『マッドサイエンティストの手帳』758

●マッドサイエンティスト日記(2021年7月前半)


主な事件
 ・穴蔵の日々
 ・『眉村卓の異世界通信』


7月1日(木) 穴蔵
 いかん。体調不良である。
 正確には睡眠不足による不調か。
 いや、別に睡眠が不足しているわけではなく、集中してやる作業がなくなったから、寝そべって本を読んでたら眠くなり、細切れのうたた寝で1日が過ぎて、これが深夜になっても回復できぬまま24時を過ぎてしまった。
 要は睡眠が不規則になってドタマが働かないだけ。
 昼間BSで『カサブランカ』を見ようかなと思ってたのを忘れてしまった。
 夜中(正確には26時頃か)にBSで『96時間レクイエム』を見る。このシリーズははじめて。眠気覚ましにはいいが、主人公のスーパーマンぶりに興ざめ。スーパーマンというより、不運が向こうから避けてくれる。クルマが飛び降りたはずが傷ひとつなく、凄腕の敵が機関銃ぶっ放すのに1発も当たらない。「ダイ・ハード」とまではいわんが、もう少し痛めつけられないと。
 と、気がつけば7月2日朝になっている。しばらく睡眠。

7月2日(金) 穴蔵
 いかん、不規則睡眠治まらず。
 外は曇天、雨が断続的に降る。
 内宇宙は朦朧として、アタマ晴れ渡らず、ビッグバン直後というより、熱死寸前なのだろう。
 少しまともなのは食事の時だけ。
 ただし午後BSで『ワイルドバンチ』が始まると……
 これはDVDを持っていて、1969年に富山の映画館(工場実習中)で見て以来、もう十数回見ているが、やっぱり見てしまうなあ。
 70年の『砂漠の流れ者』とペアで、「最後の西部劇」でもある。
 となると……SFで「最後のスぺオペ」なるものはあるのか? 小説ではとっさに思い浮かばない。映画も『スターウォーズ』まがいが色々あるようだし。
 また思考力朦朧としてきて、寝たり起きたり一杯飲んだり、気がつけば26時を過ぎようとしている。
 頑張って寝ることに。

7月3日(土) 穴蔵
 朝4時頃に寝て8時起床。朝型か夜型かわからん。24時間うたた寝型か。
 生活のパターンを変えねばならぬ。
 効率は悪いが机に向かう。
 昼。
 専属料理人が蕎麦を茹で、掻き揚げ天を揚げた。
  *
 せっかくなので菊正宗の「驚愕の6冠」を少しばかり。
 しばらく昼寝。
 いかんなあ。やっぱりもとのパターン。
 夕刻から、ニュースは熱海の土石流ばっかり。
 ヘリが行っても明確な映像が撮れないらしく、twitterの映像ばかり繰り返し放映される。
 丸越酒店、すっかり有名になったなあ。

