『マッドサイエンティストの手帳』463

●マッドサイエンティスト日記(2009年10月前半)


主な事件
 ・酒井俊+田中信正(1日)
 ・創サポ講義(3日)
 ・市立科学館20周年セレモニー(7日)
 ・神戸/だまし絵/山信(9日)
 ・神戸ジャズストリート(10日)
 ・御堂筋Kappo(11日)
 ・梛(なぎ)八幡神社(14日)
 ・「ちづちゃんの花園」(15日)


10月1日(木) 穴蔵/神戸/酒井俊+田中信正
 10月になった。
 例年だと小松左京賞で上京というパターンだが、今年は受賞作なし、しかも小松左京賞は今回で中止ということなので、上京の機会がまた少なくなりそうだ。
 すっかり出不精になったしなあ。
 ということで、終日穴蔵。
 半分はデスク、半分は寝転がって資料を読む。
 運動不足なので、夕刻に近い午後、阪急で三宮へ移動。
 久しぶりに三宮界隈をウロウロする。
 某台湾料理店で一杯と思っていたのだが、定休日であった。
 近くの「樽八」という居酒屋で生ビール、串カツ。まあ標準レベルである。
 それにしても、神戸も人通りは少ないなあ。
 トアロードは閑散。
 そのトアロードにある「木馬」へ。
 酒井俊(←女性ヴォーカルですよ)と田中信正のライブ。
  
 酒井俊さんをライブで聴くのは初めてである。
 70年代後半のをCDで聴いたことがあるくらい。
 その後はアメリカに渡られたんだったかな。
 30年経って聴くと……ストレートなジャズというよりも、まったく独自の音楽世界に変貌していた。
 どちらがいいとか好きとかではなく、酒井俊の声でしか表現できない世界が確立されたのである。
 半分以上は日本語で、さらにその半分は即興的な「語り」に近いのかな。
 「黒の舟歌」とか「よいとまけの歌」とか、この選曲もいいねえ。
 22時まで。
 深夜の帰館。本日は約7600歩。

10月2日(金) 穴蔵/夜を走る
 雨ぞ降る。
 終日穴蔵。
 少しは仕事もするのであった。いと少なしを。
 運動不足なので、夜、出かけることにする。
 歩くつもりだったが、雨が上がったので自転車で。いかんなあ。
 ハチへ行って水割り一杯。ハチママは夕方ちょっと覗く程度に回復しているらしい。
 まあよかった。何よりも脚力が大事であることを知る。
 扇町公園を抜けて天六に向かう。
 
 公園には誰もいない。結城昌治。
 「ワイルドバンチ」には庄内さんひとり。
 いい話がありますよ……と、DVD『地平線がぎらぎらっ』を貸してくださった。
 おれが「もう一度見たい映画」のベスト10?に入れている作品のひとつ。出入りしている某氏が貸してくださったという。何でもしゃべってみるものだなあ。これについては別項で。
 ということで、酒気帯び自転車で深夜の帰館。
 いい運動に……はなってないなあ。

10月3日(土) 穴蔵/創サポ講義
 わ、目覚めれば7時である。
 久々の朝寝。飲み過ぎであろう。
 終日穴蔵。
 色々と読んだりメモを取ったり。
 夕刻、穴蔵を這い出て地下鉄で天満へ。
 八軒家浜から中之島の先端を眺める。
 暮れなずむ大川に噴水が吹き上がっていた。
 
 孤独な噴水。吉村昭。あれはボクシング小説だけど、名作だなあ。
 と、センチメンタル・ムードでエルおおさかへ。
 創作サポートセンターの講義。
 ショートショート含む提出作品13篇についてコメント。
 SF以外の作品も色々あって、それぞれ面白く、おれにも刺激になることが多い。
 今回、そのまま雑誌掲載可能と思えるのもあり。ただ、ショートショートや短編でのデビュー間口が狭いのは辛いところだ。
 まっすぐ帰館。
 21時過ぎから遅めの晩酌。
 眠い。寝る。

