『マッドサイエンティストの手帳』481

●マッドサイエンティスト日記(2010年6月後半)


主な事件
 ・「毛の生えた拳銃」(16日)
 ・ラスカルズ(19日)
 ・謎の上映会(20日)
 ・北へ行く(21-24日)
 ・運命のボタン/ルノワール(26日)
 ・皿そば事件の現場訪問(30日)


6月16日(水) 穴蔵
 わ、3時に目が覚めた。
 またも早寝早起き傾向が進みはじめたような。
 穴蔵にて雑事色々。
 雨がやんだので、昼前に自転車で天六へ。ちょっと息抜きに映画を観ようかとホクテンへ行ったのだが、上映日を勘違いしていた。来週出直し……だが、都合がどうなるかな。
 午後はガス設備の点検があるため、穴蔵に待機しなければならない。
 森山威男ディスコグラフィに記載漏れがあるとのメールをいただいた。
 昨年、今岡友美さんの「Dear」にゲスト出演してはるのである。
 知らなかった。あわててAmazonで手配する。
 ついでに色々と調べていたら、8年前から探している大和屋竺「毛の生えた拳銃」のサウンドトラック盤が出ているのに気づく。映画のDVDが出ずにサントラだけとは珍しいが、こちらも注文する。
 森山さんのたぶん初録音音源のはずである。
 ちなみに、amazonで「Dear」を見ると、関連商品に「毛の生えた拳銃」が表示されるのは、おれが同時に注文した影響もあるはずだ。
 山下洋輔トリオ復活祭のDVD「ダブルレインボウ」もディスコグラフィにまだ記載してなかった。
 追加、修正項目が色々あるので、この際、INDEXもつけることにして、午後は森山威男ディスコグラフィの模様替えを行う。
 森山研究はまだ先が長いのである。
 夏至に近い日が暮れた。
 枝豆、カツオのタタキ、一口餃子、サラダなどでビール。
 早寝するのである。

6月17日(木) 穴蔵/うどん定食専門店?
 早朝にコンビニで週刊新潮を買ってくる。
 2週間前に「エッシャー床山」の記事を読んで以来、立ち読み・図書館では申し訳ないと購読しているのである。
 テレビ報道は(サッカー中継よりはましとはいえ)すべて新潮の後追いで、浅薄な報道である。
 賭博摘発の本質は「官」と「ヤクザ」の利権争いにある。
 官からすれば、ヤクザは自分たちの潜在的利権を侵害する敵だから、摘発にやっきになる。
 近い将来、野球賭博が公営化されたら、払い戻しの比率はずっと低くなって、テラ銭は全部天下り連中に持ってかれることになるだろう。
 取的が摘発され親方が捕まって相撲界が「浄化」されても、野球賭博ファンにとって、いいことは何もない。
 官は賭博利権は守れるし、相撲協会という天下り先が確保できるから、万々歳。そりゃ張り切るよ。
 ことの善悪をいっとるのではないよ。博打なんていっさいやらんことだ。
 ほぼ終日、穴蔵にて雑事。
 昼は、外出ついでに、天五の玉一イサク店で冷麺。
 
 たまらんなあ。
 帰路、天六交差点の少し南、天神橋筋の西側。
 おや、うどん屋が閉店して改装中である。
 
 ここは以前はカレーうどんの「得正」で、それを改装して、半年前にオープンした店ではないか?
 新規オープンした店の看板を見て戸惑った。
 「うどん定食」という看板が掲げられたのである(うどんもある定食屋ではなく、うどん屋である)。
 うどん定食といえば、普通「うどん+ごはん+小鉢+漬物」のセットメニューで、ランチメニューのいちばん安いやつだろう?
 ランチメニューに限っても、他に色々(かやくとかミニ丼とか)あるだろうに。
 うどん屋の看板としては、あまりに限定的で、他に売り物がないのか、不思議に思っていたのである。
 案の定というか、見切りが早いというか、半年で閉店・改装? こうなるなら、一度入っておくべだった。
 Amazonから注文していたCDが届く。
 『毛の生えた拳銃』……これは山下洋輔トリオではなく、実質的には中村誠一と森山威男のデュオなのであった!
 この時、山下洋輔氏は病気療養中。1967年末から69年にかけての事情は、もっと詳しく調べる必要があるなあ。
 森山威男ディスコグラフィを修正する。

