『マッドサイエンティストの手帳』675
●マッドサイエンティスト日記(2018年3月前半)
主な事件
・SRF耐震補強(2日)
・星新一賞(8日)
・播州龍野いたりきたり
3月1日(木) 穴蔵
定刻午前4時に目覚めれば3月であった。
外を見るに、夜に雨が降ったらしいが、もうやんでいる。
机に向かっていたら、9時頃には晴れてきた。
テレビでは(近畿圏も含めて)暴風雨みたいだけど、どうなってるのか。
終日穴蔵。
午後はDVDで『殺人狂時代』『ああ爆弾』を観る。
岡本喜八作品は何度観ても面白いのだが……
『ああ爆弾』(ミュージカルである)は20年ぶりに観たが、伊藤雄之介の場面(歌舞伎、狂言、浪花節のパロディ)の面白さに較べて、中谷一郎側の「洋楽」シーンがまったくつまらない。特に銀行員の合唱場面からはまるで退屈。音楽が佐藤勝だからか。『暗黒街の対決』の「月を消しちゃえ」を知ってるだけに、これは意外であった。カジシンと話し合いたい気分だ。
コンビニメニューで晩酌。
口直しに『暗黒街の対決』を観て寝ることにする。
3月2日(金) SRF耐震補強
晴れて暖。
午後、うちの集合住宅でSFR工法の見学会がある。
つまり、集合住宅の耐震補強工事の最中で、その工事現場をよその方にもお見せしようという、業者主導の見学会。
SRFは別名「包帯補強」ともいわれる。
*
ピロティ構造の建物に有効で、柱にポリエステルのベルトを巻きつけて耐震性をあげる方法。うちの集合住宅は、1階の中央部が駐車場になっていて、柱がむきだしだから、工事は簡単な方らしい。
ま、気休め的な工法としても、やらないよりはいいか。
阪神大震災では(食器棚や本棚は倒れたが)特に建物に被害はなかったから、あと10年(わが寿命)持ちこたえてくれればいいのである。
3月3日(土) 穴蔵
朝だ。晴れている。洗濯をするのであった。
あとはボケーーーーッと過ごす。
ニュース雑感。
※リニアでのゼネコン疑惑。
大林の元常務と鹿島の部長を逮捕。大成と清水は課徴金減免(リーニエンシー)でお目こぼし。これほどわかりやすい「囚人のジレンマ」もないなあ。大成と清水は次ラウンドで「しっぺ返し」を食らうことになる。そのへんも特捜の作戦のうちか。
※「たかじんの妻」敗訴確定。
名誉毀損で毎日新聞社を訴えてたが、最高裁が受理せず、高裁での敗訴が確定。他にも裁判は進行中? みじめアタッカーはどうすんのよ。
3月4日(日) 独居生活終わる
晴れて暖。昼間は20℃になった。
机に向かったり本を読んだりCDを聴いたりしてたら、夕刻、専属料理人が帰宅。
楽しき独居生活は終わりを告げる。
ということで、夜は久しぶりに非コンビニメニュー。
別に贅沢はしたくない。
ともかく根野菜(筑前煮)がうまい。これだけは、出来合のは食べられたものではないからな。
田中啓文『シャーロック・ホームズたちの新冒険』(東京創元社)
待望久しきシリーズ第2巻。
前の「シャーロック・ホームズたちの冒険」では、ホームズの他に、忠臣蔵、ルパン、ヒトラー、小泉八雲など、署名な事件や人物を登場させた。今回も……
*
「トキワ荘事件」……手塚作品が落っこちそうになりトキワ荘の面々がつなぐことになるが、その原稿が消失!?