10月4日(日) 穴蔵/散歩
 秋晴れの日曜であり、本日は仕事はしないことにした。
 DVD『地平線がぎらぎらっ』を見る。
 やはり傑作である。
 体が鈍っているので、ぶんきちくんを見習って少し歩くことにする。
 淀川堤を上流へ、毛馬閘門を渡って蕪村の碑まで。
 ここは淀川河口から10キロである。
 
 ちなみに、おれがよく定点写真を撮るのが河口から8キロの位置。
 ウチと毛馬を往復すると約5キロ、6300歩ほどである。
 ぶんきちくんの1/4程度、平坦な堤で荷物なしの散歩だから比較にもならないけど……帰路「菊華」で遅めの昼食、皿うどんでビール、この旨さだけは同等であろう。
 午後はVHSで『組織(THE OUTFIT)』(1973)を見る。これは初見。確かに「幻のB級アクション」といわれるだけのことはある傑作である。

10月5日(月) 穴蔵/腕時計/米八弁当/無念
 終日穴蔵……のつもりだったが、梅地下の時計店から電話があり、修理品が出来上がってますという。
 昼前に受け取りに行く。
 先日、腕時計の電池交換を依頼したら、老職人風の店主が、
「お子さんはおありなんでしょう?」という。
「おります」
「この時計はすぐ分解掃除すべきです。製造中止になっていて貴重です。5、6年に1度は分解掃除して、お子さんに引き継ぐべきです。ますます値打ちが上がります」
 へえっ。25年ほど使っている腕時計、そういえば10数年前にもそんなこといわれて分解掃除している。
 おれは時計に限らず、ブランド品にはまったく興味がない。
 腕時計については、30年前に今の専属料理人が暮れた「高級品」があって、ただ、当時は工場での工事の仕事が多かったから、会社の近くの時計店で仕事用のを買うことにした。
 その時に、2、3万のをと思ってたのだが、横にあったちょっと高いのがなぜか気に入って、衝動買いしてしまったのである。他人に見せても、そんなブランドは知らないという。
 が、どうやらプロの時計職人から見れば、これがなかなか渋い選択であったらしい。
 おれとしては珍しい買い物である。
 ちなみにブランドは「LASSALE」である……時計屋にのせられて修理費9千円をとられただけかもしれないけど。
 本日、専属料理人が昼間はいないので、阪急デパ地下で米八の「四君子弁当」(命名の由来は不明)をかって帰る。
 
 午後は穴蔵にて、少しは仕事もするのであった。
 断続的にニュースを見る。
 中川昭一死亡のニュースばかり。
 自民党の政治家が「残念」「無念」の繰り返し。
 その言葉にも感情にも偽りはあるまい。
 ただ、もう少し詳しく述べれば「残念だ、これが選挙前だったら」「無念だ、中川よりアホ太郎だったら」ってところだろうな。

10月6日(火) 穴蔵/ウロウロ
 朝だ。雨が降っている。浅田飴だ。
 というパターンはやめて、断腸亭に倣うことにしよう。
 昨夜来の雨霽(は)れず、朝の窓からは低能勤務人(ぼんくらさらりーまん)の傘差して歩く姿見るのみ。終日穴蔵にて電脳端末画面に向かいて一日をおくり……のつもりであったが、プリンターのインク切れ。嗚呼。
 午後、小雨の中をヨドバシへ歩く。
 ついでに、梅田界隈の地表を1時間ほどウロウロ。
 雨天の場合、ボンクラ通行人の多くは地下街にもぐる。地表は人通りが少なくていい。
 NU茶屋町のテラスから安藤忠雄設計のCHASKAを見る。
  *
 完成間近、ほぼ全貌が現れたというところだが、すぐ西側ではタワーマンションの基礎工事が始まっていて、CHASKAの全体像が見られるのは年内だけではないか。
 おそらく完成時には西側にタワーマンションが迫り上がって視界を塞ぐはず。
 南北には建物あり、東側は新御堂筋の高架だから、完成したCHASKAの全体像が見える場所はおそらくないだろう。
 茶屋町も大阪駅周辺も、商業施設が詰まりすぎで、とても景観を楽しむ気分になれない。
 廃墟になった方が風情がありそうだなあ。
 できれば廃墟になった梅田を見たいが、それまで(推定50年後)生きてられそうにないから、想像で書くことにするか。

