『マッドサイエンティストの手帳』399
●マッドサイエンティスト日記(2007年4月後半)
主な事件
・『川沿いの道』(27日)
・ラスカルズ・コンサート(29日)
4月16日(月) 穴蔵/市内ウロウロ
月曜である。
張り切って早起きするのであった。
春の大掃除のつもりでいたら、曇天、朝から小雨も。模様替えは中止、ま、連休明けでもいいであろう。また寒くなるかもしれんし。
多少「公的」なところに行く必要が生じて、「制服」で出かける。
この数年、ネクタイをするのが面倒になってきた。
さりとて「先端産業」に身を置く零細タイムマシン製造業者として、いわゆるIT産業の成金風スタイル(ホリエモンね)は絶対に趣味ではない。
ということで、東国原知事の「制服」が油汚れしたようなの……要するに、東大阪の鉄工所のおっさんスタイルで出かける。
メインは商工会議所と法務局だから、こういうスタイルがいいのである。
信用・同情・憐憫が得られて嫌悪されることなし。マッドサイエンティストの白衣ではそうはならない。
わが制服の勇姿を写真でお目にかけられないのが残念である。こういう場合、匿名性こそ最優先である。
ということで、地下鉄で堺筋本町へ。
内本町から歩いて上町台地の上へ。
谷四から歩いて天満〜南森町〜梅ヶ枝町。
「ハチ」でちょっと遅めのランチ。
なんと60年代から(ということは開店以来)の常連だったジャズ住職が名古屋から来ていて、しばし雑談。こういうパターンがハチでは多くなったなあ。
ハチから銀行その他に寄って帰館。
本日の歩行数は9765歩……公園一回りすれば1万を超すのだが、ま、ここでやめるのも美学であろう。
4月17日(火) 大阪→播州龍野
早朝の電車で播州龍野へ移動。
タイムマシンの組立……の予定であったが、一部の部品遅れあり、待機モードとなる。
書斎にて老母の歌集の編集作業。
書斎からボケーッと庭を眺める。
昨年、松が枯れて、翌日撤去、庭がスッキリしていたところへ、植木屋氏がなんとかの木(松ではないらしい)を植えたらと「提案」してきたらしい。老母はその気になっている。
おっさん口がうまいからと心配していたのが、案の定だ。
植木屋親父、よその庭も自分の好みにデザインして剪定代確保という、趣味と実益の押し売り作戦であるらしい。
扶養家族を増やすみたいで、おれは気乗りしないが。
終日、バージニア工科大学の乱射事件の報道がつづいていたところに、就眠前に、長崎で市長銃撃のニュース、暗澹。
4月18日(水) 播州龍野の日常
定刻午前4時に目が覚めた。
銃撃ニュースのその後が気になってテレビをつけたら、なんとNHKで猪瀬直樹が歌っている……と思ったら、ゴダイゴのタケカワユキヒデだった。「おじさんバンド・コンテスト」みたいな番組のゲストらしい。昔、ミッキー吉野は川又千秋に似ていたが、今はともに別人である。
本日は寒い。
室温12℃で、これは大阪の穴蔵の真冬よりも寒い。
机下のハロゲンヒーター、片づけなくてよかった。
半日、タイムマシン組立作業。
あとの半日は老母の歌集編集作業。
定刻に老母が寝たので、おれもこれからシャワー。
湯割りを一杯飲んで、そろそろ就眠である。
さあ、明日は「出所」、しばらくは楽しき穴蔵生活となる。
4月19日(木) 播州龍野→大阪
朝から下男仕事の後、書斎からボケーッと庭を眺める。
牡丹が咲き乱れておる。でかい石灯籠は気に入らんが。
このままでいいと思うが、明日、植木屋親父が枯れた松の木のあとに「植樹」するという。
聞けば「伽羅の木」という。どんな形状なんだ?
