『マッドサイエンティストの手帳』696

●マッドサイエンティスト日記(2019年1月前半)


主な事件
 ・静岡いたりきたり(5日)
 ・播州龍野いたりきたり
 ・横田順彌氏の訃報(15日)


1月1日(火) 元日
 穏やかな元旦である。
 リビングのベランダから初日を拝んだあと朝食。
 今年のおせちは事情があってごく簡素なもの。
  *
 ただし酒は別である。呉春大吟醸を開ける(年末に飲んでたのは本醸造)。
 やはりこれが究極の名酒であるなあ。
 あとはごろ寝。
 今年は仕事をしないのである。

1月2日(水) 穴蔵
 ややこしい日である。
 専属料理人が体調悪くダウン。微熱あり食欲なしという。
 昼は冷蔵庫をゴソゴソして自分用に鍋焼きうどんを作る。
 ポカリスエットをコンビニで買ってくる。
 夜は昼とほぼ同じ材料でまた鍋。専属料理人は豆腐と餅ひとつ。
 おれが冷蔵庫をゴソゴソやると、気になるらしく、ベッドから出てきて、あれはここ、それはここ、とやり出す。
 困ったものだ。
 ということで、穴蔵で本を読んで過ごす。
 平成最後の一般参賀のニュース。
 平成が終わろうというのに、どうしてもわからない昭和の謎がまだある。
 おれにとって戦後昭和の「謎の二大事件」は三島事件と落語協会分裂騒動である。
 ずいぶん関連書を読んだが、真相はわからぬままだ。
 落語協会分裂の方は、談志が何も発言しないまま死んで、もう不明のままだろう。
 三島事件……こちらは暮れに大澤真幸『三島由紀夫 ふたつの謎』(集英社新書)が出たので、新年から読んでいた。
 帯に「なぜ切腹したか? 『豊饒の海』のラストはあれでいいのか?」とあり、これがふたつの謎。
 期待して読んだが、やはり納得できる答え(特に切腹の方)は得られなかった。「覗き屋」が重要というのは理解できるが。
 二大事件、もう新事実が出ることなく、新解釈ばかりになるのだろう。昭和も遠くなりにけり。

1月3日(木) 穴蔵
 晴、時々曇。寒。
 本日も出歩く気にならず、終日ボケーーーーーッと過ごす。
 ま、3日間くらいはよかろう。
 明日は体を動かすつもり……つうか、動かざるをえない。
 幸い専属料理人はまあまあ復帰。冷蔵庫内を片づけつつ晩酌。
 早寝するのである。

1月4日(金) 穴蔵/ウロウロ
 やっと正月が終わった。
 朝、専属料理人が実家方面に去る。
 楽しき独居生活の始まりである。
 3日間動いてないと、さすがに体が鈍っている。
 快晴。西回りに散歩。
 豊島神社に初詣(もうガラガラである/賽銭あげず/特に御利益は期待せず)、隣の佐伯祐三の生家に黙礼し、淀川堤を西に歩き、下界に降りて、許永中の生家あたりで立ち小便をしたくなるが我慢し、中津商店街(許永中親戚のお好み焼き店はもうない)を抜け、阪急高架をくぐり、スカイビル北側の里山を通って、なにわ筋に出て、師匠の事務所跡に年始に寄る。タワーマンションの工事中で、もう年始に伺う場所ではなくなるなあ。うめきた2期地区を東に横断し、ヨドバシをうろつき、地下街の金融機関に寄り、紀伊国屋を覗いたあと、かっぱ横丁の「佐勘」で稲庭かご御膳を食し、2時間ほどで帰館する。
 8,000歩を超えた。
 午後は穴蔵にて、本年度の事業(非SF)の準備。帳簿とかPC上の諸ファイルの整備。もう積極経営はやらないから、今年も書き込むことは少ないだろうが。
 夜はコンビニメニュー。酒だけはスーパードライのあと呉春大吟醸である。
 明日はまた動くので早寝する。

1月5日(土) 大阪←→静岡
 朝7時に出て、新大阪始発のひかりで静岡に向かう。
 混んでるかなと思ってたらガラガラ……が、浜松で急に混み、静岡でさらにどっと乗ってきた。
 静岡は快晴で、珍しいほどの暖かい日であるらしい。
 ちょっとしたセレモニーに参加。
 静岡駅の「三久」で一杯やって帰ろうと思ってたら、本日も葵タワー地下の「入船」でご馳走になることに。
 生しらす、(今年は不漁の)桜えびカキアゲ、刺身などが並ぶ。
  *  *
 ビール、熱燗が進むねえ。茶碗蒸しを挟んで、握りの盛り合わせが出てくるが、もうほとんど食えない。
 好きな順に3カンいただき、あとは横にいた(烏龍茶専門の)某青年が片づけてくれた。
 夕刻に近い時間のひかりで帰阪。下りはガラガラと予想していたが、ほとんど満員であった。
 年末年始の移動はもうないだろうな。

