『マッドサイエンティストの手帳』308
●マッドサイエンティスト日記(2004年8月前半)
主な事件
・穴蔵の日々(前回よりつづく)
・山下洋輔ソロ・ライブinハチ(7日)
・播州龍野の日々(9日〜)
2004年
8月1日(日)
わ、また本日も午前3時過ぎに目が覚めてしまう。
早朝、淀川堤を散歩。
台風が通り過ぎたあとの毛馬洗堰の夜明け、なかなかの風情。
西の空には満月に近い明け方の月がかかっていて、これは画家・堀晃さんが好んで取り上げる雰囲気の月だ。
こういう場面になるとコンパクトカメラでは物足りない。うーん、近日、新しいデジカメを衝動買いしそうな、嫌な予感。
朝5時過ぎに帰宅。
日曜の朝の恒例「日本の話芸」、台風のニュースと「冬ソナ」特集とかで、今週はなし。恨むぜ、ヨン公。(と、おれは「冬ソナ」というのは見たことがないから、役柄からの印象は皆無、それだけに公正に見られるが、この役者の笑顔、かなり不気味だ)
ということで、朝食の後ふて寝。
終日穴蔵。
本日はクーラーつけずに過ごす。室温は32℃。まあ快適な方である。
今日は須磨で全日本デキシーランドジャズ・フェスティバル開催の日だが、電車で出かけるには体がだるい。
午後、テレビで『ランボー3/怒りのアフガン』を漫然と見る。こういう乱暴で単純なのが気楽でいいなあ。
8月2日(月)
わ、3時に目が覚める。またも睡眠が午前3時の壁を破れなくなってきたようだ。
4時半、淀川堤を散歩。だんだんと日の出が遅くなっていくのが実感できる。もう秋の気配である。
朝刊を読んだ後、テレビニュース。
と……なんと加古川でド派手な人殺しが発生したらしい。「7人殺し」だから、昔の龍野市の記録を更新して、播州では新記録ではないか。
ここでちょっと触れている大量殺人というのは、大正15年5月16日未明に龍野市で起きた事件で、一般には「6人殺し」といわれている。
ただし、「自殺教唆」が加わるともいわれ、さらに自殺させた女性のお腹に子供がいたことから「7人半」というのが当時の噂らしい。……さらには「自殺」させた女を犯人に仕立てようと工作までしているのが恐ろしい。
気になって昼までニュースサーフィン。加古川のは、どうやら宅間守型のきわめて乱暴な事件のようである。
龍野市と加古川市がワースト記録を競ってもいかんのだけどね。
ということで終日穴蔵。
8月3日(火)
終日穴蔵。
ボンクラ・サラリーマン時代に仕事で一時期パートナーであったKくん(業務を東西で分担していた)からメール。
千葉県八千代市(自宅)から故郷の鹿児島県内之浦まで1600キロを100日かけて奥さんと「徒歩で里帰り」したという。
うへぇ、もの凄いことやるものだな。
行程の概要を教えてくれたが、ネットで調べたら、鹿児島で報道されていた。
まあ新聞に出たことだから、名前も伏せることはないか。
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『故郷・内之浦へ1600キロ行脚中』
(平成16年7月12日の南日本新聞より抜粋)
千葉県八千代市の串崎さん夫婦が、千葉から夫婦の故郷・内之浦町まで約1600キロ踏破の旅に挑戦している。10日、無事に鹿児島入りし、出水市を通過した。銀婚式を機に歩き出した二人旅。串崎さんの誕生日の18日、ゴールを目指す。
子育てを終え、共通の趣味ウォーキングで記念に残ることをしようと計画。25回目の結婚記念日に当たる4月8日、八千代市を出発した。一日25キロほどのペースで歩き続けた。(略)
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親をびっくりさせるつもりが、ゴール前に大きな新聞記事が出たものだから、数日前に連絡、予定通りに「おかえり 二人の故郷 岸良へ」と大書された横断幕が翻るなかゴールインとなったらしい。
石川文洋『日本縦断 徒歩の旅』は北海道から沖縄まで。本州のコースは日本海側である。串崎夫妻はふたりで千葉から鹿児島、太平洋側に沿って、しかもかなりの「寄り道」があるから、延べの踏破距離はこれを上回るのではないか。
いずれにしても、何かのかたちで記録をまとめてほしいものだ。
夕刻、浴衣姿の人がやたら多い。