植えるなら「椋」にしてほしいところだ。樹皮を使って「茶の湯」ができるものなあ。
本日午後に帰阪するから、今度来たら庭の様相が変わっているであろふ。
ということで、午後の電車で帰阪。
集合住宅の大規模修繕関連業務が待ち受けているのであった。
ああしんど。
夜はケン・ペプロフスキーを聴きながら、専属料理人が並べてくれた「トマトとタコのなんたら」「白身ムニエルとポテトのかんたら」「豚肉とキャベツのあほんだら」などでビール。
そろそろ就眠である。
4月20日(金) 穴蔵/梅田ウロウロ
快晴である。
早朝から、冬物の衣料を整理し、7時に陽が当たり始めたので寝具を干す。
たぶん3ヶ月(半年かな)ぶりに穴蔵を掃除機で清掃する。
空気が澄んだ気分である。
頭すっきりで、少しは仕事もしなければならぬのだが、所用あって、歩いて梅田へ。
昼は初夏の陽気である。
某店でワン・パレット・ランチ、気分がいいので周囲のボンクラ・サラリーマン諸君をながめつつ生ビールを一杯。自由業兼経営者兼フリーターゆえにできる贅沢である。
カールスバーグの生を愛す……というシャレは以前にも書いたか。
帰路、「ジャズの専門店ミムラ」に寄る。
ルイス・ネルソンを2枚。1枚は64年の来日時にジョージ・ルイスと吹き込んだカルテットの。持っていなかったのである。
ということで、14時過ぎに帰館、ルイスを聞きながら、少しは仕事もするのであった。
4月21日(土) 穴蔵
午前3時に起床。
で、テレビを見たら、NHKで何やら激しい銃撃戦の生中継!
町田市で15時間ほど立て籠もっていた発砲男に対して突入の瞬間が中継されているらしい……のだが、ふだんテレビはほとんど見ないものだから、こんな事件が昨日から継続していたとはまったく知らなかった。
不謹慎ながら、いきなりクライマックスだけ見ても、面白くもなんともないなあ。小説の面白いヒントだけいただいた気分である。
朝、兄が来穴蔵。
昨夜、大阪で仕事関係の飲み会あり、新大阪のホテルから朝食後歩いてきたという。
しばし情報交換の後、兄は播州龍野に向かう。
あとは終日穴蔵。
色々な雑事を片づけつつ、少しは仕事のことも考えるのであった。
4月22日(日) 穴蔵
定刻午前4時起床。
5時過ぎからNHKの「日本の話芸」で笑福亭福笑『江戸荒物』を見る……うまいのだが、無理やり30分に延ばした印象でちと冗長。
あとは終日穴蔵。
老母の歌集の編集を行う。
外は小雨。落ち着いて作業できるねえ。
夕方に一応のかたちがつく。
雨がやんだので、PC消耗品(インク・カートリッジ、用紙、その他)を買いにヨドバシまで。
紀伊国屋に寄ったら、KAWADE夢ムック『半村良』(河出書房新社)が出ていた。
『星新一』につづいて、待望の半ちゃん登場である。
夜は鉄板焼きでビール。ちょっと材料が多すぎで、食べ過ぎ、飲み過ぎである。
これから『半村良』を読みつつ、眠くなれば寝るのである。
4月23日(月) 穴蔵
終日穴蔵。
某歌集の編集作業と某タイムマシン関連の海外向け文書の作成を交互に2時間ずつやっていたら、時間の経過が早い。
昼は宅急便を送りに出たついでに「讃州」でカレーうどん。
午後も作業続行である。
うーん、3日連続でこんな状態になりそうな。
CDを聴きながら……と思っていたところに、森山威男クインテットの初CD「Catch up!」が届いた。
昨年暮れのクリスマス・レコーディングのCDである。
これは仕事しながら聴けるものではないので、夕刻までがまん。
夜、専属料理人に野菜炒めや若竹煮など並べてもらってビール、黒・伊佐錦の湯割りなど飲みながら「Catch up!」を聴く。近年まれに見る(聴く)快作ではないか。
特に最後の1曲、ジャケットに表記の演奏時間のあとはしばし沈黙、あとに不思議な音声が入っている。まるでおれのための付録みたいに聞こえるが、ちがうだろうか。
