HORI AKIRA JALINET

『マッドサイエンティストの手帳』291

●マッドサイエンティスト日記(2003年12月前半)


主な事件
 ・UFOを目撃(4日)
 ・またも姫路在住のSF新人(6日)
 ・『桂歌之助』が出ました!(7日)
 ・配本作業の日々……(8日〜)
 ・青空カラオケを見に行く(10日)
 ・大森重志氏の水彩画展(15日)

2003年

12月1日(月)
 月初めは零細業者にとって雑用が多いのであった。
 月末に金策に追われるよりいいのであった。
 金策諸君が月末の金曜日にATMに列をなしていたので、月初の月曜にずらしたのであった。
 なぜ金策に追われないか。従業員がいないのと設備投資ゼロ仕入れなしという業態だからである。どんな面倒な仕事も100パーセント自分でやるからである。売春婦と同じなのである。売春婦が稼ぎをヒモに巻き上げられるように、わしゃ専属料理人に巻き上げられてしまうのである。嗚呼。
 市内ウロウロの後、午後は穴蔵。

12月2日(日)
 本を読んでいたら、珍しくも徹夜してしまった。
 朝刊を読んでから就眠。
 昼まで寝るつもりが、こんな日に限って電話が多い。
 穴蔵でダラダラと「頭を使わない」仕事を片づける。
 データベースの整理とか月次決算とかである。
 こういう場合はCDを流しながらだからいい。
 で、晩酌でビールを飲むと、たちまち眠くなり、早寝。
 夜型へのシフトはやはり無理である。

12月3日(水)
 定刻朝4に目が覚めてしまうのであった。
 終日穴蔵……の予定がそうもいかず。
 タイムマシンの部品、仕様変更があってちとゴタゴタ。
 あとは、『桂歌之助』本の印刷関係でちとゴタゴタ。しかし、ともかく大詰めである。
 夕刻、本町の小牟田氏の事務所へ。12月22日予定の某忘年会のことでゴタゴタ。
 夜は食卓に5品目ほどゴタゴタ並ぶ。ビール、湯割り。

12月4日(木)
 ノートパソコンを下げて、早朝の電車で播州龍野に移動。
 大阪に比べると寒いなあ。
 終日タイムマシン格納庫の見張り。
 相棒は本日より上海行きである。
 田舎の日暮れは早い。午後5時を過ぎると急速に暗くなる。
 格納庫から実家へ向かう時には、午後5時20分というのに、ほとんど真っ暗である。
 と、北西の空に赤く光る飛行物体!
 ゆっくりと北西の向かって移動していくが、音はなし、飛行機が飛ぶコースではなく、飛行機にしては明るすぎる。高度から、飛行機に残照かとも思ったが、そうでもなさそう。
 結局「確認」できないままになったから、定義通りのUFOである。
 おそらく火球であろうが、今まで見た火球の中では最大規模のものであった。
 他に目撃情報はないのかなあ。
 『2003年12月4日17時20分頃、兵庫県龍野市、北西の方向である。』……わたしは見た。
 実家の書斎で少しは仕事……のつもりが、ビール飲んだらたちまち眠くなる。

12月5日(金)
 終日、タイムマシン格納庫で見張り。
 暖房設備を入れたのでキンタマの収縮はなく、快適である。
 盛岡のヨッちゃんからメールがあって、井上陽介さんの出るライブが大阪の「ミスター・ケリーズ」であるから行きませんかというお誘い。
 ……盛岡在住の人から大阪ライブのお誘いでっせ。岩手ジャズ愛好会の中核メンバー、まったく神出鬼没である。
 こちらから大阪まで2時間ちょっとかかる。早めに切り上げるか迷うが、こんな時に限ってトラブルその他。
 タイムマシン関係ではないが、実家方面のことで司法書士その他とゴタゴタ。母親がらみのこともあって、結局午後8時を過ぎてしまう。
 帰路は山陽電車特急で梅田へ……が、梅田に着いたところで、姫路駅で買ったばかりの「スルット関西」5000円券を紛失したことに気づく。
 厄日であるなあ。
 駅でゴタゴタしている時刻、たぶんライブは終了の頃である。
 焼酎飲んでふて寝。

