『マッドサイエンティストの手帳』386
●マッドサイエンティスト日記(2006年11月前半)
主な事件
・播州龍野の日常(〜2日)
・穴蔵の日々(3日〜)
11月1日(水) 播州龍野の日常
セプテンバー・ソングが過ぎ、「たそがれの国」月が終わって、いよいよ今年も終盤近くになってきた。
朝から回覧が回ってくる。
昨日、小学校のフェンスに「猥褻画」が貼りつけられいてたという。
妙な事件が起きるかもしれないから、子供たちに注意してほしていとうお触れである。
新宮町の「通り魔」は未解決、関係あるかも……というニュアンス。
どんな「猥褻画」か気になるところだが、子供を刺すのと猥褻画を貼るのは同一犯とは思えないなあ。
5日間で6件の泥棒も捕まってないようだし。
物騒なことである。
11月2日(木) 播州龍野→大阪
秋晴れであった。
昼前に見張り番交替儀式を行う。
昼の電車で大阪の穴蔵に戻る。
これから1週間、穴蔵にこもって集中的作業を行う予定。
それに備えて早寝するのである。
……にしても、妙なトラックバックが多いなあ。
本日の昼過ぎ、海外から集中的に270なんぼ。
削除に一苦労である。
11月3日(金) 穴蔵
朝刊にカメラマン・牧田清氏の訃報。
牧田氏といえば、5年前の関テレ番組『闇市跡からの証言』が記憶に残っている。というか、写真は大阪のタウン誌などで見ることがあったが、実像を見たのはこの番組が初めてだった。
底辺……というとまずいかな、阪神大震災の被災地や下町の商店街なども含まれているから……で生きる人たちの表情を捉えた作品が多かった。
追悼の写真展があるなら行ってみたい。
終日穴蔵。
机に向かって過ごすが、SF関係にあらず、集合住宅関係の資料作り。
10年ちょっと前の「大規模修繕」の経過を調べる。
誰もが記憶曖昧で、議事録の大部分を作ったおれに作業がまわってくるのである。
よくこんな面倒なことをやってきたものよ。
もう同様の「会議」を繰り返す体力も気力もない……。
11月4日(土) 穴蔵
終日穴蔵。
ずっと机(パソコン)に向かう。
SF関係でないのが情けない。
S社のKさん、明日から5日間、集中してやります。
昨日に引き続き「大規模修繕工事」の経過をまとめる。
おれがマメに日記に記録しているのと、議事録その他広報文書関係を担当していたから可能なのだが。
結果を見るに……
修繕委員会スタートから解散慰労会までの21ヶ月間に、理事会・修繕委員会が39回、総会2回、臨時総会2回、説明会2回、見学会、ヒアリング、安全祈願式なんてのも含めると計49回の会合。会議は2〜3時間だが、議事録の大部分はおれが作ったし、広報資料の作成や、トラブルで呼び出されることも多かった。
そして、なんと「最初から最後まで」関わったのは、今やこの集合住宅におれひとりであることが判明。
しかし、同じことを繰り返す体力も気力ももうない。
当時の日記をチェックしていくと、会社でも原稿関係でも今より遙かに多忙で、しかも落語会や飲み会にもよく出かけていることがわかる。
人間否応なく歳をとっていくものである。
ぐったりしてしまった。
2日外出してないので、夕刻近く散歩に出る。
久しぶりに淀川堤を十三大橋近くまで歩く。
同じ修繕問題をかかえてそうな、もっと大きい集合住宅あり。
対岸は、四半世紀前まで住んでいた西中島……遙か遠くに感じられるなあ。
日没17時……わが日没も近いか。
11月5日(日) 穴蔵
晴れて風なし。早朝深夜ともに火鉢の用なし。昨今の暖気は天もまた窮民を哀れむがためならむや……と、これは66年前の同時期の断腸亭から引用。
終日穴蔵。
あまり生産的なことはしないのであった。
11月6日(月) 穴蔵/トミフラ/中崎町
ほとんど終日穴蔵。
昼、2時間ほど外出。
銀行関係などあり、その後、ハチでランチ。