「ふたりの明智」……明智小五郎が御先祖(?)明智光秀の謎に挑む。
「2001年問題」……アシモフがクラークに宛てた手紙の謎を黒後家蜘蛛の会がテーマとする。
「旅に病んで……」……芭蕉の死の謎を残された俳句から解き明かす。
「ホームズの転生」……さえないバイオリニストのホームズが演奏会の最中に起きた殺人事件に挑む。
いずれも見事な着想と考証(ものすごく調べてあることは、こちらがある程度知っている「2001年」などでもよくわかる)がすごく、しかも、メインの人物から少しずらした話の作りが見事だ。
「トキワ荘」では手塚治虫が主役にならず、「旅に病んで……」では芭蕉が登場しないように……。
そういう観点からいうと、ホームズの「別人生」を描いた、書き下ろしの「ホームズの転生」が異彩を放っている。
啓文さんの数多いシリーズものの中でも、いちばんの注目作である。
3月5日(月) 穴蔵
午前4時起床。曇天。7時頃に雨になる。予報通り。
終日穴蔵にあり。半痴呆状態で過ごす。よくいえば「構想を練っている」のだが、とりとめのない妄想ばかり。
明日は少しはましな日になるだろう。
3月6日(火) 穴蔵/ウロウロ
定刻午前4時に目覚め、一応机に向かう。
曇天が午前9時を過ぎると快晴、ドタマは梅雨空のごとく、まるで働かない。
穴蔵にて半痴呆状態ですごす。
ドタマはともかく、体はなんとか維持せねば。
午後、散歩に出る。淀川堤、北西方向。
*
河口より8キロの標識。左端(たぶん6キロほど彼方)にタワーマンションが見える。
この近所が酉島〜伝法で、酉島伝法さんが棲息中のはず。好天だから「川で書いて」はることだろう。
おれもがんばらねばならぬ。
3月7日(水) 穴蔵
晴れて暖。
終日穴蔵にあり。たいして仕事はできないのであった。
たちまち夕刻となる。
専属料理人に色々並べてもらって晩酌。
肉じゃがとか揚げの焼いたんとかに、八尾の「若ごぼう」が出てきた。
*
春を告げる根菜である。大阪だけかな。
「神の河」湯割り、徳島産の柚子を加えてちびちび。春であるなあ。
3月8日(木) 穴蔵/星新一賞
定刻午前4時に目覚め、一応机に向かう。
曇天、10時頃から雨になり終日降り続く。
終日穴蔵にあり。
午後、「星新一賞」第5回受賞作品集を読む(今まで日経ストアに入るのが面倒でアクセスしてなかった)。
グランプリの八島游舷「Final Anchors」
近未来の自動運転車が衝突する直前0.5秒間に交わされるAI同士の会話。この発想がすばらしい。人間の数千倍のスピードで擬人化したAI間の会話が交わされる。それぞれのAIは人間の運転者の代理人?でもある。衝突が避けられればいいが、状況を見てあきらめねばならず、共倒れもありうる。恐ろしい設定で、ともかく0.5秒のドラマが進行する。傑作である。
八島游舷氏は「蓮食い人」で優秀賞も受賞。
有望な新人の登場というべきだろう。
おなじく優秀賞の小竹田夏「Q.E.D.の後で」
不思議に魅力的な作品だ。これは数学問題を絵解き(体の動き)で証明しようというもので、じつはこれに似た発想の短篇を(30年ほど前だが、ある同人誌で)読んだことがあり、着想はいいが擬人化が不足といったことがある(※)。
(※不確定性原理を子供たちが遊んでいる描写で表現しようとした作品だったと思う。)
「Q.E.D.の後で」は、それが理想的というか、わが想像力の及ばぬレベルで完成している。見事なものだ。
その他の作品も面白く……ともかく理系の俊才が集結した感じだ。
貴志祐介さんの選評に共感を覚えたことも付記しておきたい。
3月9日(金) 穴蔵/ウロウロ
曇天にして寒。
運動不足なので午後に散歩。梅田うろうろ。
珍しくも文藝春秋4月号を買ってくる。
眉村卓「『妻に捧げた1778話』が私を救った」を読む。創作についての心境の変化がうかがえる。
許永中の告白「イトマン事件の真実」……黒田勝弘のインタビュー。やはりマユツバ発言が多いな。田中森一にしろ伊藤寿永光にしろ、嫌っていながら「共闘」しとるのだし、自分だけ「欲がなかった」は通るまい。宅見勝が一枚も二枚も上というのはよくわかるが。
で……
巻頭の緊急特集「米朝激突クライマックス」3本の記事、発売日の朝に「トランブと金正恩が5月末までに会談」というニュースが流れたものだから、見事に外れてしまった。会談がどうなるかはわからんし、北が核を放棄するとは思えないど、ともかくこの特集は見事な空振りとなった。編集部の歯ぎしりが聞こえてきそうな。
3月10日(土) 穴蔵/ウロウロ
晴れて暖。昼過ぎに梅田・南東方向をうろうろ。
梅田センタービルの東側の道……あれ、またもビルが解体中である。
ここは1月26日に通りかかった時、グリーンホテルが更地になってるのに気づいた場所。
*
なんと、南側の能楽会館も解体中なのであった。
調べてみると、借地で、建て替えではないらしい。
ここで能を見たことはないが、学友に会ったことがある。中学高校の同級生で、姫路で父君の跡を継いでの能楽師である。(おれは体育会系の人間とは無縁だからどうこういえないが)生涯で知る限り、もっとも運動神経の優れた男である。この能楽会館前でばったり会ったのは30年ほど前であったか。元気であろうか。
ということで、能楽会館の消滅はちょっと寂しい。
夜はローストビーフでワインを少しばかり。
漫然とテレビでニュースを見る。
と……佐川宣寿って、こんなにチビだったのか!?
