『マッドサイエンティストの手帳』638
●マッドサイエンティスト日記(2016年9月後半)
主な事件
・播州龍野いたりきたり
・森山威男 JAZZ NIGHT 2016(17日)
・西秋生『神樂坂隧道』『ハイカラ神戸幻視行 紀行篇』
・S.R.を復活させる夕べ(24日)
・シン穴蔵(30日)
9月16日(金) 播州龍野いたりきたり
早朝の電車で播州龍野へ移動する。
細々した用事が重なり、タイムマシン格納庫〜実家〜市役所〜金融機関をうろうろ。
自分の戸籍付票なるものを初めて見るが、平成16年以前のは廃棄されていている。廃棄証明書というものを出してもらう。12年以上前の住民票の所在地は証明できないのである。
午後に姫路に出る。
おなじみ小溝筋の「灘菊」にて680円の日替り定食。
*
水分補給も怠りなし。
夕刻に近い午後に大阪に戻る。
梅地下の市サービスカウウターへ行き、過去の住民票について聞くに、「除票」なるものがあって、旧住所が確認できるという。×印がついているが、一応説明資料にはなるような。
自分の前科を確認するわけではないものの、ややこしいことであるなあ。
龍野行き、半分は無駄足であった。
ちと疲れた。一杯飲んで早寝するのである。
今日の夢は可児市の夢。
9月17日(土) 森山威男 JAZZ NIGHT 2016
昼前に出て、名古屋経由、多治見へ向かう。
年に一度だけ専属料理人から「ひとりでの外泊」が許されている、森山ジャズナイト参加である。
おっ、多治見駅で宮崎からのテリー夫妻といっしょになった。
多治見のホテルにチェックインの後、大阪からのIくんYさんとも合流、5人で夕刻の太多線で可児向かう。
森山街道(可児からalaへの西へ向かう道)を30分ほど、脚力チェックを兼ねて歩く。この10年ほどの恒例行事である。
18:30〜「森山威男 JAZZ NIGHT 2016」。
今年はなんとも凄いベテラン・メンバーが参加。
・1 stage。
森山威男(ds)板橋文夫(p)のデュオで童謡(最新CD「おぼろ月夜」から2曲)
あと、峰厚介(ts)水谷浩章(b)が加わってのカルテット。
テナーを据えたカルテットは森山ジャズの本領である。
休憩。ジャンケン大会あり。むろん全敗。おれは10年前にお宝ゲットして以来、闘争心は消滅したのである。
可児市民の皆さんに賞品が渡ったのは何よりであった。
・2 stage。
森山威男(ds)佐藤允彦(p)のデュオで童謡。CDとはまったく別の雰囲気。
(60年代、森山さんにとって佐藤允彦氏はまばゆい存在だったという。当時のコンビは富樫雅彦だったからなあ)
ここに坂田明(as)水谷浩章(b)が加わってのカルテット。
なんと「音戸の船歌」ボーカルなどびっくり。さらに「キアズマ」が凄い。
最後の方、「サンライズ」は入り乱れ演奏。坂田さんの会場乱入や板橋・佐藤の格闘技的連弾まで。
森山威男(ds)板橋文夫(p)のデュオ「グッドバイ」で終わる。
出演者6人だが、おそろしく多彩なジャズ世界が展開された。
終演後、また5人で夜道を歩き、可児から多治見へ。
おなじもPaPa'zでのウチアゲの片隅に参加させていただいた。
憧れの佐藤允彦氏に(聴き出して47年目にして)はじめて挨拶。森山さんが紹介してくれた。
*
画家の堀晃さんとは、読みが違うが同姓同名ですというと、驚いて「よかったら名刺をいただけますか」と。
佐藤允彦さんは、堀晃(ひかる)さんの絵の作成に合わせてピアノを弾いたり、ヒカルさんの個展オープニングでピアノを弾いたり、佐藤さんのCDジャケツトにヒカルさんの絵を使ったりの仲である。
面白がってもらえたようである。
日付が変わってから、坂道をくだってホテルまで戻る。
本日、13,503歩となった。
今日の夢は大阪の夢。
9月18日(日) 多治見→大阪
午前6時に目覚める。
多治見の空、風雲急である。
*
ニュースでは台風16号の影響で西日本は大雨に警戒すべしとか。
昨日もそうだったが、(おれは雨男でも晴男でもないが)傘なしで雨に降られることはめったになく、昨日の可児市でも、暗雲たちこめるが歩行中は降らず、芝生でビールを飲み終える頃に雨となり、終演後にはやんでいた。