1月6日(日) 穴蔵
 終日穴蔵。また独居生活に戻る。
 洗濯をするのであった。
 ただ、曇天で乾きは悪そうである。
 買い物に行こうかなと思うが、寒くて、面倒になる。
 近所のコンビニ往復のみ。
 昼、夜、ともにコンビニメニュー。
 酒だけは別。昼は弁当。夜はコロッケ+サラダでスーパードライ。
 あと、キンレイの鍋焼きうどんで残り少なくなった呉春大吟醸を飲むが、これはミスマッチだ。安酒にすべきであった。
 ま、済んでしまったことだから……

1月7日(月) 穴蔵
 晴れた空、そよがない風(←無風の表現としてはおかしいか)。
 天気晴朗なれど気分鬱。終日穴蔵にこもって過ごす。
 世間は本日より本格的に始動。
 播州龍野のタイムマシン格納庫には相棒の某くんが行き、ウチの郵便BOXもチェックしてくれた。
 今週は播州龍野へ行く必要はなさそうな。
 終日痴呆状態で過ごす。
 酒だけは別。
 夜はコンビニメニューで呉春大吟醸の最後の一滴を飲み、早寝するのである。

1月8日(火) 穴蔵/ウロウロ
 晴れた空、そよがない風。
 穴蔵にてボケーーーーッと過ごす。
 こんな日が多い。
 実は昨年6月18日の地震以来、床に崩れた本を整理するために、読み返して、処分するかどうか判断しているのである。
 宇宙関係の解説書は95%は同じことが書いてあったりで、判断は早い。
 その他のは、読みふけってしまうことが多く、作業は遅々として進まず。
 本日も筒井功の『サンカの真実 三角寛の虚構』を読み出したら、やめられなくなった。これは12年前に読んだもの。またサンカへの興味がわいてきて、ネットで調べたら、筒井功氏はその後、研究書を数冊刊行されている。
 また楽しみが増える。
 明日から寒波というので、昼過ぎに散歩に出る。
 梅田の定番コースをうろうろ。
 正起屋で湯豆腐定食を食す。
 帰路、かっぱの東側、ミズノの前に、駐車違反のステッカーが貼られたレクサスがあり。
  *
 そのナンバープレートを見て驚く。
 神戸ナンバーで、数字がもろにその筋を連想させる番号。中島貞夫作品そのままなのである。
 どんなのが出てくるのかなと5分ほど見てたが、現れる気配なし。
 ま、またどこかで見るかも知れない。
 罰金はちゃんと払うんだよ。

1月9日(水) 大阪←→播州龍野
 早朝の電車で播州龍野へ移動する。
 朝からタイムマシン格納庫にて、相棒の某くんと某機種(時速1時間の未来行き専用機/繊維物性の計測機能もあり)の部品のチェックを行う。
 受注の可能性大ということで。300点ほどあり、生産中止の部品が気になる。
 寒い。体が冷え切ってしまう。
 昼、実家へ。
 こちらも年末から来てないので、家屋全体が冷え切っている。
 雪がちらついてきた。
  *
 近所の揖保川河川敷に「どんど焼き」が組まれている。
 半世紀前にはウチの隣の田でやったものだが。
 燃すのは15日のはずだが、早いなあ。もう40年以上見てない気がする。見物のためにわざわざ滞在することはないが。
 午後また格納庫にて作業。一応目処は立った。
 夕刻に近い電車で帰阪。
 体冷え切ってしまい、久しぶりに入浴する。
 夜はおでんで熱燗。
 早寝。

1月10日(木) 堀川戎
 曇天で寒いのであった。
 穴蔵でじっとしていたいが、長年の習慣で、午後、ぼちぼち歩いて堀川戎へ。
 行列は境内からはみ出すことはないが、入り口付近まで。
  *
 米八師匠が亡くなってから、福笹の購入もやめたので、横側の賽銭箱に小銭を投げ入れ、列の後ろの方からの参拝で済ませる。
 天神橋筋に出て一杯やるか迷うが、帰り道が寒そうだし、おとなしくまっすぐ帰館。
 また穴蔵にこもる。

