『マッドサイエンティストの手帳』488

●マッドサイエンティスト日記(2010年10月前半)


主な事件
 ・相生ミッション継続中
 ・十三人の刺客(4日)
 ・Sunday at Jazz Club(11日)
 ・トーマス・レティエンヌ(12日)
 ・3clセッション(13日)


10月1日(金) 播州龍野/相生
 相変わらずの相生ミッション継続。
 龍野〜相生の移動には、揖保川沿いに南下し国道2号線を西へ走る直線コースと、揖西町の田園地帯をうねうねと走る曲線コースがあり、慣れると後者の方がクルマも少なく快適である(夜はちと走りにくいけど)。
  *
 まだ刈られていない稲穂が広がり、なかなかいい眺めである。
 そのうち退屈になるだろうが。
 この道を30年以上自転車で通勤した近所の某さん、たまに室津経由で女郎買いして帰ってきたというが、その気持ちがわかってくるなあ。

10月2日(土) 播州龍野/相生
 相変わらずの相生ミッション継続。
 厭きてきたなあ。
 クルマでの移動と、あとは座っている時間が長いので、脚力の衰えが心配である。
 夕刻、相生のポート公園まで歩く。徒歩10分の距離。
 相生湾の落日を眺める。
  *
 公園には誰もいない。
 センチメンタルになるぜ。
 暗くなってから龍野に帰る。
 明日は帰阪となりそうな。

10月3日(日) 播州龍野→相生→大阪
 朝から相生の隠れ家に向かう。
 雑用片づけ。
 クルマは置いて、午前中の電車で大阪へ移動する。
 バスでJR相生に着いたものの40分待ち。
 山陽線・相生〜姫路間の連絡の悪さは姫新線よりもひどい。
 新幹線があるから、在来線を意図的に不便にしているとしか思えないのである。
 これは米原〜大垣の事情に似ている。
 姫路に駐車場を探すべきか。
 ということで3時間かけて帰阪。
 こちらも雑事山積。
 夜は久しぶりに専属料理人に色々並べてもらって晩酌。
 大分の友人からカボスを送ってもらった。
 これで作ったドレッシングがうまく、おれとしては珍しく野菜サラダをたくさん食べる。
 播州龍野の食生活は明らかに野菜不足なのである。

10月4日(月) 穴蔵/ウロウロ/十三人の刺客
 昨夜からの雨が8時過ぎにはあがったので、ネクタイはしないが零細企業のオヤジの服装で出かける。
 ラッシュ時の地下鉄に乗るのは久しぶりだが、8時半の御堂筋線、梅田〜淀屋橋間も、そんなに混んでいるとは思えない。
 やはり本町周辺は衰退しつつあるのだろうか。
 谷町四丁目の某務局〜内本町の某工会議所〜日本橋などウロウロ。
 ついでに天王寺まで行き、アポロシネマ8へ。
 三池崇史版『十三人の刺客』を見る。
 派手に宣伝してたのに、なぜか梅田で上映してないのである。おれが不在の間に上映打ち切りか?
 名作のリメイクで過剰な期待はしてなかったから、それなりに楽しめた。
 とうぜん前作には及ばないものの、謀略戦の雰囲気はなく、集団アクションに徹しているのがいい。
 チャンバラのリメイクで成功したのは『荒野の七人』と『荒野の用心棒』で、ともに西部劇に置き換えたからよかったのである。
 その点、今回のリメイク作の雰囲気はまさに西部劇で、馬の使い方や落合宿の戦闘開始場面など『ワイルドバンチ』を思い出してしまった。その限りでは、これは成功作である。
 役者では、「山の民」という新設定のキャラ・伊勢谷友介がとぼけた味でいい。鬼頭半兵衛役の市村正規は好演だが、内田良平の一世一代の名演に較べられるのは気の毒であるなあ。稲垣吾郎が意外にも「地でやってる」ようでいいではないか。

