『マッドサイエンティストの手帳』830

●マッドサイエンティスト日記(2024年6月前半)


主な事件
 ・創サポ講義(1日)
 ・播州龍野いたりきたり
 ・大阪JAZZ@放出(9日)
 ・Anchor KLL(11日)


6月1日(土) 創サポ講義/ニューサン
 晴。暖。
 終日穴蔵。最近のニュートリノ関係の研究状況を調べる。
 前に本格的に文献をあさったのは1980年頃(「さよならジュピター」がらみで、まだ中性微子の方が通じやすかった)だったが、2000年頃(「カミオカンデ」、ノーベル賞、戸塚博士の逝去…)から大きく進歩し、今や影響が「身近な」現象に及ぼうとしているのだなあ。
 夕刻に這い出て、地下鉄で上町台地へ。
 創作サポートセンターの講義。
 提出作品3篇、すべてSF。うち2篇が(偶然だが)ニュートリノを扱っていて、方向性が正反対という面白いことになった。
・水没した都市のイラスト(課題)からイメージを広げたというショートショート。
・ニュートリノの生成を擬人化したヘンな短篇。女性教師と男子生徒が「強い力」で惹かれあっているところに邪魔が入るといった設定が面白いのだが、さすがにニュートリノの擬人化には苦労しているような。
・J-PARCとカミオンカデを超巨大化して地球公転軌道に移し、宇宙研究設備と廃宇宙船処理場に再設定したような世界。ここを舞台に核爆発装置とニュートリノビーム利用を巡って、緊迫した闘いが繰り広げられる。中篇宇宙SFの力作である。
 やはりSFの議論は面白い。
 20時まで。
 帰路、東梅田で、久しぶりにニューサンに寄る。
 本日はフロント3人が若手(もう若手でもないか)、河合さんがいないのは寂しいが……
  *
 最後の方で森ママが河合さんを偲んで「慈しみ深き」(What A Friend We Have In Jesus)を歌った。
 涙腺が緩みかける。
 最後は川合順一さんのダミ声で「アラビアの酋長」(Without no pants on !)これまた最高。
 久しぶりに気分の晴れる日であった。

6月2日(日) 穴蔵
 早朝小雨。あとは晴れたり曇ったり、天候不安定な一日。
 午前、専任料理人の従者として天六のスーパーまでお供し、重量物(主に飲料系)の運搬。休日の定例業務なり。
 午後は穴蔵にこもる。今ひとつ気合入らず。たちまち夕刻。
 専任料理人に5皿ばかり並べてもらい、午前運んだ発泡性飲料をいただく。
  *
 このタイプ(ズリ系)の食材がいちばん口に合う(原価を聞いてびっくり/まあそんなものであろうとも納得/家飲みに限る)。
 早寝。

6月3日(月) 穴蔵
 定刻4時に起きて朝の定例行事を終え、一応机に向かっていたら、6時31分に緊急地震速報
 慌てて本棚から離れる。特に揺れず。テレビ見ると、能登で震度5強であった。
 他にも連絡事項が色々入り、落ち着かないことである。
 終日穴蔵。
 明日は少し動かねばならぬ。

6月4日(火) 大阪←→播州龍野
 早朝の電車で播州龍野へ移動する。
 本竜野に8時35分に着く。
 タイムマシン格納庫に寄り雑事処理。
 実家へ行き、ややこしい雑件(雑草、野良猫対策、書庫関係、その他色々)の処理。本格的にやりだすと1週間ほどかかりそうで、適当にすませる。
 役所関係とATM関係もクルマで巡回。東觜崎のY製麺へ行ったり、堂本の郵便局へ寄ったり。
 龍野公園の新緑(もう濃緑か)も眺めたいが、時間がない。
  *
 神岡あたりは麦秋であった。原節子であった。ちょっと一息つく。
 夕刻に近い午後の電車で帰阪するのであった。
 ちと疲れた。入浴、色々並べてもらってビール一杯。早寝。

6月5日(水) 穴蔵
 晴。心地よい日である。
 終日穴蔵。
 昨日の反動で、体を動かすのが面倒、アタマは働かず。
 成果のない1日であった。
 反省しつつ早寝。

