『マッドサイエンティストの手帳』864
●マッドサイエンティスト日記(2025年11月前半)
主な事件
・播州龍野いたりきたり
・実家近くにクマ出現?(8日)
・しばらく穴蔵を離れる(10-13日)
・創サポ講座(15日)
11月1日(土) 穴蔵
目覚めれば11月、3連休の初日であった。
外出しても人出が多いであろう。
終日穴蔵。
雑用の多い日である。多すぎて書くのも面倒な。
11月のわが予定急変にともなう連絡がいちばん多い。
テレビニュースを断続的に見ながら。
・山形県でクマのパトロール中の市職員がクマに襲われたというニュース。
何をやっとるのか。
・26年前、高校同級生の妻を刺殺した女・安福久美子(69)が出頭。事件は1999年11月13日、名古屋市西区のアパートで。
妻を殺された高羽氏は、証拠保全のために、現場アパートの部屋を借り続けていたという。
この犯行当日(11月13日)、当方は何をしていたか。今の相棒の某君とともに、尾道から秋田県大館(!)へ転勤になり移動中の某君を大阪でつかまえ、3人で会社設立の謀議を行っている。この年末に水面下でタイムマシン業の会社設立、翌年から大っぴらに、昨年まで活動してきた。わが会社人生の後半である。
この間、高羽氏は現場を維持しつづけた。立派という他ない。
・フリーランス法の施行から1年。あまり守られていないという。
当たり前だろう。諸悪の根源はインボイス制で、フリーランス(というより零細業者)を宥めるためにでっちあげたザル法。なんの役にも立たんよ。
インボイス制のおかげで、こちらはタイムマシン業を「廃業」、会社人生にとどめを刺されたんだからな。
11月2日(日) 穴蔵
3連休の2日目。晴れたり曇ったり。
終日穴蔵にて、本日も雑用のつづき。
身から出た錆だから仕方がない。
明日に備えて早寝させていただく。
11月3日(月) 大阪→播州龍野
3連休の最終日。文化の日であった。
文化的ならざる用件で播州龍野へ移動する。
姫路(たぶん大手前公園)で文化的?な催しをやってるらしいが、米朝師匠とは関係なさそうなのでパス。
昼前に本竜野に到着、こちらも何かイベントをやつてるらしいがパス。
実家にて、明日からの陋屋の補強工事に備えて、準備作業を色々。しんどいことである。
たちまち夕刻。
少し離れた隣家裏庭の柿は夕日に映える。
*
この周辺にクマが出たという話は聞いたことはないが、心配になる。
夜は急に寒くなる。味三昧の弁当でちょっと一杯。
(工事前夜という事情もあり)暖房は小型の電気ヒーターのみ。
毛布を重ねた布団に潜り込んで早寝。
11月4日(火) 播州龍野→大阪
播州龍野にて、午前3時に目覚める。
寒い。室温は9℃……真冬の気温ではないが、外はたぶん7〜8℃だろう。大阪なら真冬。
西の空に月皓々。十三夜である。
*
また布団に潜り込む。
5時に始動。
ホットティの朝食後、ゴミ出し(龍野のゴミ出しは朝8時30分までなので、泊まり込みでなければゴミは出せない)。
その他片付け作業をやっているうちに、8時前、工務店の2氏来宅、陋屋の補強工事開始である。
梁の沈下を調べるのにレーザーを使用するのだった。はじめて見た。
*
(計測器の名称から使い方まで細々と質問したいのだが、仕事の邪魔になるので訊き出せない。)
玄関近くに装置を置き、各部屋を開け放って、各部屋の戸や襖やガラス戸の高さをチェックしていく。
あちこちの畳をあげて、床下の柱と礎石を調べる。沈下の主因箇所も判明。工事の手順も決まっていく。
築130年を超えているのだが、メインの木材は衰えていないらしい。わが寿命に較べて、たいしたものだ。
昼前までつき合い、工事手順が決まったあたりで、あとはお任せして帰阪する。
夕刻に近い午後に帰館。
体が冷え切っているので入浴。
播州龍野だから寒いのかと思っていたら、本日は大阪も急激な冷え込みだったらしい。
熱い煮物類でちょっと一杯。やれやれ。
11月5日(水) 穴蔵
曇天。陰鬱な日なり。。
終日穴蔵にこもって雑事の処理……なかなか効率は上がらず。
