『マッドサイエンティストの手帳』472

●マッドサイエンティスト日記(2010年2月前半)


主な事件
 ・文化たこやき「マーガレット」(2日)
 ・京都「露庵」(4日)
 ・鉄人28号(5日)
 ・青空葬儀(7日)
 ・京都/カルタゴ/荷風/キッチンパパ(12日)
 ・創サポ講義(13日)
 ・Sunday at Jazz Club(14日)


2月1日(月) 穴蔵/本町
 キンタマコチコチの2月になりにけり。
 外は冬の雨であった。
 昼前に地下鉄で本町へ。
 某銀の貸金庫の解約手続きである。
 13年前にタイムマシン設計図を保管するために借りたものである。
 当時は御堂筋に面したビルの地下室にあって、壁面に金属製の整理ダンスみたいにずらっと並んでいた。
 地下室はしんとしていて、他の客と会うこともない。シェルターに入るようで、なかなかいい雰囲気だった。
 これが9年前に自動金庫に変わった。地下室の有効利用のためであろう。1階奥のコーナーの小部屋にATMより少し大きい装置が置いてあって、壁の向こうからボックスを送り出してくる方式である。
 
 ↑上蓋を開けるとこんな感じになる。
 設計図を取り出し、解約確認書を書いて、カードと鍵を返却する。
 設計図は、別の金庫に移すのも面倒だから、「盗まれた手紙」「ハバナの男」「暗黒街の弾痕」などに倣って、リビングのテーブルに放置するか、穴蔵の壁紙にでもしておくことにする。(←本気にしないように、エシュロンくん)
 某銀は5月に本町の営業所を閉鎖するらしい。
 御堂筋に面した茶色のビルは名物ビルのひとつであったが……(ビルが解体されるのではないらしいけど)寂しいことである。
 せっかくだから本町界隈をうろうろしたかったが、雨が本格的になってきた。
 書店にて、中山康樹『マイルスの夏、1969』(扶桑社新書)を買って、まっすぐ帰館。
 コタツに潜り込んで、ジャズの熱かった時代の雰囲気に浸る。

2月2日(火) 穴蔵/ワイルドバンチ/マーガレット
 終日穴蔵。
 隣室のリフォーム工事、先月末で終わるはずが、長引いていて、トンカチ音が響く。
 太宰くんじゃないけど、トカトントンだぜ、ったくもう。
 夕刻、穴蔵を這い出て、自転車で天六に向かう。
 久しぶりにワイルドバンチにてビール1杯。
 SFファンのS々木さんが来る。
 4年間、大阪勤務だったが、来週から東京へ転勤ということで、送別会を兼ねてビール一杯。
 あと「となりの人間国宝」受賞の文化たこやきマーガレットへ移動する。
 関テレの番組の影響か、10人くらい客がいてほぼ「満席」……なかなかの繁盛ではないか。
 タコヤキでビール。あと「マーガレット焼き」というのがあって、これを頼む。
 お好みのようでお好みでないベンベン、ネギ焼きのようでネギ焼きでないベンベン、それは何かと訊ねたら……○○○○、○○○○……店へ行って確認してくだされ。結構な味である。これは看板メニューになっても不思議ではない。白木くん、ヒットを祈る。
 SFやジャズや周辺のことをいろいろしゃべってたら23時に近い時刻。
  *
 白木くん中心に記念撮影して解散とする。何枚か撮ったけど、公開するのはわが額のハレーションが目立たないノーフラッシュのである。
 めったに夜遊びしない生活だが、楽しい夜であった。
 酩酊寸前自転車にて帰館。寝る。