本日も、午前7時前に軽い朝食、多治見まで歩き、電車が動き出したとたんに激しい雨となった。
帰路は在来線を多治見〜金山〜米原〜大阪と乗り継いで(休日午前の新幹線下りは京都までほとんど満席)、午前11時に帰館。
穴蔵に戻ってしばらくしたら降雨となった。
夕刻まで雑事色々。
夜は専属料理人に茄子のミンチ巻いたなんとかとか、その他数皿並べてもらい、昨日、宮崎の節っちゃんからいただいた「カントリーママ」のチーズパンでワインを少しばかり。うまっ。
早寝するのである。
今日の夢は地獄の夢(田中啓文『地獄八景』(河出文庫)を読んでいるため)。
9月19日(月) 穴蔵
雨が降ったりやんだり。
雨のやんでる合間に郵便局へ行ったら休みである。そうか老人の日であったのだ。
早く地獄へ行ってほしいポンコツが増殖しているご時世、祝日にする必要はないぜ……と、これは自省である。
「地獄八景」を読むと、あちらの方が面白そうで、こちらでつまらん「学芸会」みたいなのに招待されるより遙かに刺激的である。
おれは「学芸会ご招待」を日頃から拒絶しているので、本日が「老いぼれ記念日」とは気づかなかったのである。
カステラ貰うより、働いて税金払っている方が気分がいいのである。ともかくこんな「祝日」は廃止してほしい。オリンピックも返上してほしいけど。
ということで、終日穴蔵。
本日も身辺整理と資料再読の繰り返し。
タイムマシ業の10年以上前の資料を整理する。
9月20日(火) 穴蔵
早朝からテレビでは台風16号情報。
鹿児島かすめて関西へ向かっているらしい。大雨・強風・洪水の警報がつぎつぎに出る。
午前7時頃から雨になった。
終日穴蔵。
本日も身辺整理と資料再読の繰り返し。
台風は14時頃に田辺市あたりに上陸という。午後は雨足が強かったが、17時にはやみ、涼しい夕刻となった。
専属料理人に数品(枝豆、ヤッコ、小鰺のみりん干し風、穴子小鉢、オムレツ、サラダ)並べてもらって、ビール、格安バカ旨ワインを少しばかり。
早寝するのである。
西秋生『神樂坂隧道』『ハイカラ神戸幻視行 紀行篇』
昨年9月に逝去された西秋生さんの著書が、1周忌にあわせて2冊刊行された。
『神樂坂隧道』(西秋生作品集刊行委員会)
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西秋生さんはずいぶんキャリアの長い作家である。奇想天外誌でのデビューが夢枕獏さんと同時だから。
80年代には優れた幻想的SFやモダンホラー短編を書かれているが、寡作であり、作品集としては刊行されていない。
広告業界から近畿大教授に転身、そちらでの仕事も忙しかったと思うが、コツコツと書かれていた(準備されていた)のは間違いない。
特に21世紀になってから書かれた神戸を舞台とする短編は、まったく新しい世界を切りひらいていて注目していた。
チャチャヤン時代からの友人諸氏が中心になって刊行された追悼出版。
デビュー作から最近の「ハイカラ神戸SF」までが収録されていて、レベルは高い。今まで刊行されなかったのが不思議に思えてくる。
「風の翼」掲載作など、未読の作品も数編あり、なかでは表題作「神樂坂隧道」が秀作である。おそらく東京転勤時代に着想された作品。舞台は関東大震災後の神楽坂だが、この作品の執筆が、その後の「神戸SF」につながったのだと思う。
小生も短い文章を寄せております。
本書はオンデマンド出版。こちら(深田亨さんのページ)で入手できます。
『ハイカラ神戸幻視行 紀行篇 夢の名残り』(神戸新聞総合出版センター)
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西さんの「神戸SF」執筆のフィールドワークといえるのが神戸新聞連載の『ハイカラ神戸幻視行』(2009年に神戸新聞総合出版センターから刊行された)である。これは稲垣足穂、谷崎、西東三鬼らの作品を通してモダン都市神戸を幻視する、きわめて優れた神戸文学紀行であり都市論である。ぼくは2014年に(つまり西さんの神戸SFの後で)読んで感心し、これが神戸SFの原点であることを知った。
