『マッドサイエンティストの手帳』669

●マッドサイエンティスト日記(2017年12月後半)


主な事件
 ・シンギュラリティサロン(16日)
 ・ハナノベ@繁昌亭(17日)
 ・播州龍野いたりきたり
 ・大阪JAZZ@ディアロード(23日)
 ・某年会(26日)


12月16日(土) シンギュラリティサロン
 早朝は晴れていたが9時頃から陰鬱な曇天となる。
 昼過ぎにグラフロのナレッジキャピタルへ。
 シンギュラリティサロン。
 本日は「デジタルゲームが拓く人工知能」。講師は三宅陽一郎氏(スクウェア・エニックス リードAIリサーチャー)である。
 主にファイナル・ファンタジーを例にとっての講演。
 デジタルゲームには多様なAIが生きている(←開発されているというより、すでに生息しているような)。
 ゲーム内には、ゲーム全体を統御する「メタAI」、多くのキャラに搭載?されている「キャラクターAI」、めまぐるしく変化する舞台を認識する「ナビゲーションAI」。これらが協同して動く。
 ゲーム外には、「自動テストAI」「自動デバッグAI」「自動ゲームバランシングAI」その他色々あって、ゲーム開発を支援する。支援どころかゲーム自体を進化させようとしている。現実の社会に(政治、経済、環境その他のシミュレーションとして)影響しかねないレベルにある。
 ゲームの世界ではAIが恐ろしい進化を続けているのである。
 最初に「本日はエンターテインメントとしてのAI」「楽しませるAI」と紹介があったが、おれはファミコンもやらなかったし、パソコンでもスマホでもゲームはまったくやらない。だから、今のゲーム世界で展開されているAIの多様性に驚くと同時に、実感がともなわない(感覚的に理解できない)ところがある。それだけに不気味な世界でもある。開発側からではなく、ユーザー側から見れば、おれには、電車や歩きスマホでゲームに熱中している連中の知能はとっくにAIに凌駕されているとしか思えないのである。
 さらに……ゲーム業界の規模は小説(出版)なんてものより桁違いに巨大化しているのだなあ。大きな市場でこそAIは進化する。

12月17日(日) 繁昌亭deハナシをノベル!!
 終日穴蔵。ボケーーーーッと過ごす。
 夕刻這い出て繁昌亭へ。
 「ハナシをノベル!!」の年末恒例の会である。
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 月亭秀都『てんしき』
 月亭天使『雑俳』
 リスナップの漫才
 月亭文都『メリーさん』(小林泰三作)
 (中入り)
 ハナノベ・ブラザース「トークdeノベル」
 岡大介「カンカラ三線」
 月亭文都『鴨鍋』(理山貞二作)
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 理山さんが初登場。こんな真面目?な人まで巻き込むとは、田中啓文恐るべし。
 『鴨鍋』は……刑期を終えて小さな料理屋をやっている男の店に、取り調べを担当した刑事がやってくる。男はきちんと更生しているらしい。刑事は、男の実家が鴨の養殖業だったことを覚えていて、鴨鍋を予約し、前金を渡す。だが、家賃を滞納していた男は、前金を管理人に持って行かれてしまった。そして当日、刑事は若い部下を連れて店に来たが……。オー・ヘンリーみたいな雰囲気で、人情噺かと思いきや、とんでもない展開になる。SFでもホラーでもない。見事な構成で、理山さん、器用なんだなあ。

12月18日(月) 穴蔵
 終日穴蔵。
 今年もあと2週間になった。タイムマシン業の決算を早めに片づけることにして、結構慌ただしい。
 タドコロなら2週間かかる業務を5時間ほどで片づける。AIなら決算書作成含めて5分(ほとんどプリント時間)以下だろうけど。
 あと数年の業務だから、事務処理システムを導入することもないのである。
 明日は少し動くつもり。

12月19日(火) 穴蔵
 播州龍野へ移動……のつもりだったが、用件のひとつが先方の都合で1日ずれることになった。いたしかたなし。
 公務で1時間ほど外出、それ以外、穴蔵にてダラダラ。
 仕事したよなしないよな。
 明日は少し動くつもり。