昼過ぎで一段落の時間なので「トミフラ師匠」((C)ランプ氏)を頼んだら『SEA CHANGES』をかけてくれた。……寺井さんの講義はまだここまで進んでないのよね。トロンボーン関係は店には置いてないらしい。
トミフラ師匠はどれくらいあるのか訊くと、リーダーアルバムが50枚くらい、参加アルバムが200枚くらいだろうという。またしばらく通うか。
扇町公園を抜けて、青空書房に寄る。
坂本さんとしばし雑談。
山本一力さんの朝日新聞(10/31東京版の夕刊)のエッセイ『陽を浴びた朝つゆ』を読ませてもらう。(格安資料を即座に発見してくれたので、クルマで大阪まで飛ばしてきた顛末) 一力さんは資料関係ですごい坂本さん贔屓だ。ただ、坂本さんはハードSF資料にはうといからなあ。わしゃ荷風や谷崎の話をすることが多い。
と……店の前に自転車で現れたおっさん、ドサッと雑誌を括った束を置いていく。
坂本さん「あっ、ちょっとちょっと!」
おっさん「ええから、ええから」と笑いながら去る。
どういうことかというと、おっさんは、紙くずにしかならないマンガ雑誌などを店の前に置いていく。
坂本さんは「困りまっせ」と抗議しかける。
が、おっさんは「金はいらんから」という表情で笑いながら去っていくのである。ありがた迷惑……でもないか。単なる迷惑。
坂本さん「かなんまへんのや……」
困ったものである。店内の本を見れば置いていく(寄付していくつもりの)雑誌とはカテゴリーが違うことがわかるはずだが。
ということで、中崎町特集の「大阪人」12月号をゲットして帰館。
「大阪人」の田中啓文さんの連載「なんやコレ?大阪」、中崎町をウロウロするうちに、ダジャレの連続が「偽史」にまで止揚される……このままいけば、とんでもないところまで進化しそうな予感。冗談(てんご)は天五に通じるのである。
11月7日(火) 穴蔵
終日穴蔵。
あまり仕事は進まないのであった。
曇天。終日パジャマのまま過ごすつもりであったが、やはり足腰が弱ってはいかん。
午後晴れたので、散歩に出る。
『大阪人』12月号の「中崎町」特集……ようするに「長屋」が多く残っている一帯、新御堂筋東側(中崎)から天神橋筋西側(浮田、浪花町)まで、広く取り上げてある。
写真が面白く、撮影者が表記されてないのが惜しい。牧田清さんなど、こういう写真はうまかったのだが。
梅田から消えた店が中崎(「大甚」近く)に移っているのを知ったり、よく自転車で通る一帯だが、歩いてみるものだ。
『大阪人』には古い長屋と高層ビルを対比した写真が数点。
高層ビルの象徴は「梅田タワー」だが、これは新御堂筋側から見る方が面白いぞ。
宇崎龍童と阿木耀子がイメージキャラクターをつとめた「都市型高層マンション」だが、完成とほぼ同時に、すぐ横に「ほっかほっか亭」の巨大な電飾も完成した。
これが夜になるとギンギラギンに輝く。
下に売場もあるけど、24時間ホカ弁が買えるわけでもなし。
利便性はなく看板のみ目立つのである。
アーバンライフをイメージして入居した連中、とくに10階以下の西側、アタマにきていることであろう。
「どこに住んでるねん」
「ほか弁の看板の裏側やねん」……とはいいにくいだろうからなあ。
11月8日(水) 穴蔵
終日穴蔵。
仕事はさほど進捗せず。
アメリカの中間選挙、民主〜共和のバランスがバージニアの再集計で確定しないまま?
2000年のフロリダの再現となるのかしらん。
おれは「フロリダの一票」が911を呼びイラクの混迷に拡大したと想像しているのだが立証のしようなし。
まして北海道の竜巻が異国の蝶の羽ばたきに起因するとは思えず。
2000年のフロリダ開票の時も「カオスの縁」を想像したけど、サンタフェの話題は今回もまったく出てこないなあ。「複雑系」ブームは先世紀末で終わっているのかしらん?