神戸新聞にはその後の連載があると聞いてのだが、それが“続編”「紀行篇 夢の名残り」として刊行された。
今回は神戸文学の町歩きガイド。作品紹介もうまいが、ゆかりのエリア、建築、店などの遺跡・跡地との関連づけが面白い。
たとえば……わが神戸町歩きエリアは、神戸ジャズストリートの会場(北野坂〜トアロード、三宮〜異人館)中心だが、久坂葉子と西東三鬼が終戦近い時期に「すぐご近所」に住んでいたなんて、びっくりするなあ(おれは戦争末期の小松左京と久坂葉子を想像してたのだけど)。
播州龍野いたりきたりの途中、本書を持って途中下車したくなる。
これから数年、折に触れて実行することにしよう。
9月21日(水) 穴蔵
曇天。朝6時のベランダは22℃。穴蔵でステテコ姿は今季終わりとする。
終日穴蔵。本日も身辺整理と資料再読(再聴)。
ダンボール1箱あるMDについて、どうするか迷う。重要なのはCD-R化したし、廃棄してもいいのだが。
MDというのもむなしいメディアであったなあ。βほどではないにしろ。
9月22日(木) 穴蔵
未明に目が覚め、普通ゴミ収集日なので、大量の「普通ゴミ」を出す。
あとは終日穴蔵。
身辺整理というか、手元に置く本、播州龍野の書庫へ送る本、処分する本の仕分け。
半分以上は本を読んで過ごす。
9月23日(金) 穴蔵
未明に目が覚め、プラ・紙・衣類のゴミ収集日なので、大量の紙を出す。ゴミ置き場3往復。
わが宛名記載の書籍封筒や某伝票類が相当あり、正規の収集車が来る前に持っていく「業者」がいて嫌なのだが、収集車のスピーカー音を聞いてから持ち出したのでは間に合わない。致し方なし。
午前7時に確認したら、きれいに持ち去られている。嗚呼。
(最終的に行く場所はいっしょでっせという説もあるが……)
あとは終日穴蔵。
本の仕分けの継続。
たちまち1日が終わる。
9月24日(土) S.R.を復活させる夕べ
終日穴蔵。本日も資料再読しつつダラダラと身辺の整理。
夕刻に這い出て、梅田のL字型カンンターの某酒場へ。
時々誰かをゲストとして招いて何かやる会(橋本喬木さんがプロデュース)があるそうで、本日は江坂遊さんが「S.R.を復活させる夕べ」という企画である。
S.R.とは桂枝雀師匠がやっていた「ショート落語」で、これをショートショートの第一人者・江坂遊さんが復活させるというのである。
*
カウンター中央に江坂さん。ビールなど飲みながら聞く趣向である。
右隣(写真左端)は落語家の林家竹丸さん。神戸大を出てNHK記者を数年経験してから噺家に転じたという、異色の経歴の持ち主である。わが町内会であることも判明。これで町内ゆかりの人物は、安藤忠雄、加藤平祐、許永中、佐伯祐三、野々村竜太郎、林家竹丸、堀晃(50音順)と不思議な組み合わせが並ぶのである。玉石混淆。
江坂さんが復活させたものを竹丸師匠が演じるのかと思ったら、演者も江坂さんなのであった(竹丸師匠は普通に客としての来店である)。
で、見事「復活」されたかというと、まあ、文芸と話芸の落差を実感させられるというか……(後略)。
あとショートショートとS.R.の違いについて、22時頃までガヤガヤ。こちらの議論はたいへん面白かった。
結論めいたことだけ書けば、SRは枝雀師匠が創った特異なジャンルであった、ということかな。
客は画家、カメラマン、新聞社、某劇場など色々な顔ぶれ10人ほど。こちらの業界の話も面白い。
よく飲んだ。
9月25日(日) 穴蔵
終日穴蔵。
本日も資料再読しつつダラダラと身辺の整理。
あまり片づいた感じがしないなあ。
あと1週間である。
明日からは肉体労働に専念することにしよう。
9月26日(月) 穴蔵
終日穴蔵。
本日は「再読」は極力やめて、本の仕分けの肉体労働に集中する。
廃棄する資料は、やはり迷うが、80年代の著作権関係のものは全部捨てることにする。
科学誌も、オカルトがらみは全部処分。
XP時代のPC関係はすべて廃棄。
旧勤務先関係はちと迷う。某ワイドショーお騒がせ事件のファイルもそうだが、業界誌などに書いた記事もあり(ゴースト務めたのも結構あって)、あと数年保管するか。
SF関係はやはり捨てられず、播州龍野の書庫送りとしてダンボールに詰める。