10月5日(火) 穴蔵
 終日穴蔵。本を読んで過ごす。
 至福の時間なり。
 蓮見恭子『女騎手』(角川書店)……傑作である。
 中山康樹『マイルス・デイヴィス 奇跡のラスト・イヤーズ』(小学館101新書)……マイルスの「新書シリーズ」完結編。本書に限らず、後藤雅洋『一生モノのジャズ名盤500』(小学館101新書)や菊池成孔『歌舞伎町のミッドナイト・フットボール』(小学館文庫)など、小学館のジャズ書は快調である。
 田中啓文『ミミズからの伝言』(角川ホラー文庫)……帯に「食べる交わる眠る…」とあって、表題作だけはご勘弁願う。S字型の並んで苦手なところに「食べる」とあり、田中啓文が書いたとなれば……いやはや。
 その他……「雑読雑聴」に詳しい感想を書くべきだが、帰阪すると寝転がっている時間がやたら長く、つい面倒になってしまう。
 しばし猶予をいただくことに。

10月6日(水) 大阪→相生→播州龍野
 午前のJRで大阪から相生に移動。
 午後、相生の隠れ家にてミッション遂行。
 トラブルまがいのこと続出、疲れることである。
 日暮れて播州龍野へ帰る。
 出来合いの総菜でビール、湯割りを飲み、就眠するのである。
 明日は少しはいいことがあるかもしれない。

10月7日(木) 播州龍野/相生
 朝から相生へ移動、ミッション継続である。
 色々と楽しくもややこしい難題続出。
 ま、適当にさばいていくしかあるまい。
 たちまち夕刻になった。
  *
 隠れ家の西の窓から見るに、善光寺を頂点に頂く小高い山の手前は入り江であり、その手前にマリーナがある。
 陸揚げされたヨットやモーターボートがずらっと並んでいて、使われる気配なし。
 そんなに金持ちが多い土地とは思えないが。
 17時半、真っ赤な日が落ちる。
 センチメンタルになるぜ。
 暗い道を播州龍野に帰る。
 ビール飲んで早寝するのである。

10月8日(金) 播州龍野/相生
 忙中の閑もあり。
 播州龍野〜相生を午前午後2往復の間、龍野で4時間ほどボケーーーッと過ごす。
 チェット・ベーカーり近所を散歩。
 
 毎年定点撮影する畦道、彼岸花が満開である。
 他の場所では盛りを過ぎていたり、断言はしかねるが、撮影ボイントでは昨年よりも3週間遅れである。
 18時過ぎに相生から帰館。
 ビール飲みながらニュース見ていたら、ノーベル平和賞に劉なんたら。中国が反発して報道を規制しているとか。
 中国もアホだなあ。
 「ノーベル平和賞」なんて科学とはまったく関係なし、冗談みたいなものだから、ほっとけばいいんだよ。
 日本だって「佐藤衛生サック」とかいうのに平和賞で、国民が恥ずかしい思いしたんだからさ。
 さあ、中国は大人になれるか。
 おれはどうでもいいけど、ともかく眠い。寝る。

10月9日(土) 播州龍野/相生
 朝から相生に向かう。
 えげつない降雨になった。
 世間は3連休の初日というのに、気の毒なことである。
 おれはミッション続行。周辺、静かなものである。
 昼はイオンモールの「丸亀製麺」へ行く。
 
 道の駅「白龍城」のちょっと先にあったのだが、今まで気づかなかった。
 かけ大に、トッピング材が色々あるが、まずはエビ天をいただく。
 ここの麺はなかなか。太子町の「あやがわうどん」と並ぶ、播州の名店というべきか。
 店の作りも「あやがわ」とよく似ている。
 麺のふるさと、播州龍野はふがいないのではないか。
 雨がほとんどやんだので、近所を散歩。
 隠れ家の窓から見えるコスモマリーナを見学する。
  *
 船の保管だけでなく、販売やレンタルなど、多角的にやってはるのであった。
 レンタルでちょっと播磨灘をクルージングしてみるか。
 ということで、夜道を播州龍野の家に戻り、ビール、湯割り。
 寝るのである。

