『マッドサイエンティストの手帳』792

●マッドサイエンティスト日記(2022年11月後半)


主な事件
 ・KLL例会(18日)
 ・創サポ講義(19日)


11月16日(水) 穴蔵
 秋晴れである。
 終日穴蔵にあり。
 12月にややこしい用件が重なって、調整に苦慮する。
 今頃に「第8波が懸念される」なんていってるが、もう突入しているではないか。
 たぶん今月中に大阪の感染者1万人超え……どうすりゃいいのよ。
 身内のことも含めて、どう調整すればいいのやら……結局穴蔵にこもることになりそうな。
 あちこち連絡などしていたら、たちまち夕刻。なるようにしかならんか。
 専属料理人が、肉じゃが、翁豆腐、刺身などごく標準的メニューを並べた。
  *
 これが「龍野乃刻」があると絶品となる。これでビール、熱燗。
 早寝させていただく。

11月17日(木) 穴蔵
 天気牢晴。終日穴蔵。
 午後、yuotubeで『街が眠る時』を発見する。やっとアップされたか。
 1959年の日活作品。
 この年の夏、龍野の「銀映」で3本立でやっていた時に3回通った。
 もう一度見たいと、この20年以上探し回っていた作品である。
 さっそく見る……が思い込んでいたほどのレベルではなかった。
 なぜ中三の時にあんなに夢中になったのだろう。
 長門裕之のブン屋が暗黒組織を探るアクションもので、赤木圭一郎のデビュー作だが、ともにたいしたことなし。
  *
 やはり宍戸錠が凄かったのだと実感する。
 悪役に転向して(たぶん)最初の作品。自分でも成功したと著書『シシド』で書いている。
 拳銃構えてニヤニヤ笑うジョーの印象がともかく凄かった。
 その後、「渡り鳥シリーズ」の殺し屋からコミカルな役柄に変わるが、『拳銃は俺のパスポート』(1967)でふただび不気味な殺し屋が復活する。
 わたくしの記憶に間違いはなかった。
 ブキミ系ジョーの傑作は『街が眠る時』と『拳銃は俺のパスポート』なのであった。

11月18日(金) KLL例会
 小春の好天なり。
 昼前に出て阪急電車で神戸に向かう。三宮で下車。
 久しぶりにセンタープラザの吉兵衛でカツ丼を食す。
  *
 この10年ほど、カツ丼はここでしか食べてない気がする。
 午後は文化センターで神戸文芸ラボ(KLL)の例会。
 エッセイ5篇、短篇2篇の合評形式。
 エッセイについては、その題材にからんでの雑談会みたいになるが、年齢・経歴・生活環境などで見解ばらばら。特に京阪神間の話題が出てくると面白くなる。
 短篇は、
・コロナワクチンが一部の人間に「進化促進剤」として作用する設定。
・おたく専用の高級老人ホームが出来るが、入るにはある条件がある……
 ともに現実的な問題をテーマに据えているが、展開が対照的というか、前者は企業SFであり、後者は「ジジイ・ミーツ・ババア」とでもいうべき恋愛SF。評価もバラバラで……だからこそ面白いのである。
 夕刻に近い時間になってしまった。
 暮れ行く阪神間の夕景を眺めつつ阪急で帰る。
 急にセンチメンタルになるのであった。

11月19日(土) 創サポ講義
 天気牢晴。
 昼前に1時間ほど外出。重量物(飲料系)の運搬役である。
 それ以外は穴蔵にて資料の再チェック。
 夕刻に出て、地下鉄で谷町のCANVAVS谷町へ。
 久しぶりに創作サポートセンターの講義。
 会議室への出席者とリモート参加がほぼ同数である。
 短篇と長篇の2篇を題材に行う。
・太陽系外縁を哨戒する宇宙艦の内部で起こる連続殺人? 往年の名作「プライアブル」(といっても覚えている人は少ないだろうな)を思わせる設定だが、いかにも現代的な道具立てが持ち込まれているところがミソ。
・長崎の出島を舞台とする長篇ミステリー。探偵役は混血青年で、当時を代表する学者などが脇役で配置されている。力作であり、講義というよりも、作者から創作の手順を聞き出すかたちになった。手書きでノート3冊にびっしり書いたメモと下書きをベースにしたというから、敬服すべき姿勢である。
 ついでながら、梅毒が進行した症状が話題になる。これにもリアリティあり。
 実はわたくしも先日、生まれて初めて梅毒の検査を受けたばかり。身に覚えがあるからではなく、血液検査や心電図とならぶ「手続き上」の処置であるから念のため。最近流行っているらしく、コロナよりも恐ろしい。
 終了後、まっすぐ帰館。
 遅めの晩酌。ビーフシチューに赤ワインで、なんだかこれも作品内の描写に似てきた……