本を詰めたダンボールを持ち上げられないことに気づく。嗚呼。
ぎっくり腰よりは、業者に依頼する方がいいようだ。
9月27日(火) 穴蔵
終日穴蔵。
うーん、疲労感が抜けず、肉体労働は無理である。
何とか書籍の区分けはできたので、ここから先は「業者」まかせとする。
それにしても……「本の雑誌」で北原尚彦さんがSF蔵書家の巣窟ルポをやってる。
ヨコジュン、星敬、牧眞司、日下三蔵、大森望の書庫はだいたい想像がついてたが、鏡明のところがこんなに凄まじいとは。
近い将来、どうするつもりなのよ。
と、余計な心配をするが、かれらも石原藤夫さんの私設SF資料館にはかなわない。こちらは見事に整理されているのだから。
おれは、穴蔵の、せいぜい2,000冊(播州龍野の書庫でも1万冊以上、2万冊以下だろう/こちらは積んどくだけ)の整理で体がおかしくなりかけたのだからなあ。
無理せず、困ったらオロモルフ博士の資料館を頼ることにして、もう本に執着はしないのである。
9月28日(水) テントさんの訃報
このところ眠りが不規則である。
片づけの作業に疲れたら仮眠というパターンで、3時間ほどのうたた寝の繰り返し。
朝6時頃に目が覚めたら、衝撃のニュース。
テントさん交通事故死
昨夜、谷九交差点の歩道で乗用車にはねられ死亡という。地下鉄で降りて生玉さん方面へ行く時に渡る交差点である。
うーん。不思議な思いだ。
65歳で、おれよりずっと若いのに、30年以上前から「伝説の芸人」だったからなあ。
おれには「大空テント」と呼ぶ方がしっくりくる。
80年代には時々関西のお笑い番組で見たと思う。ともかく怪芸人で、芸か地か区別がつかないところがある。
四半世紀ほど前、小佐田さんが台本書いていた小劇団のオレンジでの公演に特別ゲストとして出てきて「どちらのギャグがくだらないか」というギャグ合戦を繰り広げたが、ステテコ腹巻き姿で、ともかく、くだらないけど大受けであったなあ。
最後に見たのが10年前の「蜘蛛の決闘」……これyoutubeにアップされてないかな。「人間パチンコ」は見られるようだが、おれが最後に見たのは「伊藤家の食卓」という番組でやったのである。
9月29日(木) 穴蔵/ウロウロ
曇天、断続的に雨である。
朝、某紙業の小型トラックが来て、結束して積み上げていた古紙(タイムマシン業の15年分の紙資料、古雑誌、時代遅れとなった実用書など)を20分ほどで積み込んで持ち去る。おれの体重程度を台車に乗せて4往復だから、推定250キロほど。
穴蔵すっきり……とはならず、そんなに変わらない。
ほとんどが押入に詰め込んでたか床に積み上げてたものだからであろう。
書架に入る量を限度とする……毎回それを目標に片づけるが、毎回ダメである。
しかし、気分的には、ちょっと一息。
金融機関などに行く必要あり、昼、久しぶりに梅田散歩。
ジュンクドーも覗くが、さすがに今日は本を購入する気にならない。
グラフロ北館の9階ガーデンから完成間近(1週間後にオープン)の「うめきたガーデン」を見る。
*
チャチなものである。9月初めに工事開始、工期は1ヶ月ちょっとだから、こんなものであろう。
中之島のバラ園が靫公園の方が雰囲気はよさそう。千円払う気分にはならんなあ。
9月30日(金) 穴蔵/ウロウロ/シン穴蔵
慌ただしいのであった。
朝の通勤ラッシュが終わった頃に地下鉄で淀屋橋へ。ガスビルあたり〜旧勤務先近傍〜船場周辺を歩いた後、南本町の某社へ。
ここで最終契約。
16年間過ごした「穴蔵」を引き払い「シン穴蔵」に移動することになったのである。
法的には本日の正午を持って、旧穴蔵を退去、シン穴蔵に移ったのである。
10月1日では遅すぎる。
おれはこの名作を忠実に実行してきた。
(ただし、世間の実態にあわせ、土日の2日間が移動日となる。)
まっすぐ帰館。
午後は、専属料理人とともに、穴蔵の整理。
本・CD・DVD・PC・文房具以外の生活洋品(衣類、食器からカーテンまで)が意外に多し。
汗ドロドロ。
シャワー浴び、5皿ほど並べてもらって盛大にビール。
ややこしい9月がなんとか過ぎる。
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