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『マッドサイエンティストの手帳』309

●マッドサイエンティスト日記(2004年8月後半)


主な事件
 ・播州龍野の日々(前回よりつづく)
 ・穴蔵の日々(19日〜)
 ・播州龍野の日々(22日〜)
 ・穴蔵の日々(25日〜)
 ・20年来の懸案事項がひとつ片づいた(26日)
 ・甥がフィアンセと来訪(27日)
 ・久しぶりにサントリー5でラスカルズ(28日)

2004年

8月16日(月)
 播州龍野の日常。
 テレビはオリンピックのニュース、それも同じビデオを何度も何度も放映。
 見る気も起こらず、相変わらず評伝類を読む。
 小林信彦『植木等と藤山寛美』……これは再読か三読。関連して『日本の喜劇人』も。

8月17日(火)
 播州龍野の日常。
 梅雨かいな?
 曇天、一時雨になるが、ともかく湿度が高い。
 さすがに7月下旬の暑さではないが、梅雨に逆戻りしたような雰囲気である。
 病院の待合室がいちばん快適とは困ったものだ。

8月18日(水)
 遙か南方にある台風の影響で南風強く、時々どしゃぶり。
 午後、妹が到着したので、ScanSnapをバッグに詰めて、夕刻帰阪。
 雑用が溜まっている。
 ボンクラ息子その1が遅めの盆休で帰省しているはずが、さっそくどこかへ遊びに行ってしまったらしい。
 ボンクラ息子がいないと、専属料理人の作る夕食メニュー、お粗末なもの。
 冷やヤッコ、枝豆に総菜類……と龍野でおれが自分で作って食べ飽きたようなものばかり。ビールを少し飲むが、まったく食指が動かず。
 喧嘩を売られているのであろうか。
 早寝。

8月19日(木)
 わ、夕食をほとんど食べずに早寝したら、午前2時に空腹で目が覚めてしまった。
 困ったものだ。
 久しぶりに自転車で「早朝グルメ」ということにする。
 天五の「ひろや」で、なべ焼きうどん、ビール。すこし元気が出てきた。
 昼間は雑件処理で1日が終わる。

8月20日(金)
 終日穴蔵。
 ScanSnapで処理すべき資料、大部分が整理できたが、古い新聞記事など、書式がややこしく、変色しかけたのなどの処理に手間がかかる。縮小コピーのために近くのコンビニ数往復。
 夕刻、久しぶりにかんべむさし氏が来穴蔵。
 専属料理人に簡単な酒肴を作らせてビール。かんべさん、だいぶ前にそのアイデアを聞いたことがある短篇を書き上げたということで、珍しく小説談義になる。
 ついでに(ま、ビールのつまみから派生してのこととして)「あちゃら漬け」の定義について。
 ポルトガル語が語源ということはわかったが、「膾」「和風ピクルス」のようなのもという説や、漬物を炒めたものという説明があったりで、いまひとつはっきりしない。
 地域によってちがうのだろうか。……ま、國の存亡に係わるような問題ではないのだが。

8月21日(土)
 大阪の友人と徹夜で遊んでいたらしいボンクラ息子その1、朝帰りで、そのまま荷物をまとめて東京に去る。
 朝飯の時に「よう」と声を交わした程度である。嗚呼……
 終日穴蔵……のつもりであったが、ちと気になる調査事項が生じて、午後、西長堀の市立中央図書館へ。
 夕刻、天満へ移動。
 大阪シナリオ学校の創作講座の臨時講師。
 提出作品についてのコメント中心に……であるが、本日から岐阜で日本SF大会である。SF系の諸君の大部分がそちらへ移動したためにおれに振られた気配濃厚である。(おれは実家の事情もあって、SF大会は今年も欠席)
 SF大会に加えて、オリンピック、高校野球、職業的棒振り団のゲーム中継など、世間は騒然としているのだが、出席率高く、なかなかの熱気。
 が、提出作品、バイオSF系1篇(これはまあ的確にコメントできる)はいいとして、あとの2篇が時代小説、しかも「心中もの」と典型的な「世話物」。ともに文章レベルはかなり高い作品なので、冷や汗ものである。こちらも作者と同じ立場で知恵をしぼる「問診型」講義となった。
 明日が早いのでまっすぐ帰宅。
 遅めの夕食。スポーツ中継が退屈なのでFMをつけたら、懐かしきベイシー・ナンバーが流れてきた。
 番組評を見ると「カウント・ベイシー生誕百年」の記念番組、なんと夕方から深夜まで、6時間のベイシー特集である。
 こないだから悪評高いNHK、まれに見せる(聞かせる)良心であるなあ。
 「生誕百年」企画なら、これからも毎年何人かの特集が組めるのではないかい。
 ということで、気分よくビール飲んでいたら深夜になってしまった。
 明日からまたしばらく龍野行きである。