6月18日(金) 穴蔵
 曇天から雨になる。
 終日穴蔵にて、本を読みCDを聴きつつ過ごす。
 昼間も薄暗く、照明をつけねばならぬ。
 梅雨空というには暗すぎ……わが心象風景なるや。
 生産的なことは何もしないまま、早寝するのである。

6月19日(土) 穴蔵/ラスカルズ
 定刻午前4時に起床し、4時半から「日本の話芸」再放送、桂千朝『抜け雀』を見る。
 よろしいなあ。
 必要あって集合住宅の古い議事録などを調べ、簡易データベースを作る。
 おれが理事だった期間はまめに議事録を残しているが、そうでない期間はわりと杜撰で、時間がかかることである。
 わが集合住宅、ペット飼育(特に犬)は禁止なのだが、途中からの入居者が「仲介業者からはペットOKと聞いた」と犬を連れてくる場合がある。
 数年前に総会決議で禁止を確認し、経過措置として「一代限り」の登録を実施したのに、その議事録に残されてなく、管理規約への反映も曖昧なまま、なし崩し的に犬コロが紛れ込んでいる。困ったことよといったら、こういう役目(規約の整備)はおれに回ってくるのである。
 要するに犬の飼育は「廊下で喫煙」とか「ツバ吐き」とか「寝間着で歩く」と同レベルのマナー違反扱い。
 規約で追いつめても、開き直られたらそれまでなのよね。
 肩身の狭い思いでコソコソ飼ってる飼い主と、開き直って犬がエレベーター内で小便しても平気な顔してる飼い主(犬は飼い主に似るからなあ)と、どちらが不愉快かといえば……
 まだそんな段階まではいってないが、だんだん住みにくくなってくるなあ。
 終日穴蔵。
 夜、歩いて梅田へ。
 紀伊国屋でスイング・ジャーナル7月号(休刊…実質的には終刊号?)を立ち読み10分間。
 資料的価値のある特集があれば残しておこうと思ったが、人気投票の10年ごとの総括が6頁だけ。あと、コルトレーンのディスコグラフィ(今さら)というのではねえ……。
 広告収入の減少が休刊理由というが、主因は企画力の著しい低下だろう。近年は60年代ハードバップ特集の繰り返しばかりだったもの。
 それに「ゴールドディスク」の権威が消滅(実質的にはヴィーナス賞というか広告主賞だもの)していたし。
 ただ誌名のブランド力は残ってるから、どこかへの売却かトレードはなかったのだろうか。寂しいといえば寂しいが、休刊はしかたあるまい。
 ニューサントリー5へ。
 ニューオリンズ・ラスカルズの出演日である。
 
 盛り場はガラ空き閑古鳥とかいう噂を聞いていたが、いつに変わらぬその盛況である。
 そりゃニュースをちょっと見るだけで嫌でも耳に入る、ワールドカップ競技場の不愉快な騒音(ブブゼラというのか?)で頭痛を覚えるよりは、福田さんのトロンボーンを聴きたいというのが正常な感覚だろう。
 セント・ジェームス病院など聴くとほっとするぜ。

