『マッドサイエンティストの手帳』674

●マッドサイエンティスト日記(2018年2月後半)


主な事件
 ・SF検討会(16日)
 ・大阪てのひら怪談(17日)
 ・ジェフ・ブル・インターナショナル・ジャズバンド@島之内教会(18日)
 ・播州龍野いたりきたり


2月16日(金) 穴蔵/SF検討会
 朝、大淀税務署へ確定申告の書類を提出に行く。
 国税庁長官は気にくわないけど、こちらは源泉徴収された分を取り戻すためだから、無視するわけにもいかない。
 今年もなんとか還付金でalaへ森山威男ジャズナイトを聴きに行ける目処が立った。
 帰館してボケーーーッとしているうちに夕刻となる。
 かんべむさし氏来穴蔵。
 今年はじめて、定員2名内容非公開のSF検討会を開催する。
 湯割り飲みつつ約3時間半。
 主には春団治(嗚呼!)と小雁さんがメインか。毀誉褒貶はなはだし。どちらがどうとかはいうまでもない。

2月17日(土) 大阪てのひら怪談
 午後に出かけようとしたら、近所に消防車が数台駆けつける。
 何事か。
  *
 公園南側の穂光でボヤ騒ぎだったようである。
 時々昼飯を食べに行く店。焼失しては困るのである。
 ぶらぶら歩いて中崎町のギャラリーSUNABAへ。
 田辺青蛙さんプロデュースの大阪てのひら怪談の展覧会が開催されているので、ちょっと見学のつもりで行ったら、なんと本日が選考委員会でもあったのだ。
 選考委員の各氏ももうすぐ来るというので、傍聴させていただくことに。
 東雅夫、山下昇平、牧野修、酉島伝法、田辺青蛙の各氏が選考委員。
 それぞれの発言も面白いが……なんと大賞受賞者は「環状線」の作者「泥田某」氏であり、その本名は北野勇作であった。
 これ、なれあいではない。北野氏は昨年は見事に落選。しかも、他にも「プロ作家らしい」が正体不明が結構いるらしい。
 恐ろしいコンテストなのであった。
  *
 受賞者の朗読も聴く。
 こちらは暗闇で鍛えているだけに、見事なものであった。
 まっすぐ帰館。
 一杯飲んで早寝。
 明日もまた楽しみがあるからね。

2月18日(日) ジェフ・ブル・インターナショナル・ジャズバンド@島之内教会
 午後に心斎橋の島之内教会へ。
 ジェフ・ブル・インターナショナル・ジャズバントの来日公演である。
 専属料理人は受付津手伝い、おれは気楽に聴かせていただく。
 チラシをデザインをした塩田くんも招待されている。
 2009年に結成。イギリス、ドイツ、ベルギー、オーストラリアの名手が集まり、日本からは河合良一さんが参加、5年前からは毎夏1ヶ月のヨーロッパツアーを敢行している。
 来日が待ち望まれていたバンドである。
  *
 さすがに名手揃い。
 ひょっとしたらラスカルズに及ぶかも……とは微妙な言い方だが、ラスカルズもメンバーが欠けてきたからなあ。
 日本側はラスカルズが出演。
 河合さんは両バンドに出演だからたいへんである。
 ということで16時40分まで。
 あと、塩田くんと専属料理人とで明治軒に寄る。
 串カツ、トマトサラダ、タタキでビール、オムライスでワイン。
 ちと食べ過ぎか。
 まっすぐ帰館、早寝する。

2月19日(月) 穴蔵/ウロウロ
 朝からうろうろする。郵便局と銀行に寄る。梅三小路の某店で散髪をする。ヨドバシ〜紀伊国屋〜ジュンクドーを経由して、昼前に帰館する。
 午後は穴蔵にて本を読んで過ごす。
 たちまち夕刻。
 専属料理人の作った、すき鍋、ごちゃごちゃ野菜の掻き揚げ、なんとか菜の煮浸しなどでビール、湯割り。
 早寝するのである。

2月20日(火) 穴蔵
 晴れて暖。
 行楽日和のようだが、日和下駄の気分にならず、終日穴蔵にこもる。
 本を読みかけるが、目が疲れて眠くなる。
 しばらくCDを聴く。
 そのまま仮眠。
 これを3回ほど繰り返して夕刻となる。
 明日は気合い入れるつもり。

