『マッドサイエンティストの手帳』859
●マッドサイエンティスト日記(2025年8月後半)
主な事件
・ライブ@マホガニーホール(16日)
・河合良一メモリアル@ニューサン(17日)
・桂米朝まつり@姫路(19日)
・After Carnival@ニューサン(24日)
・『紙魚の手帖 GENESIS Vol.24』(東京創元社)
8月16日(土) マホガニーホール
猛暑日つづく。
午後、専任料理人と心斎橋のマホガニーホールへ。
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盆と河合良一さんの三回忌(8月12日)。
加藤平祐さんが河合さんのアルバートを持って来阪。ラスカルズの福田恒民さん、川合純一さん、その他関西のODJCバンドのピックアップメンバーが参加して、河合良一さんを偲ぶ内輪のライブが行われた。
讃美歌、それにルイスでおなじみの曲を中心に夕刻まで。
川合さんは、ここ(マホガニー)での響きがプレザベーションホールにいちばん近いという。
7月にルイスの誕生日、8月に河合さんを偲ぶ。こんなかたちでニューオリンズジャズを継承しているのは大阪だけであろうな。
8月17日(日) 河合良一メモリアル@ニューサン
もう飽きてきたが猛暑日。世間は盆休みの最終日。
・コミケが今年で50周年というニュース。へぇ。マンガ同人誌販売は1975年からだったのか。
SF大会のディーラーズルームの方が早かったのではないか。
コミケを知ったのは、それに関連する仮装行列?「コスプレ」を知った1980年頃だつた。中森明夫の「オタク」命名が1983年、日野啓三が『夢の島』でコスプレを描写したのが1985年。
だが、SF大会でコスプレ(らしきこと)をやり出したのは1970年代半ばだから、やはりこちらもSF大会の方が先行している(仮装で街中に繰り出したのはコミケ参加者の功績?だが)。
・午前、梅田の某店舗へ。色々迷ったが(二地域居住・固定電話廃止・緊急時の対応など)、不調のスマホを格安機種に買い替えるという、ごく普通の結論に達した。スマホの寿命とわが寿命が一致すればいいのだが。
・午後ニューサントリー5へ。
河合良一メモリアル・ライブ 河合良一さんを偲ぶ会である。
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ニューオリンズ・ラスカルズ(の生き残りメンバーと自称?! clは加藤平祐さん)をはじめ、ニューオリンズ・フォーティズ、マホガニーホール・ストンパーズ、ニューオリンズ・レッドビーンズが出演。それぞれ讃美歌や河合さんゆかりのナンバーを演奏。
加藤平祐さんが来たので、ニューオリンズ・キッチンファイブも再編成され、tbに福田恒民さんが入って、最後に最高の「In The Upper Garden」「Till We Meet Again」を聴かせてくれた。
いましばしここ(こちら)にいて聴いていたいが、あちらで聴くのも楽しみな、微妙な気分にさせてくれる。
これは米朝師匠「地獄八景」で冥途筋へ行きたくなるのと同じ。
ラスカルズと米朝師匠がともに大阪で活動していた時代……私には至福の時であったなあ。
8月18日(月) 穴蔵
やっと世間の盆休が終了。
落ち着いた静かな平日、穴蔵にて無為に過ごす……つもりだったが、ややこしい連絡多し。
いずれも非SF系。しかも非生産的なことばかり。嗚呼。
雑用やってるうちに夕刻。一杯飲んで早寝。
明日は少し動かねばならぬ。
8月19日(火) 大阪←→播州龍野/桂米朝展
早朝の電車で播州龍野へ移動する。8時30分に着。
タイムマシン格納庫で作業。炎天、1時間ほどで、たちまち40℃超え。こりゃ無理だ。
実家へ移動。
庭に百日紅が咲いている。わが記憶では晩夏の花である。高校時代、夏の終わりころ、この花を窓から眺めながら、勉強もせずNULLの原稿を書いていた。
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60年経って、こちらに戻って、同じ机で文豪の真似事がしてみたくなる。