11月20日(日) 穴蔵
 未明だ。雨が降っている。浅田飴……にはならず。6時頃からは曇天。
 午前3時から昼頃まで、寝たり起きたりちょっと仕事したりの不規則パターン。いかんなあ。
 昼、横浜在住のボンクラ息子その1ファミリー(犬も勘定に入れます)とzoomランチを行う。
 こちらは専属料理人が作ったワンプレート(フライ・だしまき・サラダ・その他色々)。
 向こうはタマプラーザで買ってきたという豪華弁当。
 昼ビール飲みつつ、らちもない話をだらだら。
 ボンクラ息子の勤務地が渋谷なので、ハロウィンの様子がどうだったのか訊くと、アホが浮かれ出るのはハチ公エリア(4象限の1つ)で、他の象限は静かなものらしい。
 テレビが来るから目立ちたがりが浮かれ出る。カメラが来ると集まってくる。観測行為が観測対象に影響する。
 不確定性原理そのもので、昔はミクロな現象にしか適用できない理論を日常生活にまで「拡大解釈」するのは、SFの専売特許だったはずだが、アホのおかげで社会学者の商売道具になっていくなあ。嗚呼。
 あ、いかん。SFはそんな「古い発想」に留まっていてはいかんのだ。
 反省しつつ昼寝。

11月21日(月) 穴蔵/ウロウロ
 未明だ。雨が降っている。浅田飴にはならず。午前5時にはやみ、曇天、7時には晴れてきた。
 穴蔵にこもる……が、生産的なことは何もできず(どうも年内はこんな調子になりそうな)。
 体の衰え防止のため、午後は近所を散歩する。
 A先生の書斎棟前に「DAIKO 大光電機」のプラカード持った人が数人。
  *
 見学会かセミナーか社員研修なのであろうか。若い社会人らしい人が次々入っていく。
 「建築と照明」みたいな実験が行われるのだろうか。
 紛れ込みたいが、無理だな。
 「撮影禁止」の掲示もあり。気になるなあ。

11月22日(火) 穴蔵
 晴。終日穴蔵を出でず。
 ……と、だんだん晩年のおっさん(荷風散人)調になってきた。
 年内はこんな状態が続きそうな。
・ちょっと面白いニュース。
 オンライン採用試験で「替え玉受験」した関電社員の田中信人(28)逮捕。
 まさかこの程度の試験で本当に採用されるとは思えないが(企業側にすれば、履歴書見ただけではねるのは批判されそうだから…程度の試験ではないか)、この代行アルバイト、どうやら氷山の一角らしい。
 田中信人は近所(大淀南)の住人だ。少し調べて、明日にでも住居を見物に行ってみるか。
 一罰百戒の見せしめ逮捕か、これからゾロゾロ逮捕者がでるか、興味深いところだ。
 ヒヤヒヤしてる連中が多いだろうな。

11月23日(水) 穴蔵/ウロウロ
 未明から雨。暗き日なり。
 世間は「勤労感謝の日」。わたくしはもう勤労してないので、勤労者に感謝しつつ、穴蔵にこもる。
 テレビはサッカー(Wカップ)ばかり。もっと田中信人をやらんかい。以前「替え玉チーム」を組んでいた連中、ヒヤヒヤものだろうな。田中信人ひとりでは寂しいだろうから、引き続きゾロゾロ逮捕を期待する。
 午後、雨がやんだので、近所を散歩。
  *
 公園で紅葉を眺めてたら、急に空が暗くなり、雷鳴あり。慌てて帰館……と、雷雨になった。
 ややこしい日である。
 一杯飲んで早寝するに限る。

11月24日(木) 穴蔵
 晴。終日穴蔵を出でず。
 ちと事情あり(コロナではありません)、終日ベッドでジャズを聴き、米朝師匠を聴いて過ごす。
 たちまち夕刻。
 専属料理人がローストポークを作る。
  *
 これをメインにあれやこれやでビール、ワイン。
 お楽しみはこれだけだ。
 早寝させていただく。

11月25日(金) 穴蔵/ウロウロ
 晴れて風もなし。
 午前、地下鉄で淀屋橋へ。市内でここにしかないATMで用件済ませ、あと御堂筋を歩く。
  *
 銀杏を眺めるが……70年代に較べると、ずいぶん葉が疎らになった印象である。
 以前の勤務先界隈もうろうろ。旧勤務先の隣もそうだが、空き地(駐車場)が目立つ。
 本町全体が活気を失っていく印象である。
 伊藤忠が梅田(大阪駅)に移った頃(2011年)からの傾向であろうか。
 堺筋を北上、中之島〜西天満〜野崎町〜扇町〜中崎町を歩いて帰館。
  *
 おっ、12345歩になった。何も当たらんけど。