今夜が「平成淀川花火大会」であったのだ。
近所といえば近所、徒歩圏であるが、ボンクラ息子が小学生の頃に一度連れていったくらいかな。
なぜかちょっと見物したい気分になり(今年で見納めかもという虫の知らせか?)、軽くビールを飲んだあと、自転車でいつも散歩する堤防まで行ってみる。
打ち上げ場所の1キロほど上流、両岸で40万の人出とかいわれるが、予想したほどは混んでない。
「ミッキーマウス」とか「ドラえもん」のパターンの打ち上げ花火があることを初めて知った。
打ち上げは19:50〜20:40と短時間集中型。
終わってさっさと帰宅、シャワーを浴びて、ビールの飲み直し。
8月4日(水)
終日穴蔵。
午後のニュースで渡辺文雄の訃報。
以前、わが集合住宅の同じフロアに大島渚と親しい某氏が住んでいて、大島渚は何度か、たぶんその関係だと思うが、渡辺文雄氏も一度見かけたことがある。俺はファンであったが、やはり声はかけにくかった。
この人の凄さを実感したのは田宮二郎の『白い巨塔』(テレビ版)で、東教授を説得する大阪の市会議員役である。渡辺文雄は神田の生まれでチャキチャキの江戸っ子のはず。それが完璧な大阪弁でネチネチと説得する。いかにも市会議員にいそうな雰囲気で、そのうまさに舌を巻いた。……近日、このダイジェスト版が放映されるらしいが、渡辺議員登場の場面はぜひノーカットで放映してほしいものだ。
と、
とつぜん紀伊半島沖に台風が発生、今夜、こちらに来そうな気配。東風が強いはずだ。びっくりするなあ。
8月5日(木)
わ、定刻4時に目が覚めた。
急な台風で風があり、少し窓を開けて寝たら熟睡できたらしい。午前3時前に目が覚めるのは単に暑さのせいか。
とつぜん発生した台風11号、相生付近を通過したらしい。が、播州龍野の実家からは、たいしたことないとメール。
安心して、夜明けの淀川堤を走る。
喉が乾いてきて、久しぶりに天五の「ひろや」で軽くビール、刺身、朝飯。気分がいいなあ。
午前6時に帰宅。
終日穴蔵である。
冬樹蛉さんの日記を読んでびっくり。馴れ合いの相互リンクみたい思われると困るけど、こりゃなかなか凄いアイデアだなあ。「新しい天体」との遭遇をSFの最優先命題と考えるおれにとっては、妙に興奮させられる。肝心のCMを見ていないので、夕方からテレビを2時間ほどつけっ放しにしていたのだが、該当CMは流れないのであった。
8月6日(金)
またも猛暑である。
終日穴蔵。
が、仕事らしきことまるで進行せず。
8月7日(土)
昼、自転車でヨドバシへ。某パソコン周辺機器(山之口洋さんの「山之口流スーパーIT書斎術」で教えられ、使い勝手を問い合わせて、実験までしてもらった)の導入を検討……だが、意外に展示してあるのは1機種だけ。キャノンのは置いてない。企業向けの商品だからか。
ついでにタワーズまで行って植村花菜の『花菜』を見つける。
J−POPというコーナーはおっさんが入るにはちと照れくさいのだが、すぐ近くに植木等も並んでいてほっとする。
初めて聴く歌手だが、谷口英治がプロデュースと全曲編曲を担当、クラでも参加しているとあっては聴かずにはいられない。
ついでにハチに回り、今夜のライブ、当日券を1枚追加してもらう。
ということで、夕刻、インタープレイ・ハチへ。
8/8恒例・山下洋輔ライブ、本日は曜日の都合で「ハチママ71歳誕生日・前夜祭」となる。
よく考えて見ると、山下さんのライブを聴くのは今年初めてだ。
演奏曲目は、
・ラウンド・アバウト・ミッドナイト
・ブルーモンク
・フェーズ・アフター・フェーズ
・しゃぼん玉
・チュニジアの夜
・砂山
・オンリー・ルック・アット・ユー(新作のバラード/美しい曲である)
・ボレロ
演奏終了後、ハチママがバラ1輪を持って登場、例によって例の(といってもわかりにくいけど)挨拶……要するに山下さんが元気な限りウチもやるでぇ! ということである。これは以前、還暦パーティで「引退」といいながら3月も経たずに撤回した教訓からである。さしずめ次の大騒ぎは2008年の「開店50周年」記念なんとかになるだろう。
近所でちょっとビール。
珍しくボンクラ息子その2がいっしょに来て、山下さんを聴くのは11年前の還暦パーティ以来のはず、感激している様子である。これを機にジャズ好きになるであろうか。