ただ、地域の諸々の支払い、ややこしい近隣者の様子を探ったり、某工務店に二地域居住に可能性について聞きに行ったり、市役所に地籍の確認に行ったり、文豪らしからぬ雑用ばかり。
総合すれば、二地域居住については悲観的にならざるをえない。嗚呼。
午後の姫新線で姫路へ移動する。
みゆき通りを歩いて「イーグレひめじ」へ。
郷土の偉人・桂米朝の生誕百年記念桂米朝まつり「特別展 噺家の原点-100年のその先へ-」を見る。
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2月に尼崎であった米朝展「噺家の姿」と同規模だが、展示物にほとんどダブりなし。昭和20年に陸軍病院で書かれた「病床日記」……細かい字でノート2冊にびっしり書かれている……これには胸を打たれる。
わが高校時代の態度と較べると……やはり反省しなければ。もう遅いけど。
夕刻の電車で帰阪。
8月20日(水) 穴蔵
猛暑日。終日穴蔵。
昨日の反動であろう、出歩く気分にならず。
読書、午睡、空しく一日を送る。
8月21日(木) 穴蔵
本日も猛暑日なり。
お上の言いつけ(熱中症警戒)にしたがって、終日穴蔵。ボケ老人は出歩かないに限る。
と、午後、アメダスが最高気温を示す頃、隣接する市営廃墟に消防車が4、5台来た。
いよいよ、ここで消防訓練開始か。
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…と思ったら、一棟の上階の部屋に裏側からホースを通して、表側で色々チェック作業。訓練より調査か何かの確認?のような。
道頓堀ビル火災にからむ業務かもしれぬ。
ベランダの気温は36℃。炎天下、酸素ボンベを背負った重装備の隊員諸氏に敬意を表する。
たちまち夕刻。
ウチは訓練所の隣りなので、安心して気楽にビールをいただく。うまっ。
8月22日(金) 穴蔵
本日も猛暑日。
終日穴蔵……のつもりだったが、10時過ぎにヨドバシまで歩く。
先日機種変更したスマホに旧型からのデータの引き継ぎのため。
どうもうまく行かないので調べたら、WiFi環境下でないといかんのであった。
ウチはモデム〜デスクトップはLANケーブルだからなあ。ヨドバシ店内のベンチで2時間近く作業。
スマホは体感的に使えないので、手間がかかることよ。
10年近く、ショートメールでのやりとりが途絶えている顔ぶれが色々出てくる。元気なんだろうか。
もうこの世にいなくても驚かない。これはお互い様である。
炎天下を歩いて帰館。汗はかかず(すぐ蒸発するからか?)、正午34.8℃というが(coolbitのおかげもあって)爽やかなもの。
午後は穴蔵にこもる。
・夕刻のニュース。
20日神戸の女性刺殺事件、奥多摩駅近くで容疑者の身柄を確保。都内に住む谷本将志(35)。何思って神戸まで。
防犯カメラでの追跡だろが、早いなあ。AIの威力だろう。
それにしても「奥多摩駅」とは……青梅線の終点ではないか。
70年代末には青梅のタオル工場(ホットマン)で泊まり込みの作業をした。
最近(といっても1998年だから27年前)では、小作の住友金属鉱山へ行っている。google-mapで調べると、今は体育館(アリーナ)になっているような。
機会があれば青梅線でその先まで行ってみたい雰囲気のところだったが、もう街並みも変わっているだろう。
ただ、谷本が山奥まで逃げようとしていたのなら、奥多摩あたりは当時のままかも。
懐かしい場所を思い出させてくれるぜ、谷本は。
8月23日(土) 穴蔵
猛暑日。終日穴蔵。読書、午睡、空しく一日を送る。
8月24日(日) After Carnival@ニューサン
猛暑日。終日穴蔵……のつもりだったが、午後、出かけることにする。
ニューサントリー5の「創業55周年祭」である。
今日が最終日で、 After Carnival 。
わたくしは夜に出かけることが滅多になくなり、本日のアフターヌーン・ライブに参加する。
(金・土の夜はやはり超満員だったらしい)。
本日は、NSジャズバンド(ODJCのピックアップメンバー)で、プレザベーション・ホールのスタイルに倣って、フロントも着座しての演奏である。
