半ほどでダンボール数十ケースが積み上げられた。
午前中に作業終了。搬出は明日である。
本日は秋の引越のピークらしく、作業員が確保できないらしい。
昼は自宅でビール一杯飲み、しばらく休憩。
午後……ダンボールと机とパソコンだけの部屋でエルゴヒューマンに座って過ごす。
*
まさに明窓浄机。なかなかいいものである。
野々村竜太郎の生家が右手50メートルに見える。
2000年8月以来16年を過ごした部屋、今日が最後である。
こうなると、ちょっと名残惜しい気もする。
10月2日(日) 穴蔵移動
朝8時過ぎに、某引越し社から作業員(男性3名)が来穴蔵、昨日梱包したダンボール箱、机、本棚の新穴蔵への搬送を開始。
先に本棚を運び、壁面に配置してから、本棚と少し離してダンボールを積み上げる方式。
と、本棚の隙間から高さ140センチの板が出てきた。
*
Qコンだったと思う、かんべさんと漫才やったときの看板で、記念にあとから送っていただいたものである。
これ、粗大ゴミに出すわけにはいかんわなあ。
葬儀の時に棺に入れてもらうことにして、遺言しておこう(むさしくんを道連れにするわけではありません。いずれ地獄八景巡りをやるので、ちょっと先に行って、茶店で待っていることにする)。
予告なしの搬出(夜逃げか?)がもう一戸あり、エレベーターが混む。迷惑なことである。こちらは1週間前から掲示して管理組合の了承も得ているんだぜ、507はんよ。
ということで、3時間ほどで新穴蔵への搬入完了。
机にパソコンをセット。
壁はからっぽの本棚。
床には本とCD・DVDを詰めたダンボール。
ここがたぶん「終の穴蔵」である。
エルゴヒューマンに座っていると心地よい。
しばらくこのままで、ダンボールの開封は1日1箱くらいでやるか。1ヶ月以上楽しめるではないか。
窓からの眺め。
*
あまり変わらない。野々村竜太郎の生家が見えないのは寂しいが(寂しくもないか)、前より開放感がある。
電話工事は4、5日先になる。
電話かからず、玄関からのチャイムも鳴らず、むろん来客もなく、これまたいいものである。
ネット接続だけ、しばらく不規則になる。
10月3日(月) 穴蔵
曇天、断続的に小雨。落ち着いてよろしい。
終日穴蔵。
ダンボール箱を開封して本を書架に詰めるが、古い資料を読み出して作業中断すること多く、片づけはあまり進まない。
10箱を整理したから、やり過ぎか。
たちまち夕刻。
専属料理人に数皿並べてもらって一献。
*
先日宮崎のテリーくんからいただいた地鶏の薫製をスライス、レタスで巻く。これで冷やしたシャブリ。いけますなあ。
10月4日(火) 大阪←→播州龍野
早朝の電車で播州龍野へ移動する。
疲労が蓄積しているらしく、車中、ほとんど居眠り状態。
タイムマシン格納庫にて作業色々。
あと金融機関と郵便局。
そういえば駅前郵便局のとなりの建物にはレトロな雰囲気が漂っている。荷風○人さん好みの建物である。
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半分しか残ってないが(半分は郵便局の駐車場)、もと「カフェ」である。戦前までしか営業してない(おれが物心ついた時には廃業していた)そうだが、隣家が知人のウチで、亡母は女学生時代、夕刻に女給たちが立ったまま賄い飯を食べているのを裏口からよく見たという。
播州龍野にもカフェ華やかなりし時代があったのである。
実家にもどると、毎年の習慣で、Nさんが新米を届けてくださった。
30キロ袋をどさり。玄米である。
さっそく自動精米機に運び荷造りして大阪その他各方面に送りたいのだが、さすがに本日は10キロ以上の荷物を抱えて運ぶ元気はない。
来週まわしとする。
夕刻の電車で帰阪。
10月5日(水) 市内ウロウロ
朝、地下鉄で谷町筋の法務局へ行く。
タイムマシン製造会社の「本店移転登記申請」である。
当社の設立は2001年11月22日(大安)である。あの頃は元気だったから、法務局まで自転車で往復した。播州龍野の「別荘」を事務棟に改修したり、取引先に挨拶回りしたり、忙しかったなあ。