酩酊。
が、アタマを使わぬ作業をしばらく。
そろそろ就眠である。
4月24日(火) 穴蔵
終日穴蔵。
ひたすら「軽作業」。アタマはさほど使わず、座っている時間が多いから「肉体労働」ともいえず。縫製工場にいるようなものか……あ、学生時代の機械製図がこんな気分だった。
息抜きを兼ねてヨドバシへ消耗品を買いに行く。往復50分。約3000歩。
15時間以上続けたはずだか、あまり進行しないなあ。
あと2日かかるか……。
CDを流しながら作業できればいいのだが、プリンターの音が耳障りで気分がのらず。ヘッドホン使用は、時々電話があるのでまずい。断続的にプリンターを使用するので、他の作業ができず。サブ機がほしくなる。
4月25日(水) 穴蔵/心斎橋
午前3時に起床。ひたすら「軽作業」を続行。
ちょっと特殊な紙材料が欲しくなって、昼前に専属料理人と出かけることにする。
地下鉄で堺筋本町へ。
イケマンを覗くが適当なものなし。
専属料理人推薦のシモジマ(船場センタービル3号館)を見る。初めて来たが、なるほど包装材に関しては宝庫みたいな店である。が、適当なものなし。専属料理人はケーキ作りの材料を買う。
心斎橋まで歩いて東急ハンズへ。ここの7階カウンターで訊いたら、奥の棚から、こんなものでしょうかと出してきてくれた。何でもあるのだなあ。504円の買い物なのに手間をかけて包装してくれた。ハンズは良心の塊のような店である。
そごう上階の竹葉亭でミニひつまむしみたいなランチ。
こちらの方が高くついた。
穴蔵に戻り、作業の続き。
夕刻、やっと一区切りついた。
NHKから往復葉書の「返信」が届く。
5月4日収録の「関西JAZZ2」に申し込んでいたのが、応募数1476で当選は170、残念ながら外れましたという通知である。激戦なんだなあ。
5月3日(高槻JS)、4日(関西JAZZ)、5日(ビッグリバーJF)と、3日連続で滝川雅弘さんを聴く予定であったが、4日がブランクになってしまった。
原稿を書く日にする。
ということで、夜はCDで滝川雅弘とデフランコを聴きつつ、専属料理人に色々(枝豆、ソーセージとブロッコリのなんたら、茄子のグラタン、トマトや生ハムのサラダ、など)並べて貰って盛大にビール、ワイン。カロリー過多か。
明日は宇宙項調整・ダークエネルギー減少のため歩くことにする。
4月26日(木) 穴蔵/市内ウロウロ
午前6時に目が覚める……つうか、しばらく横になるつもりが8時間以上熟睡していたらしい。パソコンは起動したままである。
ま、気分的に楽になったからであろう。
天気がいいので、穴蔵を夏モードに変更する。たぶん、もう寒いということはあるまい。
雑用が溜まったので消化、市内を自転車でウロウロ。
自転車は久しぶりである。堺筋本町まで、途中寄り道色々。
ああ疲れた。読みたい本が溜まってきたなあ……。
4月27日(金) 穴蔵/『川沿いの道』
定刻4時に起床、本来のペースが戻った。
先日来「編集」していた老母の「歌集」が出来てきた。
たぶん最後の歌集である。
これは卒寿記念に子供たちが作った私家版・非売品。
『川沿いの道』というタイトルは、おれが推奨して決めた。
この8年で約600首作っている、その最後の方の一首。
「穏やかな午後の日差しに誘われて歩を運びゆく川沿いのみち」
からとったのである。
勝手におれの撮った写真も入れた。
おれは短歌を批評できる立場にないが、表題作は、どう読んでもありふれた作品。女学生の作った習作のようでもある。もっといい作品が他にある。
ただ、骨折入院後、杖に頼らねば散歩できず、行動範囲は限られている。「揖保川沿いの道」が限界なのである。
そしてここは、女学校へ通った道でもある。