『眉村卓の異世界通信』
 6月30日に発売された眉村さんの記念誌。
 追悼本というよりも、眉村卓の世界を多角的にとらえた読本の色彩が強い。
  *
 Amazon AOD出版
 刊行に多少協力したひとりなので自画自賛になりかねないが、全体を読んだのは本が完成してからなので、一応読者の立場での感想。
 まず驚かされるのが「眉村さんのこと」の章。60人近い方(チャチャヤン関係、同人誌、創作講座の受講生に関西で縁のあったSF関係者など)の短い文章が50音で並んでいるが、意外な顔ぶれに驚く。たとえば竹本健治氏。チャチャヤン投稿者(谷甲州さんもそうだったが)とは知らなかったが、それ以上に、和田宜久さんと同郷(小生とは隣接市)で、(10年ほどちがうが)同窓らしいことがわかる。マンガの世界で活躍している山科清春さんが芸大でのゼミ生だったり、高炉メーカー勤務でヨータイ日生も知っている受講生がいたり……こういうエピソードが詰まっていて、眉村さんの多面性(創作のジャンルだけでなく生活面まで)と影響の大きさがうかがえる。
 影響のユニークさでは円城塔さんだろう。司政官を『引き潮のとき』から読み出したというプロセスに驚くが、まことにユニークな眉村論であり、見事なSF論に収斂している。
 影響の正統性では藤野恵美さんだろう。教え子が同じ教壇に立つというのは正統的な継承であり、作風が別方向というのも正しい継承である。『淀川八景』を読むと、藤野さんはこの方向で大きく開花する人ではないかと思う。
 本書は村上知子さんの全面的に協力があって刊行できた(作品・エッセイの再録、イラスト提供など含めて)わけだが、その村上知子さんの「父のこと」は、「夜明け」で始まり「夕焼け」で終わる「完璧な」文章である。読んでいただく他ない。
 眉村さんの俳句は知られているが「詩人」の側面はほとんど知られていない。服部誕氏はSFデビュー以前「捩子」時代の詩を発掘し、山田兼士氏は眉村さんの「散文作品」に「詩の発見」を試みる。ともに(小生は)まったく知らなかった側面である。
 そして……なんといっても山岸真「SF作家・眉村卓の六十年」が圧巻である。
 眉村さんの作家生活60年を10年ごとに「見ていく」(「サマリー」と紹介されている)文章だが、重要作品は詳しく、注目すべき短篇は外さず、約50枚で眉村さんの「変遷」を追うわけだが、これは長年に渡って眉村作品を精読していなければ出来る作業ではあるまい。ともかく圧倒された。
 これを巻末の(岡本俊弥・石坪光司氏による)著作リストと照合して見ると眉村さんの作家活動の全貌が浮かび上がる(とくに2008年の京フェスでの眉村さんインタビューのレジュメを再構成した「リスト解題」は貴重。80年代末から2000年代初めを「大減速期」ととらえるなど、これも初めて知る分析)。
 小生もコピーライター時代とヨータイ日生時代を調べるのに協力したが、各氏の力業に比べると、ちょっと肩身が狭い。
 しかし、ともかく、眉村卓読本としては、きわめてクォリティの高いものになっている……と思う。

7月4日(日) 穴蔵/ウロウロ
 午前3時に目覚める。1時間ほど早起きだが、二度寝せず、ともかく起きていることにする。
 ベッドで読書がいちばんいかんようだ。
 曇天+工事ネットで穴蔵は薄暗く、鬱陶しい。
 午後、日曜だが、出かけることにする。ここ数日、動いてないからなあ。
 久しぶりに自転車で、城北公園通りを毛馬橋まで。
 毛馬閘門から長柄橋まで戻り、柴島側に渡って、淀川右岸の堤防を時々河川敷に降りつつ十三まで走る。
 この1年ほどの「閉塞感」が淀川堤に出られないことに起因することを実感する。
 左岸は長柄橋下流が工事中で堤防に出られず、梅田方向は人出が多くて歩けず、散歩は貨物線の地下化工事現場くらいしかないからなあ。
  *
 淀川は濁っていた。
 しかし、この解放感がたまらん。『淀川八景』に栄光あれ。
 十三大橋を南に渡って帰館。
 夜のビールがうまい。
 早寝するのである。

7月5日(月) 穴蔵
 眠り断続的だが、定刻午前4時に目覚める。なんとか普通に戻ってきた。
 曇天。薄暗い。日の出が遅くなったなあと実感する。夏至はとっくに過ぎているのだ。
 秋が近いのである。秋来りなば冬遠からず、憂鬱な季節になるなあ。
 終日穴蔵。
 たいしたことはできず、いいことは何もなし。
・大阪の感染者78人。月曜の数字としては多いのか少ないのか判断つかず。昨日あたりから急拡大というわが予想は外れか。
・モンゴルのポンコツが2連勝。これも予想外れ。奮起してポンコツを土俵に叩きつけんか、若いの。
 たっくるせ、たっくるせ!