11月9日(木) 穴蔵
終日穴蔵。
正確には食事のために穴蔵〜自宅間を2往復しているが、夜までパジャマのまま。スエットと区別のつかないパジャマは便利である。
群馬で巡査長が郵便局強盗のニュース。警官の不祥事には驚かないが、強盗は久しぶりではないか。
大阪では1984年に池田市で警官が銀行強盗をやった。当時、この銀行の前を毎日通勤していたからよく覚えている。犯行後、本人が「検問」をやってたのだから迷惑な話だ。伊丹から通勤していた同僚が川西で検問にひっかかったというが、これが犯人だったかどうかは確認できないままである。
夜はこの季節に時々やる「枯葉大会」。
専属料理人に色々並べてもらってビールを飲みながら、本日はピアノ・トリオを。
ウイントン・ケリー、ハンク・ジョーンズ、トミフラ師匠、ビル・エヴァンス、エロール・ガーナー……あたりで酩酊してきた。
11月10日(金) 穴蔵/中村伸一を忘れるな
半日穴蔵。
雑排水管の洗浄工事があるので待機せねばならぬ。
昼前にやっと終わる。作業時間は10分ほど。
昼のニュース。
強盗警官につづいて、本日は老婆殺害に関連してヘルパーの村山美智子(61)を「窃盗未遂容疑」で逮捕という。ま、殺人犯なのだろうな。
殺人ケアマネジャー中村伸一を思い出すぜ。
一罰百戒でなぜ極刑にしなかったのだと今でも思うものなあ。
福岡には(あくまでも噂ですが)殺人教師の*村伸一というのがいるそうだが。
ということで、鬱陶しい気分のまま、部品関係のことあって久しぶりに日本橋へ。
ついでにオーディオ関係を色々見て歩く。2時間ほどうろうろしてしまった。
見るだけ。なんとなく機種は決まってくるが、予算がなあ……。
ということで、夜は専属料理人に色々(小芋の団子? 蒸鶏のサラダ 鰆に明太子をなんとかしたグリル? その他小鉢、説明しにくいのが多い)並べてもらってビール。
チーズと濃いめの水割りを持って穴蔵に戻る。
これからDENON〜DIATONEで昨夜の「枯葉大会」のつづきである。
11月11日(土) 穴蔵/ファイブ/伝説の福家菊雄さん
穴蔵。
あまり仕事はしないのであった。
夕刻這い出て、梅田へ。
ボンクラ・サラリーマン時代の先輩Iさんと会う。10年以上会ってなかったのが、先月の神戸ジャズストリートで偶然再会、久しぶりに一献という次第。
おなじみの居酒屋『大甚』……ありふれたメニューだが丁寧に作ってある。
ボンサラ時代の話……えっ、あの時の「真相」はそうだったのか! という話色々。
つづいてニューサントリー5へ移動。
ニューオリンズ・ラスカルズの出演日、2ステージ目から聴く。
ペットのトラはピンカラさんである。
と、ゲストでクラリネットの福家菊雄さんが登場、河合さんとの2クラ・セッションで「アヴァロン」など3曲。
ラッキーな日である。
あ、そうか。明日、西宮で「KG懐かしのジャズコンサート」があるから前入りなんだな。
おれが初めて「生のジャズクラリネット」を聴いたのが高校時代。たぶん1961年だから45年前である。姫路公会堂での関学・軽音楽部のコンサート。チケットは50円だったかな。
この時にデキシー・バンドのクレセント・フェローズのクラリネットとして登場したのが福家菊雄さんであった。
「ハイソサエティ」のソロを軽々と吹く。しかも、その後のフルバンドにも出てきて「シング・シング・シンク」。
ともかく超絶的テクニックで、17歳のおれはただ圧倒され感動した。
おれのジャズクラ好きはこの時からである。
福家さんはプロの道には進まれなかったが、その技量は伝説的である。
2、3年に一度くらいファイブで演奏されることがあり、おれはここで2度聴いている。
隣のテーブルだったので福家さんにご挨拶もできた。感激の一夜である。
11月12日(日) 穴蔵
わ、珍しくも朝7時まで寝てしまった。
夜更かしはするものである。
終日穴蔵……のつもりであったが、少しは体を動かさねば。
午後1時間ほど散歩。
急に寒くなってきた。
近くの公園の隅、野良親子も日だまりにいるのであった。