6月20日(日) 穴蔵/謎の上映会
 本日も曇天なり。
 穴蔵にてSF以外の雑事を色々と片づける。
 (以下、事情により、固有名詞を伏せる)
 午後、自転車で某六の「某ルド某ンチ」へ出かける。
 極々私的なグループが映画の上映会を行うので、ごく個人的にまぎれこませていただく。
 映画のグループの集まりかと思ってたら、某文学者研究会の主催であった。
 「ネオン太平記」の極々私的な上映会。
 ↑上記サイトの記事、キャストにテレビ司会者「黛敏郎」とあるのは間違い。野坂昭如である。音楽が黛敏郎。ま、そういう、細かいことを書き出すときりがない。(キャストなど確認したいことがあったが、以下の事情でかなわなかった)
 14時から上映開始。
 が、カンジンカナメのシーン、冒頭からタイトルバックにかけて、桂米朝(医療機器セールスマン)と小松左京(産婦人科医)が入ってきて(ワンドリンク100円の大劇サロンで)ビール飲んで触りまくり、200円置いて出て行って「ドケチ!」とどなられる名場面……これが上映中に、ヨタヨタと「ご老人」が入ってきてプロジェクターの前でウロウロして、クレジットを含む最重要場面の半分以上が「ご老人の顔面」に映写されるという、とんでもない事態になってしまった。
 むろん普通に見えるはずなし。
 ところが、(5分も経ってないのだから)再度、最初から上映してほしいという声がどこからもなく、そのまま上映続行という、何とも不思議なことになってしまった。
 おれは部外者だから抗議するわけにもいかず。
 よほど偉い方だったのだろう。だが、偉い先生なら(そのご老人も冒頭場面はご覧になってないのだから……あっ、自分の顔に映写される画像が見える超能力者というのは使えるアイデアだな……それはともかく)「○○先生がおいでになりましたので、改めて最初から上映いたします」という配慮があってしかるべきではなかったか。
 面白い映画なのだが、おれとしてはアタマがカットされた映画は結局楽しめなかった。
 「文学」の集まりだから、映画に対するメンタリティがちがうのかな。
 おれはSF者だからよくわからんが、映画はきちんと鑑賞したいものである。
 
 某内さん所蔵のスチール写真が展示してあって、これは貴重なものである。
 (以上で、某名解除、ちとワルノリである)
 明日は早朝から動くので、早寝するのである。

6月21日(月) 北へ@
 発作的に……でもないか……だいぶ前から計画して、ちょっと旅行することにした。
 おれの場合、個人的な旅行は、SFコンヴェンションかジャズ・コンサートか学会がらみがほとんどだが、今回は極めて通俗的な観光旅行。
 どちらかといえば専属料理人の希望に合わせたので、俗っぽい地名は省略させていただく。
 天気予報では期間中、ずっと雨で、気が重かったが、結果としては、雨には降られなかった。
 早朝の電車で関空へ移動、10時に北の方の空港に着く。
 クルマで道央道を走り、インターを降りてしばらく行ったあたりでA川ラーメン。ごく普通の味である。
 ここから南へ移動して、丘陵地帯をウロウロする。
  *
 雨天の予報だったが、薄曇りで晴れ間もあり。
 ラベンダーは来月であって、特別に手入れされた花畑や「なんとかの木」よりも、普通に畑の広がる丘陵の方が眺めはいい。
 少し東の某温泉へ。
 近くに(これから観光名所になる予定とかの)「青い池」という不気味な池があった。
 
 死体でも沈んでいそうな。蚊が多くて閉口する。
 某観光ホテル……この地域ではランクは上の方らしいが、露天風呂を別にすれば、昔宝塚にあった会社の保養所を思い出すレベルであった。