8月22日(日)
 日曜早朝、NHKは感心にもオリンピックではなく「日本の話芸」を放映しておる。春風亭柳橋「ねずみ」……時間がないので見られないけど。
 早朝の電車で播州龍野の実家へ移動。
 今回の滞在は短期間の予定。
 姫路の新興書房で買った井上理津子『大阪下町酒場列伝』(ちくま文庫)を読む。
 なかなかよく居酒屋の雰囲気を伝えている。牧田清さんの写真がいい。……29軒紹介してあって、おれが飲んだことのある店は4軒。まあ平均的なところではないかな。馴染みというほどではないが、時々行くのが天六の「上川屋」。しかし、ここも新築する前の店の方が好きだったなあ。……と、居酒屋のない田舎町で思うのであった。

8月23日(月)
 早寝したら午前2時に目が覚めてしまった。
 オリンピック、女子マラソンが0時のスタートだったかなと思い出してテレビを見ると、よくわからん展開。どうやらクライマックスで野口みずきがトップを走っているらしいのだが、なかなか映さない。と、気配を察して老母までが起きてきた。
 ゴールを確認して、3時前まで。
 中継を見たのは今大会はじめてかな。
 朝刊が来る(3:40)のを待って、一読。
 あとはパソコンでPDFファイルのチェックやリスト作成。
 雨が断続的に激しく、出かけるのが面倒であるが、雑件発生、傘さして自転車で市内ウロウロ。
 下半身ずぶ濡れ。
 早めにシャワー、枝豆を茹でてビール。朝が早かったから眠くなるのも早い。
 20時過ぎに就眠。

8月24日(火)
 わ、また早朝に目が覚める。
 雨の予報が外れたので、日の出前に散歩。
 鶏籠山に朝靄がかかっている。夜明けの空はもう秋の気配である……なんてセンチメンタルだぜヒヒヒ、とまだ殿山泰司気分が抜けないのであった。
 off
 昼、龍野図書館へ資料の返却に行く。……前回「郷土資料コーナー」がないのがいかんと書いたが、これは間違いで、2階に立派な資料室があった。申し訳ない。入室手続きが必要でコピーなど制限事項も多いが、「客」は少なく、調べものをするにはいい雰囲気であった。
 夕刻、横浜から兄が到着。
 せっかくだから酒肴を用意してビール。
 夜遅く帰阪。

8月25日(水)
 近所の医院へ行くのを含めて雑用山積。
 午前中、市内ウロウロ。
 ボンクラ・サラリーマン諸君は給料日らしく、銀行のATMに長い列。
 銀行関係は明日に延ばす。
 午後は穴蔵に籠もるが、資料整理で近所のコンビニのコピー機へ数回往復、階段の昇降でいい運動になるぜ。
 夜は専属料理人が「オーブンで作った」というパエリアで白ワイン。

8月26日(木)
 この間から進めてきた「資料」のPDF化がどうにか片づいた。
 まだ関連資料があるが、ともかくここで一区切りである。
 片づけたのは「太陽風交点」事件全資料である。
 これは20年近く、懸案の事項であったのだ。毎日、書架の一角、約3段ほどを占拠している資料を眺めながら、これが片づかない限り……と思案しつづけてきた「紙資料」である。
 ScanSnapその他の威力で、ともかく整理が終わった。
 ということで「全資料」をアップ。今岡清の爆笑速記録(←PDFファイルでちょっと大きい(4.3MB)けど)はぜひともご精読いただきたいところだ。
 さあ……これから色々やるぞ、と思いつつ、まずは慰労の一献。
 専属料理人の作った小鉢を色々並べて、デフランコを聴きつつビール。
 もう寝るのである。