12月20日(水) 大阪←→播州龍野
 早朝の電車で播州龍野へ向かう。
 冬至の2日前、大阪真っ暗、須磨あたりで明るくなり、加古川を渡るあたりで日照(7:20)あり。快晴である。
 9時前に播州龍野着。
 タイムマシン格納庫、4℃の倉庫で期末の棚卸。今期は売上最低で部品はほとんど動かず、10分で済む。
 実家。こちらではシルバー氏による植木剪定が進行中。お任せしておくしかない。
 市役所に書類お届け。
 龍野の業務は1時間ほどで終わる。
 姫路に用事ができて、昼前に姫新線で移動。
 母校のそばにある某施設に寄る。
 天気がいいので姫路城を散策。
  *
 観光客は少なく、場内あちこちに自衛隊の車両が目につく。
 トイレで並んで小便中に若い隊員に聞けば、時々行なう「姫路城クリーン作戦」で、石垣や堀などの危険な場所を自衛隊諸君が清掃するのである。
 レンジャー隊員が天守閣の外壁をのぼる作戦がハイライトというが、午前中に終わったらしい。
 朝7時頃からやるらしい。時間的に見物は難しそうだ。
 午後の新快速で帰阪する。

12月21日(木) 穴蔵/ウロウロ
 晴れて寒。
 穴蔵にてボケーーーーッと過ごす。
 外出は午後にジュンクドー往復のみ。
 と、途中の工事中だったビル、表に看板?がつけられた。
 マンションかテナントビルと思ってたら、なにやら不思議な金ピカと見知らぬ文字。
  *  *
 これはチベット文字か? 日本語も英語表記もないので、何の建物なのか、さっぱりわからない。
 ま、余計な憶測はやめとこ。

12月22日(金) 穴蔵/ウロウロ
 冬至である。晴れて寒。
 穴蔵にてボケーーーーッと過ごす。
 運動不足なので、夕刻に近い午後、散歩に出る。
 北西方向、佐伯祐三の生家、許永中の生家あたりを歩き、淀川左岸堤へ。
 河口から8キロ地点で冬至の落日を定点撮影する。16時45分。
  *
 冬至の落日は堤西方向、十三大橋南端あたり。これが、春分の日には十三歓楽街、夏至には右手ビルの北側(六甲山系)まで移動する。
 地軸の傾きを実感するなあ。
 このあたり、淀川左岸線の海老江〜豊崎間の工事中で、2026年まで続く予定。
 ただ堤防から川側の眺めは変わらないはずである。
 野々村竜太郎の生家近くの穴蔵へ帰る。

12月23日(土) 大阪JAZZ@ディアロード
 晴れて、そう寒くもなし。
 昼過ぎに出てJR片町線・放出へ。
 午後、ディア・ロードにて大阪JAZZ同好会の例会である。
 ジャズ好きの音源持ち寄り会。年末の慌ただしい時期だが、掃除のジャマだからと追い出されたようなのばっかり。
 特集はTさんによるワーデル・グレイ。渋いねえ。活動期間がバップ創成期の10年ほどで、リーダーアルバムがほとんどないが、色々な参加アルバム含めて60枚くらい所有という。その中から15曲を聴いて足跡をたどる。グッドマン楽団にいたり、パーカーやデフランコとの競演など、ほとんど初めて聴くのばかり。
 持ち寄り企画は(年末は、今年亡くなったミュージシャンというのが多かったが)今回は「好きなドラマー」。ここでも、エド・シグペンとかジョー・モレロなど、渋いのばかり。おれはむろん森山威男で『スイングの核心』も紹介させてもらった。
 Hさんが白木秀雄の「加山雄三の世界」という珍盤を持ってきて、ただし話の核はその「晩年」に関する新説披露。うーむ。おれも以前住田さんから関連した話を聞いたが、ちと生々しいね。

