『マッドサイエンティストの手帳』846

●マッドサイエンティスト日記(2025年2月前半)


主な事件
 ・中之島クロス(3日)
 ・桂米朝特別展(10日)
 ・創サポ講義(15日)


2月1日(土) 穴蔵
 目覚めれば2月であった。正月まであと11ヶ月。待ち遠しいことである(万博は終わっとるし)。
 寒そうな日。インバウンドが多いだろうし、土日は出歩かないのが賢明であろう。
 終日穴蔵。
・ごく少ない源泉徴収票がたぶん揃ったので、確定申告の計算(Excel)……3時間で完了。
 申告書への「清書」は提出の前日でいいであろう。
 午後はボケ――――ッと過ごす。
・映画(『敵』だが)を見に行きたいが、事情があって2月後半までは無理である。
 上映期間が気がかりだが。
・夜、NHK「新プロジェクトX」の「ゴジラ、アカデミー賞を喰う」が気になる。
 これも、『ゴジラー1.0』をまだ見てないので、パスするしかない。
 レンタルビデオ店が減ったのがいかん。いちばん便利だったツタヤ天六店もすでに閉店。配信サービスは面倒だし。
・しかたなく、夜はBSで『男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け』を見る。30年ぶりか。
 この作品、シリーズでは高評価の方らしいが、龍野市民は市長や幹部が芸者あげて派手な接待をやるのに違和感を覚えただろうな(梅玉旅館、70年前まではそんな雰囲気だったらしいが)。
 ラストで寅が「東京はどちらの方角だ」という。これは(上川原町の路地から見て)揖保川を隔てたわが実家の方向である。
 堀家住宅がラストシーンでギリギリ入ってないのが惜しい。

2月2日(日) 穴蔵
 曇天。寒い。雪の関東ほどではないのだろうが。
 終日穴蔵。
 これといった仕事はできぬまま。
・ネットで『鋼鉄都市』映画化決定のニュースを知る。→こちら
 20世紀スタジオが準備中、アカデミー賞受賞の脚本家ジョン・リドリーが監督・脚本を務めるという。知らない監督だが。
 60年代に熱中した作品。どんなロボット刑事が登場するのか。
 原作通りなら人間そっくりで、普通の俳優がやればいいことになるが、70年経って、それはないだろう。
 人間そっくりということなら「ブレードランナー」と比較されることにもなるだろうし、興味をそそられる。
 完成はいつか?  あと何年かは生きなければと思うから、終活中の老人にとっては、ありがたい企画というべきか。

2月3日(月) 中之島クロス
 月曜。立春なのであった。
 午前に出て、大阪駅からバスで中之島クロスへ。
 午前の部は簡単に終わったが、午後の時間をカン違いして、昼休みを挟んで2時間ほどの余暇が生じてしまった。
 薄曇りで、そう寒くはない。近所を歩いてみることにする。
 中之島はいい場所だが、昼飯だけは困る。気取った高級店ばかり。
 思い出して、玉江橋を渡り、新福島の近くまで歩く。確か「ジャズ住職」の寺がこのへんだったはず。
 目当てのうどん屋「讃く」はすぐわかったが、臨時休業であった。嗚呼。
 すごすご引き返し、玉江橋近くの天ぷら屋で安い天丼を食す。
  *
 悪くはないのだが、胃袋が讃岐うどん待機モードになっていたからなあ。
 国際美術館まで戻り、Space Ship's Cat と対面。時間がないので入館せず、陸橋を渡って中之島クロスに戻る。
 ここの2階……これから何かが入るのだろうか、ずいぶん広いフリースペースがある。
  *
 静かで、休憩用の椅子があちこちに。ここで30分ほど休憩。
 横のイベントスペースにはテーブルが並び、100V、Wi-Fiもあって、無料で使えるらしい。
 ノートパソコンがあればと思う。軽量のを導入するか。今後どれくらい来るかによるが……迷うところだ。
 午後の部も簡単に終わり、大阪駅までバスで戻る。

2月4日(火) 穴蔵
 数年に一度の最強寒波襲来?!
 昨日から、気象庁と国土交通省が「緊急発表」やるし、テレビ各局も最強寒波・警報級大雪の予報ばっかり。
 どんなものかと期待してたら、午前6時の外気は4℃(アメダスは2.6℃)で、この程度のものか。
 晴。穴蔵におれば気楽なもの。
 ただしアタマはあまり働かず。
 集合住宅の管理規約関係の雑事(もめ事)がまわってきて、半日、昔の議事録をめくって過ごす。
 アタマの再稼働にはちょうどいい……とでも思わなければ。
 この建物内でも、もう古株なのである。
 本日の最高気温は9℃(ベランダは輻射熱あり/アメダスは6.5℃)。
 そろそろ就眠と、21時、ベランダの寒暖計を見れば3℃(アメダスは1.9℃)で、まだ下がりそうな。
 こちらは水道が凍結することはないが、播州龍野がちょっと心配になる。