10月7日(水) 市立科学館20周年セレモニー
 昨日来の雨、台風18号の接近にともなって、少し強くなってきた。
 午後、中之島の阪大中之島センターへ向かう。
 いつもなら自転車だが、雨天なので徒歩。
 穴蔵からかっぱ横丁北端まで10分。ここからは傘不要。ガード下を歩き、三番街(梅地下北端)から堂島地下センター(南端)まで25分、ここから地表に出て、中之島センターまで10分。計45分である。
 
 「大阪市立科学館開館20年記念セレモニー」である。
 おれは電気科学館の頃からよく来ている。
 特に近年は、SF大会関連企画やH2A打ち上げ映像などで何かとお世話になっている。
 こんな催しに声をかけていただけるとはありがたいことである。
 20年の歩みを紹介するスライド上映では、菊池誠さんがテルミン演奏。
 
 「記念トーク」として、朝日新聞の尾関章さんの「@ユカワの原点」……これは記者としての湯川秀樹との「初対面」(←なんと遺体である!)から先年の「湯川日記」発掘までのエピソードを披露しつつ、昭和史の科学面からの検証について語られた。
 その後、加藤副館長から「中之島科学研究所」の概要について説明があった。一種のバーチャル研究所かな、ちょっとちがうか。本日開所。建物とか研究室はないけど「自力参加」で科学史・科学教育・博物館学・物理・化学・宇宙科学を研究しようという試み。詳しくは今後ウェブで紹介されていくだろう。
 それに関連して、松田卓也先生の「記念トーク」は「市井の研究者とバーチャル研究所」……市井の研究者(特に問題なのはポスドク)にとって論文発表するのに所属(特に郵便を受け取れるアドレス)がないことが障害になる。バーチャル研究所がその救済機関に成りえないかという提言だが……松田先生の話の面白いのは、脱線部分というか関連エピソードがやたら出てくるところで、感心しつつも大笑いの雰囲気となる。
 後半は懇親会。堂島川を眺めつつビール、ワインをいただく。
 SF関係も10人ほど。
 松田先生と久しぶりに話すが、松田先生もおれと同様に「S字型変形動物」が苦手だそうで、京大の構内にもいたとか……ま、ややこしい話を色々。おれも先日の創サポ作品についてお話したが(これ←苦手な人は読まないように)、こんな話をしていると自家中毒を起こしそうな。
 途中、科学館の斉藤課長による演示実験「目に見える超伝導」が披露された。
 これは近日科学館で行われる実演の予告編。
 マイスナー効果(という言葉は使われなかったが)の実演である。
 超伝導体が冷えるまでの間、磁場の視覚化(といってもクリップとかストローなどで組んだ手作り材料で)なども。
 
 ともかく斉藤課長の語り口が縁日の香具師みたいで(失礼! しかし褒め言葉です)たいへん面白かった。
 19時半頃に帰路につく。往路と同じコース。
 夜に西梅田を歩くのは久しぶりなので、駅前第2ビルB2の「What's New」に寄って水割り1杯。
 「Blue Minor」が流れていて、雰囲気よろしいなあ。

10月8日(木) 穴蔵
 午前6時に目覚める。
 静かな朝だ。
 昨夜は、帰路、少し風雨が強く、といってもズボンの裾が濡れる程度であったが、酔っぱらって熟睡、未明に台風18号は愛知に上陸、関東を北上中らしい。
 小雨が8時にはやみ、昼前には晴れ上がった。
 終日穴蔵。
 少しは仕事もするのであった。いと少なしを。
 昨日の「中之島科学研究所」関連で、論文と小説の違いについてあれこれ思う。
 ハードル、レフリーの有無、「所属」の問題……しかし、ともかく、作家(自称作家を含む)の場合、いいと信じた作品をコツコツ書く他ないのであろうなあ。
 おれはボンクラ・サラリーマン時代、一時期「知財管理」を担当していた。それまでにも、何件か特許出願をやっている。明細書も自分で書いた。
 この時に思ったのだが、出願だけは誰でもできる。2万数千円支払えば「公開公報」には掲載されるのである。1年半待たねばならんけど。
 これを利用するのも手であるなあと、30年ほど前から思っているのだが……さて。
 タイムトラベル法を出願してみるか……などと愚考していたら、たちまち夕刻。
 夜は専属料理人が作ってくれたドリア、サラダ、その他色々でビール、ワイン少し。
 早寝するのである。