12月6日(土)
 朝刊に日本SF大賞とSF新人賞決定のニュース。
 日本SF大賞 冲方丁『マルドゥック・スクランブル』
 日本SF新人賞 八杉将司『夢見る猫は、宇宙に眠る』
 八杉将司氏は姫路在住とある。
 小松左京賞の上田早夕里さんに続いて、今年のSF新人はともに姫路市在住である。
 「SFは関西に限る」は少しずつ西に移動、わが出身地に近づいているのであろうか。
 SFと落語は播州に限る。米朝師匠も姫路出身なのである。
 印刷所から刷り上がった『桂歌之助 飲む前は律儀と遠慮の人なのに』が届く。
 「帯」にちょっとしたミスがあったので刷り直してもらい、このつけ替え作業はこちらでやることになる。
 専属料理人に手伝わせて約4時間。ああしんど。
 さあ、明日からも肉体労働である。

12月7日(日)
 『桂歌之助 飲む前は律儀と遠慮の人なのに』の発送準備。
 ちなみに包装資材は磯村商事で手配した。極めて迅速に対応してくれるので紹介しておく次第。
 昼前に青空書房へ持ち込む。
 うちからは自転車で10分もかからない。徒歩15分ほど。
 off
 青空書店については筒井康隆『不良少年の映画史』に詳しい。あと『腹立ち半分日記』や、最近では『愛のひだりがわ』にちらっと出てくる、筒井ファンの聖地のひとつ。
 店主の坂本さんは本と映画に詳しく、本好きなら誰とでも雑談に応じてくれる。
 この日も、ちょうど半客会メンバー登場(今日が忘年会なんだそうである)、デジカメのシャッターを押してもらった。
 坂本さん「この本、ナンバのジュンクドーから問い合わせがありましたで」
 たぶん……ワッハ上方にチラシを置かせてもらっている。これを見た人がその足でジュンクドーへ行って「この本ないか」と訊ねたらしい。ありがたいことである。

12月8日(月)
 中津郵便局から「料金別納」のゴム印を借りてきて書籍用封筒に押す。
 それから「初荷」を局に搬入。
 月曜は他にも雑用が多い。
 午後、西天満の米朝事務所へ。
 田中社長に「歌之助」見本を届ける。「グッズ担当」の大森さんを紹介してもらう。明日の京都・安井金比羅さんの一門勉強会から販売してもらえることになる。
 その他、自転車で市内ウロウロ。急に風が冷たくなる。
 夜は知人が送ってくれた新宿トラッドジャズ・フェスにおける「野良青年団」の録音CDを聴きながら湯割り。
 バカうま。
 北中青年のソプラノがうまく、ボンクラ息子その2が貰ったという「北海道産の紫蘇焼酎」、湯割りにすると紫蘇の香りがして、これまたうまい。
 酩酊する。

12月9日(火)
 配本の日である。
 桂米朝事務所へ。『桂歌之助 飲む前は律儀と遠慮の人なのに』を搬入。今夜の京都「かねよ寄席」で販売開始である。
 あと、あみだ池まで。表紙のデザインをやってくれた塩田基明さんの事務所へ。
 かんべむさし氏の仕事場に寄って1時間ほど雑談。なぜか「ダミダこりゃ〜」という話になる。テーマはマル秘。
 帰館すると、桂歌々志さんから電話、自分の会での販売用に送ってくれとの連絡。荷造りして近くのヤマト運輸へ搬入。
 郵便局とヤマト運輸はすっかり顔なじみにまってしまった。
 夜、専属料理人は「年一度だけの忘年会」とかで「ふぐ」を食べに行ってしまう。嗚呼……。
 わしゃ明日の健康診断に備えてアルコール抜きの粗食である。
 こんな日に限って、「妙なFAX」が届く。
 昼間の「ダミダこりゃ〜」のタタリか。北朝鮮関係と××関係、かんべの予見というのは不思議に的中することが多い。うーん、一杯飲めないのがつらいなあ。

