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『マッドサイエンティストの手帳』313

●第5回小松左京賞授賞式

受賞作は有村とおる『暗黒の城(ダーク・キャッスル)』

10月1日(金)
 夕刻から、「第5回小松左京賞授賞式/角川春樹事務所創立8周年記念祝賀会」に出席する。
 小松左京賞は、第1回第2回第3回第4回と続いて、今年が第5回。
 小松左京賞は不思議に台風に縁があるが、今年はあやうくも台風一過の秋晴れであった。
 控え室へ行ったら角川春樹氏がおられて初めて挨拶した。
 小松さんと歴代受賞者諸氏が歓談中……年齢も作風もずいぶんちがうが不思議に共通する雰囲気があって面白い。この雰囲気をさらに広げることになるのが今回の受賞者・有村とおる氏。
 いちばん興味があるのがその年齢。1945年生まれ、59歳と紹介されている。
 高齢だからどうこうというのではない。ぼくとほとんど同年であることに関心があるのだ。
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 有村とおる氏にご挨拶。ぼくより半年ほど若い、ヨコジュンとか、SF以外では森山威男さん、坂田明さんとほぼ同じ頃のお生まれである。……会社リタイア後の執筆かと想像してたが、IT関係の会社勤務、事情があって退職したのはずっと前らしく、今もIT関係の仕事をされている。小説は20年前(それでも40歳の頃だ)にある賞に応募したことがあるという。
 きわめて真面目な性格の方という印象を受けた。
 授賞式での小松さんの選評では、『暗黒の城(ダーク・キャッスル)』(応募時のタイトルは『闇のなかに虹を見る』)は、バーチャル・リアリティものというよりも「IT小説」に近いらしい。しかも「文学に対する意気込みが感じられ」、主人公のキャラクターが「ドフトエフスキー的」であるという。
 ついでに受賞者の年齢にも触れて、「最近は周りから早く死ねといわれているような気がしていたが、この作品を読んで、もう少しがんばろうという気分になった」とも。……じつはおれもその「元気」がほしいのである。
 off
 刊行が楽しみである。
 有村さんのスピーチでは、「ホラーとして書き始めたが、子供に怖くないといわれて」次第にSFにシフトしていったとか。
 ひところの「SFと銘打ったのでは出しにくいのでホラーを装ったSFを書く」というのとは逆の流れで、これもうれしいことだ。
 会場で、例によって色々な人と挨拶、雑談。
 高千穂遙氏からスポーツサイクルについてレクチャーを受ける。やってみたくなるが、やっぱりわが住環境では無理なようである。淀川沿いの道は申し分ないのだが、防犯面から断念。高級自転車は「公衆トイレで小用中」にでも盗まれてしまうことがあるというから、こりゃだめだ。
 途中で角川春樹氏が着物姿で登場。つづいてファッションショー、「ぎゃる侍」というのが登場した。
 off
 これは近々ポップティーンで連載開始の「青春メッタ斬り! 痛快"武士道"コミック」の予告編であるらしい。
 派手だなあ……。
 閉会の少し前に、ロビーからボンクラ息子その1が連絡してきた。
 勤務先が西新宿なので、あとで一杯飲むために丸の内線で到着。せっかくだからSF関係数氏に紹介。24年ぶりに会う高橋良平氏なんて、まあ自分の年齢再認識だろうな。
 田中光二「なんだ、ヘアスタイルだけは全然似てねえじゃねえか」……スタイルが似てないのではなく「量」がちがうのである。
 そろそろ閉会。
 最初の角川春樹氏の挨拶が「これからの生き方は不良性……精神の無頼性を大切にする」というものであった。
 これに対して、森村誠一氏のシメの挨拶は、久しぶりに主役が登場した祝賀会ということで、例の爆笑ものではなく、たいへん心のこもったものだった。……獄中俳句『海鼠の日』を読んで「俳句に専念してほしいと思ったが、これからは「俳句7、出版2、映画1」くらいで活動してほしい」と。
 最後は、春樹氏を中央に、歌唱力ある社員2名が両側に、そして社員がずらりと並んで「感動のフィナーレ」……ここで歌われた曲名、わしゃ知らないのだが、ボンクラ息子その1のいうには「森山直太郎の曲ではないか……」
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 なかなかの名唱である。
 ……出口付近で不思議な光景。
 森村誠一先生がデジカメを構えて数人を撮影しようとされているのだが、その数人の方はどうやら森村先生と記念撮影を希望されている様子。主役がカメラマンになってどうしまんねん。
 熱烈森村ファンのおれとしては、カメラマン役を申し出。
 森村さん、操作や手ぶれ防止についてにこやかにレクチャー。
 ついでにと、わがカメラでボンクラ息子その1との記念写真もお願いした。
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 ボンクラ息子その1「作家というのはみんなあんな風に物腰が柔らかいのか?」「森村先生は例外中の例外」
 ビジネスマンとしてはぜひとも見習ってほしいところだ。

※大阪への帰りの車中、『海鼠の日』を精読。

 霜月や音なき雨の鉄格子
 外套の中のわが骨冬銀河

 寒がりのおれには、ことのほか堪える。


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