8月27日(金)
 わ、早寝したら午前2時前に目が覚めてしまう。
 オリンピック中継、シンクロの団体競技をやっている。が、この種の団体競技、マスゲームや喜び組の踊りといっしょで、わしゃとても見ていられない。たぶん中学時代に受けた体罰の後遺症であろう。北澤という体育教師は列のひとりがミスを犯しただけで「連帯責任」という名目でその列全員に体罰を加えた。運動神経最低のおれは、何度も同級生が鼻先を指で強く弾かれる原因を作っている。そのことで級友からいじめられることがなかったのがせめてもの救いだ。「ボンボンの学校」なんていわれたが、内実はこんなものである。……ということで、朝まで、少しは仕事もするのであった。
 夕刻、甥の潤之くん、フィアンセを連れて来宅。
 龍野の祖母に紹介した帰路ということである。
 専属料理人ともども近所の串焼き屋「串樽」でビール。
 off
 久しぶりに来たが、ちと味が落ちた気がする。前のお兄ちゃんが変わったのかな。
 わが住まいに戻って、ワインを飲みながらガヤガヤ。
 朝が早かったので……それでも夜更かし……23時前におれだけ先に眠るのであった。

8月28日(土)
 目が覚めれば6時。おれとしてはかなりの寝過ごしである。
 夕刻まで穴蔵。
 夕刻、専属料理人と梅田へ。
 甥の潤之くん・フィアンセの公子さんと合流。
 本日はニューオリンズ・ラスカルズの出演日であり、潤之くんの親父(つまりおれの兄)が週末来阪すれば全ステージを聴くバンドがどんなものか、一度行ってみたいということで、案内することになったのである。
 新梅田食堂街の「春駒」(今日は空いていた)経由で、ニューサントリー・ファイブへ。
 おれも久しぶりである。
 潤之くん、客層の平均年齢の高さに驚いたようである。
 本日、2ステージ目から志賀さんが来て、久しぶりに7人フルメンバーの構成。
 off
 福田さんと志賀さんは椅子に座っての演奏になった。人間否応なく年をとっていくものである。ドラムの木村さんは相変わらず叩きまくり歌いまくりで、突出して元気である。
 で……2ステージ目、隣りテーブルに凄まじいオバハン4人連れ。嫌な予感どおり、演奏はほとんど聴かずに、ケタタマシイ声でしゃべりまくり。嗚呼。
 専属料理人に、ちらっと「ああなってはいかんぞ」「しかし、なりそうな……」「人間否応なく歳をとっていくからなあ」といったら、ひどく神経に障ったらしく、後で「女性蔑視も甚だしい」「あんなことはいわないでほしい」と意見された。
 どうやら「体型がああなるぞ」と言われたと思っているらしい。確かにひとり、凄いのがいた。そして、ああなってもらうのも困るが。
 ただ、おれは、周囲に無神経なふるまいを真似てはいかんといったのであり、しかし、おれも含めて、年とともに神経鈍感になる傾向は避けがたい、世の中の傾向がそうなのであって、『おばはん化するポストモダン』みたいなことを言いたかったのであるがなあ……。おばはん化している自覚があるから怒るのであろうか。ヒヒヒ。
 などといいつつ、結局最終ステージまで。

8月29日(日)
 わ、さすがに少し二日酔いである。6時過ぎまで寝てしまった。
 終日穴蔵。
 早寝である。

8月30日(月)
 わ、早寝したら0時過ぎに目が覚める。
 オリンピック最終日、男子マラソン、スタートして30分くらいである。
 ボケーッと見ていたら、38キロくらいのところで先頭ランナーに道路の反対側から乱入してきた女装の男が抱きついたので仰天。
 変態性欲男・今岡清ではないか! と、いっぺんに目が覚めてしまった。
 まさかなあ、ありゃ女には抱きつくだろうが女子マラソンではないからなあ……いや、あの変態・今岡清、何をやりよるかわからんからなあ。などと考えつつ、そういえば、以前、F1グランプリでコースに出てきた男があんな格好していたなと思い出した。あとでネットをみたら、やっぱりそうらしい。(アイルランド出身の自称元司祭、ニール・ホーラン(57)で、ウィンブルドンでも同様の騒ぎを起こしたらしい。有名な男なのだ)
 まあ、しかし、マラソンとアホは切り離せない。
 参考までに、シドニー五輪の時に、おれが産経(大阪版)に書いたコラムを掲載。