国会で答弁やってたときは比較の対象がなかったが、大勢に囲まれると、まるで見えないではないか。
気になってネット見たら、やはり同じ興味で調べてるのがいるんだなあ。推定15*cm。へえー。
3月11日(日) 大阪→播州龍野
晴れて暖。朝の電車で播州龍野へ移動する。
昼前に実家に着く。
冬の間、寒くてやれなかった雑事(庭の掃除など)を行うが、きりがないので2時間ほどでやめる。
司馬遼太郎記念館みたいに雑木林にしておくのがいい(あちらは雑木林風に手入れしてあるのだが)。
ホームセンターへ買い物に行き、近くの揖保川堤を散策。
*
おれもこちらの「川で書く」ことにしようかな。
故郷の川は妙に創作意欲を刺激してくれる。
ということで、龍野泊。
「味三昧」の弁当でビール飲みつつ、3.11番組を見て神妙な気分になる。
播州龍野の夜は早く、19時には真っ暗。東北はもっと夜は早いのであろう。
3月12日(月) 播州龍野→大阪
うへっ、20時頃に寝たら午前1時に目が覚めてしまった。
播州龍野の場合、起きて着替えてストーブつけてと、机に向かうまでの手間がかかりすぎるので、そのまま朝まで本を読んだり眠ったり。
午前6時に起床。朝の儀式色々。午前8時、タイムマシン格納庫へ。見張り番を務める。
たいした用事はなく、昼過ぎのキハ系で姫路に出て、おなじみ灘菊で昼飯。
新快速で帰阪する。
夕刻のテレビは森友文書で大騒ぎ。
色々な論者が出てきて喧しいことだが、問題の本質は百年の不作にある。これは1年前からかわらん。
安倍洋子刀自の慧眼に恐れ入るばかり。
3月13日(火) 穴蔵/荒本
晴れて暖。穴蔵にあり。
と……某方面から旧作についての問い合わせあり。
コピー送付と思ったら、どこにもない。調べて見ると、20年以上前にSFアドベンチャーに載せたショートショートである。
原本は播州龍野の書庫。
せっかくの話なので、久しぶりに荒本の府立図書館へコピーを取りに行く(市立図書館にSFアドベンチャーはない)。
*
表に人影なし。休館日かと思った。内部も閑散としている。
本を読むには申し分ない環境だが、不便だし交通費は大変(近鉄が1駅かかるから料金が跳ね上がる)だしなあ。
やはり中之島はよかった。
「霧に沈む戦艦未来の城」で、本を燃料にして燃してしまったのが祟ったか。
3月14日(水) 穴蔵
晴れて、昼間は20℃を超えた。
終日穴蔵。
ちと事情があり、おとなしく過ごす。
飲まないから、夕食は10数分で終了。早寝するのである。
ホーキング博士死去のニュース。
長生きというべきか(余命2年といわれた)、ちょっとコメントに困るが、特異な天才科学者であったなあ。
3月15日(木) 穴蔵
朝、近所の某医院へ行く。朝食抜き。年に一度の健康診断である。
おお、特に異常はなかった(血液検査は後日)。ほっ。
これで年末まで気楽に過ごし、年末にホルター装着やって、また半年過ごし、1年が無事に過ぎる……予定である。
これを10年は無理としても、5、6年繰り返してあの世行きとなるのかな。
その間、少しは仕事もしなきゃいかんなあ。
ということで、後は穴蔵。
たちまち夕刻。
*
夜は専属料理人に、ヤッコ・ネバネバ小鉢、グラタンなど、健康メニュー並べてもらってビール、ワイン少しばかり。
早寝するのである。
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