登記上の本店は「旧穴蔵」なので、新穴蔵に移転登記する。印紙3万円。嗚呼。
まあ何とか15年やってきた。
あと、20年までがんばるか。
坂道を下り、商工会議所にも寄る。原産地証明を要求されることはほとんどないのだが。
ボンサラ時代の勤務先(ここには2001年5月までいた)を通過。旧知の社員は数人いるかな。立ち寄ることはなし。
梅田に出て、銀行関係。ついでに梅三の某ハウスで散髪。
帰路、グラフロ北館の上から、オープン2日前のうめきたガーデンを見る。
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ちゃち。
10月6日(木) 穴蔵
秋晴れに近い晴天。
終日穴蔵。
午後に「NTTの下請けです」と名乗る青年が来て電話工事。30分ほど。
ネット接続も確認。これで旧穴蔵の機能はすべて復活した。
ということで、張り切って仕事……にかかればいいのだが、色々と出てくる資料を読んでたら、たちまち夕刻。
専属料理人に数皿並べてもらって晩酌。
早寝するのである。
こんな日がしばらく続くのであろう。
10月7日(金) 穴蔵/ウロウロ
プラスチックや紙類の回収日である。
6時過ぎにダンボール箱10枚結束したのをゴミ置き場に持って降りる。
次のロットを持って降りたら、前の10枚はもう消え失せている。部屋に戻りかけたら、別のトラックが来て、ダンボールを持ち去った。
連中、早朝から働いているのである。
シリトー『屑屋の娘』を思い出すね。テーマは関係ないけど。
快晴である。
梅田方面、ヘリが飛び交う。うめきたガーデンのオープン取材らしい。
昼前から散歩に出る。梅田貨物線に沿って西へ。地下化工事、ぼちぼちと始まっている。
スカイビル農園を経て、南回り、梅田ランプ西の踏切を渡って大阪駅へ。
*
途中で定点撮影。北の方に「うめきたガーデン」が見える。
半年ほどこんな眺めなのであろう。
ヨドバシ〜紀伊国屋〜ジュンクドー経由、(昼間、専属料理人不在につき)サボイとたけうちうどん店の間にある湖月で500円の幕の内(この周辺ではいちばんうまい)を買って帰館。6,000歩を超えた。
午後は穴蔵にて、開封したダンボールから出てきた資料を読んで過ごす。
10月8日(土) 創サポ公開講座「時代小説の書き方」
世間は3連休の初日らしい。
終日穴蔵にて本と雑資料の整理。ダンボール2箱分を片づけた。
夕刻這い出て、天満のエルおおさかへ。
創サポの公開講座「時代小説の書き方」
鈴木輝一郎×木下昌輝×楠乃小玉
本日は隅の方で聴かせていただく。
作風の違う3氏がそれぞれの方法を披露。神の目が書くか人物視点でいくかの差とか、史実の隙間のどこに想像力を働かせるかなど。
一族の子孫に取材すると悪く書きにくくなるなんて、実感があるなあ。
鈴木輝一郎さんとは初対面だが、抜群の話術(話芸というべきか)である。
時代小説・歴史小説は資料(史料)がたいへんで、その収集と活用法の話題が半分以上。なかなか参考になる。
ネット時代になって、数百万した代表的史料が無料で検索できるようになったとか、心中複雑であろうなあ。
SFにおける科学考証と似た事情も多いように感じる。
鈴木さんは「ジャパンナレッジ」を薦められ、これはおれも迷っているところ。
新聞購読より安いし、国史大辞典や故事類苑の値段を考えると安いものだが、科学関係はそれほどでもないしなあ。
10月9日(日) 穴蔵
未明に激しい雨音で目覚めた。
本日も雑資料の整理を続ける。
ファイル、切り抜き、コピー資料、プログラム、パンフレット類、ダンボール2箱分。
なぜこんなものがというのから、意外なところに寄稿してたり、新聞記事に思いつきを書き込んでたり。
半分くらいは捨てることにする。
自分の記事は、一応残して、そのうちPDF化することに。
問題は「着想メモ」である。
思い出せるのもあり、自分のメモなのにさっぱりわからんのも多い。これらは、取りあえず残す。
ダンボール、減らないなあ。
曇天から夕刻には晴れ、ベランダは21℃。急に肌寒くなった。