 off

 観客からアホを除外することは不可能だろうが、ニール・ホーランの場合は、併走ではなく抱きつき。これは予想できなかった。ホーランくん、アタマが完全に壊れている様子。しかし禁治産者ではなさそうだから困ったものだ。
 閉会式は退屈なのでテレビを切る。
 台風接近らしいが、大阪はその気配なし。
 夜明け前から自転車で淀川堤散歩。
 天六の「十八番」で朝飯。
 帰って早朝のテレビ(NHK)を見たら、ニュースはオリンピックに変わって台風16号報道一色。こんなふうに報道番組が一色に染まるってのはいいことではないのだけどね。
 下関から中継しているアナウンサー。「鼻が曲がってしまいそうな強風です」といったのには笑った。
 「鼻が曲がる」は一般的には「強烈な臭気」についての表現だが、この場合、横風で鼻が折り曲げられそうだといっているのである。これは実感がこもっているなあと感心するのであった。
 関西にも台風が来るのだから終日穴蔵。
 ……のつもりであったが、大阪は台風の気配、まだなし。静かなものだ。
 終日穴蔵。
 が、雨は降らず、風も吹かず。
 夕方、思い出してロフトのWAVEへ。谷口英治の新CDが出ていたのだ。
 宇崎竜童『哀愁のフォービート RYUDO UZAKI with One Night Jam Session Band』を買ってくる。
 夜、専属料理人と一杯飲みつつこれを聴く。
 谷口英治が全曲アレンジと指揮を務め2曲演奏参加のアルバム、インストは素晴らしいけど、宇崎の「詞」のナルシズムには辟易であるなあ。
 こんな懐古趣味になってどうすんのよ。
 全共闘世代云々の世代論につながっては困る。おれとしては、特に名は挙げないが「前科を売り物にする作家」とか「喧嘩に明け暮れた青春を書く作家」に対する嫌悪感に似たものを感じるのである。
 が、しかし、谷口英治の編曲センスと演奏はすばらしい……のであった。
 21時を過ぎてニュースを見ていたら、実家・龍野方面、かなりの強風と降雨。
 実家にいる兄とメールやりとり。まあ、家屋倒壊というレベルではないらしい。

8月31日(火)
 台風一過なのであった。
 わが穴蔵は「無風」としか感じなかったが、早朝、ベランダには余所(はっきりいえば上の部屋)から飛んできた葉っぱが大量に散らばっている。
 早朝にベランダ掃除。
 晴れているので、自転車で朝10時過ぎから市内ウロウロ。
 月末で、銀行はどこともボンクラ・サラリーマン諸君の列で混んでいる。
 久ぷりに、わがボンクラ・サラリーマン時代の勤務先のそばを通過。
 昔さぼって新聞を読んでいた喫茶店「ポニー」が「ラーメン大将」(うまそうには見えない)に変わり、時々飲んでいた洋風居酒屋が「阪急そば」(ホームの立ち食いの出店でっせ)に変わっている。
 『立ち食い化するポストモダン』ということであろうか。
 わが昔の勤務先が「讃岐うどんセルフ店」に変わるのも遠い将来ではない気がしてくる。……あ、そういえば現社長のTくん、讃岐うどんの本場出身の狸であったなあ。
 ま、Tくん、出前持ちでもやりたまえ。
 などと、感慨無量である。
 午後、かんべむさし氏の仕事場に寄って2時間ほどウダウダ。
 タケウチでパンを買い、篁でチリ・ワイン2本を買って、直射光厳しい中を帰宅。
 夜は専属料理人の作ったポトフその他でビール、チリ・ワイン。
 天気予報に反しての快晴となったので、ベランダから「ブルームーン」の撮影を試みるが、IXY200では披露できる写真は無理なのであった。


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