7月6日(火) ワクチン接種A
 曇天。大阪は雨が降る気配なし。
 午後、扇町公園へ。
 ワクチンの集団接種2回目。
 自転車で行ったら早く着いてしまう。30分前に受付のつもりが50分早い。
 が、ちょっと待てともいわれず受付、「空いてますから」と10分ほどで問診、15分ほど待機して接種、副反応の様子見で15分待機。
 予約していた時間には終わってしまった。
 2回目を接種をしない老人が多いのか?
 いずれにしてもワクチンは終わり。気休めだけどね。

7月7日(水) 穴蔵
 雨が断続的に降る。
 用事なきにしもあらずで、出ようとしたらとつぜん強い雨。午前、午後、この繰り返し。
 結果として、終日穴蔵。
 生産的なことができたわけでもなし。
 一杯飲んで早寝。

7月8日(木) 穴蔵
 定刻午前4時に目覚める。
 曇天……だったのが、5時頃には雨が降り出し、急に雨脚が強くなった。
 播州龍野に要件があるのだが……
 中国地方から関西まで大雨。
 西播は軒並みに大雨警報、雷と洪水の注意報、土砂災害警報情報などが出て、姫路中心に山陽線・姫新線・播但線・赤穂線、新幹線まで運転見合わせ。播州龍野行きは無理である。
 終日穴蔵。
  *
 外は足場と工事ネット。雨は音で判断するしかない。修繕工事は豪雨で休みのようである。
 と……午後、雨はやみ、晴れ間まで出てきたような。Too late!
 暇つぶしにBSで『慕情』を見る。
 こんな通俗的なドラマが名作とは何度見ても不思議だが、今の香港の実情を見るに、意外に意味があるような気もする(あ、先週の「ワイルドバンチ」につづいてのウィリアム・ホールデンつながりなのか。そう考えるといい組み合わせだ)。

7月9日(金) 穴蔵
 朝から晴れていたのが、昼前にとつぜん曇り、豪雨、1時間ほどで普通の曇天となった。
 ややこしい日である。
 出歩かないに限る。
 終日穴蔵。
 メールと電話であちこち連絡。すべての用事は来週回しとする。
 そう決まると気が楽になり、あとはボケーーーッて過ごす。
 夜は専属料理人が6皿(鉢)ばかり並べた。
  *
 蛸と子芋の小鉢が旨く、「驚愕の6冠」をチビチビグビグビ。
 寝る。

7月10日(土) 穴蔵
 土曜日である。
 薄曇りの穏やかな日だが、テレビは南九州に大雨特別警報(警戒レベル5)のニュースばかり。落ち着かないことである。
 朝。
 9時からalaのサイトで森山威男 JAZZ NIGHT 2021の予約受付開始。
 ワクチン接種予約よりも素早く特等席を確保する。
 岐阜なら今年の開催は大丈夫であろう。森山ドラムは2年聴いていないからなあ。
 昼。
 久しぶりに横浜のボンクラ息子その1一家(犬も勘定にいれます)とzoomランチ。
  *
 向うはタコ焼き、こちらは穴子弁当。
 こちらもタコ焼きの予定だったのが、蛸丸が本日も休業。最近は休みが多い。
 四方山話、1時間ほど。横浜はマンボウだが、勤務は渋谷で、緊急事態と変わらないことになるという。
 午後。
 工事音が響いていたが、夕刻、ベランダ前の足場が撤去された。
  *
 3月中旬以来、4ヶ月ぶりに視界が戻る。
 どうやら梅雨明けである。
 夜。
 エアコン稼働させて季節外れのカニスキ。「鮮度の鬼」というのをいただいたのである。
 リゾット風雑炊でワインがうまい。
 いい気分で寝ようかと思ってたところに、専属料理人が「岩田さんが出ている」とメールで連絡してきた。
 阪神〜読売戦に(近所でおなじみの)投手が投げているという。
 テレビで見ると確かに2年前に近所の公園で投げてた投手である。
 敗戦処理に登板か。
 いいではないか(←と眉村さんフレーズ)。

7月11日(日) 穴蔵
 晴。炎天8月の如し。
 気象庁なぜ(大阪に)梅雨明け宣言しないのか、これひとつの不思議。
 日曜で巷にアホうろうろのはず。
 終日穴蔵にあり。
 室温30℃、扇風機に吹かれてボケーーーッとしている分には快適この上なし。
 DVDで久しぶりに『真夏の夜のジャズ』を見る。
 来週あたりから、おれもライブ復活といくか。