1月11日(金) 穴蔵
 晴れて穏やかな日。堀川戎へは今日行けばよかった。
 近所の某医院へ定期検診に行く。数値はごく正常であった。
 あとはまた穴蔵。雑本を読んで過ごす。
 昼は近所の「楽从(Tabito)」という店へ行く。
 ラーメンの「弥七」と「麦と麺助」の中間、翁豆腐の向かい側という、豊崎グルメの中心にある、目立たない店。
  *
 夜は小料理屋だが、ランチは蕎麦。鴨南蛮定食を食す。なかなかの味、結構なボリューム。
 本当は冷たいざるで一杯やりたいが、昼はメニューになし。そんな雰囲気でもないような。
 ……このところ、まともな食事は昼飯だけだなあ。
※夜のニュース。
 JOCの竹田恒和を贈収賄疑惑でフランスが捜査開始!
 東京五輪中止になれば素晴らしいではないか。そうなることを切に願う。騒がしい2週間をどうしようか悩んでいるのである。フランス当局(検察?)の健闘を祈る。

1月12日(土) 穴蔵
 曇天で寒いのであった。
 書籍選別。また適当に読み出したら読みふけってしまう。
 礫川全次『サンカと三角寛』(平凡社新書)……12年前に読んでいるが、多くを忘れている。特に新潮社と「ひとのみち」の関係。
 調べたいことが多いなあ。
 午後、寒いけど散歩。
 淀川堤に出て、水管橋の撤去の工事現場を見る。クレーンの位置が変わったものの、作業は遅々として進まず。
 ホームレス諸君のホームは現代のセブリか。
  *  *
 ちょっと上流に、焚き火で暖をとるおっさん。一瞬、酉島さんかと思った。
 長柄橋まで歩き、天八から中崎町経由、豊崎長屋などを抜けて帰館。
 7,000歩を超えた。

1月13日(日) New Year Jazz Party 2019
 晴れた空、そよがない風。
 昼に梅田を歩き、梅新のスーパードライへ。
 ODJCの新春イベント「New Year Jazz Party 2019」である。
 関西(広島からも)のトラッド系8バンドが出演。
 ビール、安ワイン飲みつつ4時間半のライブを楽しむ。
  *
 やはりラスカルズが抜群に聴かせる。
 あと、キャッスル・ジャズバンドの葛西さくらさん(cl)が急成長と思った。
か  梅田を歩いて帰館。
 新春行事は終わった。
 明日から酷寒の環境で仕事である。

1月14日(月) 大阪→播州龍野
 成人の日で休日である。
 早朝の電車で播州龍野へ移動する。
 先日の堀川戎「手抜き詣」にもかかわらず、タイムマシンの新規受注あり、本日から久しぶりに組立作業に入る。
 午前10時頃からひとりタイムマシン格納庫にこもり、孤独な作業。
 酷寒を覚悟してカイロも用意していたが、意外に暖かい。
 午前は9℃だったが、午後には15℃、カイロは不要である。
 ただ、細かい作業を続けていると指の関節が攣ることが多く、歳であるなあ。
 延べ45時間を予定しているが、伸びる可能性が大きい。
 17時で終わる。
 実家に戻り、ストーブ点灯、コタツに寝そべって1時間ほど休憩。うーん、疲れた。
 ヨレヨレ状態で「ひとり鍋」独酌。
 ともかく寝る。

1月15日(火) 播州龍野/横田順彌氏の訃報
 播州龍野にて、ストーブをつけたまま、電気毛布にくるまって熟睡。
 目覚めれば7時である。
 9時からタイムマシン格納庫にて組立作業。
 寒いが酷寒とまではいえぬ程度。2月はもっとひどいだろから、がんばって来週中には片づけたい。
 17時まで。
 「はつらつの湯」へ行ったら定休日である。嗚呼。
 (ちなみに実家は深夜電力による給湯器で、現在、ブレーカーを落としているのである)
 南へ5分ほど走ったところにあるスーパー銭湯「あかねの湯」へ行く。
  *
 620円。まあこんなものであろう。
 レストラン併設。うまそうだが、ビールが飲めない。
 帰路、食品スーパーで最小限の買い物。
 実家で独酌。
 こんな生活も悪くないなあ。

 深夜に目覚めてスマホでヨコジュンの訃報に接する。
 高井信さんのウェブで知り、あちこち見てだいたい事情はわかってきた。
 1月4日、心不全で死去。葬儀は近親者のみで済ませた。公式発表は16日以降に文芸家協会から発表の予定。
 複雑な気分だ。正直なところ、驚きはせず。10年以上前から、いつこうなっても不思議ではない気がしていた。発見が1週間ほど遅れるのではないかとか。この30年ほど、本人からは元気だと聞いたことがない。いつも精神か体調が不調だった。
 古書に埋もれた独居生活である。特に50歳を過ぎてからは、ほとんど古典SFの研究に没頭。『近代日本奇想小説史』は大きな業績だし、その後継続している仕事も立派なもので、生涯現役だったともいえる。ただ、おれには到底真似のできない(真似たいとも思わない……独居生活はたまにするから楽しいのである)生活だったなあ。
 最後に会ったのが、2012年3月のSF大賞贈賞式。もう6年になるのか。


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