12月10日(水)
 アルコール抜きで寝付きが悪かったのに定刻4時前に起床、テレビで『フルメタル・ジャケット』の後半を観る。早朝から観るものではないな。
 朝食抜き。
 近所の医院で血液検査・他。
 遅めの朝食の後、『歌コ本』の荷造り。郵便局からの発送後、本町・小牟田氏の事務所にも搬入。
 地下鉄で天王寺へ行く。
 「青空カラオケ」の現場を見学する。
 ここに来るのは12年ぶりである。
 学生時代からの散歩道のひとつに、地下鉄花園町から山王町を抜け、細く長い商店街を通って阿倍野筋へ出る。古本屋を数軒回って、天王寺公園を通る。大道芸人や香具師が出ていて、縁日の雰囲気だった。通天閣を眺めながら公園の坂道を下り、タタキ売りを見学したあと、ジャンジャン横丁で生ビールと串カツで終わる。
 この散歩道が遮断されたのが1990年。大阪市が公園を有料化したからである。
 金払って散歩するアホがおるかいな。それも役人の遊興費を払ってよ。
 有料化の前には「天王寺博」という意図不明の博覧会があった。
 浮浪者排除が狙いといわれていた。
 off
 連れ込みホテル密集地を抜けて、はじめてカラオケ屋台の並ぶ歩道を通る。
 数軒が営業しているが、この音響はひどい。歌も、がなりたてるのを目的にしているような歌唱で、騒音としかいえない。無許可営業も違法だから、まあ撤去はしかたあるまい。
 だが、遠因は「情のない市政」にあるのは明かである。俺は浮浪者といっしょに公園から排除されたのであり、今でも大阪市の役人を恨んでいる。
 カラオケ屋台の並ぶ歩道からみる天王寺公園、人影はほとんどなく、寒々としている。
 カラオケ屋諸君、影ながら支援するぞ。
 久しぶりにジャンジャン横丁でビールと串カツ。

12月11日(木)
 朝、米朝事務所へ2ロット目の配本。
 京都の落語会での出足好調とか。ありがたいことである。
 昼、K川さんから電話。中津に来ているからと、歌やんの本、直接購入に立ち寄られる。ありがたいことである。
 郵便局からも発送数冊。
 夜、ビール飲みながら、今頃であるが、後藤勇一郎の『私季』聴く。素晴らしい出来映えであり、特に最後の「枯葉」ソロはグラッペリ流のジプシーバイオリンや様々な奏法が取り入れられた快演で、そのテクニックに驚嘆する。ジャズでの「枯葉」はたぶんわがCDの中にも10数バージョンはあるだろう。わが「枯葉」ベスト3は(エバンスとキャノンボールの定番を別にして)、デフランコ、グラッペリ、エロール・ガーナーの3曲だが、後藤勇一郎のはこれらに並んでの愛聴ナンバーになりそうである。

12月12日(金)
 早朝の電車で播州龍野のタイムマシン格納庫に移動。
 実家にも寄る。
 慌ただしくも午後の電車で帰阪。
 『桂歌之助』の大口注文あり、荷造りしてヤマト運輸に搬入。
 青空書房の坂本さんからも電話。初ロット完売したから届けてくれという。ありがたいことである。
 よく身体を動かした日である。ビールがうまい。
 で、夕刻のニュースを見ていたら「梅田の阪急デパートの植え込みで男性ミイラ化遺体発見」という。
 ホームレスらしき死体、死後約2カ月というが、その場所、阪急の西側、梅田の歩道橋の階段のすぐ下ではないか。
 off
 ↑ここである。歩道橋から見えなかったのが不思議だ。
 ルン吉くんじゃないだろうな。