今の心境がストレートに表現されている……そう思ってこのタイトルを推した。
おれが「毛馬堤」にこだわるのと同じではなかろうか。
そろそろ就眠。
4月28日(土) 穴蔵
世間は大型連休入りである。
こんな日は出歩かないことである。
天気がいいので書斎を整理、穴蔵の居室を夏モードに変更する。
すっきりした気分で、溜まっている本を読む。
が……じっとしていると足先が少し寒い。室温23℃。
調べてみると、昨年の「夏モード」切替は5月24日、一昨年はなんと6月9日で室温28℃になってからである。
1月ほど早い。自分が寒がりであることを忘れていた。
今さら冬モードには戻せず。
午後、じっとしていると肌寒いので梅田散歩。
キディランドでウルトラ諸君が「よい子の皆さん」相手に何かやってはる。
SFで「非日常的」物体や現象を描写する時のポイントは、巨大なものは縮小しミクロは拡大して、自分のサイズと比較すること……とおれは思っている。
太陽系の1/200億モデルとか、ハードディスク技術はジャンボ機が高度2ミリを飛行……といったレトリックである。
ウルトラマンやゴジラが「まるで着ぐるみ」みたいに子供の前に出現するのはいいのだが、周囲に同じスケールで縮小した家やクルマを配置しないと凄みがなくなるのではないか……と愚考するのであった。
ま、おれのSF観とは違うのだろうなあ。
4月29日(日) ラスカルズ・ランチコンサート
快晴である。
昼、専属料理人と心斎橋へ出かける。
ゴータマ(gautama)というインド料理レストランで、ニューオリンズ・ラスカルズのランチ・コンサート。
ビッグリバーJFなどのために来日しているジェフ・ブルがゲスト出演。
80人ほどの高齢ファンで満員の盛況である。
このレストラン、天井が高く、音響はなかなか。
教会に見えないでもない。
で、最初のステージは賛美歌中心。
2ndステージはピンカラさんやNOグローリーのピックアップ・メンバーによるセッション。
3rdは賑やかにジャズ・ナンバー。
最後は「タイガー・ラグ」……と、ビデオ撮影していたSさん「あ、今日はこの曲やったらあかんのや!」
この曲が演奏されると阪神が負けるらしい。(……そして、確かにその通りであることが後刻判明する)
昼のほろ酔いコンサートはいいものである。
同じ滝川ファンのYさんと話したり、某神話的クラリネット・プレイヤーの評伝を翻訳中のKさんと隣席になるなど、有意義なことの多い日でもあった。
15時過ぎ終了。
ぶらっと心斎橋筋をミナミへ歩いてみるが、人出多く、ヒッカケ橋の上は身動きとれないほどの混み方。御堂筋に迂回して、地下鉄でまっすぐ帰館。
と、珍しくも留守電1件。
5月下旬に久しぶりに中村誠一さんを聴けそうな。
4月30日(月) 穴蔵
朝からカラスの鳴き声が喧し。夜明けとともにグギャーッという声が飛び交う。
最近……ここ2月ほどで急激に増えた気がする。
以前は鳩が大量にとまっていた低空の枝がカラス1羽に乗っ取られ、鳩はあまり見かけなくなった。
集合住宅の中層、目の前のアンテナとか木にいてギョッとすることが多い。
今朝も向かいの**住宅のゴミ袋を派手に破っておる。
ここからの推論。
@梅田の繁華街の食料事情が貧しくなったのか。
A年金生活者の多い**住宅の諸君、結構飽食状態なのか。(わが集合住宅のゴミ置き場は荒らされてないもんね)
それにしても、カラスのねぐらはどこなのか。
東京の皇居に匹敵するのは、大阪では大阪城公園だが……。
終日穴蔵。
少しは仕事もするのであった。
藤井青銅『ラジオな日々 -80's RADIO DAYS-』(小学館)がちょっと泣けてくる傑作。これは改めて別項にて。
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