10月10日(日) 播州龍野/相生
 定刻午前4時に目が覚めた。
 ごちゃごちゃと雑事の後、適当な時間に相生へ向かう。
 世間は3連休の2日目で好天……だが、道は空いているなあ。
 昨日に引き続き相生ミッションの続行。
 昼は本日も「丸亀製麺」へ行く。
 売り物は釜揚げとかぶっかけらしいが、わしゃやっぱり出汁うどんがいい。
 日曜日なので相生は早じまいとする。
 午後に播州龍野へ帰館。
 夕刻に近い午後、買い物ついでに自転車で近所をウロウロ。
 季節の変わり方が不思議である。
 ウチの近所、コスモスが咲き始めたが……
  *
 左の金木犀は昨日の雨で散り、中央の白木蓮の葉は繁り、右の柿は今年はまったく実をつけず。
 枯葉の季節はいかなる様相を呈するか、楽しみなことである。
 夕刻のニュース。
 北朝鮮から亡命していた黄・元書記が心臓麻痺で死亡という。
 歳からいって不思議ではないが、北の行事(ドラ息子のドラ息子の襲名披露公演)に合わせての暗殺かも。
 黄くん、小金ちゃんの末路を見ずに死ぬのは無念であったろうなあ。
 追悼を兼ねて、具沢山(キムチ・カイワレ・焼豚・梨)の徳山冷麺で「神の河」ロックを飲む。
 早寝するのである。

10月11日(月) 播州龍野→相生→大阪/Sunday at Jazz Club
 定刻午前4時に目が覚める。
 雑事の処理のあと、相生へ向かう。
 世間は3連休の最終日、晴……午前7時、道は空いている。
 相生の隠れ家にてごちゃごちゃ雑事を処理してから、電車で大阪へ移動する。
 昼過ぎに大阪の「穴蔵」に帰館。
 午後は天満のバンブークラブでSunday at Jazz Club例会である。
 本日のメインテーマは面白い「ライブ」盤の持ち寄り大会。
 ベニー・グッドマンからマグナス・ヨルトまで多彩である。
 ああ、楽しいなあ。
 ライブ盤について私見を述べれば、聴衆の熱気が演奏者に反映するところに面白さがあり、コンサートよりはライブハウス、数十人の良質の聴衆がいい反応をするのに尽きる。
 ビル・エヴァンスのヴィレッジ・ヴァンガードのはいいけど、私語とグラスの音がいけない。地下鉄の音(おれは聞き取れないけど)まで。
 ブレイキーのサンジェルマンの熱気は最高だが、ヘイゼルなんとかという女の叫び声が演奏を私物化していて好きになれない。
 やはりドルフィーとリトルの「5スポット」かなあ。
 おれは森山威男の『Live at Lovely』が日本では最高のライブ盤と思っているのだが、ちょっと長いので、ピットインでの『E.J.Blues』を持っていって、コーヒータイムに流してもらった。
 ということで、夕刻帰館。
 専属料理人が実家へ帰ったままなので、晩飯をどうしようか。
 冷蔵庫の中のもので済まそうかと「自宅」へ行ったら、ボンクラ息子その2がクリームシチューを作っていた。
 
 これがなかなかのもの。浅漬けが添えてあったり。明らかに専属料理人の血筋である。
 トマト・スライスとフランスパンを追加してビールと軽くワイン。
 溜まっている色々なのを読みつつ寝るのである。

10月12日(火) 穴蔵/トーマス・レティエンヌ
 終日穴蔵……のつもりだったが、雑事で2時間ほど外出。
 近所の医院で定期検診。血圧がいつもより低いので気になるところだが「これが正常なのです」と。
 ストレスなど、血圧が下がる要因は思いつかないのだけどなあ。
 夜、久しぶりにニューサントリー5へ。
 本日はトーマス・レティエンヌが出演するのである。
 神戸ジャズストリートで来日していて、今日が最後のライブらしい。
 2年前にマホガニーホールで聴いて以来である。
 岡正人(p)広田昌世(b)木村陽一(ds)+森朋子(vo)
 