2月3日(水) 穴蔵
 わ、目覚めれば午前7時。
 気分よく飲んだからなあ。熟睡、心地よい目覚めである。
 朝は軽くお茶漬け。
 終日穴蔵。
 少しは仕事も……するつもりが、本日もトカトントン継続で今ひとつ気乗りせず、テレビのニュースやワイドショーを断続的に見る。
●相撲協会が「調査委員会」を作るという。貴乃花に3票入れた裏切り者探しの委員会かと思ったら、朝青龍の暴行事件の調査らしい。裏切り者探しは一門より先にマスコミがやっとる……と思ったら、安治川親方が「自白」して廃業という。報道の眼があってリンチは免れたのは幸いであった。
●朝やんに対しては引退勧告とか除名とか喧しいが、強いままで消えたのでは伝説的横綱になってしまう。おれは朝やんの無様な負けっぷりを見たいのである。土俵に上げてやれよ。どうせ極道の世界ではないか。……が、朝4時まで飲んでて優勝してしまうのだから、たいしたものよ。他の取的がふがいないのである。
●小沢と検察のデスマッチ、前に「どちらも負けるな」と書いたけど「どちらも負けろ」が本音である。ただ長期戦(起訴/裁判)になったら、裁判の勝ち負けはともかく、小沢は今までため込んだ資産(出所はいうまでもないが)を訴訟費用で失い、検察は税金で戦うわけだから、結果は明かである。検察管にも負ければ法曹上の資格剥奪くらいのハンデをつけないと不公平ではないか……と思ったら「不起訴?」。佐久間は「殺される」のか?
●常磐薬品の社長・大倉尚をストーカー行為で逮捕! 面白いじゃないか。これは詳報待ちだな。
●鳥取の上田美由紀につづいて埼玉の木嶋佳苗も殺人容疑で再逮捕となり、テレビもやっと名前と顔写真を公開したが、週刊誌で写真も名前も容疑も知ってるから、飽き飽き。え、まだやっとるのかという気分になってしまうところが恐ろしい。
 どうでもいいニュースばかりだなあ。
 吉川潮『戦後落語史』(新潮新書)を読む。
 戦後二大事件のひとつ、落語協会の分裂騒動(もうひとつは三島事件ね)について1章、談志の発言が新情報である。
 吉川氏自ら「立川流史観」と書かれているが。本当は談志自身が発言すべきであろう。

2月4日(木) 穴蔵/京都
 定刻4時に目が覚める。
 一夜明けてみれば「安治川親方が辞意撤回」のニュース、「文部科学省からの指摘」もあったというが、気の抜けた話だ。極道の世界とは思えん。立浪一門、世間体を気にしてということか。
 終日穴蔵。
 相変わらず、隣室、トカトントン……工期は先月末までのはずが、廊下から覗いてみると、まだ床に板を敷き、間仕切りのようなものを作っている段階。間取りも変更のようで、まだ当分かかりそうな。
 アタマ働かず。
 午後、阪急で京都へ。
 四条河原町を降りたら朝日新聞の号外が配られている。
 すわ「小沢起訴」かと思ったら、「朝青龍引退」であった。
 案外あっさりと土俵を割ったものだなあ。
 無様な負けっぷりを見せないままの引退……最後までおれの期待に応えてくれない取的だったなあ。
 格闘技に転向しても曙みたいな倒れ方はしそうにないし。
 ま、大晦日を楽しみにするか。
 夕刻の高瀬川沿い。
 
 ボンサラ時代の先輩Tさんと会い、露庵という店に案内してもらう。
 ミシュラン三ツ星の「菊乃井」の兄弟店という。
 豪華会席(香住直送の松葉蟹やフカヒレ鍋など、嫌みになるから写真は掲載せず)で、越の寒梅をチビチビ飲りつつ久闊を叙す。
 Tさんは某社に入社3年目頃から2年間ほどおれを仕込んでくれた先輩。その後、化学会社を興してもう35年になる。
 今も時々会って一献……ここはTさんの奢りである。
 当時の言葉では「脱サラ」して創業、ある程度の規模にして40年近くという成功例は1/10以下、いや1/50くらいではないか。たいていは個人の下請け仕事に終わってるもの。
 「努力2運8」というが「才能5努力2運3」くらいだろう。
 世の中にはいくら努力してもダメという例は確かにあり、実例をあれこれ検討していたら、たちまち3時間。
 22過ぎの帰館となった。