6月6日(木) 穴蔵
 薄曇。直射光は入らず、昼間は気温25〜27℃(室温は終日26℃前後)で推移。
 終日穴蔵。
 エアコンも扇風機もいらず、起きてから着替える必要もなく、1年でいちばん快適な季節である。
 ただし近所の工事音がちとうるさい。
 昼、見に出る。5月24日から始まった老朽アパートの解体工事、半分以上進んでいる。
  *
 意外に小部屋が多かったのだなあ。
 奥のトタン屋根の小屋や無人家屋が露わになってきた。いっしょに解体しないのだろうか。地主が別なのか。
 細い路地しか通路がなく、こんな時でなければ更地にできないと心配してしまうが。
 ややこしい一角で、11年前に近所の公園で起きた「通り魔事件」の犯人が潜んでいたのが、ここの左側に見える路地の奥の建物だった。
 この事件当時は集合住宅の理事長だったから往生したものである。
 どうなることやら。
・16時半から10分間ほど、NHKで「蔵出しセレクション」というコーナーを見る。
「伝説のSFドラマ」……72年に放映された『タイム・トラベラー』。6回連続ドラマの最終回だけ、視聴者がビデオテープに残していたとものという。原作は筒井康隆「時をかける少女」。
 懐かしいというより、まったく珍しい映像である。
 わたくしの場合、大学時代と社会人になってからの数年間(64〜72年)、受像機は持っておらず、テレビはほとんど見ていない(大学時代の帰省時、他に食堂などで見た程度)。
 「ミステリーゾーン」は見ているが、その後のテレビアニメやウルトラマンなどは、わたくしのSF歴からはまったく欠落している。
 それで困ったことはないものの、なにか大きな話題から取り残されたような気がしないでもない。今さらどうしようもないが。

6月7日(金) 穴蔵/ウロウロ
 晴。爽快な日である。
 宇宙ニュース2席。
・昨日打ち上げられたボーイングの「スターライナー」が宇宙飛行士2名を乗せてISSに無事到着。
・派手な爆発を繰り返していたイーロン・マスクのスペースX「スターシップ」が4回目で宇宙空間まで出てインド洋に着水。
 頑張っておるのだ。
「アルテミス計画」……次の月着陸は見物できそうにないけど。
 午前、茶屋町の郵便局まで行ったついでに、歩くことにする。
 南方向。ジュンク堂〜新御堂を南下〜お初天神〜駅前ビル〜西梅田〜大阪駅。本日はインバウンド少なく快適である。
 久しぶりにステーションシティ「風の広場」に上がる。
 空は爽快だが地上がいかん。
  *
 うめきた2期地区にチャチな広場が出来上がりつつあった。
 つまらん景観になっていくなあ。
 どこかで昼飯と思ったが、どことも混み合っていて、入る気分になれず。
 三番街のヤキトリ屋で弁当を買って帰館。8000歩超。
 午後は穴蔵にこもる。

6月8日(土) 穴蔵
 晴。世間は休日である。
 集合住宅の上層階から公園の「地下貯水池」工事の現場を見る。
 先月やっと排土キャリアの構造物が組まれて、ニューマチックケーソン工法による掘削が始まった。
  *
 中央のマテリアルロック(黄色い突起)からドラム缶大のバケットで土砂を吊り出し、排土キャリアで横の排土置き場に移し、ダンプで運び出す。
 意外に静かなので助かるが、直径20メートルの竪穴を地下40メートルまで掘削するのに1年ちょっと。その後、茶屋町南まで横に雨水貯留管を掘り進める。これが計画では3年だが、中津東公園の工事や左岸線工事の遅れ同様、全工事10年は覚悟しておいた方がいいようだ。
 生きてるうちに公園西半分の工事塀が撤去されることはなさそうだ。
 終日穴蔵。
 人出が多そうで、出歩く気分になれず。
 昼は冷たい蕎麦が食べたいといったら、専任料理人が、揚げを焼いたん、しらす、生生姜なども並べた。
  *
 しかたなく、これらで冷酒を少しばかり。うまっ。
 昼間からこんなことやっていていいのだろうか。いいのである。
 出歩けず、部屋からの眺めも工事現場ばかりとなれば、他に楽しみは何もないではないか。