寒いからか老化のせいか鬱陶しい案件だからか、おそらく全部のせいだろう。
今週いっぱいダラダラやるしかない。
夜は専任料理人がポトフを作った。
*
体が温まり、少し元気が出てきた。
BSで『悪名』を見る。同シリーズの何本かは見ているが、これははじめて。
勝新太郎も田宮二郎も若いなあ。
勝新のシリーズものは、悪名(田中徳三)→座頭市(三隅研次)→兵隊やくざ(増村保造)の順で、座頭市も兵隊やくざも第1作がいちばん面白く(というより第1作のみが傑作)、悪名も例外ではなかった。ラストでさんざん打ち据えられるのがいい。
11月6日(木) 穴蔵
予報は晴だが、雲の多い1日であった。肌寒し。
終日穴蔵。
断腸亭なら「正午大黒屋。」で終る1日。
わたくしの場合は3食きちんと食べているから、おっさんの境地に到達できない。
昼1食にすればいいのか……よくわからん。
独居したいが、今のところ難しいからなあ。
11月7日(金) 穴蔵
晴。終日穴蔵
……にこもってばかりではいかんので、午後、散歩に出る。
ジュンク堂は、相変わらず万博グッズ売り場のみ混雑。
困ったものよと嘆くより、書店の営業を支えて下さる市民に感謝すべきか。
今月も筒井さんの活動が目立つ。文学界に「自伝に関するインタビュー」、新潮に「T字路の奥」、新刊コーナーに日下三蔵編「筒井康隆エッセイ集成 1 ―SFを追って―」も並んでいる。
そういえば『筒井康隆 自伝』はすでに読んでいるのだが、まだ感想をアップしていない。
これは最終章「老体化? 老大家?」が特に気になり、再読して確認したい作品(「ペニスに命中」「世界はゴ冗談」『モナドの領域』「漸然山脈」など)が多いため。日記と同様、その記述は、書かれているのと同年で読むのがいちがん面白いからである。つまり「自伝」も10年前あたりの部分。創作に関する内情などが明かされていて驚くこと多し。
そうか、坂本健一さんが亡くなられて、もう9年経っているのだなあ。
などと感慨にふけりつつ、青空書房のあった場所までは遠いので、中崎町あたりで引き返す。
東公園のモミジが一部紅葉している。
*
再来週あたりに播州龍野へ行けば見頃だろうが、行けるかどうか……
11月8日(土) 穴蔵/クマ出現?
晴。土曜日である。
休日の外出は気が進まないが、明日は雨らしいので、午後、専任料理人と梅田まで買い物に行く。
身辺の小物類。ズボラ生活にはあった方がいいという程度のもの。
ヨドバシ周辺、えらい人出である。
食料品のポーター役は勘弁願って、さっさと先に帰館。
夕刻、播州龍野の某方面から電話あり。
家の近所にクマが出現したという連絡。町内放送で警戒を呼び掛けたらしい。
5日前に隣家の柿を見てクマの心配をしたばかりだが、まさかホンマに出るとは。
ネットで調べると、「たつの防災防犯ネット」にあった。
「たつの市農林水産課からのお知らせ。昨日(11月7日)午後4時頃、たつの市龍野町日飼、龍野東中学校東側でクマらしき動物を目撃したとの情報がありました。市民の皆さんは十分注意してください」
東中学校といえば、堀家住宅と姫新線の線路を挟んで300メートルほどしか離れていない。
*
google-mapではこのあたり。
校庭の東側は、細い川を隔ててすぐ山である(ただしこの山は独立していて、中国山脈にはつながっていない)。
生まれてから今まで、クマが出たなんて話は聞いたことがなかったが、調べて見ると「クマの糞のようなもの」は見つかっていたらしい。
この山の一部はわが「固定資産」である。
このことは15年前に書いているが……山林だから税金はかからないものの、「鹿の防止柵」の費用を分担させられたことがある。
クマ防止柵を作るとなると、また負担を強いられることになるのか。
墓参りに行ってクマに襲われるよりマシかもしれんが、迷惑な話だ。
11月9日(日) 穴蔵
未明から雨が降り続く。
終日穴蔵。
今日中に片づけておかねばならぬことあり、終日、ひたすら資料を読んで過ごす。
来週予定の創作講座の準備である。
ジャンルSFの変化について考えること多し。