10月9日(金) 神戸/だまし絵/山信/沢の鶴/月の水?
 台風一過の秋晴れ……といいつつ雲もあり。
 朝9時に専属料理人と出かけることにする。
 阪神「岩屋」に10時過ぎに着く。
 兵庫県立美術館へ。
 『だまし絵』を見る。
 入ってすぐに「目玉」のアルチンボルド『ルドルフ2世』があり、つづいて『水の寓意』……このふたつを見たら、あとはまあ、それぞれ面白いし展示も工夫してあるのだが……。
 ダリ、マグリット、エッシャーもそれぞれ数点が展示されてるが、おなじみというか、それぞれ個展で見た時のインパクトはもうない。
 福田繁雄は1点のみ、もっと集めてほしかったなあ。
 他の常設展示も見る。
 摩耶埠頭に面した海側の歩道を東へ。
  *
 この界隈は震災後に大きく変貌した場所のひとつ。歩くのは初めてである。
 摩耶埠頭にはタイムマシンを搬入したことがあるけど震災前だ。
 ヨツトハーバーなど見て、大石まで25分ほど。
 大石南町の「山信」で昼飯。
 1000円の特鰻丼である。
 
 この店は、すぐ南側にある沢の鶴資料館での9年前のコンサートで、地元の人から教えられた店。来るのは2度目だけど。味も店の雰囲気も変わっていない。
 阪神大震災の時に「鰻丼」(数百食!)で支援された立派な店なのである。
 食後、山信を知るきっかけとなった「沢の鶴資料館」を見学。
 
 おれは前にも見てるけど。専属料理人は吟醸酒と奈良漬を買う。
 歩いて阪神大石へ。
 阪神で帰館は14時半。
 で、歩数計を見たら、ジャスト12000歩であった。
 
 2年9ヶ月に1度の快挙……ということになるのかな?
 ……ということで、夜。
 20:30頃にNASAが「月の水」の有無を調べるために、無人探査機を南極に衝突させる。それが生中継されるというではないか。
 が……残念というか当然というか、つながらない。
 1時間ほどで結果がでるというのだが。
 生中継はあきらめて、早寝することにする。

10月10日(土) 神戸ジャズストリート
 オバマ大統領にノーベル平和賞!?
 「平和賞」というのは「科学」とはまったく別の賞なのであろう。受賞理由が理解できない。
 金大中の場合、「面談」したからという理由で貰ったが、面談相手の小金ちゃんが拗ねて、結局もとの状態に戻ってしまったのだから、何のための授賞やら。さらにその前の佐藤衛生サックとやら、これは今でも理由が皆目わからんものなあ。
 オバマの場合、理念を述べただけで受賞だからなあ。退路を断って推進させる圧力と考えられないでもないけど、「暗殺される前にやっとけ」ってことじゃないのか?
 などと愚考しつつ、本日も専属料理人と神戸に向かう。
 神戸ジャズストリート。
 おれは気楽なリスナー、専属料理人はジャズクルー(会場整理などするボランティア)である。
 11時からパレード。三宮から北野坂を異人館通り手前まで。
  
 グランド・マーシャルはいつも絵になる川合純一さん。
 専属料理人は警官の後ろを歩きながら交通整理をやっておる。
 今年の先導警官は比較的ソフトなタイプで、まあよかった。オイコラ型がマイク持ってどなると(歩道に出て写真撮るファンのマナーの悪さは問題だが)興ざめだものなあ。
 ということで、パレード終了。
 今年は、ふだん聴けない清水万紀夫さん追っかけで……と、12時前に神戸外国倶楽部へ行ったら超満員である。後方で背伸びして立ち見。北村英治さんの横で、清水万紀夫さんはアルトを吹いていた。
 13時、「GREEN DOLPHIN」で右近茂と思ったが、ここも満員。
 「ソネ」へ行ってコルネットのカルテットをしばらく聴く。
 14時から清水万紀夫+川瀬健トリオ、途中からヴォーカルのキャンディー浅田が入る。
 
