『マッドサイエンティストの手帳』番外

蛇が怖い


 『蛇が怖い』というのは先日創作サポートセンターでの講義で提出された作品のひとつ。
 タイトル見てギョ。何度も書いているが、おれはS字型のが苦手である。
 できればパスしたいが、引き受けた以上、読まねばならぬ。
 『蛇を踏む』はちゃんと読んでいるからねえ。
 で、読み始めたのだが……これが……

 以下、漢字も苦手なので「*」と表記する。

 昔(といっても30年ほど前)「*屋」というのがあった。
 薫製にした*を強壮剤として売ってたり、漢方薬屋の一種かな。
 ガラス窓の中には生きたのが飼ってあり、通りから見える。
 おれは中学高校と姫路に通学していたが、大手前公園の南側に一軒あって、通学コースはここを迂回する道を選んでいた。
 今ではあまり見ないが、歌やん(先代)の話だとJR御徒町の西側に……

 で、この作品は、その*屋の前を通りかかったときに、ガシャーンとガラスが割れる音がして、大量の*が床に散らばり、店の前まで逃げ出した事故を目撃した、その記憶を「実に丹念に」記述しているのである。
 詳しく紹介するのはやめておきます。
 ともかく、その表現力は◎をつけていいほど。
 描写が克明なだけに、うーん、まいりましたね。
 しかし、20年ほど前の記憶が書いてあるだけで、締めくくりは、今もその通りを歩くとき、通行者の間からちらっとその店を垣間見て、足早に通り過ぎるというもの。
 これでは「小説」になっていない。
 で、どうすればいいか。
 以下はおれのアドバイス。
 事故を見て「想像した部分」を膨らませればいいのである。
 文中に、路上に逃げ出した一匹と「目があった」とある。それが近づいてくる。「窮鳥懐に入れば猟師も殺さず」のフレーズを思い出して、これは「窮*」なのか……と想像する部分がある。
 これを生かせばいいのである。
 主人公は現場を逃げ出す。*が追ってこないのを確認してほっとする。ちょうどバスが来たのでそれに乗って、シートに座り、やれやれとハンカチで額の汗を拭いたとき、何かが腹のあたりでうごめく気配を感じる……。
 一応「恐怖小説」のかたちになるのではないか。

 と、まあ、そのような話がありました。さすがにこれ以上書くのは苦痛である。

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