6月22日(火) 北へA
 両側に白樺が生えた一直線の街道を北へ。
 またも道央道を走って、運河で有名な港町に向かう。
 高速料金が上限2000円のつもりで計画していたのに、小沢のおかげでトータル1万円ほどの予算オーバーである。しかも、道央道は来週(6/28)から「無料化社会実験」開始だと。うらむぜ、民主はんよ。
 実は今回、「月形町」(吉村昭『赤い人』の舞台となった町である)へ行ってみたかったのだが、寄り道すると2、3時間かかりそう。
 専属料理人は行ってもいいというのだが、某(監獄関係)資料館が残っているのかどうか不明で、無駄足になる可能性もあり、今回は見送る。
 港町に昼前に着いた。
  *
 運河に沿った歩道や橋の上、中国人いっぱいあるよ。
 他には観光客相手の土産物店と寿司屋ばかり。
 専属料理人の興味は「北一硝子」で、数店つきあわされる。
 記念(と誕生日の祝い?)にワイングラスか冷酒用グラスはどうかというが、おれは趣味ではないよ。
 醤油差し1個を買ったような。
 川又千秋の故郷とは思えぬ俗化ぶりである。
 午後、道都に移動する。
 某公園近くのホテルにチェックインしてから、ウロウロすることに。
 地下鉄でJRの駅へ移動、歩いて某大学へ。徒歩10分にこんな広大な敷地があるとは驚きだ。
  →  → 
 駅に戻り、さらに南へ歩いて(日本3大ガッカリ名所のひとつと噂の高い…ちなみにあとのふたつは日本橋とはりまや橋)時計台を見るが、ちゃんと原型を残していて「がっかり」とは思わなかった。
 はりまや橋がひどすぎるのだ。
 テレビ塔にも登る。これはクーポン券を貰ったから。高いところは苦手である。案の定、キンタマ収縮。
 「サッポロファクトリー」にある「ビアケラー札幌開拓史」でソーセージ、ポテト数種、サラダなど並べて「サッポロ・クラシック」生ビールを盛大に飲む。
 ジンギスカンのホールで大量の小学生が宴会をはじめた。
 修学旅行のシーズンで、晩飯がジンギスカンでごはんということらしい。
 ほろ酔いで歩いて道都最大の歓楽街へ。
 狸小路をウロウロ。
 ネオンぎらぎらの俗界……たまらんなあ。
 ここからはおれの趣味である。
 幾つか行ってみたい店があるが、20時過ぎに「JERICHO」へ行く。
 あ、昨夜、ドラムの藤井信雄さんが来ていたのだ。
 ライブが始まったところで、生きのいいソプラノが店外まで流れてくる。
 
 本日の出演は、菅原実(ts,ss)岩田雅弘(ts)松田基史(p)小田島茂(b)三浦紀子(ds)
 2テナー構成から、ひところの森山カルテットを思い出すなあ。
 ソプラノがなかなかよろしく、紅一点のドラムも聴かせる。
 マスターは演奏中、そこが定位置らしい、レコード棚の隙間30センチほどの空間にスポッと体を入れて座ってはった。
 最後まで聴きたいが、歩き疲れもあり明日の予定もあるので、1ステージのみで辞す。
 もう1軒気になっていた店。
 新宿通りで「すし家」という寿司屋を発見。
 
 某ジャズ掲示板で知った店(すし家)である。
 ここでしか食べられないネタ(ニシンの握りなど数カン)で冷酒「熊ころり」……たまらんなあ。
 専属料理人、ウニやアワビと、派手に食ってくれるぜ。
 一駅南の公園横ホテルへ千鳥足で深夜の帰館となった。

6月23日(水) 北へB
 道都から、またも民主党のおかげで高い高速料金を払って西南にある港町へ移動する。
 途中、この旅で初めての雨となったが、到着したら曇天。
 ホテルにクルマを置いて、市内をウロウロすることに。
 今回、どこに行っても迷うのか「昼飯」である。
 どこへ行っても名物が「ラーメン」と「カレー」ではねえ。
 生島治郎氏の名フレーズを思い出す(外地から引き上げて来て、松任駅前で「名物あんころもち」という看板を見た時の印象である)。
 曰く「……全国どこにでもある食べ物をことさら『名物』とうたわねばならぬところに、この土地の貧しさを感じた」
 ラーメン、カレーもしかり。
 で、JR駅前から路地をちょっと入ったところに「長月」という「手打ち蕎麦」があったので、ここにする。
 
