『マッドサイエンティストの手帳』324
●マッドサイエンティスト日記(2005年2月後半)
主な事件
・播州龍野の日常(〜18日)
・穴蔵の日々(19日〜)
・岡本喜八監督の訃報(19日)
・播州龍野の日常(22日〜)
・大井貴司(vib)+滝川雅弘カルテットat宝國寺(27日)
2月16日(火)
播州龍野の日常。
雨である。
午後、雨があがるのを待って、龍野税務署へ。
老母の確定申告の提出。
ついでに図書館に寄って、夕方まで雑読。
新刊案内に「量子コンピュータ」関係があるが、早くも貸し出されている。
龍野にこんなのを読む人がいるのか? などといってはいかんなあ。
2月17日(木)
播州龍野の日常。
2月18日(金)
播州龍野の日常。
午後のジーゼル車・電車で本竜野から大阪へ移動。
夕刻、帰宅したら、専属料理人、さっき龍野税務署から電話があったという。
確定申告について、帳票が添付されていない分があるということらしい。
ややこしいことであるなあ。
控えを出して国税庁のソフトで検算してみる。このソフトは初めて使うが、まあ便利には出来ている。
おれは10年前からExcelで組んでいるから必要ないのだが、税制が変わると移行せざるをえないかなあ。
こちらの計算ミスではないようである。
2月19日(土)
終日穴蔵。
夕刻、かんべむさし氏、来穴蔵。
ふだんは軽くビールなのだが、かんべさん、なぜか元気で、珍しくもワインを下げてきた。
専属料理人にオードブル類を作ってもらって、久しぶりにミニ宴会(というほどでもないか)。
岡本喜八監督の訃報。
おれは、好きな映画監督のトップに岡本喜八監督をあげる。中学時代……『独立愚連隊』を見て以来、熱狂的ファンでありつづけている。
そして『独立愚連隊』とSFマガジン創刊もほぼ同じ時期である。
おれの喜八ファン歴と活字SF歴はほとんど重なる。
SFファンで喜八ファンは多いが、おれに迫るとすればかろうじてカジシンだろうな。カジシンは「俺の方が上」と思っとるだろうけど。
Qコン2で岡本喜八さんに会えたのは幸せであった。
『幻燈辻馬車』が幻の作品になったというが、おれはやっぱり「愚連隊」感覚の『日本アパッチ族』を見たかったなあ。
夜、『独立愚連隊』『独立愚連隊西へ』をビデオで観る。
もう一度どうしても観たい作品は『地獄の饗宴』だ。
このアクション場面にユーモア感覚はないが、がらんとした駐車場での乱闘には戦慄を覚えたものである。
喜八映画について書き出したらきりがない。
たぶん……大阪ではシネ・ヌーヴォあたりで岡本喜八全作品の上映をやってくれる可能性はあるな。深作欣二の時も、第二東映作品まで上映したのだから。期待していることにしよう。
2月20日(日)
終日穴蔵。
本日は自分の確定申告。
たいして時間はかからない。
喜八映画のサウンドトラック版『Four Beats Artisan』を流しながらの作業。これはちょうど2年前に入手したものだ。
午後はビデオで『暗黒街の対決』『暗黒街の弾痕』を観る。
2月21日(月)
うへ、久しぶりに寒波である。
午前中は穴蔵にこもる。
少しは仕事もするのであった。
午後、大淀税務署に確定申告書の提出。
ついでに、歩いて梅田へ。本屋と銀行関係。
喜八映画のDVDをチェックしてみようと、ツタヤに向かう。
と、泉の広場を上がった北側の路地に時ならぬ人だかり。
ここは……「餃子らーめん専門店」北側の路地で、大きなゴミ箱が置いてあり、ルン吉くんの定期巡回コース拠点のひとつなのである。この場所に佇んでいることが多かった。
たとえばこの日みたいに。
ルン吉くんになにかあったのか?!
覗いてみると、まさにそのゴミ箱の前でヤクザの喧嘩?