くどいようだけど、これは林譲治さんのホームページではありません。
帰館。室温は22℃だが、少し脚が冷える感じなので、穴蔵の大掃除。掃除機かけ、コタツ布団を出して冬モードに模様替えである。
これから5ヶ月、出歩かず、暖かい部屋にこもって、少しは生産的な活動をしようと決意だけはするのであった。
11月13日(月)穴蔵/散歩
終日穴蔵。
なぜか気分的に文章(散文のみならず、レポート、議事録の類も)を書く気分になれず、表計算ソフトでタイムマシン関係のデータ整理を行う。
夕刻、1時間半ほど散歩。本日も自転車は使用せず。
ヨドバシ(パソコン)〜紀伊国屋書店(本)〜梅田ロフト(CD)のコースで、これは昨日と同じ。
と、昨夕、飛浩隆さんが紀伊国屋にいてはったことが判明。新阪急泊だったのかな。午後4時頃ならいたのだが、すれ違いか。まさか飛さんがいるとは想像もできず。ましてバッタリ会って、新梅田食道街で一杯やりましょうなんて誘ったら、おそらく迷惑なことであったろう。
まあ、紀伊国屋梅田店は誰がいても不思議ではないけど。
夕刻、「子殺し」「いじめ自殺」「校長自殺」「強盗警官逮捕」その他、殺伐たるニュースのオンパレードで、コメントする気にもなれないが、畠山博逮捕と聞くとびっくりする。『いつか汽笛を鳴らして』の畑山博氏を思い出すが、こちらは「はたやま・ひろし」である。
11月14日(火) 穴蔵/新世界/日本橋/太平シロー?
またもタイムマシンの部品関係あって日本橋へ。
動物園前からジャンジャン横丁を抜け、通天閣の下を通って恵比寿町まで歩く。
平日で午前11時半だが、八重勝はじめ串カツ屋数店には列ができている。たいしたものだ。
部品屋の他、喜多商店、共電社、シマ無線など音響関係も覗くが、あまりにも人が入ってないので入店しづらい。串カツ転業が増えるのであろうか。
こけしでカツ丼。
Musicraftに寄ってコーヒー。
DENONのDD型LPプレイヤーやDATがジャンク価格で置いてあって、ちょっと迷う。
これだと、シェルとカートリッジだけ買えば初期の目的は果たせることになるのだが……。
ま、急ぐことでもないか。
夜、22時30分〜HHKの「飛び出せ!定年」に上山高史さんご夫妻が登場。『Only Look At You』に収められた「星のささやき」の誕生エピソードなど感動的である。上山さんのライブがほとんど東京〜鎌倉でしかなく、なかなか上京のタイミングと合わないのが残念なところだ。
ということで、おれとしてはかなりの夜更かし。
23時にテレビニュースを見て「ぎょ」。
進藤美香容疑者の顔を見て太平シローと間違ったのはおれだけであろうか?
11月15日(水) 穴蔵
終日穴蔵。
資料の読み込み……といっても集合住宅関係。
大規模修繕工事のメインは外壁塗装だが、それに加えて何をやるか……「安全性」「居住性」「快適性」で意見が分かれそうな気配。特にややこしいのが「耐震」で、結論ははっきりしているのだが、納得しない人もいそうである。おれはもうどうでもいい立場だが。
ただ、給排水設備については改造派。雑多な動物の死骸といっしょに貯め込んだ水槽からの水を濾過して飲むよりも「高度浄水処理水」を各戸に直接給水してくれる方がいい。
水道水とは直接関係ないけど、「水からの伝言」を信じないでください。
ということで、午後、借り出していた資料を返却に行く。
明日からは宇宙関係に戻るつもり。
自転車で、キタ図書館、天六の「住まい情報センター」経由、ハチに寄ってコーヒー。
先日来、オーディオ関係、特にLPプレイヤーについて迷っていたが、明利マスターの意見で半年待つことにする。
高級機と安物に二極化しているが、来春あたりに「中間派」が出るらしく、それを待つのが賢明らしい。これも2007年問題に連動していて、団塊の世代が退職したら、昔買ったLPを聴き直そうとプレイヤーの買い替えが増える、その層を対象にした「おとなのプレイヤー」が出る……らしいのである。
50年代のフラナガンをLPでたどるのは少し延期である。
SF HomePage