6月9日(日) 大阪JAZZ@放出
 曇天。穴蔵にて、昨夜から穴蔵にて色々調べることあり。
 新淀川と荒川放水路の類似性についてで、たいしたことではないのだが、気になりだすとやめられない。
 また図書館行きだが、最終的には「現地調査」に行きたくなる。
 もう上京することはないだろうと思っているのだが……
 昼に這い出て、放出へ。
 ディア・ロードで大阪JAZZ同好会の例会である。
・本日の「特集」はTさんによるモダンジャズ9曲だが、参加ミュージシャンの1〜2名が伏せられて、これを当てるクイズも兼ねる……という形式。
 バド・パウエルはすぐわかるが、ウィントン・ケリーとかケニー・ドリューになるとまるで名前が出てこない。
 これを年度から原版の何曲目まで指摘する人たちがいるから恐ろしい。
・Fさんによる新譜紹介。シェリー・マンの66年盤の再販? ハンプトン・ホースの参加が嬉しい。
・持ち寄り企画は「カルテット編成の名演」だが、これはテーマが無茶。
 ホーン奏者の名演はカルテット編成のが代表的と決まっているからだ。
 名盤続出かと思ったら、さすがに皆さん、MJQでもメトロポリタン・ジャズ・カルテットとか、ラルフ・サットンとか、19歳のマルサリスとか、ブルーベックの「聖者の行進」とか、レム・ウィンチェスター(ロシアンルーレットで死亡!)の稀覯盤とか、珍しいのばかり持ってくる。
 わたくしは?  最高齢者ということでジョージ・ルイスのカルテットを持参したが、これとてもビル・コールマン(1904年生)持参者がいたから危ないところであった。
 帰路は片町線で北新地へ。地下街(ディアモール)を抜けるが、様変わりしていて驚く。
 キタもインバウンドに占拠されてしまうのか?

6月10日(月) 穴蔵
 深夜に雨が降っていたが、未明にはやみ、朝には晴れた。
 昨夜は、エサやりオバサンが来なかったので、市営廃墟の通路を、朝から空腹のノラがウロウロしている。
 全部で5匹。ベランダから双眼鏡で眺めると、いずれもほぼ同サイズのトラだが、色の濃淡と耳のカット位置で、だいたい区別できるようになった。
  *
 ちなみに↑この2匹は濃い目のトラで、右カットと左カット。表情はやや険悪。
 普通のトラ2匹(これもだいたいいっしょにいる)も右カットと左カット。普通の表情。
 あと1匹の薄めのトラはオドオドした表情で、性格も臆病。人を見るとすぐ逃げる。
 これに「性格の悪い(某外国人女性談)」クロを加えて、周辺にいるノラは全部で6匹と確認できた。
 エサが途切れがちになっても、この夏は何とか乗り切れるだろう。
 問題は寒くなってからだな。気温もあるけど、オバサンたちがいつまで元気か(片づけオバサンは電動カートだし)、市営廃墟がいつまでもここままではあるまいし、観察しているわたくしもそろそろ寿命だし……
 終日穴蔵。
 荒川放水路と、関連して荷風関係の本を読んで過ごす。

6月11日(火) 穴蔵
 昼前に神戸文芸ラボ(KLL)が発行する会誌「Anchor KLL 」が届いた。
  *
 KLLの母体は、眉村さんが講師を務められていた神戸新聞文化センターの「物語・エッセイ」講座で、講座の終了後も文芸愛好会として活動している。
 受講生の全員が「眉村卓の異世界通信」に寄稿している。この縁もあって、わたくしも時々例会に顔を出している。
 そのグループが会誌(同人誌)を発行した。
 神戸文芸ラボのホームページも開設。
 SF専門ではなく、ジャンル混合だが、それぞれが影響しあう雰囲気が面白い(講座時代、眉村さんは意外にSFには厳しかったらしい/SF志向者はもっと他のジャンルで揉まれた方がいいという考えだったような気がする)。
 まつもとみかさんの「スルーのない彼」は、倦怠期の主婦が「AIとおつきあいしてみませんか」というアルバイト募集に興味をもってAIを「彼氏」にしてみる設定。そのヘンな実験を「安手のSFじゃあるまいし」といいつつ、不思議にリアルな展開をみせる。しかし、着地点はあくまでも家庭小説である。
 SF専門の石坪光司さん「時の崖」は、時空波(宇宙開闢以来の情報が含まれて波動として圧縮されている)の壁を、宇宙空間(L5点)に置かれた「時間遡行機」で突破しようとする本格時間SFの設定。だが選ばれたテストパイロットは片目が義眼の冴えない(トラウマをかかえた)ITエンジニア。向かうは過去の人類史でも地球誕生でもなく、片目失明の原因となった30年前の台所の湯沸かし現場である。人類初の大実験のはずが、パイロットの出生に収斂していく。そこには時空波発見者の過去が反映していた。……不思議な時間SFになっているが、恋愛小説や家庭小説に関する議論が影響したとしか思えない。
 その他、波乱万丈の犬のロードノベル(長篇)あり、上海租界地を思わせる異国舞台に種苗を巡る争いを描く戯曲あり、不思議な雰囲気の日常小説あり、旅行記あり、バラエティ豊かで面白い。眉村さんの残した「大いなる遺産」ともいえるだろう。
 終日穴蔵。
 まだそう暑くはないが、空気入れ替えのため、扇風機を出して使用開始。

