HORI AKIRA JALINET

『マッドサイエンティストの手帳』259

●マッドサイエンティスト日記(2002年12月前半)


主な事件
 ・滝川雅弘・試写室ライブ(1日)
 ・パネル「ロボットと上手につきあう法」(7日)

2002年

12月1日(日)
 専属料理人、朝から出かけてしまった。「一万人の大工」が大阪城公園付近に集まるとかいうのである。「アパッチ」との一大決戦の日らしい。がんばってこいとしかいえない。大工というのに法被でなく、白と黒の正装調である。汚れないのかねえ。
 夕方近くまで穴蔵に籠もる。
 夕刻、地下鉄で西大橋。松竹ビルの試写室へ。
 大川さん企画の試写室コンサート。Big Jazz Riverの6、7回目になるのかな。
 本日は、
 滝川雅弘(cl),西山満(cello),橋本裕(g),橋本有津子(org),塩入基弘(ds)
 橋本裕は名手といっていいし、何度も滝川さんとのライブは聴いている。有津子夫人のオルガンははじめて。リズム感が心地よく、ギター、クラとのアンサンブルもとてもいい。海外での演奏も多いという。……と結構ずくめのライブだが、セロを弾くのだけは音質が合わないなあ。まるで破れ三味線。
 off
 19時まで。
 心斎橋まで歩いて、ピンカラの店「LuLu White's」へ。日曜もやっているのであった。専属料理人が「大工仕事のウチアゲ」まである、夕食は適当にということで、ちょっと落ちるけどジャズを肴に「ピンカラの手料理」である。
 off
 2時間ほど。おでんとか手羽焼きでビール、焼酎。
 と……明日レストランをオープンするという「ピンカラのご友人」が来店。店の案内をもらったら、なんとわが穴蔵から50メートルほどのところ。喫茶店だったところが、そういえば何か工事をしていた。今度は『GATO』という店になる。ガトー・バルビエリのファンだからではないらしい。
 21時頃に帰宅、しばらくして専属料理人も帰宅、なにやら興奮状態で「佐渡の頭領の采配で大きい古時計を直した」とか、そんな話をしておる。
 つきあって、またワインを飲みだしたら夜中になってしまった。

12月2日(月)
 早朝のニュースでは、民主党ゴタゴタ、鳩山が小沢と「新党」?! たちまち内紛状態になっていのらしい。そりゃそうだろう。小沢からすりゃ鳩なんて赤子の首を片手でポキンと折ってしまうようなものだからな。鳩の「ブレイン」がいかんのだろう。また五十嵐敬喜と寿司でも食ったのではないかと余計な心配をしてしまう。
 が、民主党なんかにかまってられない。
 朝から自転車で市内ウロウロ。
 午後、先日空輸したタイムマシンについて台湾のBillくんとメールのやりとり。問題箇所のデジカメ写真にチェックマークやメッセージを書き込んで添付してくる高等技。こちらもそれに回答を重ねて返送するというやりとりで、どうやら台湾まで飛ばなくてもすみそうである。

12月3日(火)
 終日穴蔵。
 母親用の年賀状100枚を作成、プリント。老母も今回からインクジェットプリンター用に鞍替えである。
 某税務事務所から書類がどさっと届く。いやだなあ。

12月4日(水)
 早朝の電車で播州龍野のタイムマシン格納庫へ移動。
 ついでに実家に年賀状届けて、夕刻帰阪。

12月5日(木)
 昼、地方在住の友人が来阪、昼飯でもということになる。
 ヒルトンプラザ、地下に「たちばな」がオープンしている。ミナミ、松竹劇場の地下にある豆腐料理の店。このチェーン店か梅田にもできたらしい。
 ここで「豆腐御膳」というので地ビール2杯。自由業というか失業者というかタイムマシン業者というか、要するに上司のいない立場になってからは、昼ビールは極力控えているのだが(……それまでは飲んでいたみたいだけど、そうではない。歯止めが効かなくなるのを心配して)まあ本日くらいはいいか。午後1時を過ぎてガランとした店でのビールはなかなかオツでげす。