2月5日(水) 穴蔵/某所行き
 早寝したら午前2時に目覚める。
 起きてゴソゴソしながら、最強寒波が気になり、時々ベランダに吊した寒暖計をチェックする。
 2時、3℃(アメダスは0.9℃)
 4時、3℃(アメダスは0.7℃)
 6時、2℃(アメダスは0.5℃)……じりじりと下降していく。
  *
 晴。7時には日が出て下げ止まったようだが、今期最寒は間違いない。
 身の回りの物をバッグに詰め込む。
 避寒というわけではないが、気分転換のため、しばらく穴蔵を離れることに。

2月5日(水)午後
 〜
2月8日(土)朝

 穴蔵を離れる。
 3泊4日、非日常的空間で過ごすが、退屈であった。

2月8日(土) 穴蔵に戻る
 昼前に穴蔵に戻る。
 やっぱり落ち着くなあ。
 今朝がた、こちら(大阪市内)は今期最寒を記録したらしい(アメダス-2℃)。
 穴蔵は暖かく感じる(室温はエアコンなしで17℃)。
 俗世間を離れていたので、ニュースをあれこれ読んでいるうちに、たちまち夕刻。
 シャワー、夕食後、ともかく本日は早寝とする。

2月9日(日) 穴蔵
 定刻4時に目覚め、一連の朝の儀式のあと、6時過ぎからまた朝寝。10時前に起きる。
 延べ10時間以上、よく寝たものである。やはり寝心地がいいのだろう。
 終日穴蔵。
 アタマはあまり働かず。色々たまっていた非SF系の雑事の片づけでたちまち夕刻となる。
 ニュースは大雪ばかりだが、大阪市内は晴れ。最強寒波のピークは過ぎたように思える。
 明日は少し体を動かすつもり。

2月10日(月) 桂米朝「噺家の姿」
 晴。気持ちのいい朝である。
 午前、2ヶ月半ぶりに兵庫県へ越境する。
 阪神尼崎まで行き、兵庫県にしかない某信金のATMに寄って雑事処理。
 あと、国道を東に歩き、玉江橋(中之島と同名)を渡って、こちらが主目的・尼崎市総合文化センターへ。
 ここに来るのは「桂吉朝を送る会」以来、20年ぶりである。
 美術ホールで桂米朝師匠の生誕百年・没後十年特別展「噺家の姿」を見る。
  *  *
 そう広いホールではないが、充実した内容。宮崎金次郎氏の写真と成瀬國晴氏のイラストが多く展示されている。
 立派なパンフレット(無料)もいただいた。文化都市・尼崎市に栄光あれ。
 ……ついでに思い出したが、田中秀武氏が読売新聞に連載された米朝師匠との「二人三脚」記録はまだ本にならないのか。読売新聞がだめなら、どこか名乗り出る出版社があってもいいはず。生誕百年である。何とかしてくれ。
 あと、商店街を抜けて某「新地」跡も見学したかったが、後日の楽しみとして引き返す。
 米朝師匠関係では、住吉大社に顕彰碑が建立された。これらも見に行かなくては。
 万博なんぞより楽しみは多いのである。

2月11日(火) 穴蔵
・朝、阪神ラストランのニュース。
「10日、阪神電鉄で40年以上『青胴車』の愛称で親しまれた普通用車両5001形が運行を終えた」という。
 そういえば昨日、10:30頃に梅田から阪神特急に乗ったのだが、南側の普通ホームに人だかりしていた。青胴車の出発を待つ撮り鉄諸君だったのか。
 万博より面白いものは色々あるんだなあ。
 晴。気持ちのいい朝である。室温・ベランダ気温・アメダス、すべて昨日と同じ。
 終日穴蔵にこもることにする。
 少し歩いた方がいい気もするが、まだ体調との兼ね合いがつかめない。
 週末の講義のために、原稿を読んで過ごす。
 だんだんアタマの働きはよくなってきた……ような気がする。
 やはりSFのことを考え続けなければいかんのだなあ。
 たちまち夕刻。
  *
 東の空に満月……と思ったら、明日か? 明日は下り坂らしいから、ま、本日の月見でいいであろう。