どうやらVシネマのロケらしい。
殴りあいやったりバケツがひっくりかえったり、派手であるなあ。
岡本喜八の活劇に迫れるか。しらない役者だし、映画の題名も、怖い雰囲気なので訊けなかった。
しかしまあ、「ロケ地」選定の感覚、なかなかではないか。
わかれば観ることにするよ。
……それにしても、ルン吉くん、どうしているのだろう。
年末の寒波到来の時に姿を消して、もう2ヶ月になる。
2月22日(火)
早朝の電車で播州龍野へ移動。
老母の確定申告の再計算などし、領収証類を揃えて、龍野税務署へ「出頭」。
若い税務官の○○くん、かなり厳しい詮議を行う。
要するに医療費のうち、入院に伴って発生した諸々の費用は、医師の証明がない限り医療費とは認められないということである。
まあ、いたしかたあるまい。
20万以上削られても、税額の増加はたいしたことない。
ついでに年金の処理について確認を求めたところ、こちらは払い過ぎであったことが判明。
過去の控えのフォーム(これは某親戚が指導してくれていた)自体が間違っていて、それを踏襲したためのミスであった。
「犯罪者扱い」が一転して「被害者扱い」に変わる。
昨年の分までしか修正できませんが……と、色々書類を作ってくれて、○万円くらいが戻ってくることになった。
どうも過去の払い過ぎの累計はヨーロッパにぶらっと行ってこられる程度の金額になるらしい。追徴ならもっと長期ではなかったっけ。ま、こちらのミスだからしかたないものの、官僚の遊興費になってしまったかと思うとなあ……。
ということで、予想外に時間がかかってしまった。
終わったら昼を少し過ぎている。
近くの讃岐うどん店「一心」で日替わり定食を食べていたら、さっきの税務官○○くんが入ってきて、斜め前のテーブルで食べ始めた。
ちらっと目が合う。
お互い、なんとなくバツが悪いね。
2月23日(水)
播州龍野の日常。
龍野図書館で『銀齢の果て』第3回を読む。
この作品の舞台は都会の住宅街だが、わが実家周辺を舞台にしたら、全員が「該当者」になってしまいそうな気がする。
夜は戸締まりを厳重にして、施錠の確認を念入りに行う。
ご近所の某さんが草刈り鎌を持って侵入してきそうな気がして……。
2月24日(木)
播州龍野の日常。
ライブドアvsフジテレビというか、堀江と日枝のバトルを断続的に見る。
夜のニュースでライブドアの仮処分申請までを見る。
この時点での予想は、
・ライブドアのフジ支配とか提携は到底無理。
・だが、堀江も大損はせずにニッポン放送株を手放す。
ってところではないか。
半年ほど先だろうけど。
主張自体は堀江が正しい。というよりも、減点法で、日枝に共感できるところが皆無で、どうしても日枝が悪党面に見えてしまう。
おれは「悪代官」顔は生理的に嫌いである。某社の加藤くんとかね。
日枝くん、白痴番組垂れ流しのフジテレビが「電波の公共性」とはよくいうぜ。ちゃんちゃらおかしい。
堀江にはトリックスター的に大暴れしてほしいところ。しかし、残念ながら、政官の反発もあって、形の上では堀江敗退であろう。
ちょっと残念ではあるが。日枝の辞任くらいのオマケがあってもいいとは思うがね、脇の甘さがあったわけだし。
ま、堀江もここまで名前を売ったのだから、もって瞑すべし。
2月25日(金)
播州龍野の日常。
つい先日『銀齢の果て』を読んで、ご近所でバッタバッタと老人が死んでいくのを想像していたら、同じ「隣保」の某さんが亡くなったという連絡が来た。
弱ったね、どうも。
こういう場合は、各戸からそれぞれ「お手伝い」に出なければならない。
厳密には、「隣保」で葬儀を執り行うというのが昔からのしきたりなので、「主催者」なのである。会場の設定から食事の世話まで、全部ご近所の連中が乗り込んで執り行う。やたら張り切るお年寄り連中が多かったものである。
貧しい時代の習慣で、葬式もお祭り、みんなで押しかけて「ご馳走」を食べるのであった。わしゃ行ったことないけどね。
この10年、セレモニーホールや会館で行うスタイルが浸透してきたが、ともかく「自宅での葬儀」はたいへんなのである。
今回は「公民館」でというから、まあ普通のセレモニーか。
龍野には背広も白いシャツも置いてない。
慌てて、近くで仕事をしている某くんにスーツを借りに行く。
紺のスーツが1着あり、「痩せていた時に作った」ものとか、これが上下とも、わが体型にぴたりであった。
タンスの奥に親父の黒いネクタイが保管してあった。
なんとかそれらしき格好になる。
↑老母がシャッターを押してくれた晴れ姿。
ま、通夜が明日、告別式は明後日だが。
田舎の生活は、こういうつき合いが負担になるなあ……。
2月26日(土)
播州龍野の日常。
ご近所の葬儀。
老母は高齢であり、諸々の義務(ゴミ出しの見張りとか)は免除されている。
わしゃ、住民票はこちらになく、世話しに帰省している身分。
そういうことなので、葬祭の手伝いはよろしいでしょうという連絡が来た。ほっ。