2月21日(水) 穴蔵
 曇天、午後には晴れてくる。
 終日穴蔵。
 ボケーーーーッと過ごす。
 いかんなあ。

宮内悠介『ディレイ・エフェクト』『超動く家にて』
 宮内悠介さんの短編集が2冊。
 芥川賞候補作(表題作)とバカSFを集めた短編集……ということだが、読み比べると、特に大きな差は感じられない。
『ディレイ・エフェクト』(文藝春秋)
  *
 表題作は芥川賞を受賞しても不思議でない作品で、しかも本格SFである。これについては前にも書いたが、次の「空蝉」は、ロックバンドの自殺?したメンバーの足跡をたどるミステリー?である。不思議な位置づけの作品。そして「阿呆神社」に至っては、なんというか、やっぱりミステリーの一種で、謎は解けるが、それ以上に阿呆らしいのである。
 この作品集、「ディレイ・エフェクト」が受賞した場合には、芥川賞受賞作として売り出されるはずだった? そうとしか思えない。
 惜しいなあ。ぜひとも芥川賞作品と「阿呆神社」が並んでほしかった。それほど(ともに)巧緻な作品である。
 その創作の秘密は、
『超動く家にて』(東京創元社)にある。
  *
 短篇が16篇。アンソロジーなどで読んだのは5篇……宮内さんがこんなに短篇を書いていたとは知らなかった。
 帯に「宮内悠介の本性ここにあり!」とあって、確かにその通り。ただ、いわゆるバカSFを集めたものでもない。
 「トランジスタ技術の圧縮」や「超動く家にて」のようなトンデモ発想もあるが、「文学部のこと」や「アニマとエーファ」のごとき「思索的」作品あり、「法則」や「かぎ括弧のようなもの」などヨタ話あり、「クローム再襲撃」のパロディあり、ともかくその発想が多彩である。
 『スペース金融道』を読んだとき、量子金融工学が金利計算でブラックホール解を生み出すギャグに、「これはSFファンがいちばん面白がる」と述べた。その面白さが徹底したのが本書で、これはバカ受け間違いなしだろう。
 ただ、宮内さんの凄いところは、こうした着想をさらに凄い作品(SFであってほしいが、それにとどまらない)に成長させるところである。
 この16篇、たしかに完成度からいうといまだしのものも見られるが、なんといってもアイデアの広さである。
 本性ここにあり。さらに進化させてほしい。

2月22日(木) 穴蔵/ウロウロ
 晴れて暖。さすがに運動不足である。
 午後、3日ぶりに散歩に出る。
 ジュンクドー〜紀伊国屋〜ヨドバシ北側のスクランブル交差点にカートが6台。
  *
 乗ってるのはポンジンらしい。ヘルメットなしのもいるが、大丈夫なのか? 派手な事故を起こして「被害者」になってほしいものである。
 2期地区を通って新駅工事状況を見る。たいして変化なし。
 スカイビルを抜ける。
  *
 早春の里山には誰もいない。
 中津経由で帰館。1時間10分。6,100歩となった。
 夜は専属料理人に色々(タタミイワシ、蛸サラダ、おでん、キンピラ等)並べて貰ってビール、湯割り。
 早寝するのである。

山田正紀『銀の弾丸』(創土社)
 クルトゥルー短編集である。
  *
 表題作「銀の弾丸」は「日本人が書いた史上二番目のクルトゥルフ作品」だという。1977年。……では史上最初は誰なのか。ネットで調べてもよくわからん。どうもこれは作者の謙遜なのではないか。あとから「クルトルゥフと解釈できる作品」が出てきた場合にはそちらにお譲りしますということかな。
 この作品、正直なところ、覚えていなかった。しかし「H.P.L協会」なるものを作ったところが凄い。しかも続編は書いてない(はず)。山田正紀のアイデアの豊富さだろうな。
 その間に複数の作品(いずれも秀逸)を挟んで、最後に、40年後の書き下ろし「戦場の又三郎」。
 幽霊戦車が登場する意欲作で、なるほど、風の又三郎がこんな風に化けるのかと感嘆。
 「銀の弾丸」から「戦場の又三郎」まで、この系譜は山田正紀の、一種のメタフィクション(というか、過去の大作家にインスパイアされた作品)なのだろう。長篇でいえば『幻象機械』に始まるのだが、「銀の弾丸」は10年ほど早い。恐ろしく先駆的な作品である。
 つまり……おれとしては、クルトゥルー神話ではあるけれど、もっと広い視点で評価されるべきと思うのである。

2月23日(金) 穴蔵/ウロウロ
 晴れて暖。終日穴蔵にあり。
 ちとややこしき事態発生、夕刻まで迷うが、すべて明日に送る。
 夜はパスタで白ワイン。気楽に過ごす。