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これにTonTonのヴォーカル、さらにゲストで福田恒民さん、川合純一さんも参加。
讃美歌、ゴスペル、小唄、ラブソングまで、いい演奏が聴けた。
最後にクラの風間さんが「60周年祭」をやれるかどうかわからないなどと、心細いというか縁起でもない挨拶。
これが影響したのかもしれないが、帰り際に、森マスターが眉村さんの色紙を持ってきて見せてくれた。
創業間もない頃(70年代後半)に書かれたもので、あまり人には見せないらしい。むろんはじめて見る。
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マスターの眉村さん好きは有名で、眉村さんの葬儀の夜にはボトルキープ1号のビンを見せてくれた。
わたくしは河合良一さんにリクエストして讃美歌を演奏してもらった。
これを「懐かしい思い出」にしてはいかんのだな。
ニューサン60年祭まで生きなければ。マスターもがっばってくださいよ。
8月25日(月) 穴蔵
猛暑日。終日穴蔵。読書、午睡、空しく一日を送る。
8月26日(火) 穴蔵
猛暑日。終日穴蔵。読書、午睡、空しく一日を送る。
8月27日(水) 穴蔵
猛暑日……は途切れて、大阪は最高気温34.9℃、本日はたぶん真夏日のはず。
終日穴蔵。ボケーーーーッと過ごす。
(あまり書くべきことではないが)ここ数日、不調である。
未明(2時頃)に目覚め、朝まで催眠不安定。
午前中はアタマ働かず、ともかく眠い。本を読もうにも、目が疲れて長時間は無理。
午後は午睡しようとし熟睡できず。
夜は、一杯飲んで、ともかく早寝するが……たぶん夜中に目が覚めてしまうだろう。
ここ数日、こんなバターン。
体を動かさないから、こんな悪循環に陥ってしまうのだろう。
熱中症がどうたらいっとるが、お上の言いつけを破って、明日から少し出歩くことにする。
8月28日(木) 穴蔵
晴。猛暑日復活。終日穴蔵。読書、午睡、空しく一日を送る。
8月29日(金) 穴蔵
曇のち晴。まだ猛暑日。
相変わらず、深夜に目覚め、終日眠いというパターンから脱せない。
月末最後の平日なので、午後、coolbitで武装して、炎天下、外出。
金融機関など回り、ヨドバシ、ジュンク堂を経由、傍店で液体系重量物を買って帰館。
メールなど色々あり、9月の予定が色々決まる。
やはり動かないといかんなあ。
『紙魚の手帖 GENESIS Vol.24』(東京創元社)
創元SF短編賞と選評を掲載。
他に短篇6篇。座談会「SF入門のための名作短篇(海外/国内)。書評、エッセイ、インタビューなど、コラムも充実している。
月刊SF誌がなくなった今、この雑誌形式の発行は貴重だ。久々にSF誌を読む楽しみを味わせてもらった。
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今年の受賞作2篇。
・雨露山鳥「観覧車を育てた人」は、製鉄ではなく「育鉄」、植物のように鉄が育てられることで産業が発達した世界を描く、スチール・パンクとでもいうべき作品。別世界の産業史が正面から語られるのではない。寂れた遊園地に観覧車がひっそりと育てられている。それを育てた「育鉄士」からルポライターが話を聞き出すかたちで、観覧車誕生の背景が語られていく。舞台は金沢市郊外、季節は早春。10年かけて育てた鉄の観覧車の中で、それが1回転する間に、育鉄の産業史から、それに関わった一族の背景、育鉄士の父子の葛藤などが語られる。短編として見事な構成である。
・高谷再「打席に立つのは」は、青春野球SF。誰もが「電化脳」を内蔵する世界。甲子園を目指す高校野球部の四番と女子マネージャーが「未認可」のアプリを使って意識を入れ替える。打者の弱点に気づいた女子マネがそれを指摘するための裏技だったが、戻せなくなってしまう。ふたりは入れ替わったまま、チームは予選を勝ち進むが……。人格の入れ替わりは映画やアニメでおなじみで、今ではSFと銘打たないのが普通。ただ小説としては抜群にうまい。しかも男女間の生理的な問題などに目を向けず、野球に徹する姿勢が爽やかで、見事な野球小説である。飛浩隆氏の選評の「ジャンルの最もコアな場所からこの作品を送り出す意義がある」という指摘にも感服する。