ただ、人手が必要となった場合はお声掛かりあるやもしれず、終日待機。
H2Aの7号機打ち上げ、17時9分の予定であるが、NHK、つまらん愛知万博のPR番組を延々とやっていて中継なし。けしからんな。
受信料、払っとるのだぞ。
朝のニュース、トップで報道しておきながら中継しないとは、どういうことだ。
しかたなく、ダイアルアップでネット情報。やっぱり宇宙作家クラブのニュース掲示板がいちばん早い。
通信トラブルで延びて、18時25分に発射。
結局、民放も含めて、テレビでの実況中継はなかった。
堀江に期待したくなるなあ。
19時のニュースで打ち上げ成功を確認。
老母の就眠を確認後、ワインを飲みながら、書庫から出してきた1000ページの大著、谷岡ヤスジの『ギャグトピア』を久しぶり(10年ぶりか)に再読。
やっぱり凄いね。
特に「アギャキャーマン」の凄まじさには感嘆する。
就眠前、ネット接続、かんべページの「フリー・メモ」に226事件のことが書いてあるのを見て、本日の日付を思い出す。
山下洋輔さんの誕生日であり、ウチの結婚記念日でもあったのだ。何回目かは失念、もうどうでもいいのである。
2月27日(日)
播州龍野。
朝9時半から公民館でご近所の告別式である。
借り物ののスーツで老母の「代参の男」となる。
天気晴朗なれど、寒い。
こんな時こそ、「エベレストを制した」防寒下着の出番である。
タシケントに行った時にはほとんど出番がなかったが、今回はありがたい。
1時間近く公民館の前庭にいたが、さほど寒さは感じなかった。
葬儀終了。
ドタバタと買い物を済ませ、老母の一夜の食材を整えたあと、昼過ぎのジーゼル車・電車で和泉府中に向かう。
姫新線・山陽線新快速・紀州時快速を乗り継ぐと、2時間15分である。
たいしたものだ。
駅から徒歩10分の宝國寺へ。
大井貴司さん(vib)のライブである。
なんと超満員! いつもだと多くて20人程度が、なんと50人近く入ったのではないか?
空前の盛況である。
本日の出演は、大井貴司+滝川雅弘カルテットと考えていいのかな。
大井貴司(vib)、滝川雅弘(cl)、木畑晴哉(p)、中村尚美(b)、佐藤義宜(ds)。
クラとヴァイブの組み合わせから代表的なスイング編成と想像していたら、これ、大間違い。(谷口英治フィーチャーCDが出ていて、スタンダードが多いものだから、これを聴く前にグッドマン・スタイルと思いこんでいたのだ)
これに見事に、予想外の方向に裏切られた。
モダンもモダン、大井さんのヴァイブもモダンの本流。1曲目こそ「ジョージア・キャンプ・ミーティング」だったが、きわめてリズム感の強いバップスタイル。あとはオリジナル・バラードや、敬愛するジョン・ルイスの曲など。「スイングしなけりゃ……」もたいへんユニークな編曲だ。
モダンな感覚と叙情性、力強さと繊細さ、ときおりユーモア感覚も飛び出す。
滝川さんのクラも本領はデフランコ・スタイルだから、これはもう、相性が素晴らしい。
いや、木畑さんのピアノ、尚美さんのベース(早弾きアルコが絶品)、佐藤さんのドラムもすごく乗っていた。
「クライ・ミー・ア・リバー」なんて……これはもう名演としかいえない。
1947年生まれ、国立音大という経歴から考えるに、中村誠一さんと同期になるのかな?
もう大ベテランといっていい経歴、この年まで聴く機会がなかったのが不思議だ。
これから熱心なファンになりまっせ。
宝國寺スタイルで飲食物持ち込み自由、わしゃあわてて何も用意する時間がなかったのだが、「ご近所」から焼酎やご馳走を色々と分けて貰って、そこにリズム感あふれるヴァイブの音色だから、すっかりいい気分になってしまった。
アンコール2曲、20時前まで。
CD『Play's Swing』(谷口英治フィーチャリング)、『ジョン・ルイスに捧ぐ』を購入した。
(ともに愛聴盤になりそうな。大井貴司ページをご参照)
ついでにミーハー的に記念写真をお願いする。
久しぶりに楽しい夜であった。
21時に大阪に帰宅。
『Play's Swing』で大井ヴァイブと谷口英治クラのからみを聴きながら、バーボンの水割りで仕上げ。
つまみはさきほど宝國寺で「ご近所」メンバーからいただいた味付けの干物(鱈かな)……たまらんなあ。
2月28日(月)
わ、6時まで寝てしまった。
ふだんより2時間も朝寝してしまった。
慌ただしく朝刊……わ、中津川で派手な人殺しやっとるなあ。ハラヒラくん、今度はマンガ家と同名か。
・加古川7人
・龍野6人
・中津川5人
(以上、あくまでも「一族」限定である)
播州龍野の実家へ移動。
老母はまあ元気に過ごしていた。ほっ。
老母もおれの顔を見て、ほっ。
分別盛りがトチ狂ったニュースを見て心配していたらしい。
むろん、おれが似たようなことをやるんじゃないかと……。
迷惑な話である。
と、混乱のうちに2月も終わりである。
HomePage