12月24日(日) 穴蔵
 終日穴蔵。
 予報通り、朝は晴、午後しだいに雲が厚くなり、夕刻から雨。
 クリスマス・イブということで、専属料理人が鶏肉を焼く。
  *
 おれは鶏ならヤキトリの方がいい。半分ほどしか食べられない。残れば明日サラダに入れるとか。
 普通の食生活を継続してほしいが。
 正月のオセチ同様、これも今や一種の「昔気質」であろうか。
 安ワインを少しばかり。
 早寝する。

12月25日(月) 穴蔵
 曇天。そう寒くはないが出歩く気分にならず。
 終日穴蔵。
 本とCDを整理していたら、大佛次郎『冬の紳士』が出てきたので再読。
 うーん。今の生前葬はこの作品から始まったのだろうか。
 読み終わると、東の空に冬の虹。
  *
 戦後は遠くなりにけり。

12月26日(火) 某年会
 晴れたり曇ったり。風強く寒。
 昼、サプライ品を買いにヨドバシまで行く。ついでにうめきた2期地区へ。
 スカイビル方向への地下道が(西端の単線部分を残して)閉鎖され、南側に代替通路(たぶん将来は北側に移されるのだと思う)ができている。
  *
 つまらん通路である。
 線路が東側に移されるまで(5年ほど)このままであろう。
 自転車専用通路が併設されているのがありがたいが、もう自転車で来ることはないだろう。
 夕刻から近所の穂光でごく親しい顔ぶれ4人で忘年会。
 わが師匠と同姓のKさんがやってはる「家庭料理」の店で、数年前から(ご家族の事情などあり)、昼間は定食の食堂、夜は予約だけのおまかせという営業形態。格安で飲み放題にしてくれるので、ダラダラ宴会やるには格好の店である。ほとんどが地域のなんとか委員会など、町内会の飲み会が多いけどね。
 ぐだらぐだらとしゃべりながら飲んでたら閉店時間(22時)近くになった。
 公園を距てたウチのリビングに移動して深夜近くまでつづき。
 ちと飲み過ぎ。前後不覚にはならず、飲み過ぎと自覚しつつ飲んでいる。わかっちゃいるけどやめられない状態。
 あとは寝ればいいとわかっているからこうなる。

12月27日(水) 穴蔵
 午前8時に専属料理人からのメールで目覚める。
 うへっ、予想通り飲み過ぎである。
 頭痛はないが食欲なし。胃の状態が最悪。ポカリスエット飲んで昼まで寝る。
 いかん、昼も食欲なし。
 ポカリスエットゼリーを流し込んで、夕刻までベッドで読書とうたた寝の繰り返し。
 まあ普通の状態と思うが、夜はお粥少しと豆腐の味噌汁。
 早寝するのである。

12月28日(木) 穴蔵/某総会
 なんとか復調。
 起床時間、食事もふだん通りに戻る。
 せっかくだから、あと2、3日、休肝日とするか。
 終日穴蔵。
 相撲協会の臨時理事会、朝から憶測報道で騒がしいことだが、午後2時頃にテレビ見たら貴乃花は理事降格で、1月4日の臨時評議員会で正式決定の見込み。年越しである。ということは、新年早々に「熟年ヌード」のオバハンが出てきて、何かしたり顔でしゃべるわけか。仕事始めの日に鬱陶しいことだが、せめてフンドシくらいはしめてこいよ。
 夕刻這い出て阪急石橋へ。
 年末恒例、タイムマシン業の取締役会兼株主総会兼忘年会だが、おれが休肝となったものだから、10分ほどで取締役会兼株主総会を終了、あとの忘年会は遠慮させていただくことにする。
 活きフグのコースが例年のパターンだが、これも身から出た錆。
 まっすぐ帰館、粗食をいただき、早寝するのである。

12月29日(金) 穴蔵
 曇天。午前9時頃に梅田へ歩き、金融機関と郵便局のATMうろうろ。年末の処理である。
 もう休みの会社が多いのか、通勤者は少ないが、ATMにはどことも列ができる。
 ささっと片づけて1時間ほどで帰館。
 あとは穴蔵にこもる。
 今年も終わった気分で、何かまとまったことをする気分にならず。
 いかんなあ。
 夜、ビール500ml。うまっ。