 ジャス・コレクターの寺本さんも来ていて、2、3ステージをテーブル席で聴けた。
 レティエンヌ、本日はテナーの方がメインで、背が高いからこの方が絵になるような。
 ゴスペルから映画音楽(リクエストに応えて「慕情」)まで、多彩。トーマスはヴォーカルも披露、木村さんとの掛け合い「ロッキング・チェア」が泣かせる。
 深夜の帰館となった。

10月13日(水) 穴蔵/3クラ・セッション
 終日穴蔵。
 少しは仕事を……と思いつつ、なんとなく体がだるくて、ボケーーーッと過ごす。
 二日酔いではない(と思う)から、夜更かしの影響であろう。
 午前中からテレビはチリ鉱山落盤事故の「救出作戦」ばっかり。
 昼前(11:50頃)に最初の「引き上げ」開始、12時10分に一人目が出てきたから、昼のニュースはNHKがぼろ儲けのタイミングである。
 バカ騒ぎ報道(をたぶん朝から垂れ流し)の民放、ざまみろの気分であるなあ。
 夕刻、専属料理人が帰館。
 静岡のシラス、黒はんぺんなど数皿並べてもらって軽くビール。
 夜は難波の「845」へ行く。
 3クラ・セッションである。
 滝川さんを聴くのは久しぶり……5月3日以来である。
 土井徳浩をゲストに滝川雅弘、鈴木孝紀の3クラリネットに大野綾子(p) 宮上啓仁(b) 三夜陽一郎(ds)。
 
 ↑土井徳浩さんと鈴木孝紀さん。
 土井徳浩さんは初めて聴く。
 本日はバップ中心のコテコテ・ジャズで、おれとしてはたまらん演奏だが、土井さんのカバーできる範囲はまだまだ広いらしい。谷口英治に似たオールマイティ型なのかな。バークリィではジョージ・ガゾーンに師事、帰国してからはスガダイローと共演(かなりアヴァンギャルトらしい)など、演奏領域は広そうな。
 CDも入手。詳しくは後日に。
 鈴木孝紀さんと並んで、新時代のクラリネット有望株である。
 いい気分で、深夜マイナス1に帰館。
 明日からまた田舎行きである。

10月14日(木) 大阪→相生→播州龍野
 昼の電車で姫路経由、相生の隠れ家へ行く。
 相生ミッション続行である。
 暗くなってから播州龍野の陋屋に帰館。
 居間の模様替えを行う。
 昨年3月19日に買ったONKYOのミニコンポを2階書斎から1階居間に移す。
 テレビ番組があまりにもくだらないので、晩酌時にはCDを聴くことにしたのである。
 公開するのはどうかと思うが、築百年を超える陋屋の居間、鴨居があって、その隙間にスピーカーがきっちり収まった。
 
 グリフィンをかけてみると、天井からたまらない低音が降ってくる。
 こりゃいいぜ。
 明日にでも、パワーユニットは目立たない所に移し、コード類も整理することにするが、今夜はこれで聴くことに。
 シャワーのあと、3品(湯豆腐、ちくわの梅肉和え、トマト)並べてビール。
 昨夜ゲットした土井徳浩さん参加のボサノバ『confeito』を聴く。
 徳山冷麺を作って、アラン・バッシェ『Look to the Sky』を聴く。
 たちまち22時を過ぎた。
 いかん、これから毎晩CD流しつつ、延々と「ひとり酒」になりそうな。
 ちょっとやばいのではないか……と迷いつつ寝る。
 しんどいミッションの間には、こういう楽しみがなければいかんのである。

10月15日(金) 播州龍野/相生
 慌ただしい日である。
 播州龍野←→相生2往復。
 相生ミッションに加えて、新たに某国向けタイムマシン関係の作業開始。
 さらに選考を引き受けている某コンテストの資料が到着。
 おれは複数の業務を同時進行でこなすのは昔から得意だが、距離的制約がなあ。
 21時頃にMaxValuで買ってきた総菜並べてビール。
 天井のスピーカーから降ってくるジム・ホール「アランフェス」の響きが心地よい。
 資料を読みつつ寝る。
 数時間後に目が覚めるとは予想もしていなかった。


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