2月24日(土) 独居生活開始/ジェフ・ブル・バンド@ニューサン
 朝、専属料理人が実家へ帰ってしまった。
 毎度のことながら、愛想尽かしされたわけではなく、家庭の事情(←(C)トニー谷)。
 楽しき独居生活の始まりである。
 終日穴蔵。
 夜、ニューサンへ行く。
 ラスカルズに加えて、ジェフ・ブル・インターナショナル・ジャズバンドも来ていて、にぎやかである。
  *
 明日の夜は琵琶湖畔のホテルに、この2バンドを中心にトラッド系5バンドほとほが集結しての演奏があるのだが、専属料理人から「ひとり外泊禁止」を言い渡されていて、残念ながら欠席である。
 独居生活で、自宅で独酌も別に変わらないのだけどね。主旨は、ややこしい場所でややこしい死に方をしてくれるなということである。琵琶湖畔はややこしい場所ではないが、夜中まで羽目を外すことはあり、その気持ちもわかぬではなし。致し方あるまい。
 ということで、おれは本日が聴き納め。最終ステージまで聴く。

2月25日(日) 穴蔵/ウロウロ
 楽しき独居生活。といっても、食生活がホカ弁やコンビニメニューに変わるだけで、たいした変化はない。
 午後、貨物線沿いに散歩。
 地下化にともなう工事(といっても掘削はまだ先)が豊崎第6架道橋の東まで進んできた。
 第4架道橋から豊崎神社あたりまでは、高架はそのままだが、補強工事をするのか? やたらマークが目立つ。
 その豊崎神社近くに「穴毛」という、じつにいやらしい名前のホテルがある。豊崎の恥。
  *
 みうらじゅん氏に教えてあげたいほどだ。
 専属料理人がおれに「ひとり外泊禁止」をいうのは、こんな場所で死んでほしくないからである。
 おれも嫌だよ。
 そういえば……先日(2月3日)の御坊市での事件は、傷害容疑の老女は不起訴になったそうな。ということで関係者の名は伏せさせていただく。男性の意識はもどったが話せないとは、どういう状態なのだろう。……おれはこんな状態にはなりたくない。
 事件といえば……木村一八『父・横山やすし伝説』(宝島社)をざっと立ち読みした。
 木村一八ももう48歳か。やすしが言語を失った殴打事件に関して、犯人を木村一八は知っていて(ヤクザの親分に片っ端から電話したらわかったという/やすしも知っていたという)、警察もほぼ知っているが、迷宮入り。複数のヤクザ(あるいは外国籍?)と暗示してあるが、本当かなあ。……おれは、やすしのような死に方はしたくない。
 どうも、ひとりでいると、おかしな死に様ばかり考えてしまう。

2月26日(月) 大阪←→播州龍野
 早朝の電車で播州龍野へ移動する。
 9時前に到着。タイムマシン格納庫にて30分、実家にて3時間、雑事あれやこれや。
 播州龍野の実家周辺、幼稚園の工事が大詰めで、4月から新園児が増えるのか。要注目。
 長居無用である。
 昼過ぎのキハ系で姫路に出る。
 おなじみ灘菊で遅めのランチ。
  *
 いつもの日替定食580円が日替御膳750円に変わり、粕汁ベースのミニ鍋がつく豪華版。
 うまっ。以前から、味噌汁を粕汁に変更してもらったりしてたのだから、これはおれのために作ってくれたような膳である。
 ということで、ビールに灘菊熱燗も追加。独居生活だから、昼飯くらいは豪勢にいかなくては。
 新快速で半分眠って帰阪。
 夜はコンビニメニューである。

2月27日(火) 穴蔵
 朝だ。晴れている。洗濯をするのであった。
 あとは穴蔵にこもる。
 ボケーーーーーッ。
 ま、こんな日もある。
 DVDで『独立愚連隊』『独立愚連隊西へ』『どぶ鼡作戦』を観る。

2月28日(水) 穴蔵/ウロウロ
 朝だ。晴れている。月末なので、午前中、処理事項あって梅田の金融機関などうろうろ。
 西梅田へ行ったついでに、福島から旧ホテルプラザ跡まで行ってみる。
 フェンスの張り巡らされた内側で重機の音。
  *
 表示によれば、52階建てのタワーマンションが2022年夏頃に竣工するらしい。
 北側(旧朝日放送)にはすでにタワーマンションが建っていて、南側にも建設中。
 結局、このあたりも(中津の東洋ホテル跡と同様)マンション街になるような。
 午後は穴蔵にこもる。
 夕刻から天気は大荒れの予報が、午後9時過ぎても、雨は降らず風も吹かんじゃないの。
 どうなっとるのか。


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