2月5日(金) 穴蔵/鉄人28号
 定刻4時に目が覚める。
 昨夜の美食かつ飽食の影響で、まだ腹は減らず。
 朝食はクロワッサンとティ、リンゴ1/4である。
 終日穴蔵にて仕事……のつもりであったが、本日も午前9時から隣室でトカトントン・ウィーンウィーン・ガガーンが始まった。
 穴蔵においては「待機」も仕事のうちなのだが、これでは無理である。
 留守電のメッセージに急用の場合の連絡先を入れて、避難することにする。
 11時に専属料理人と出かける。
 阪急〜高速神戸〜阪神を乗り継いで神戸の西代へ。
 ここから南下して新長田・若松公園まで歩く。
  *
 今頃だが、鉄人28号に初めて参拝。
 なるほどなかなかの迫力である。
 周辺は広場で、三脚なしだとセルフタイマーは使えない。
 10人ほどの団体に写真撮影を依頼されて撮影、こちらも撮ってもらった。
 ついでに商店街を歩くが、見るべきもの・食べたいものはなし。
 地下鉄で県庁前に行き、神戸でいちばんうまい中華料理店「燕京」へ行く。
 ランチタイムが終わった時間。
 牛肉とトマト炒・羽根つき餃子・焼きそばで軽くビールをいただく。と、14時前になってしまい、客はわしら2名だけ。
 隅の方で、お店の賄い料理で昼食が始まった。帰りにちらっと見たが、一種の中華鍋に揚げ物……うまそうな!
 あれ、食べてみたいと専属料理人。同感である。
 神戸一の中華店の賄いって、誰でも食べてみたいよなあ。
 あ、おれはふだん、専属料理人の賄いを食べさせられているようなものか。
 まかない人生ははかないものである。
 西村珈琲店とイスズベーカリーに寄って(おれは店頭で待機させられて)、阪急三宮へ。
 
 帰路は阪急・梅田行き特急の最後部「鉄席」に座って、流れゆく線路をながめつつ帰る。
 15時過ぎに帰館。
 2時間ほど騒音を我慢しつつ、雑事の処理。
 明日は土曜で、騒音確率は半々である。

2月6日(土) 穴蔵
 昨夜は早寝のつもりが、午前2時頃まで本を読んでしまった。
 (最近読んだ本については明日にでもアップ……のつもり)
 4時間ほど睡眠。
 朝刊を読み、朝食後、少しは仕事と穴蔵にこもったら、土曜というのに、またも隣室のリフォーム工事音。
 本日はまた特別にけたたましい。
 たまりかねて、施工している工務店に電話する。
 「貼り紙では工期1月14日〜1月31日になってますけど、いつまでやりますねん?」
 「すんまへん、2月20日まで延長になりましたんや」
 工期18日間が38日間に延長とは無茶苦茶な。
 おれはクレーマーではないし、工事で音が出るのはしかたないと理解はしているが、こんな極端な工期の詐称はけしからん。こちらにも予定があるのだから。
 ちょっとまとまった穴蔵期間ができたから、懸案の作業をと思っていたのがパーである。
 こんなことなら播州龍野で老母の世話をしている方がましであった。
 「自宅」に避難してDVDで『ワイルドバンチ』を見る。朝から見るものではないな。
 夕刻、自転車で出かける。風が冷たい。
 ちょっと確認したいDVDがあって梅田のTSUTAYAへ行く。なし。天六店に行くが、やはりない。
 天六の阪急共栄ストアが閉店(北側へ移転)しているのに気づく。
 
 阪急天六ビルは建て替えらしく、昨年末で全店舗(天六うどんもりそな銀行も)が立ち退いているのだった。
 懐かしいビルのひとつである。
 1970年に歌やんが独演会をやろうとしたら、この前でガス爆発が起きて中止になった。
 当時はまだ阪急の始発駅のひとつであった。
 ということで、夜はおでんで熱燗。
 そろそろ就眠。
 明日は日曜で(たぶん)工事なし、静かであろう。
 明後日から、騒音を逃れてどこかウロウロするか……これから検討するのである。

2月7日(日) 穴蔵/坂本和美さん葬儀
 穴蔵にて雑事。
 隣室の工事は休みで、都心とは思えぬ静けさである。
 騒がしい隣人が越してこないことを祈るばかりである。
 午後、扇町公園北側にある北天満会館へ。
 坂本和美さん……青空書房・坂本健一さんの奥様の葬儀である。
 