 清水さん、ここではクラリネット。やはりいいなあ。ワンホーンのカルテットでリーダーアルバムを出してほしいものである。
 引き続きソネで16時から、後藤雅広+川瀬健トリオ、北荘桂子(vo)。後藤さんの歌伴は初めて聴くが、うまいものだなあ。
 ということで、最後は、また北野坂を上ってバプチスト教会へ。
 「夕べの祈り」である。
 ドイツからのクラ、トーマス・レティンヌとイギリスからのバンジョー、ショウン・モイセスをフィーチュアーしたラスカルズ・メンバーの演奏。
 つづいてマホガニーホール・ストンパーズ。
 そして最後はニューオリンズ・ラスカルズである。
  *
 レティンヌと河合良一の2clによるバーガンディ・ストリート・ブルースはここ数年間の屈指の名演であった。
 ここで友人数氏と合流するのが毎年のパターンである。
 ゾロゾロと坂を下って、三宮の巨大居酒屋「千人代官」へ。7人で盛大にビール。
 アフター・セッションを見に行くという数氏と別れて、帰館は21時過ぎであった。
 本日の歩行数は11796歩。結構あるいている。神戸JSは端っこの外国倶楽部を含めて3会場ほど移動すると、結構な距離になるのだなあ。

10月11日(日) 穴蔵/御堂筋Kappo
 定刻午前4時に目覚めて、4時半から「日本の話芸」で三遊亭圓丈『茶金』(はてなの茶碗)を見る。
 圓丈の演る古典、圓生の血筋はまるで感じさせないが、それなりに面白いなあ。新作・創作落語派といえど、古典をやったかやらないか、この違いは大きいようだ。三枝師匠はどうなんかいな、芸の継承(弟子の芸)ということにおいて。
 ま、それはともかく、本日も晴天なり。
 神戸ジャズストリート2日目で、専属料理人は朝から神戸へ出かける。
 おれは明日収監される身なので、穴蔵にて、本日中に片づけておくべき雑用の処理。
 午後に滝川雅弘さんが御堂筋の特設ステージに出るので、昼飯かねて自転車で外出。
 淀屋橋まで行ったら、御堂筋は遙か南まで(心斎橋まで)歩行者天国状態になっていて、西側にはテントが並び(物販とか展示らしいが)、ともかく、とんでもない人出。
 「御堂筋Kappo2009」というイベント……こんなイベントがあるとはまったく知らなかった。
  
 滝川さんが出るのは、ガスビル近くのトレーラー・ステージ。
 滝川雅弘(cl)、大野浩司(gt)、権上康志 (b)、 三夜陽一郎(ds)
 しかし、ともかく、とんでもない人出である。
 制服の人が「立ち止まらないでください」と叫んでいるし、少し離れたビルの前ではロック・グループがガンガンやってるし、甲冑の一隊がホラ貝吹いて通過していったり、ドンツクが通ったり……なんじゃこれは。
 気の毒なステージである。この季節にいちばんふさわしい「アーリー・オータム」はほとんど聞こえない。
 最後の「枯葉」がやっと落ち着いて聴けたが、銀杏にもたれて聴いていたら「緑地帯には入らないでください」と注意されて追い出されてしまった。
 15時過ぎのステージでは遠藤真理子(as)が加わるというが、ともかく人混みは苦手なので退散する。
 堺筋の方に出て、閑散とした証券会社の並ぶ北浜から天五経由で帰る。
 人の行く裏に道あり花の山。ちょっとたとえが違うか。
 夜は専属料理人が神戸のイスズとかでパンを買ってきたので、色々並べてもらって、最後はオープンサンドでワイン。
 収監前、最後の晩餐なり。