11月26日(土) 穴蔵/ウロウロ
 曇天なり。穴蔵にこもる。
 ここ数ヶ月「読み書きソロバン」が不自由になり、これといったことが出来ず。困ったことである。
 年内、こんな調子がつづきそうな。嗚呼。
 午後、晴れてきたので近所を散歩。脚腰だけは衰えぬようにしなければ。
 豊崎神社〜北公園〜本庄公園〜東公園を40分ほど散歩。紅葉を見る。
  *  *
 公園には誰もいない。
 夜は鴨鍋で一杯。
 早寝させていただく。

11月27日(日) 穴蔵
 晴。終日穴蔵にあり。
 不調である。
 気がつけば、わが余命は1年を切っているのではないか。
 亡父の享年を昨年に過ぎてから、つぎの「節目」は荷風散人のそれと想定してきた。
 おっさんは満79歳5ヶ月で死亡(1879.12.3〜1959.4.30)。これをわが年齢に当てはめると、来年の今頃ということになる。
 今は、断腸亭日乗でほとんど毎日「正午浅草」と記載された時期ではないか。
 わたくしの場合は「正午自宅」と書くことになるが……これでは面白くないな。
 夜にまた「自宅」へ行って、何皿か並べてもらって晩酌となるわけだから。
 おっさんを見習うなら、独居生活に移行するのがいいのだろうか。
 色々悩みつつ、専属料理人の並べたヅケ、レンコン挟揚げなどでビール、湯割り。
 早寝させていただく。

11月28日(月) 穴蔵
 晴。正午自宅。
 ……で終るような1日だが、天気がいいのでタカセ市場まで重量物(飲料系)を買いに徒歩で往復する。
 東公園を通過。工事中だったタワマンが全貌をあらわした。
 近年、近所にタワマンが増えて、わたくしは住みたいとは思わないが、ここだけはいいなと思う(南向き限定)。
 桜のきれいな公園に面しているからである。
  *
 笑ろてしまいますな(←先代歌やんのフレーズ)と思うのが、北側(写真右奥)のマンション。
 10年ちょっと前に出来たマンションだが、すぐ前にK食品(麩の老舗)の工場があって(あくまでも噂ですが)臭いがひどいと住民が文句をつけたらしい。それで(あくまでも噂ですが)K食品は嫌気がさして工場を移転、土地を売却、そこにタワマンが出現したという次第である。
 日陰になった(桜も見えなくなった)マンション(南側)住民の心中は(別に同情はしまへんが)いかばかりか。
 タワマン北側の部屋に入った住人は、恐ろしい怨嗟を浴びながら、そんなことに気づかず生活することになる。
 タワマン南側の住人は、そんなことに関心なく、優雅な生活を送る。
 やがて日陰族は恐ろしい行動に出ることになるが、それはタワマン内の住民を南北に分裂させることになる……と、(あくまでも噂をベースに想像する)これから書くかもしれないSFでありますが。
 近所にSFの題材はまだあるのだ。
 がんばって「不調」を克服しなければ。

11月29日(火) 穴蔵
 定刻4時に起きて、普通ゴミを出す。
 ついでにネコのエサ場を見たら、ノラが食事中であった。
  *
 これは今年生まれた仔猫の1匹のような。
 右耳の先端がV字型にカットされているように見えるのが気になる。不妊手術を受けたのだろうか。捕えられるようには見えなかったが。
 ノラ猫戦場異状ありか、異状なしなのか、混沌として、さっぱりわからん。
・今年6月下旬に穴蔵の眼下で4匹の仔猫が生まれた。
・7月から愛猫派(エサをやる女性2人)と嫌猫派(正体不明/YMCAらしい)が勃発した。
・嫌猫派の公園事務所への抗議、貼紙、タテカン、片づけ宣言と続いた。
 この経過は10月15日にまとめている。
 その後の1月半、愛猫派のエサ出し(夜中0〜1時)は継続し、エサを入れたプラ容器は明け方(5〜5時30分頃)に片づけられる。
 片づけるのが嫌猫派(YMCA)なのか清掃ボランティアなのかは不明である。
 エサを食べるのは、確認できているだけでクロ、トラ、トラ仔猫の3匹だけ。夜中1〜4時頃が勝負のようである。
 こんな状況が続いているのだが、仔猫の耳がカットされた(ように見える)ことで、状況がまたわからなくなった。
 北梅田の戦場から、世界がさっぱり見えてこない。仔猫の耳は怪我なのか手術マークなのか。ベラルーシの外相は毒殺なのか心臓発作なのか。これから冬を迎えて、戦線がさらに厳しくなるのだけは確実だが。
 朝9時頃から雨になり、終日降り続く。
 終日穴蔵。

11月30日(水) 穴蔵
 鬱陶しい曇天。終日穴蔵。
 これといったことは出来ぬまま。
 ただし、12月の予定など決まっていく。
 ややこしい月になるが、進展もありそうな。
 一杯飲んで早寝。
 無為に過ごした11月が終る。嗚呼。


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