 昨年9月13日に通りかかった時、休業の貼り紙があり、「いとしきものが生命と向いあっています つきあってやりたい……わがままおゆるしを」と表記してあった。
 翌日に事情をうかがってから5ヶ月である(医者は3ヶ月といっていたとか)。
 青空書房に出入りするSFファン、筒井ファンにはおなじみ……いつ行ってもにこやかに迎えてくれる方であった。
 店でなく、おれが自転車でウロウロしている時に、坂本夫人は犬の散歩で、ばったり会って立ち話することもあった。
 死顔を見るのは辛いので、献花は遠慮する。
 隣席のおばちゃんがしゃべっているのを聞くに、安らかな顔だったそうな。

2月8日(月) 穴蔵/ウロウロ/ハチ
 定刻午前4時に目が覚める。
 本日は新聞休刊日。
 午前4時半から断続的にテレビ・ニュースを見る。
 自民党が議員に「twitter講習」という。
 ふーん。ことの善悪についてのコメントは控える。
 ネット住民は、パソコン通信時代のBBS→HP・掲示板→ブログ・SNS(mixi)→twitterへと流れていくのかなあ。
 流れは、簡単に書き込める、反応が早いという方向へ。
 そこに大量の政治家までが流れ込む……。
 有名人・公人がこぞって参加となれば、これは『48億の妄想』に出てくるカメラを通り越して、「野次歓迎の実況中継」まで行くのかなあ。
 おれは2年前にブログを撤退してHPに戻ったのだが……「ほぼ隠遁者」にとっては昔ながらのHP(しかもエディターでタグ手打ちである)が結局いちばん体質にあっているような。
 荷風散人がtwitterやったら「大黒屋なう」ばっかりだろうし。
 そもそもtwitterって、政治家(自民党)が講習受けて参入するものなのか? あ、ことの善悪についてのコメントは控えるけど、政治的な意図が先行してもなあ。
 朝9時から、やっぱり隣のリフォームの工事音がひどい。
 トカトントン音がひどいので、「ビッチェス・ブリュー」を流せば緩和できるのではないかとやってみたが……悲惨。
 騒音を増幅するようなことになった。
 午後は少し暖かくなったので、自転車で書店、CDショップなどウロウロ。
 生産的なことのできない日々である。
 夜、夕食後、久しぶりにハチへ行って某音源の受け渡しなど。
 バーボン2杯。
 21時に帰館して、デフランコを聴く。
 明日も工事音は相変わらずであろう。どこへ避難するか……

2月9日(火) 穴蔵/図書館
 わ、目覚めれば午前6時。昨夜ちと飲み過ぎか。
 朝、穴蔵にて粛々と雑事の処理。
 午前9時、やっぱり隣室で工事音が発生、大がかりな作業は終わっているはずなのに、トカトントンのカナヅチ音に混じって、時々ズーン、ゴーンと重低音が響く。
 ったく、いつまでやりよるのよ。
 こうなると、作業している大工よりも、近日引っ越してくる施工主に対する憎悪が高まってくる。
 むろん、引っ越してきたらひどい目にあわせてやる……なんてことはしないけど。
 一般論だが、どこかに新築して引っ越す場合、近所には憎悪の念が渦巻いていると覚悟して行くべきだ。
 ある惑星に入植した人類は、ある日とつぜん未知の異星人から攻撃を受ける……なんて展開だな。
 昼をはさんで4時間ほどキタ図書館に避難する。
 生産的なことは何もできず。
 書店など回って夕刻に近い時刻に帰館。
 立松和平さんの訃報。
 ジャズ小説というか、「ダンシング古事記」を素材にした『今も時だ』を読んだのが69年だったかな。わっぺいさんはこの時まだ学生だったのだ。
 山下洋輔さんと大阪でのイベントで来られた時にハチで飲んだのが20年ほど前。
 にこやかな優しい印象の方であった。全作品は読んでないけど『遠雷』はやはり傑作である。
 再読したいが、播州龍野の書庫で、手元にはない。
 静かに一杯飲んで早寝するのである。

2月10日(水) 穴蔵
 昨夜、早寝のつもりが、なぜか山田風太郎を読みたくなり、『忍法忠臣蔵』『くノ一忍法帖』を読んでいたら午前2時を過ぎてしまった。
 午前6時に起床。
 曇天、小雨断続的にして暖。穴蔵の室温19℃なり。
 うへ、朝9時からまたも隣室の工事音。
 本日また特にひどい。ゴンゴン音が断続的に響く。
 雨天だから、避難してどこかへ出かける気分にもならず。
 確定申告を3時間ほどかけてやる。
 今年も還付金でなんとか9月に可児市の「ala」へ森山威男を聴きに行けそうな。