 せいろ蕎麦650円をいただいたが、これが大当たり、絶品である。
 名物なんてものに幻惑されてはいかんのだなあ。
 路面電車でペンタゴンを見に行った。
 
 ここでもクーポン券を貰ったのでタワーに登る。キンタマ収縮。
 路面電車で戻り、ベイエリアや坂道をウロウロする。
   *
 雰囲気はミニ神戸か。
 天気予報に反して、雨に降られることはなかったが、夜景で有名な山頂は雲に包まれ、ロープウェイが途中で見えなくなっている。
 夜景見物は諦めた方がいい、夜はジャズ関係の店に行くと専属料理人に申し伝えていたところ、いかなることにやあらむ、日暮れ近い時刻になって急に雲が移動して、山頂の施設がはっきりと見えだした。
 東の空に月までかかったではないか。
 運がいいのか悪いのか。
 19:30頃にロープウェイ乗り場に行く。ここでも大量の修学旅行児童たちの列、バスが10台以上停まっている。
  *
 展望台はごった返し。デジカメを固定する場所がガキに占拠されていて、夜景撮影は無理である。
 すべて手ぶれ。
 下界に降りて、ホテル近、ベイエリアの海鮮居酒屋「きくよ食堂」で、刺身、ホッケ、アスパラ炒め、じゃがバタなど並べてサッポロ・クラシック。
 本日、ジャズ関係の店は断念である。

6月24日(木) 北から帰阪
 朝6時半頃に、徒歩10分ほどの「朝市」を見物に行く。
 だいたい想像していたとおりで、想像以上に「勧誘」がうるさく、これは疲れる。
 さっと一回りして帰館。
 宿泊していたのはベイエリア、赤レンガ倉庫群の横にある、最上階が全フロア大浴場(露天風呂もあり)というホテルで、禁煙室指定の都合から、同じ料金でワンランク上の部屋にしてくれ、きわめて快適であった。
 そしてトドメが朝食である。
 8時頃にレストランへ。
 バイキング形式だが、入り口付近では、網でシャケやシシャモなどを盛大に焼いている。
 ごはんの横には、(ウニとカニこそないものの)イクラ、イカ、甘エビなど魚介類が色々並べてあって、要するに好みの「朝市丼」が作れるのである。
 
 他にも、三平汁その他色々。朝ビールが飲めないのがまことに残念である。
 食べ過ぎ。
 しばらく部屋で横になった後、空港へ移動する。
 昼過ぎに関空着、15時頃に帰館。
 さあ、これから当分の間は日常生活の継続となる。

6月25日(金) 穴蔵
 終日穴蔵。
 楽しきかな雑用。
 旅行中、新聞はほとんど読まずテレビも見なかったから、溜まった新聞をざっと読んで、日常感覚が戻ってきた。
 大相撲の野球賭博。
 琴光喜を恐喝した容疑で元取的「古市満朝」逮捕。
 動機は本人も野球賭博の借金を抱えていたから……これには納得する。
 胴元が「上客」を脅すなど考えられなかったもの。
 古市満朝が出頭したのも、このままだと、長年苦労して築きあげた賭博システムを壊したと「組織」よって消されることに怯えてであろう。
 古市は反省はしとらんよ。
 名古屋場所開催について色々議論があるようだが、やるべし。
 賭博に関わったとされる取的もグレーだし、少しは博打をやらん力士もいるだろうし、なによりも推定無罪の原則に則るべきだ。
 おれは、野球部と関係ないアホの不祥事で甲子園出場を辞退する高校野球に疑問を感じている。
 まして取的は商売(プロ)である。
 アホの賭博疑惑で「たつきの道」を断たれたらどうすんのよ。
 相撲協会諸兄、やりたまえ。
 相撲賭博だ楽しみだ。取的が最終的に白か黒かに張るのである。
 所詮、極道の興業ではないか。
 ただし、相撲ごときに税金をつぎ込むことには、おれは断固反対する。