10月12日(月) 大阪→播州龍野
 早朝の電車で播州龍野へ移動する。
 世間では3連休の最終日で休日ダイヤ。ガラ空き。
 思うに休日が多すぎるのよね。先月5連休だし、そうそう浮かれ出る気分ではないはず。
 田舎は静かなものである。
 しばらく下男(おとこし)モード入り。
 新米(玄米)が入手できたので、精米してあちこちに発送とか、肉体労働色々。
  *
 日暮れが早くなった。
 空の半分を秋のいわし雲が占める。
 気分はセンチメンタル・ムード。
 夜は炊きたての新米ごはんで辛明太子……といきたい気分だが、老母用には冷凍したのがあり、おれは夕食にごはんはたべないし、こちらにいい明太子はなし。
 あれやこれや並べてビール。
 21時の室温は21℃。
 毛布を出して、早寝するのである。

10月13日(火) 播州龍野の日常
 わ、午前3時に目が覚める。このところ不眠症的である。
 だらだらと朝まで雑読。
 文藝春秋11月号の真山仁『世界経済の火薬庫をゆく』は、ラトビア〜ハンガリー〜オーストリアのルポ。中・東欧の経済危機を伝えて、なかなか読ませる。
 東欧の破綻が日本にも飛び火するのを心配しつつ、おれにできるのは差し当たり「下男仕事」のみ。
 炊事洗濯掃除に勤しむ。
 夕刻に近い午後、揖保川沿い、本日は下流に散歩。
  *
 鮎釣りのお方がひとり逆光の中に佇んではった。
 とういことで、夜はおでんをメインにビール、「龍力」熱燗。
 夕刻のニュース。
・前原くん(国交大臣)が「羽田のハブ空港化」を進めるという。結構なことだ。おれは40年前から成田はいらん羽田を拡張しろと思ってきた。
 それに橋下くんが怒ったとか。橋下くん、関空なんて不便な空港、ハブ化はできんよ。
 大阪空港(伊丹)をハブ化すべきなんだよ。というか、伊丹と仁川(インチョン)の便数さえ増やせば、それで十分なんだけどね。
・で、老母が風呂から出で、ではおれもシャワーと思ったら、老母が居間でNHKの「歌謡ショー」を見ている。
 なんと、五木ひろしと小柳ルミ子が並んで座っているではないか。
 悪い冗談ではないか。
 38年前に徳間康快社長から直接聞いた話では「ふたりで俺んとこへ来てさ、おれは……」ま、後はよろしいか。
 へんなものを見てしまった。
 早寝するのである。

10月14日(水) 播州龍野の日常/コスモス
 相も変わらず下男仕事。
 老母があまり動かないので、午後、コスモスを見に連れ出すことにする。
 播州龍野でコスモスといえば、北は新宮町のちづちゃんの花園か、南は揖保川町馬場地区のコスモス畑のどちからだが……東北方向が気になって、梛(なぎ)八幡神社に行ってみる。
 ここは、毎年10月20日に祭があり、「県無形民俗文化財」という獅子舞が奉納される……らしい。
 が、本日は嵐の前の静けさ、神社周辺に人影はなし。
 春に来たときには静かな里山の雰囲気だったが、予想的中、「梛獅子の丘」の手前は一面のコスモス畑であった。
  *
 10分ほど眺めて帰館。
 散歩にもなってないなあ。

10月15日(木) 播州龍野の日常/サルビア
 本日も秋晴れなり。
 張り切って下男仕事。肉体労働が結構ある。
 昼は新米を炊いて、鰺の開き、納豆、豆腐の味噌汁という普通のごはんを食す。うま〜〜〜っ!
 下男でも新米を食べさせていただける。幸せと感謝しなければ……などと心にもないことを書く。
 午後、老母が、やっぱり「ちづちゃんの花園」を見に行きたいという。
 新宮町へ。
  *
 今年はサルビアが真っ赤である。コスモスとサルビアが半々。
 毎年、花の作付け面積が変化するようである。
 花園1周、100メートルくらいか。老母にはいい運動である。

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