12月6日(金)
 雑用が多い。
 ちょっと古い雑誌で確認したいことが発生、午後、自転車で中央図書館へ向かう。が、本町過ぎたところで、市立中央図書館は金曜が休館日であったことに気づく。
 ついでだから、かんべ事務所に寄って雑談。
 わがHPの白抜き文字、かすれて読みにくいという。かんべ氏のパソコンでは確かにそうだな。輝度が少し違うようだけど。
 わが設定では太字にするとすこしボケので、設定を変えた経過があるのだが。
 しかし、小文字はすこし太くした方が読みやすそうなので、帰宅後変更。

 
●これがふつうのロゴ。
 ●こちらが太字。
 ↑以後、こちらに変更である。全記事を直すのは面倒だけど。
 
 本HPで使用しているタグ、「非推奨」で近い将来廃止されるかもしれないのも使用している。リニューアルの時期が近いかもしれない。ずっとエディターでタグ手打ちでやってきたが、HP作成ソフトに移行すべきか。

12月7日(土)
 午前中、「穴蔵」の応接室に某くん来訪、タイムマシンの打ち合わせ。
 午後、中之島、朝日新聞社の「朝日コミュニケーションホール」へ。
 14時〜朝日新聞社「アサコムホール」でパネル『ロボットと上手につきあう法』
 関西……というより日本を代表するロボット研究者、浅田稔さん(大阪大学大学院研究科教授)と川人光男さん(ATR国際電気通信基礎技術研究所室長)の講演があり、あとぼくが加わってのパネル。
 司会尾関章さん(朝日新聞科学医療部長)
 会場に、大迫公成さんや、林譲治さん、北野勇作夫妻、それに高田公理さんの顔も見える。まあ気楽な感じでいいかと思っていたら、なんと松田卓也先生が隣席に来られたのでびっくり。尾関部長と旧知の仲らしい。
 off
 浅田先生とは何度かいっしょに話したことあり、川人先生とは初対面。
 両氏のロボットへのアプローチの違いが面白い。浅田先生はロボカップ提唱者のひとりで生粋のロボット学者といっていい人。川人先生は自らを「脳の研究者」と規定して、脳研究の道具としてロボットに注目している。
 パネルでは川人先生がSFネタを振ってくれたので助かる。……川人先生はラリイ・ニーヴンと筒井康隆のファンという。物理出身で工学博士、ニーブンはわかるが筒井作品は何が好きかと質問すると、「人生を変えた一冊の本」が『脱走と追跡のサンバ』で、この作品が、物理学から脳科学に転じるきっかけという。こういう学者はまことに信頼できるのである。
 両氏の講演、たいへん興味深いものだった。
 浅田先生の「ロボットシティ構想」がパネルの後半で紹介された。これは大阪をロボット研究とアミューズメントが一体化した街にしようという、壮大にして刺激的な計画である。こうなると大阪も捨てたものではないなあ。
 終了後、松田卓也先生や科学部関係の方々もいっしょに軽くビール。
 ……緊張感がなくなって、それに真性マッドサイエンティスト(※)の松田先生が加わったこともあって、こちらの席の方が爆笑ネタが多いというのは、まあこういう企画の通例でもある。
 off
 人相問題、左右問題、左右認識(地図、画像診断の左右基準、など)、ロボットの性差・老化問題の続き、表情の問題、ロボットの「作り笑い」、マクド問題再燃、ロボット労働力のコスト、合気道・田植・相撲取りの動作、コミュニケーションの道具としてのタイムマシン、その他色々。……いやあ、オフの方が面白いのは本当だな。
 週末は京都で過ごされる松田先生と淀屋橋まで。20時過ぎ帰宅である。
 帰宅後、異形コレクションの新刊『酒の夜語り』数編を拾い読み。それぞれ面白いが、特に中島らも「頭にゅるにゅる」に仰天。ドキュメントというがホンマかいな。特に後半に出てくる某作家。このモデルらしき人物について、じつは先ほどのオフレコ席で、わしゃ「左右の表情の違い」のモデルとして論じたばかりだったのである。中島らも、恐るべし。

 ※「人類の未来は明るい寝たきり生活」という松田先生のマッドぶりは、たとえば『人間原理の宇宙論』あとがきなどに見られる。この本、「超知性への進化」を論じた章が特にすごいが、あとがきには「これからのハイテクの進歩は楽しみである。私が生きている間に、カプセル人間、シリンダー人間になりたいんだもん。」……SF作家でもここまで発言する人はそういませんぜ。
 と、しかし、これはむろん健全にして明晰な知性に裏打ちされてのもの。その本領は松田卓也「愛の小部屋」で読めます。やっぱり「斬る」がいちばん面白い。