山下さん、ラジオでアジアカップ、日中決戦の中継をラジオで聞きながらビール。昼は高校野球、夜はナベツネ棒振団を虎が成敗する試合も進行しているとあって、なんだか騒然とした一日である。
ハチに戻ると、こちらも大騒ぎの最中。
ラウンド・ミッドナイトに近い時刻になって、これまた恒例、大ちゃんの「サマータイム」。
過激な1日であった。
深夜、親子3人歩いて帰宅。
8月8日(日)
夜中まで騒いだにもかかわらず、きちんと午前4時に目が覚めた。
気分爽快。
たぶん潜在意識下で、長年迷っていたことにケリをつけるべきと決断したのだろう(昨夜聴いたピアノも影響しているかも)、10時にヨドバシへ自転車で行って、某パソコン周辺機器(デジカメにあらず)を購入、自転車のカゴに入れて持ち帰り、この間20分ちょっとである。ヨドバシが近いと便利だなあ。
さっそく試用。
予想していた以上に使い勝手はいい。
軽くてコンパクト、龍野へもバッグに入れて持っていけるサイズである。
懸案の作業は龍野でやることにして、資料を綴じたファイル類を箱詰め、宅配便で龍野に発送する。
しばらく集中すべき作業が決定した。
ということで、夜はビール飲みながら植村花菜『花菜』を聴く。「テネシーワルツ」が秀逸。
さあ、明日からまたしばらくは播州龍野での生活である。
8月9日(月)
早朝の電車で播州龍野に移動。
「某パソコン周辺機器」をバッグに入れていくが、たいした重量ではない。ノートパソコンより軽い感じだ。
が……どうも本日「厄日」の様相。
地下鉄が滑り込みアウト、阪神特急が(甲子園へ行く客だけでなさそう)ずいぶん混んでいる、ケイタイに悩まされる、改札のトラブル、姫新線はどこかの高校のソフトボールチームらしき団体に占拠される……とイライラの連続である。
実家での「見張り役」交替。
資料の箱も無事到着。
さて運んできた「某パソコン周辺機器」をこちらのノートパソコンに接続して作業開始……と思ったら「Service Pack 1 以上が必要」というメッセージが出てきた。98で動いてXPで動かないとはどういうことだ。
調べてみると、UPDATEにつないでダウンロードしなければならぬらしい。
こちらはダイアルアップ接続なので、始めてみると、約3時間かかることがわかる。嗚呼。
厄日の仕上げみたいなものである。午後はボケーッとパソコンの前で過ごす。
夕方、やっと完了、動作確認したら、もう夕食を準備しなければならぬ時刻である。
ビールを飲んで、本格的な作業は明日からとなる。
8月10日(火)
播州龍野の日常開始。
「某パソコン周辺機器」本格稼働……恐るべき威力である。
今回は退屈する心配はない。
が、本日は老母の診察とリハビリの日。骨折してからちょうど5ヶ月である。
術後の経過に問題はないが、半年間は定期的診察が必要らしい。
8月11日(水)
播州龍野の日常。
早朝の散歩復活。
よく走るコースに製麺所があって、「そうめん『ばち』有ります」という看板が立ててある。
「ばち」とは何か。これ、そうめん「揖保の糸」の産地でも、知っている人は少数だろうなあ。
普通の観光客が見たら戸惑うのではないか。
「ばち」とはそうめんを延伸して乾燥させる時、竿にかかる端部のことである。端部は「糸」状ではなく、要するに小麦粉が小さい三角状に残る。これに切り落とされる部分までのそうめんが少し糸状に生えている。語源は三味線のバチに似ているから、らしい。ま、そうめんの裁ち屑か。乾燥しているが、吸い物などに入れると、クラゲみたいな形になると想像してもらえればいい。
この愛好者はそこそこいるらしい。マグロは切り落とし、食パンは耳がいちばん旨いというのに似ているのかな。わしゃ好みではないけどね。わざわざ看板が出してあるということは、これを求めに来る客がいるということだろう。むろん普通の店には売っていない。
なぜ「ばち」を知っているかというと、ここの製麺所のおっさんがくれたことがあるから。味はそうめん食感は餅? やや油分が残っていて、うまいものではない。もう40年ほど前のことだ。製麺機のメーカーで、これを応用して「自動餅突き機」を発明したなかなかのアイデアマン。機械のみならず、製麺業にも事業拡大しているのであった。