7月12日(月) 大阪←→播州龍野
 定刻4時起床、早朝の電車で播州龍野へ移動する。40日ぶりか。
 兵庫県は本日よりマンボウ解除である。
 大阪は晴れていたのが、西に行くほど雲が厚くなってくる。
 9時前にタイムマシン格納庫に着く。
 本日は珍しく相棒・某くんの代理。留守番役しかできないが。
 10時頃から雷雨になった。
 途中、実家へも行く。前回設定した「防犯」装置をチェックするが、見事に壊されている。
 というよりも、門をガタガタやられたために故障した(不法侵入するまでの気はなかった)のかも知れぬ。プロならこんな正面突破を試みないからな。
 雨が強く、屋外作業は無理。修理は後日とする。近いうちにオリンピックがあるらしいから、その間に避難してくることにするか。
 本日は戸締り強化にとどめる。
 あと北部の某社、西部のヤマト運輸、南西部の福山通運に寄り、夕刻に近い午後の電車で帰阪。
 東へ移動するにつれて空は晴れ、大阪は夕映え。

7月13日(火) 穴蔵
 晴。朝から直射光が射しこみ、8時、室温31℃となった。
 扇風機を回しておけば快適である。
 終日穴蔵。
 昨日の反動で出歩く気分にならず。
 夕刻、専属料理人が「1階の庭に子猫がいる」という。
 足場とネットが撤去されたら、1階の専用庭に野良が住みついて子猫を生んでいたことが判明したらしい。
  *
 7階から見下ろすと、トラの子猫が3匹、じゃれあっている。
 親らしいのは、時々公園で見かけるという。
 どうなることやら。
 大規模修繕の工事業者の責任でなんとかすることになるのだろうか。
 わしゃ去年理事長を退任してるから関係なし。
 見物に専念させていただく。

7月14日(水) 穴蔵
 薄曇りで静かな日である。
 終日穴蔵。資料を読んで過ごす……はずであったが。
 専属料理人が2回目のワクチン接種翌日で、副反応か、ちょっとしんどいという。
 困ったものだ。
 買い物を代行する。
 天気予報……九州から関東甲信で「発雷確率」が高く、急な非常に激しい雨や落雷に注意……という。
「九州から関東甲信越」とは大げさなと思ったものの、昼前に自転車で天八のスーパーへ。リストに従ってささっと買い物を済ます。
 帰館後、穴蔵にてひとり昼弁当。
 と、13時、急に暗雲が立ち込め、激しい雷雨となった。
 天気予報、たまには当たることもあるのだ。
 1時間ほどで雨はあがり、涼しくなった。
 ベランダ28℃、室温30℃である。
 夜は一応普通に晩酌。
 大阪の感染者が急増。100人前後で増加傾向が、昨日225人、本日は349人。わが予想では7月第2週から急拡大だったが、なぜか1週間ほどの遅れ。
 ま、どうジタバタしても2週間は増加がつづくから、第5波入りしているのは間違いない。すぐ500は突破だろうけど、どこまで行くのかはさっぱりわからん。
 それにしても……感染者の予測、報道しなくなったなあ。
 東京は激増なのに、予測報道なし。パラメーターが増えすぎて予測不能、かつ「予測してもいうな」の圧力ありか。

7月15日(木) 穴蔵
 午前5時に凄まじい雷鳴で飛び起きた。びっくりするなあ。しばらくして激しい雷雨になる。
 だんだん弱くなるものの、雷雨は2時間ほどつづく。
 あとは普通の曇天。
 出歩く気分にならず、本日も終日穴蔵。
 色々資料を読んで過ごす。
 専属料理人の「副作用」は解消したようでホッ。
・西村康稔(コロナ大臣)が「酒類販売」で袋叩きのようだが、本性を今まで見抜けなかったマスコミにも国民にも呆れる。
 昨年(と思うが)登場した時から、あの大仰な身振り手振り(操り人形みたいに両手を振り回してしゃべる)を見て、わしゃ「巧言令色を絵にかいたような」男だなと思った。的中ではないか。
・久しぶりに感染者予測。東京は4週間後に一日2,400人。ずいぶん控えめな気がする。オリンピックでまだ増えるぜ。
 大阪の予測は見当たらず。
 面白いニュースは皆無。
 一杯呑んで早寝させていただく。


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