『マッドサイエンティストの手帳』252

●第3回小松左京賞授賞式

2002年10月1日（火）　受賞作は機本伸司『神様のパズル』

１０月１日（火）
　午後のひかりで上京。夕刻からの第３回小松左京賞授賞式のためである。台風が夜半に関東上陸かもしれないという。まあ何とかなるだろう。
　『株式会社角川春樹事務所創立６周年記念祝賀会／第３回小松左京賞授賞式』
　今年もキャピトル東急で。
　第1回が2000年9月29日。
　第2回が2001年10月1日であった。
　今年は「まことに残念ながら」角川春樹顧問は不在である。
　大杉明彦社長、「私には（ハルキ前社長に較べて）台風の進路を変える能力がないので」と、しかし、なかなか余裕のある挨拶。
　　
　続いて小松左京賞の受賞セレモニー。
　小松さんの選評から判断するに、「宇宙を作るＳＦである」「女がわかっていない」「しかし文句なしの授賞である」「今度はこの宇宙からコッチを見たＳＦを書いてはどうか」……
　機本伸司さんの挨拶。「小松左京賞だから『宇宙論』を選んだ」「エロスとバイオレンスは入っていない」「替わりに『田植え』を入れた」「クライマックスが台風であって、本日、どうも現実を巻き込んでしまったみたい」等々。
　いったいどんな作品なんだ。
　大森望「今回のは凄いですよ」
　むむむ。楽しみなことである。
　機本さんは宝塚在住で、ビデオ製作関係のユニークな仕事に関わっているという。北野勇作さんの先輩にも当たるのかな。ちょっと横から記念撮影をお願いした。
　
　ともかく、またも関西から有力新人の登場である。
　引き続き、春樹事務所の社内表彰。
　広告部門で表象を受けた青年、見るからに体育会系で、「これからも一層社業に精励いたします！」という元気のいい挨拶にピーッと口笛、歓声、拍手。こういう雰囲気はいいなあ。おれは製造業勤務30年以上だが、業種を問わず、やっぱり企業を支えるのはこういう熱血社員なのである。
　会場では、見た人挨拶した人……小松左京賞の平谷さん、町井さんはじめ、永井豪、高橋良平、高斎正、田中光二、新井素子、巽孝之、山岸真、井上雅彦、南山宏、山田正紀、今野敏、森奈津子、その他たくさん……あ、途中から中野晴行さんも。ともかく挨拶もできないほどだし、挨拶しても、台風の話ばかり。「戦後最大級」でゴジラ並みであるとか。山田正紀が横浜まで帰れるかどうか心配している。わしゃ大阪なんだぜ。
　20時前、恒例、森村誠一さんの挨拶。
　春樹顧問が「不在」のためか、ちょっと「爆笑度」は控え目だが、「いちばん早い不在期間」を（２／３）＊（２／３）で計算、来年には「真の祝賀会を会費10万円でやろう」という話になる。不在の間に事務所があまり黒字を出すのも問題と、例によって大マジメな表情で挨拶、いゃあ、わが森村ファン度、高まる一方であるなあ。
　新幹線の状況が心配なので、直ちに会場を出る。
　台風、ちょうど上陸中とかいうが、外気に触れるのはホテル玄関から通りの向かいの地下鉄入口まで小走りで5秒ほどだけ。小雨でちょっと風が強い印象である。
　東京駅に20:20着。どうやら30分ほど前から東海道新幹線も運転見合わせである。
　わしゃ最終のひかり（20:50発）をとっているのだが、19:43発から止まっている。その割に人は少ない。みんなさっさと帰ったということか。
　どうやら台風が過ぎれば動く模様。新大阪まで着けばどうにでもなる。パーティであまり食べてなかったので、カツサンドと柿の葉寿司、ワインを購入。トイレ脇のベンチでワインチビチビ、関西の「ご同輩」と雑談。この人は最終から、少しでも早いひかりにと予約変更したらしい。
　おれは変更せず。その根拠は寺田寅彦理論である。台風は天災である。天災はまさに忘れた頃に首都直撃した。しかし、台風は東北方向に去って、東海道は台風一過である。ここは寺田寅彦の混雑した電車を避ける理論（集英社文庫「寺田寅彦は忘れた頃にやって来る」に紹介してある）にしたがって、最終のまま変更しないのが楽であると判断したのである。
　結局、22時頃から動き出した。20:50発は1時間40分遅れで出発。皆さん、先のに変更したらしい。7号車、乗客はおれひとりである。
　寺田寅彦恐るべし。
　
　前のシートの向きを変えて、脚を伸ばして、ワイン飲みながら悠々帰阪。静かなものだ。のぞみ並みにスピードを上げて、新大阪1時10分着。
　新大阪駅コンコースに「チュカテチュ、オワッタヨ」というポン引き……じゃなかった白タクの客引き。誰が乗るか。ちょっと歩いて新御堂で梅田方向のタクを拾う。5分950円。帰宅1時20分であった。２次会で騒いでいる人たちとそう変わらない時刻の帰館であろう。

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