6月12日(水) 穴蔵
 晴。終日穴蔵。遮光カーテンを引き、本を読んで過ごす。
 ゴミ出しの日ではないので、着替える必要がないのがありがたい。
 桂ざこば師匠のとつぜんの訃報。12日未明、自宅でぜんそくのため死去。76歳。
 脳梗塞は克服、あとは息長く……と思ってたから驚く。
 「ぜんそくがひどくて」という発言を聞いた記憶はあるが、まさか急死につながる症状とは。
 喜寿の祝いはなかったように思う……

6月13日(木) 穴蔵
 朝は薄曇。直射光は入らず、遮光カーテンを引く必要がないので助かる。
 先日「納税通知書」が来たので、昼前にコンビニで納付する。
 と、午後のニュース。堺市が定額減税に関して「減税額を誤って上乗せした額を記した納税通知書」を発送したという。
 大阪市はどうなんよ。納付書の控えを見てもよくわからん。そもそもこの制度がよく理解できない。給与所得者のことだと思っていたからなあ。
 いずれにしても、税金は期限ギリギリまで払わないに限る(確定申告による還付は早々に受けるけど)。
 たちまち夕刻。
 専任料理人が枝豆、ヤッコ、手羽焼きという標準的メニューを並べた。
  *
 これで盛大にビール、酎ハイ。
 お楽しみはこれしかない。

6月14日(金) 穴蔵
 晴。朝6時前から直射光が射し込む。
 遮光カーテンを引き、ついでに世間との社交も絶って、穴蔵にこもり、色々読んで過ごす。
 全国的に猛暑日のところが多いらしいが、室温はほぼ終日29℃(ベランダは一時33℃になったが)。
 扇風機を回しておけば、いちばん快適な時期である。
・遺体遺棄事件や刺殺事件のニュースが多く、紛らわしくてしかたがない。
 今ごろ「那須遺体事件」なんて見出しを見ても、何だったかなと思ってしまう。
 宝島殺人事件と書いてくれればすぐ思い出せるのだが。
 その宝島事件で、娘の内縁の夫・関根誠端(32)と不動産業・前田亮(36)の2人が殺人容疑で再逮捕された。前田はどうなるのかなと思っていたが、犯行現場へ連れて行く前に睡眠薬入りの飲料を飲ませていたらしい。
 これで、指示役・佐々木光(28)、仲介役・平山綾拳(25)、実行役・姜光紀(21)と若山耀人(20)を加えて、6人全員、殺人容疑で逮捕。
 しかし起訴まではまだ時間がかかりそうな。
 宝島関係の14店舗がどうなっているのか気になる。天六か十三なら見物に行けるのだが。
 夕刻、近所を20分ほど散歩。
 市営廃墟東側の老朽アパートはほぼ取り壊された。
  *
 隠れていてトタン屋根の倉庫?や無人?の瓦ぶき家屋が姿を現したが、これらはどうなるのか。
 権利が入り組んでいるようだし。
 白骨化した遺体でも出てくると面白いのだが……

6月15日(土) 穴蔵
 晴。朝6時前から直射光が射し込む。
 遮光カーテンを引き、ついでに世間との社交も絶って、穴蔵にこもり、色々読んで過ごす。
 昨日と同じ。気温もほとんど変わらず。
 生産的なこと何もできないことも相変わらず。老化なのである。
・ニュースでは、本日、トランプの78歳誕生日という。派手なことやっておる。
 バイデンは81歳(秋に82歳)。ということは、わたくしはこの中間にいるわけか。
 老人2個に挟まれているようで、嫌な気分になってくるなあ。
 たちまち夕刻。
 専任料理人が「冷蔵庫の整理もあって」と、枝豆、ヅケ山芋、白身ソテーなど細々したメニュー6,7種を並べた。
  *
 オニオン丸ごとグラタンというのが出てきて、後期高齢者にとっては、これと枝豆くらいで十分なのだが。
 ビール、ワインは盛大にいただく。


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