昔は貧乏人の食べ物が今や貴重品という典型か……などというとバチが当たりそうな。
8月12日(木)
播州龍野の日常。
「某パソコン周辺機器」、たいしたものである。
思わせぶりな書き方をする必要はあるまい。
ドキュメント・スキャナー「ScanSnap fi-5110EOX」である。写真右端のやつ。まだラベルもはがしていない。
大量の手書きの資料、タイプ印刷の文書(かなり汚れている)、古い新聞記事のコピーなど、OCRでは読み込めず、テキスト化するにはあまりにも膨大。
この処理に十数年悩んできて、大げさでなく、そのためにそれより先の仕事に手がつかないという状態だったのである。
スキャナーで一枚ずつとか、デジカメで撮影してとか、色々検討したが、数ヶ月かかりそうで、面倒で始める気にならない。
小型ながら、書類をどんどん呑み込んでいく感じ。
十年以上悩んでいたことがが、1週間もかからずに処理できそうである。書類を整えるまでが手間で、あとはほとんど自動的に進む。……山之口洋さんが「書物を裁断機で切断、紙を揃えてセット、1冊をまるごとデジタル化するのに15分」と書いておられたが、これ、まさに実感であるなあ。
まあ、おれの場合、蔵書まではやらないと思うけど。
夕刻、墓の掃除。
花を飾る。おれのセンスだからサマにならない。
8月13日(金)
播州龍野の日常。
「ScanSnap」で予定していた作業が、午後に終わってしまった。
こちらに送り忘れた資料がまだ残っているが、想定していたよりも早い。
残りの作業のために大阪へ帰りたくなるが、そうもいかず、困ったものだ。
集中してやる作業は、一度テンションが緩むとまずいのよねえ。
と、まあ一服。
ビール飲みながら夕刻のニュースを見たら、とつぜん「ナベツネ辞任」。 スカウトが裏金を渡したことが「明らかになって」「道義的責任をとって」のことらしいが、裏金なんて「当たり前」ではないか? だいたい、裏金横行の風習を蘇生させたのがナベツネだろうが。ウラにいったい何があるのか。どこかがすっぱ抜きをやろうししたから先手を打った(報道機関のトップとしては屈辱的だろうからなあ)ということか。三山という腰巾着の連座は当然として、ナベツネのコメント、まだ院政を敷く気配濃厚。しぶとい老人だ。大相撲も含めて、ともかく社会的活動すべてから引退すべきではないかい。
プロ野球スカウトの世界、『あなた買います』の頃からまったく変わっていないなあと改めて思う。興行の世界なんだし、客を呼ぶ選手に大金が支払われるのは当然、わしゃ別にかまわんと思うがなあ。
……などと考えつつ、ビールがうまい。野球中継を見なくなって、もう1月以上になるかな。あ、7月7日以来だ。ナベツネが死んでも、野球への興味は復活することないけどね。
禁酒もこれくらいスムースにできればいいのだが。
久しぶりに「刑事コロンボ/奪われた旋律」、ちと緊密さに欠けるね。最後、コロンボが何か罠をしかけるパターンがないと。
8月14日(土)
播州龍野の日常。
予定の作業が中断したので、龍野市立図書館へ行く。
「五寸釘・6人殺し」の資料探しだが、目的の資料はない。「郷土資料」コーナーもないのはいかんぜよ。
しかし、読みたい本は色々ある。
龍野市民はあまり本を読まないらしく、ほとんどが美本である。
評伝を中心に数冊借りてくる。
『ヤスケンの海』……『海』には塙〜村松〜安原という凄い時代があったのだなあ。
8月15日(日)
播州龍野の日常。
新藤兼人『三文役者の死』……これも読んでいなかった。新藤兼人が79歳で書いた殿山泰司の「正伝」。前半の緊密な記述に感嘆、役者としての評価もたぶん正しいのだろうが、文筆家としては過小評価ではないか。(その割に後半は殿山泰司の著作からの引用過多であるが。)
ということで、書庫から殿山泰司のを数冊探してきて再読。
やっぱり天才だぜ。と読みふける。
あ、いけねえ、ババアの晩飯の世話を忘れるところだったぜ。あわててポテトを茹で酢とマヨネーズをぶち込んだサラポテを作り、130グラムの豪州プテキャンでビールをグビリ、なかなかファンキーなアジだぜ、ヒヒヒ。
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