2月11日(木) 穴蔵
 早寝したら午前3時前に目が覚めてしまった。
 熟睡したからでなく、昨日、終日ゴンゴーンと工事音を聞かされていたものだから、就眠中も連続していたような気分である。
 そう寒くもないので、久しぶり早朝グルメを試みる。
 午前3時から自転車で中崎町〜天五〜扇町公園〜梅田と走るが、想定していた2店はもう終わっていて、休日前(もう休日入りしているか)だから、アホな酔っぱらい青少年がウロウロしているばかり。
 一回りしただけで帰館。
 午前4時過ぎに「自宅」に戻り、朝刊を読み、トーストを焼き、チーズ、サラダ、ティの朝食。
 あとは穴蔵にて少しは仕事もするのであった。
 本日は祭日にて隣室のリフォーム工事もなし。ほっ。
 久しぶりに静かな1日であった。
 夜は「自宅」にて晩酌。
 
 雨に煙る梅田を眺めつつ、ビクターのEX-AK1・ウッドコーンから流れるトミフラ師匠、デフランコ師匠、沖至師匠(シンフォニーをバックにスタンダード)などを聴きながらバーボンの水割り。
 アーバンライフであるなあ。

2月12日(金) 京都ウロウロ
 定刻4時に起床、粛々と雑事を片づける。
 午前9時前から、隣室で工事が始まった。
 本日は京都へ避難することにする。
 午前10時に専属料理人と出かけたところ、ちょうど入れ違いに、隣室にシステムキッチンのユニットが搬入され始めた。
 大工事である。本日の避難は正解であった。
 阪急・四条烏丸へ。
 北へ歩いて、京都文化博物館へ。
 
 「古代カルタゴとローマ展」を見る。
 古代カルタゴに特別の興味はないが、チケットを貰ったからである。
 まあまあ面白い。
 引き続き、地下鉄で今出川へ移動する。
 同志社大学の図書館へ。本日の主目的はこちらである。
 
 「永井荷風と藤蔭静枝の世界」展を見る。
 藤蔭静枝は荷風が唯一「自分の意志」で結婚した女性(当時は芸者・八重次)である。
 最初の結婚は親父の顔を立てたようなもの。それも結婚して3ヶ月で親父が死んだら、たちまち離婚した。
 しかも親父が倒れた時、新婚3ヶ月というのに愛人・八重次と箱根にしけ込んでいたのだから愉快な男である。
 その後、八重次を入籍するが、色々修羅場があって離婚。
 八重次はその後、日本舞踊の家元・藤蔭静枝となり、文化功労者となる。
 荷風ちゃんは生涯独身を謳歌。文化勲章。
 展示は、藤蔭静枝が「甥」の内田芳夫氏夫妻に宛てた手紙がメインである。
 その内田氏が荷風と静枝の「実子」ではないかという説……これは知らなかった。
 同志社大真銅正弘教授の論文「荷風伝の空白 −初代藤蔭静枝の書簡をめぐって−」で初めて知った。
 DNA鑑定は無理としても、写真での確認は……やはり一般人となると難しいのだろうな。
 真銅先生には荷風関係の諸作が5冊ある。近いうちまとめて読むことにする。
 それにしても荷風ちゃんの女性遍歴数知れず……いや、女性関係はよく研究されていて、「数」はほぼ特定されているが、こんなに女性関係が研究対象になる作家は希有だな。ジャズのチャーリー・パーカーと並ぶのではないか。

 おれも生きたや荷風のように
 色と慾とのこの世界

 バスで北野八幡宮へ移動する。
 専属料理人は「とようけ茶屋」へ行きたいという。
 おれも米朝師匠・米二師匠と並ぶ豆腐好きだから異論なし。
 が、行ってみたら長い行列……たぶん1時間待ち。これが常態らしい。
 豆腐は断念。北野八幡宮にちょっと挨拶に寄る。
 
 梅はこれからである。早咲きが何本かあった。
 千本今出川まで歩いて戻る。
 京都のジャズ友から聞いていた「キッチンパパ」へ。
 「洋食とJAZZ」の店で、100年以上続く米穀店「おおまい」でもある。
 