12月30日(土) 穴蔵
 年末の、晴れた穏やかな日。小春日和というには遅いか。
 ボンクラ息子その1がその母親(つまり専属料理人)に明日(大晦日)に帰ると連絡してきたという。
 では、正月に一杯飲ることにするか。
 ということで、昼、自転車で十三大橋を渡って商店街へ。
 丹波の「きさらぎ漬」購入のため。
 10人ほどの行列。亀岡の農園の台風被害で、今年は「詰め合わせ」商品は制限されているらしい。スグキもそうだが、京の漬物の厄年であったような。
 キャベツがないのが寂しいが、白菜、大根、赤かぶ、みぶ菜を購入。
 昼は軽くビールと思ったが、やまもとは満員。ねぎ焼きは断念する。
 ちょっと走ると息切れする。肺が弱ってきたか。
  *
 十三大橋北詰でしばらく休憩する。
 自転車での高低差うろうろは、このあたりが限界だな。
 ということで、午後は穴蔵にこもる。
 夜はきさらぎ漬で湯割りをすこしばかり。うまっ。
  *
 さあ、明日から4日間は、少しはアタマを使うことにしよう。

12月31日(日) 大晦日
 曇天の大晦日。オセチ手作りのため、専属料理人は忙しそうだが、おれに手伝えることは何もないので、終日穴蔵にこもる。
 無為に過ごした1年が終わる……と毎年の大晦日気分に陥る。
 この1年、何をしていたのか。
・穴蔵生活。月に何度かの播州龍野往復。上京はしなかった。遠距離移動は、春の越前・越後、秋の可児市くらいか。あとは近所をうろうろ。
・ジャズ関係はライブやコンサート、月1、2度。
・落語は歌之助さんの入門20年、襲名10年の「やけくそ20日間」があった。
・肝心のSFは……面白い作品を読めたが、他にこれといったことなし。コンベンションにも行けなかったが、シンギュラリティサロンと西はりま天文台訪問は楽しかった。
 創サポの不定期企画(対談的インタビュー)で、関西のSF作家諸氏に小説作法を聞けた。これがいちばん面白かった。
 今年はかんべむさし、円城塔、オキシタケヒコ、酉島伝法の4氏。創作講座だから(しかもかなり立ち入った質問もして)執筆の実態を(小説以外の生活の実態まで/オフレコ事項も色々あり)明かしてもらった。かんべさんとは40年間議論してきた仲だが、今回は『朝はミラクル』(ラジオのパーソナル体験をベースにしたラジオ論的長篇)中心で、テーマも方法も従来とはまったく異質であった。円城、オキシ、酉島の3氏は作風も姿勢(本当に執筆している時の体の姿勢も含めて)もまったく異なる。しかし、総合的に考えると、今のSF創作法のある傾向がわかってくる。虚構性の強い作品に実体験や私生活が反映しているとでもいうか。これは、SFと私小説の融合とかメタフィクションとかパラフィクションといった議論とは別物。執筆時に生じる空気みたいなものである。「書いてみないと実感できない」というか笑福亭福笑の「お前やれ!」的というか。
 おれがこの数年迷っていたことに対する大きなヒントとなった。大きな刺激といってもいい。論理的に記述できないから、作品で示すしかない。これが今年の大きな収穫であり、来年の課題でもある。
 年が明ければ、各氏を見習って「生活パターン」の軌道修正を行う……つもりである。
 昼、専属料理人に蕎麦を茹でてもらう。鴨汁でいただく。
  *
 今年は池田まで呉春を買いに行かなかったので、龍野で買ってきた龍力「米のささやき」を少しばかり。
 うまっ。龍力やりますね。
 しばらく午睡。
 夕刻、ボンクラ息子その1が配偶者と帰ってきた。
 一杯飲んで早寝とするか。
 無為に過ごした1年が終わるが、来年は少し変わる……つもり。
 皆さん(少数の本WEB来訪の皆様)よいお年を。


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