12月13日(土)
 昼前、青空書房から電話。自転車で駆けつける。
 京都から山本孝一さんが来ていて、歌コ本にサイン(編者がサインというのはおかしいのだがなあ)。
 山本さんはSF、落語とともに「コミック・ソング」にも詳しく、この方面の情報交換も。(「スタコイ東京」とか「宇宙旅行の渡り鳥」とかね)
 off off
 坂本さん、『桂歌之助』のポスターを作ってくれている。ありがたいことである。
 昼、小牟田氏が来穴蔵。
 12月22日にアイルモレ・コタでの『歌之助を偲ぶ忘年パーティ』用の本をクルマで搬出。忘年パーティの参加者は80人を越えそうという。
 大盛況だが、キャパが心配になってくる。
 昨年7月25日の「偲ぶ会」と同規模になりそうな。この時より少し広いフロアだから、なんとかなるか。
 夕刻、かんべむさし氏来穴蔵。
 「ダミダこりゃ〜検討会」という不思議な雑談、ビール飲みながら1時間半。結論は出ないままである。

12月14日(日)
 朝刊に都筑道夫氏の訃報。ハワイに住んでおられたのか。
 『推理作家の出来るまで』が完成していたのがなによりであった。
 終日、『歌之助を偲ぶ忘年パーティ』のための「特別付録」作成。
 先週から専属料理人に「内職」として手伝わせていたものの仕上げである。
 内容は12月22日までマル秘。
 専属料理人、知人からチケットを貰ったとかで神戸のコンサートに出かける。
 夜はひとりで、自家製イカの塩辛、水炊き、焼酎湯割り。
 気楽に飲んでいたら、某所からのメールで「フセインを拘束」のニュース。
 20時にNHKで短いニュースがあり、21時から本格的なニュースになる。バクダッドからの中継、21:20頃から。
 しょぼくれたフセインのビデオも放映される。……小金ちゃんの時はどんな風になるのであろうか。
 バグダッド、市民が「歓喜の祝砲」と空に向けて乱射しているが、こんなに銃があるってことの方が恐ろしいね。

12月15日(月)
 大ニュースが世界を駆けめぐっているというのに新聞休刊日とは残念なことである。
 4:30からNNN24を初めとするニュース・サーフィン。
 が、さほどの新情報はない。
 本日も本の発送業務。
 荷造り作業の途中、タイムマシン関係の来客もあって、慌ただしいことである。
 夕方、歩いて茶屋町画廊へ。
 大森重志さんの水彩画展。初日で「ささやかなオープニングパーティ」がある。
 大森氏はサントリー宣伝部勤務が長く、絵画教室も運営されているが、ぼくの知るのはロイヤルフラッシュ・ジャズバンドのリーダー/バンジョー奏者の顔である。神戸ジャズストリートの記念グッズに、神戸の町並みを描いた絵はがきがあり、その作者が大森さんである。
 off off off
 今回の個展はイギリスのライ・コッツウォルズ地方の風景画が中心。
 緑と古い建物の雰囲気がいい。
 ※水彩画展は12月15日〜20日。茶屋町画廊。06-6374-0356
 うわばみさん、藤本さんというジャズ友といっしょになる。
 元サントリーだけに、ビール、ワインが並ぶ。ありがたくワインを……ちょっと飲み過ぎである。20時前まで。盛況である。
 末広扇心さん(ブルーのブルゾンの人)はタイムドメインの代理店をやっていることが判明。わしゃ今年6月にミニを導入したばかり。話をしていたら、やっぱりバズーカ型(別名、便所の臭気筒型)の上位機種がほしくなってくるなあ。
 もう少しワインで酔っぱらうと衝動買いしてしまうところである。
 悪友が揃っているので、あと、飲みに行きたくなるが、このところ疲労気味であるので自粛。歩いて帰館するのであった。


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