 店先は米穀店、奥がレストランで、入口は狭いが奥行きは広い。
 ミニステーキ、フライ、サラダどっさりの「Cランチ」で軽くビール。
 米屋直営だけに、ごはんは抜群にうまく、音響はなんと「管球派」でスピーカーは自作、柔らかいトーンでウエスト・コースト風のアルトが流れていた。
 近所なら毎日でも通いたい店である。
 千本通に出たらちょうど河原町経由のバスが来たので、四条河原町へ。
 阪急特急で16時過ぎに帰館。
 うへ、隣室はキッチンの工事続行中で、2時間ほど騒音地獄が待ち受けていた。嗚呼。

2月13日(土) 穴蔵/創サポ講義
 朝からまたも隣室の工事音。
 がまんしながら雑事を片づけていたら、10時頃、ズシーンという衝撃音に飛び上がる。
 いや、実際、机が上下動してモニターが揺れるほど。
 ベランダから偵察すると、窓枠かなにかの嵌合? ベランダで大きなフレームをドーンと落としているのだった。
 あとで聞くと、3階上5室隔たった部屋でまで響いたらしい。
 こりゃ作業手順に問題があるのではないか。外部で組んでから持ち込むべきであろう。この集合住宅建築以来の衝撃音であるようだ。
 たまらずキタ図書館へ避難。
 午後、いったん帰館。
 壁やベランダにひび割れなどの被害がないことを確認してから、夕刻、天満のエルおおさかへ。
 創作サポートセンターの講義。
 短い文章の課題を出していたら18篇が提出されて、それぞれのコメントは平均7分……のつもりが、ユニークなのが多くて30分超過してしまった。
 21時半から晩酌。
 深夜の就眠となった。

2月14日(日) 穴蔵/Sunday at Jazz Club
 わ、目覚めれば9時過ぎである。
 8時間以上の熟睡で、珍しいことである。
 騒音のないことはありがたく、そのまま1時間ほど本を読む。
 優雅な休日である。
 午後、自転車で黒崎町のバンブークラブへ。
 Sunday at Jazz Clubの例会である。
 
 ↑この写真はCX-2のDL機能で、天井構造をノーフラッシュで明かにしたもの。
 バンブークラブは天井が竹のシートで、スピーカーは天井近くにあり、音が天から降ってくる雰囲気なのである。
 本日は、前半は「今年注目のジャズミュージシャン」色々なメンバーの推薦持ち寄り。
 後半は珍しい映像鑑賞。
 前半は新進気鋭、後半はMGM『ワーズ・アンド・ミュージック』からとか、65年ベルリンでのピアノワークショップでの、アール・ハインズ、テディ・ウィルソン、ビル・エヴァンスの連続登場(ちなみに、ハインズとエヴァンスはベース・ヘデルセン、ドラムドウソンと同じ/これが違和感なし)、さらにはファッツ・ウォーラーなど、ずいぶん広範囲である。
 おれの今年の注目株は鈴木孝紀で、ともかくこのところ急成長、そろそろリーダーアルバムを期待したいところだ。
 17時まで。
 帰館。夜は家呑み。
 明日からは播州龍野行きである。

2月15日(月) 大阪→播州龍野
 定刻午前4時に目が覚めた。
 5時半に穴蔵を出て、小雨の中を梅田へ歩く。
 6時始発の阪神〜山電の姫路行き特急に乗る。
 姫路で姫新線に乗り換えて、8時52分に本竜野に着く。
 いつもの移動パターンである。
 身内と交替して、久しぶりに「下男モード」入りである。
 大阪の穴蔵で隣室のリフォーム工事音に悩まされつづけたものだから、田舎の静けさにほっとするなあ。
 昼食後、2時間ほど昼寝。
 夕食は、専属料理人が作った煮物などを持ってきたから、手間はかからず。
 おれは、さらに湯豆腐で一杯。
 19時過ぎに老母が入浴して寝たから、午後8時から3時間ほど、わが自由時間となる。
 おれはむろん入浴なんてしない。本日は面倒だからシャワーもなし。寒いし、時間の無駄だもの。
 静かに本を読むのである。

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