12月8日(日)
 終日穴蔵。
 二日酔いだからではなく、寒くて小雨。出歩く気になれないだけである。
 夜、FMの「セッション505」に久しぶりに谷口英治クインテット登場。ピアノレス、ビブラホンとギターが加わった新編成。ヴァイブがリズムもサポートしていて、グッドマンのスタイルとはちがったモダンスイングの本領。ゲストの右近ちゃんがテナーで「メモリーガ・オブ・ユー」を吹いたのも聴かせた。来年にはこのメンバーで新CDが出るという。このメンバーのライブは一度聴きに行かねばなあ……。

12月9日(月)
 終日穴蔵。
 とはいえ電話の多い日である。
 たちまち夕刻である。
 早寝である。

12月10日(火)
 定刻午前4時起床。
 朝刊にSF大賞決定の記事。
 牧野修『傀儡后』と古川日出男『アラビアの夜の種族』のダブル受賞である。
 「かめくん」に続いてコテコテの「大阪SF」の連続受賞はすごい。「アラビア」は未読である。近いうちに読もう。
 正直な感想を述べれば、Jコレクションは対象となる期間中の作品はすべてどれが受賞しても不思議ではないレベルで並んでいる。Jコレクション2作品同時受賞でもまったく不思議ではないと思っていた。
 したがって、こんな場合、選考は「減点法」にならざるを得ないだろう。
 問題は選評である。
 ハードSFの大傑作2編(Jコレクションには候補以外、もうひとつハードSFの傑作があるが)についてどんなコメントが出てくるのか。Jコレクション3ハードSF作品、おれは「感嘆」こそすれ、減点する部分などどう読んでも見つけ出せないのである。前回みたいな見当違いなアホ発言が出てこないことを祈るばかりだ。
 ……と、これは受賞作を貶めることではまったくない。
 ハードSFが正当に評価されるのかどうか、それだけが気がかりなのである。
 寒い日である。
 ゴト日であって、零細タイムマシン業者も銀行関係ウロウロするのであった。
 民主党、管が党首になった。今さらなあ。面白くないなあ。まあどうでもいい党だけど。

2月11日(水)
 午前3時に目が覚めてしまった。
 テレビでジャパネットタカタの「叩き売り」見物。本日のサクラはダチョウ倶楽部というトリオであるが、あの真ん中にいる男、辻仁成に似てないか?
 4時半からのニュース、女子アナ3人(それも仲がいいとは見えない)が並んで話題の奪い合いをやる。人間、朝は保守的なのである。早朝から職場の騒がしさを放送してどうなるのよ。いったん切って、5時からの国営放送のニュース、これも男女2名が担当。5年ほど前からだ。久田直子さんがひとりで担当していた頃が懐かしい。
 午後、マホガニーホール・ストンパーズのビンカラが来穴蔵。
 バイクで来たと、おっそろしくド派手な防寒上下。しまった、写真を取り損なった。
 ODJCのHP立ち上げの打ち合わせ。
 日本のトラディショナル・ジャズ史を書いてくれる人がいないものか。
 ラスカルズの40年史だけでもかなりの部分はカバーできるはずだが。
 夕方のニュースで、やっと「林真須美の判決言い渡し」。主文が最後だというから死刑確実だったのだが、しかし長い読み上げだなあ。簡略化できないのか。
 集合住宅の理事会。まだ半年近く任期が残っている。嗚呼……。

12月12日(木)
 終日穴蔵。少しは仕事もするのであった。
 夕刻のテレビニュース。「今年の漢字」で「帰」という字が選ばれて、清水寺の貫主が揮毫するところが写った。……最後の縦線を見事に左側に撥ねたが、ありゃまっすぐが正しいのではないのか? いや、わしゃ小学校以来「習字」なんてやったことないし、書道はまったく知らない。ただ「活字」で見る「帰」とあまりに違うのでそう思っただけだけど。

12月13日(金)
 またも午前3時に目が覚めてしまった。
 別に早起きでかまわんのだけど、早く眠くなるから、だんだん早起きが進行することになるので困るのである。タイムマシン業者としては、コアタイムは世間と合わせる必要があるからなあ。
 終日穴蔵。といっても午前午後、応接に来客あり、だらしない格好でいるわけにもいかず。
 不景気な話色々。まあご時世だからなあ。