出たばかりの『超SF創作マニュアル』(ゲンロン)を読んだ影響も大きい。
これについては、諸般の事情により、来週書くことに。
本日は早寝。
11月9日(日) 穴蔵
未明から雨が降り続く。
終日穴蔵。
今日中に片づけておかねばならぬことあり、終日、ひたすら資料を読んで過ごす。
来週予定の創作講座の準備である。
ジャンルSFの変化について考えること多し。
出たばかりの『超SF創作マニュアル』(ゲンロン)を読んだ影響も大きい。
これについては、諸般の事情により、来週書くことに。
本日は早寝。
11月10日(月) 穴蔵/某所行き
早寝したら、例によって深夜(2時過ぎ)に目覚めた。
朝まであれやこれや(SFとは何か〜龍野のクマまで)考えること多し。
穴蔵でウジウジしていてもしかたがない。
身の回りの物をバッグに詰め込み。
気分転換のため、しばらく穴蔵を離れることにする。
11月10日午後〜13日午前
穴蔵を離れて過ごす。
部屋からは正面にホテルが見える。
懐かしい風景だなと思ったら、今年正月明けに来たのと同じ部屋だった。
*
手前の方を掘り返しているが、何かの遺跡なのだろうか。滞在中に進展なし。
退屈な時間が過ぎる。
11月13日(木) 穴蔵に戻る
……ということで、昼前に穴蔵に戻る。
睡眠不足でともかく疲れた。
播州龍野関係で色々進展あるようたが、すべて明日に送る。
やはり穴蔵は落ち着く。
一杯飲んで……というわけにはいかず、適量を食べて、ともかく睡眠。
クマたちに冬眠の気配がないような。食べてないから穴蔵にこもれない。実感としてわかるな。
11月14日(金) 穴蔵
午前4時に目覚めて、通常の生活に戻る。
晴。晩秋の一日。穴蔵にて静かに過ごす。
相棒の某くんが播州龍野にいて、何件か報告あり。交替で出向くことになりそうな。
あとは今週のニュースをチェック。
クマ以外では、仲代達矢の死去が目立つ。
仲代達矢は実物を一度見たことがある。
1961年、修学旅行で九州へ行った時、阿蘇の宿が『永遠の人』のロケ隊と一緒だったのだ。
風呂から出てきた仲代達矢と廊下ですれ違った。むろん『用心棒』を見た後だったから感激したものである。
映画では名作が多いが、繰り返し見るのは『殺人狂時代』だな。また近日見ることにする。
11月15日(土) 創サポ講義
午前4時起床、正常な生活パターンに戻れたような。
晴。気分良く穴蔵にこもる。
夕刻這い出て、地下鉄で天満橋へ。
八軒家浜から見る夕景。
*
冬至が近いんだなあ。
谷町2丁目のCANVAS谷町へ。18時から創作サポトートセンタ―の講義。
本日の提出作品は「広義のSF」短篇・中篇・長篇で、面白い作品が揃った。
・L1点に浮遊する気象制御用の巨大な「傘」を、管理センターを「乗っ取って」、別目的での飛行を企てる高校気象部員たち。ポイントを押さえた青春ドタバタSFの好短篇だが……きちんと考証を踏まえて本格的に展開すれば、宮西建礼『銀河風帆走』の冒頭短篇に近い雰囲気になるはず。格調をとるか笑いをとるか、微妙なところ。
・古文書がある書庫から発掘されるが、どうやら太安万侶が、稗田阿礼から聞き書きとは別に残した「覚書」らしい。それを読み解いていくと予想もしなかった体験が浮かび上がってくる。古代史SFとは別の趣向をこらした時間SF中篇。
・バンパイヤSFと定義していいのだろう。だが、ドラキュラ型とは似ても似つかぬ吸血鬼で、その造形、生態、感覚(血の味わい方など)、敵対する吸血鬼ハンターの存在など、混み入った「吸血鬼世界」が細部まで考え抜かれた長篇。吸血鬼SFというより、要するに「生態系SF」長篇で、世界設定を頭に入れるだけで一苦労。しかも群像劇。(極端な譬えだが)デューンの世界をダイジェストにして読まされるような……とこれは私の感想で、リーダビリティは高いという意見もあり。未発表作品だからこれ以上は書かないが、読者の立場としては老いを実感させられる。
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