6月26日(土) 穴蔵/運命のボタン/ルノワール
 定刻4時に目覚め、4時半から「日本の話芸」再放送……本日は円鏡じゃなかった圓蔵の『寝床』だが、聴くに堪えない。
 梅雨空で、昨夜来の雨が降り続く。
 穴蔵にて粛々と雑事の処理。
 11時前に、傘差し自転車で天六のホクテンザ2へ。
 早朝落語の口直し……でもないが、『運命のボタン』を見に行く。
 この作品、まったく予備知識なしである。
 広告で「ボタンを押せば1億円、ただし見知らぬ誰かが死ぬ。決断の時間は24時間……」というフレーズを見ただけ。
 これは予断抜きで見るべきだと、雑誌でもネットでも、この映画に関する記事はすべてシャットアウトしてきたのである。
 興味は……なんだかリチャード・マシスンあたりが書きそうな(悪魔との契約パターンの)短編で、トワイライト・ゾーン(今なら「世にも奇妙な物語」か)で30分程度の話ではないか? 長篇にして、どんな展開になるのか……が興味の中心であった。
 ホクテンザのいいところは、余計なCMや予告編なし、すぐ本編が始まるところだ。
 11時上映開始、クレジット見てびっくり。リチャード・マシスンの短編が原作ではないか!
 (しかも、あとでチラシを見たら「トワイライト・ゾーン」で映像化されたことがあるという)
 要するに「猿の手」の現代版だが……NASAが舞台、主人公(夫の方)は火星探査計画(バイキング)に関わっていて、宇宙飛行士を目指している、クラークの第3法則が出てくるし、主人公はクラークと知り合いという! こりゃ本格SFではないか?! と思ったら……(以下、これから見る人の楽しみを奪ってはいけないので省略)
 帰館したら、専属料理人が中之島へ行かないかという。
 国立国際美術館でやってるルノワール展が明日までで、チケット2枚貰ったのがあるとか。
 小雨の中を歩いて出かける。
 途中、ジュンクドーに寄って、マシスンの原作『運命のボタン』を確認する。
 20年ほど前のプレイボーイ誌に伊藤典夫さんが訳載した短編(むしろショートショート)で、これは読んでなかった。悪い作品ではなく、明らかに「猿の手」の換骨奪胎で、オチはちょっと皮肉なひねりが効いている。このオチは映画の中にも会話中に出てくるが、マシスンは不満であろうなあ。むろん、原作にはNASAも火星探査も出てこない。
 国際美術館に15時半に着いたが、雨の中、長い傘の列。
 最後尾に30分待ちのプラカード。
 
 専属料理人「まだマシな方じゃないの」
 「堂島ロールに並ぶほど恥ずかしくはないけどねえ」
 並んでいるのは美術がわかるとは思えぬ風体の人ばかり……むろん、おれもそうだけど。
 30分並んでから、人の頭越しにありがたき名画を鑑賞させていただく。
 荒川修作展も開かれていて、こちらは人がほとんどおらず、おちついて鑑賞できる。
 落語−映画−短編−絵画−オブジェと、本日は落差の激しい1日であった。
 夜は枝豆、カツオタタキ、ナスの素揚げと厚揚げなどでビール、「神の河」ロック。
 早寝するのである。

6月27日(日) 穴蔵/吉乃川
 曇天なり。室温30℃にして高湿度だが、おれには快適である。
 終日穴蔵にて粛々と雑事の処理を進める。
 午後、必要あって、紀伊国屋書店へ自転車で往復。
 SF関係の確認である。
 ついでに大阪万博の制服写真集を探すが見当たらず。
 『昭和ストリップ紀行』という本が出ていて触手が動くが、パラパラッと見たら、活字は少なく、写真集である。パス。そのうち荷風○人さんが論評してくださるかな。
 帰路、豊崎西公園南側の中本酒店で冷酒を買って帰る。
 中本の兄ちゃん、「新潟県産、全国新酒鑑評会・最多金賞受賞蔵」の「吉乃川」を薦めてくれた。
   
 ということで、夜は専属料理人に、枝豆、豚の角煮、ヤッコ、(北の朝市で買った)塩辛・たらこ、おくら山芋など並べてもらって、ビール、冷酒。
 「吉乃川」……これはなかなかのものである。
 リーズナブルで旨い酒を提供してくれる中本酒店に栄光あれ!
 下郎の休暇は終わった。
 明日からしばらくど田舎行きである。