2月12日(水) 穴蔵/網敷参拝
 薄曇り。寒いのであった。
 終日穴蔵……ということで、アタマを使わない非SF系の雑用をやっていたのだが、サプライ品の必要が生じて、午後、ヨドバシ往復。
 網敷天神社の前を通ったので、今月のお礼と来月もよろしくとお詣り。
 今年になってから、目についた神社や地蔵尊にやたら願い事をしている気がする。
 さぼどご利益を信じている訳ではないのだが、家族に負担がかかりませんように、程度である。
  *
 梅が開花していた。
 本日も10℃を超えることはなかったが、もう春なのである。

2月13日(木) 穴蔵
 晴れたり曇ったり。外の気温は未明から夜まで8〜9℃で、ほとんど変わらず。
(アメダスは、2時7.7℃〜正午6.7℃〜18時5.9℃)
 妙に寒い日で、出歩く気分にならない。
 終日穴蔵で終活(雑誌の整理)。
 今年は、米朝師匠生誕百年だから、三島由紀夫も生誕百年である。
 詰め込んでいた雑誌類の中から、事件直後の週刊現代増刊が出てきた。
  *
 前に古書店に2000円くらいで出ていたのを見たことがあるな。原価は150円。
 発行日は昭和45年12月12日。店頭に並んだ日付は思い出せないが、2週間ちょっとで編集発行したことになる。
 面白いのが「日本の知性40人は三島事件をこう見る」という「アンケート大特集」。
 「三島さんの作品は一冊も読んでいない」という岡潔から「即答しかねます」という保田与重郎まで、40人。
 その中で今も生きているのは「いい気なものではないか」と書いた佐藤愛子だけ。しかも三島より年上だからたいしたもの。
 よく覚えていたのは大藪春彦の回答だ。わたくしは大藪の愛読者ではないが、「野獣死すべし」から、盗作作品も含めて「汚れた英雄」あたりまで、よく読んだ方だと思うが、このアンケート以来、本を手に取ることはなくなった(同様の編集者がかなりいたことは後日知った)。こんな「回答」をした理由も想像がつくが、やめとこ。原因となったとおぼしき「三島・大藪対談」が載った週刊誌も播州龍野のダンボールの中にあるはずだが、もう発掘する体力がない。
 こんな雑誌類、どうしたものか。青空書房はもうないし、そのまま廃品として出すか、某古書店におまかせしろとメモを残しておくか……。

2月14日(金) 穴蔵
 快晴。穴蔵にこもっている限り、気分のいい早春である。
 終日資料を読み、メモを取って過ごす。
 たちまち夕刻。
 肉豆腐や刺身を並べてもらう。
  *
 これで冷えたビールをキューーーッとやったあと熱燗チビチビといきたいところだが、ノンアル一杯。
 不思議なもので、結構うまく感じるようになってきた。

2月15日(土) 創サポ講義
 晴。終日穴蔵。
 夕刻に這い出て、地下鉄で谷四へ向かう。
 その途中、谷町線・東梅田で、清風堂書店が今月末(2月28日)で閉店することを知る。
  *
 地下鉄谷町線の開通以来あった店で、地上にあった旭屋本店よりも古いのではないか。
 前の通路が、ニューサントリーファイブへ行く時の秘密通路でもあった。
 特定ジャンルに仕分けしてあり、コーナー別に眺めるのも面白かった。梅田地下街ではいちばんよく利用してきた店である。
 寂しい限りだ。
 18時前に谷三のCANVAS谷町へ。創作サポートセンターの講義。
 提出作品3編(短篇2、長篇1)。
・ハードSF短篇(前回の改稿版)。近未来の宇宙開発とAI維持を、電力事情という意外に書かれていない切り口で描いた秀作。
・異色の生態SF(前回の改稿版)。その筆致が昔の宮崎惇(といっても覚えてる人は少ないだろうな/むろん作者も知らない)の「卵」を思わせるような、奇妙な異星の生態システムを描く異色作。
・平城京を舞台に帝を狙う「妖怪」と、薬学や動物を専門とする若者グループの攻防を描く長篇SF? 史実と空想部分のバランスが微妙で、SF専門の私がこうコメントするのはおかしいが、SFめいた要素は減らして、当時の薬学などの知見を「拡大解釈」して補強する方が大化けしそうな力作である。
 いずれも面白く、議論しがいのある作品である。
 ……じつは人前に出るのが今年初めてだったので、まとまりのない話になってしまったかも。
 しかし、SFの話をしていると元気がでてくる。ありがたいことである。


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