対照的な2作品の受賞、SFの広がりを再確認させてくれる上でも意義があると思う。
その他の短篇。
・レイチェル・K・ジョーンズ「惑星カルロスの五つの場景」……宇宙の墓場へ囚人を運ぶ掌編。
・宮澤伊織「高次元で収益化してみた」……SF漫談? ときときチャンネル・シリーズの一編。科学ネタを笑いに結びつける呼吸がいい。
・稲田一声「モーフの尻尾の代わりに」……調香師ならぬ感情調合師(ナノマシンによって要望に応じた感情を調合する)の裏側を描く。
・天沢時生「墜落の儀式」……滅亡した世界で、若者たちは高層の廃ビルから飛び降りる儀式を行う。
・小川一水「星間戦艦ゴフルキルA8の驚嘆」……半球太陽砲(ハーフダイソン)を搭載した巨大宇宙戦艦は、ある星系が創り出した戦闘兵器で、「全てを殲滅せよ」という命令を忠実に実行して銀河を飛行する。二万年で数十の文明を滅ぼすが、こんなのは序の口。しかし、その「全て」に、戦艦を誕生させた「親の種族」も含まれるのか。凄まじい宇宙SF。
それぞれ個性的で面白いが、特筆すべきは、
・理山貞二「キャプテン・セニョール・ビッグマウス」
人類が太陽系に進出している時代。クフ王のピラミッド、リヨンのワイン保管所、アテネの博物館など世界の各地で文化財が盗まれ、そこには奇妙な置手紙が残されていた。星間検察事務局長の娘イズミはAIになりすまして捜査に潜り込む。その「怪盗」の正体はすぐに見破るのだが、その背後には太陽系外から接近する何者かの影がある……。こんな「宇宙盗賊もの」みたにな紹介をしてもほとんど意味がない。人物設定(少女時代に浸食性ナノマシン爆弾による被害を受け、AI(機能人格保持者)の助けを借りている)、使われる武器(重力パルスで狙った物体をマイクロ秒の幅に圧縮した空間に閉じ込める)、舞台が拡大するにつれて、時空壁合誘発体(時間慣性が知性を惹きつける性質を利用した建造物)とか、フォボス=ダイモス連結体とか、魅力的なアイデアが惜しげもなく続々と登場する。それらが絡み合って、巨大な××の誕生に向かうのだが……これは新型のワイドスクリーンバロックといえるのではないか。傑作である。『時間衝突』を読んだ時の興奮を何十年ぶりかで思い出した。
8月30日(土) 穴蔵
晴。猛暑日。終日穴蔵。読書、午睡、空しく一日を送る。
各地で40℃超えが続出。さすがに猛暑報道には飽きてきた。
明日は名古屋40℃、大阪38℃の予報。それなら外出して、体温より高い「危険な暑さ」を体験してみるか。
8月31日(日) 穴蔵
深夜に目が覚めてしまう。
ボケ状態でテレビ、「ランボー ラスト・ブラッド」を見るが、陰惨な設定だなあ。
クライマックスの活劇が地下道と納屋の中では、開放感もカタルシスもなし。これがシリーズのラスト作品とは。
晴。終日穴蔵。昼間はただ眠く、ベッドで読書とうたた寝の凝り返し。
本日も猛暑日である。
予想は大阪は38℃。危険な暑さ。熱中症警戒アラートが出ている。
最高気温が気になって、室内、ベランダ、アメダス、近所の公園の気温を比較してみる。
(公園には、ベランダに吊るしている寒暖計を持ち出し、日陰(樹下)、雑草の上1.5mで測る。)
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14:50〜15:10。
室温30℃、ベランダ37℃、アメダス15時37.2℃、公園37℃。
まあこんなものか。
結局、大阪の最高気温(アメダス)は37.8℃(14:24)で、38℃には達せず。豊中が38.7℃を記録したから、予報にケチはつけないけど。
ちなみに体温は36.2℃。20分ほど外に出たが、汗もかかず、身の危険も感じなかった。
おかげで夜のビールがうまい。早寝。
猛暑の8月が終る。
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