6月28日(月) 大阪→播州龍野/イケビン?!
 早朝の電車で播州龍野へ移動。
 下男モードに入る。
 昼……寿司店「よこた」で穴子寿司の折りを作ってもらう間、店にあった週刊現代(今店頭に出ている号)の記事を見てびっくり。
 「私の地図」というインタビュー記事に内田樹氏が登場。
 中学時代(東京・大田区下丸子)について、こう述べてはる。
 「大阪に池田敏さんという青年がいて、『SFマガジン』でSFファンの中高生を募って全国組織を作っていたんです。……大阪の池田ボスから指令が来る。練馬にいる松下正己と東京支部を立ち上げてファンジンを出せ、と。……この秘密結社ごっこがまことに楽しかった。……僕は別にSFが好きだったわけじゃありません。『中学生しか支援者がいない反権力的な文学ジャンル』という設定を愛していたんです。」
 へーーーぇっ、松下正己とファンジン出してはったのか。
 松下正己の名は覚えてるけど、内田樹の名は知らなかった。
 内田氏の著書は何冊か読んでいるけど、こんな事情はまったく知らなかった。
 池田敏(以下「イケビン」と略す)いっても、SF関係で覚えている人は少ないだろうなあ。
 1965年前後、大阪で色々あったけど(その雰囲気は『小説TP』に書いている)、最終的には、何がやりたいのか、よくわからん人であったなあ。
 当時は若い(おれは大学生で年寄り、若いというのは中高生)世代のファンジンがいっぱい出てきた時期だ。
 このあたりの事情は、難波弘之さんや巽孝之教授や亀和田武さんや藤原龍一郎さん(その他大勢)が詳しいとおもう。
 おれの印象では、今もSFに関わってる人たちと、イケビン(コアセル系というのか)系統とは、活動は重なっていなかったように思う。
 コアセル系は内田氏のいうとおり「別にSFが好きだったわけじゃありません」だったからかもしれない。
 イケビンも遠くなりにけり。

6月29日(火) 播州龍野の日常/「生きがい」?!
 高湿度の曇天なり。
 播州龍野にて粛々と下男仕事に勤しむ。
 たちまち夕刻になった。
 夕食である。
 老母には、肉豆腐・キュウリ酢揉み・キンピラなど並べる。
 おれは上記メニューからキュウリを外し、おぼろ豆腐を加えてビール。
 老母、ふだんは午後8時前に入浴して寝るのに、本日はNHKの「歌謡コンサート」を見はじめた。
 困ったものだ。
 いたしかたなく、おれは(北の朝市で買った)イカ塩辛と明太子で龍力の冷酒呑みながらつき合う。
 「別れの演歌」特集……悪くはないけど、由紀さおり『生きがい』という曲に「作曲・渋谷毅」とあってびっくり。
 あの渋谷毅さんか?! ってジャズ・ピアニストの渋谷さんのことだけど。
 やっぱりそうみたい。ド演歌とはちがうモダンな曲想である。
 こんな作曲活動についてはまったく知らなかった。
 昨日の「内田樹〜イケビン」といい、意外なことが多いなあ。
 21時前に老母を入浴させ寝かしつける。おれもシャワー。早寝するのである。

6月30日(水) 播州龍野の日常/皿そば事件の現場訪問
 夜来の雨が未明にはやんだが、晴れ間なく、相変わらず高湿度の曇天なり。
 粛々と下男(おとこし)仕事を遂行する。
 昼……老母の昼食の世話をした後、ちょっと出かけることにする。
 クルマで30分ほど。
 怪談「市川堤」でおなじみの姫路市・市川沿いにある「文楽」へ行く。
 ここは、ごく一部で有名な「桂米左の皿そば事件」の舞台となった店なのである。
 事件の詳細は……面倒だからパス。
 四半世紀前、米左師匠がまだ米朝師匠の内弟子だったころの話である。
  *
 本日は米朝師匠に倣って皿そばをいただく。
 米左さんが食べそこなった「なんたら定食」を食べてみたかったが、豪華な膳が色々あって判断がつかない。
 吉朝やんが食べた天ぷらそばの値段を見たら、皿そばより10円高かった。
 米朝師匠の小言もむべなるかな。
 ま、しかし、ともかく、ずっと前から来たかった店。感無量である。

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