*
北梅田の夕景。中天に上弦の月。センチメンタルになるぜ。
10月10日(月) 穴蔵
秋晴れである。
世間の3連休、穴蔵にて本と雑資料を整理しつつ、あれこれ読んで過ごす。
1時間ほど、散歩を兼ねて、天八のスーパー往復。専属料理人の従者として食材を自転車に積んで運ぶ。
普通の1日である。
10月11日(火) 大阪←→播州龍野
早朝の電車で播州龍野へ移動する。
タイムマシン業の相棒の某くんが遠距離出張のため、雑事の処理。
海外は日本の連休関係なしだから、連休明けにややこしい連絡が多いのだが、今回はそれほどでもなかった。
実家にて肉体労働も行う。新米の荷造り作業など。
涼しく、汗もかかず。
*
もうコスモスの季節なのであった。
昼は龍野の穴子寿司。
夕刻の電車で帰阪。
夜は、イカ・キュウリの酢みそ、タタミイワシ、ミニつくね鍋でビール。雑炊(リゾット風)を作り、ワインを少しばかり。
デフランコ師匠を聴きつつ。秋の夜は更けゆく、
10月12日(水) 穴蔵
秋晴れである。
終日穴蔵。片づけ作業3時間、雑読10時間ほど。朝食・昼食・シャワーなどに1時間。
たちまち夕刻となる。
専属料理人に数皿並べてもらって晩酌。
寝る。
10月13日(木) 穴蔵
曇天、午後は晴れる。
終日穴蔵。片づけ作業3時間、雑読10時間ほど。朝食・昼食・シャワーなどに1時間。
たちまち夕刻となる。
専属料理人に数皿並べてもらって晩酌。
新穴蔵にいると心地よく、あれこれ読んでいたら、たちまち1日が終わってしまう。
明らかに運動不足である。
明日は少し動くつもり。
10月14日(金) 穴蔵/ウロウロ
金曜はプラスチック、紙、衣類の回収日であり、早朝にダンボール12箱分を出す。
20分後、プラスチックゴミを持って降りたら、ダンボールは跡形もなし。
連中、朝早くからよく働くなあ。
あとは穴蔵にて本を読んで過ごす。
上田早夕里さんの新刊『夢みる葦笛』など。
昼前に専属料理人と天五の北区役所近くまで歩く。
某銀行にて口座解約。集合住宅の管理費引落しの方式が変わったためである。
あと商店街をウロウロ。
青空書房がなくなってから、散歩でこちら方面へ来ることが少なくなったなあ。
*
昼は玉一にてこういうものをいただく。玉一も久しぶりである。
天満ぷららに寄り、野菜と果物を購入。
野菜の袋を持たされて、歩いて帰館。
6,215歩になった。
10月15日(土) 創サポ公開講座「SFの進化と深化」
穴蔵にて本を読んで過ごす。
上田早夕里さんの作品を『火星ダーク・バラード』から最新刊まで再チェック。
夕刻這い出て、天満のエルおおさかへ。
先週に引き続き、創サポの公開講座。
本日は、
「SFの進化と深化」
堀晃×上田早夕里
*
おれと上田さんの対談のように予告されていたが、創サポは創作講座であり、「小説の書き方」がメインテーマである。
SFの書き方については、おれが何度も話しているので、本日は、上田早夕里さんをゲストに、おれがインタビューする形式で進める。
上田早夕里さんの作品世界は、近年、妖怪ミステリー『妖怪探偵・百目』シリーズ、トラファルガー海戦を描く上田版スチームパンク『セント・イージス号の武勲』、そして現在小説推理に連載中の上海を舞台とする近代史サスペンス『破滅の王』と、大きく広がっていてる。しかも、SFから離れることなく、『夢みる葦笛』には、宇宙SF、人工知能、呪術、泥世界など、多彩な硬質SFの秀作が収録されている。
そこで、近年の上田SFの「進化と深化」を聞き出そうという企画である。
最初の短編「緑の家路」から最新刊までの作品をたどりながら、その時々の創作姿勢を、テーマ設定や指向性以外に、具体的な資料収集や執筆作業(机とか時間配分まで)についても話していただいた。
聴講者には、参考になることと到底真似できないことが混在していて、驚きつつも大きな刺激になったであろう。
(この講座は、なんらかのかたちでまとめられる予定)
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