12月14日(土)
 案の定、午前2時に目が覚めてしまった。
 しばらく本を読むが、どうも先日来、体がなまっている感じ。運動不足である。寒いが久しぶりに「朝遊び」に出かけることにする。
 自転車で梅田。意外に人通り多い。ボンクラサラリーマン、少額だがボーナスが出て浮かれているのだろうか。ただ、忘年会帰りに見られる典型的酔っぱらいは見かけなくなったなあ。ツタヤで立ち読み、ここは午前4時まで開いている。
 off
 ちょうど『米朝コレクション4』<商売繁盛>篇が出たところで、幾つか確認したいことがあったので、米朝落語全集のCDを数枚借りる。
 米朝全集はDVDの販売が始まったが、これを最終メディアとして揃えるかどうか迷うところだ。
 ……そういえば週刊文春の「ホリイのずんずん調査・師走スペシャル」は労作である。米朝全集CD40枚と米朝珍品集8枚に収録の全87席について、「笑い」の数を集計して、笑いの密度でランクングしいあるのだ。意外にも1位は「江戸荒物」で8.7秒に1回の笑い。むろん、一席の中での笑いの数は「地獄八景」の300。だが密度では13.3秒に1度で25位である。ほんまかいな。
 この「笑い」は「軽笑」「哄笑」「大笑」「爆笑」「大爆笑」の5段階。この分類はたぶん主観的な判断が入るだろうが、「大爆笑」というのが「地獄八景」に記録されている1つだけ。どの場面だ? 閻魔の顔の実演か、人呑鬼のヒモを全部いっしょに引っ張ろうという場面か? これも確認が必要だな。ツタヤに地獄は見あたらず、後日の課題とする。
 穴蔵に戻って、米朝落語2席。やはり落語は早朝に聴くものではないな。
 終日穴蔵……のつもりが、歩くにはちょっと距離のあるスーパーの特売日だというので専属料理人と自転車で出かける。冷凍食品などの運搬役である。
 帰ると、宅配便で「巨大な肉塊」が届く。大学同期のM西くんから。近くの肉屋特性の焼き豚だという。先日の同窓会幹事ご苦労様という意味らしい。ありがたいことである。
 夕刻、17〜18:20、かんべ来穴蔵。『米朝コレクション4』<商売繁盛>の解説者である。かんべ解説、前段と後段で文体を変えるなど、なかなかの芸である。本日は北朝鮮ネタはなし、米朝関係で雑談1時間。
 夜、M西くんからいただいた焼き豚。専属料理人がサイコロ状に切ったので焼酎湯割り。バカウマ。M西くん、自重でヒザがおかしくなって歩けなくなった病歴を持つが、なんとなく理由がわかるなあ。

12月15日(日)
 やっぱり午前2時に目が覚める。無理してじっとしていたらまた眠れて、今度は5時前に目が覚めた。……朝日新聞に先日のロボット・パネルの記事。さすがに品よくまとめていただいている。実際に聴かれた方はおわかりでしょうが。
 快晴である。
 少しは体を動かさねばならぬ。「明るい寝たきり生活」が理想とはいえ、まだ扶養家族を抱えている身としては、動けないことにはゼゼがいただけない。昼前後、長柄橋近くまでサイクリング……15分ほどだけど。バッタ屋「濱伸」を久しぶりに覗く。この店もよく持つなあ。バッタ品見物、特に何も買わず。
 静かな午後、難波弘之さんの(誰がリーダーというわけでもないらしい)トリオ「A.P.J.」のセカンドアルバム『Labyrinthos』を聴く。
 off
 KOLA005 コナミ・ミュージック・エンターテインメント
 難波弘之(p),水野正敏(e-b),池永一美(ds)のトリオ。
 キーボード主体だった難波さんがアコースティック・ピアノを弾くトリオである。
 キーボードで演奏する「SF」がセンス・オブ・ワンダーで代表されるSFなら、アコースティック・ピアノで描かれるのは内省的思索的ニューウェーブの雰囲気と感じる。
 やっぱり難波さんは貴公子であり、演奏に気品があるなあ。
 センス・オブ・ワンダー、野獣王国と並ぶ、新しい難波ユニットである。
 ……さすがに2時起きだと眠い。
 この記事をアップして21時就眠予定である。
 ああ、ゆっくり朝寝がしてみたい。


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