『マッドサイエンティストの手帳』429
●マッドサイエンティスト日記(2008年6月前半)
主な事件
・九州ウロウロ(3-5日)
・関空見物(6日)
・映画『神様のパズル』(10日)
・天満JAZZ倶楽部(15日)
6月1日(日) 播州龍野→大阪
助っ人来たりて役務交替、しばらく出所となる。
昼の電車で帰阪。
雑事山積……だが、日曜なのでほとんど処理できず、明日に回す。
田舎から戻った翌日は終日寝ていることが多いのだが、そうもしてられない。
とうことで、ともかく早寝。
6月2日(月) 穴蔵/ウロウロ/入梅
わ、午前3時半に目が覚めた。
早寝したせいもあるけど、近所のテレビの音響である。明け方まで見てはるらしく、この季節になって窓を開けたままだから、ベランダ方面から響いてくる。
できれば7時頃まで眠っていたかったが。
いや、田舎生活に較べて、贅沢いってはいかんのかな。
愚痴をいってもはじまらんので、4時前起床、精力的に雑件処理、あわただしくもお粗末な朝食を挟んで続行、9時になったところで近所の医院で定期検診、血圧は正常、帰館後あちこちに電話とFAX、だいたいの予定は決まったので、昼前から降り始めた雨の中、歩いて梅田方向、地下街を三番街→大阪駅→駅前第2ビル→旭屋→阪急コンコースと歩いて、雨だからハチには寄らず(ユル・セ・ママ、古いか)、まっすぐ帰館、14時に穴蔵に戻る。約7000歩。
夕刻まで雑事処理続行。
だいたい片づいた。
ま、やればやれるではないか。
肝心のゲラが手つかずのままだが、明日から某方面に移動するので、持っていくことにする。
関西も入梅である。
晩酌、早寝。
6月3日(火) 大阪→大分
発作的に……というわけでもなく、ちょっと計画的に、専属料理人と旅行することにした。
こんなことは10年に1度あるかないか。
だいたいおれは新婚旅行なんてものには行かず、休暇利用して原稿書いていたのだから。
珍しいことである。
朝、伊丹空港から大分へ飛んで、レンタカー使用、湯布院方面へ移動する。
これは専属料理人の希望。
梅雨でガソリン高騰となると、道路も宿もガラ空きであろう。
日出から湯布院にかけては、霧が濃く、ちょっと怖い。
湯布院からやまなみハイウェイで「九重“夢”大吊橋」へ。道路ガラガラ。
173メートル下の渓谷を見下ろす。キンタマが縮むなあ。
桂歌之助(二代目)とか高橋良平など、身動きもできず、小便垂れ流しであろう。
やまなみを引き返し、湯布院へ。
ガラガラ。
宿泊客は2組とかで「大浴場」はおれひとりであった。
6月4日(水) 大分→柳川→長崎
湯布院から柳川へ移動。
ランカン橋の乗船場から川下りの舟に乗る。
こちらも本日は空いているらしく、香港からの新婚カップルと計4人である。
船頭さんがチンカス三百代言・五十嵐敬喜に似ているのでギョ。
しかし見かけとは大違いで、乗客4人(うち2人は日本語わからない)でも手抜きせず、丁寧に解説、歌も歌ってくれた。
ブラブラ歩いて乗船場に引き返したあと、本吉屋本店でうなぎせいろの昼飯。ま、食べたことに意味があるというところ。
佐賀県を抜けて長崎へ移動。
夕刻から市内ウロウロ。専属料理人は松翁軒のカステラを買う。
近くの桜町の居酒屋「亜沙」でビール。
6月5日(木) 長崎→有田→博多→大阪
朝、ホテルのすぐ近くにあるグラバー園へ。
午前8時開園で最初の客だから、順路に沿ってゆっくり歩いても観光客まだゼロで、これは快適である。
1時間ちょっとで一回り。
今回のツアー、おれの唯一の希望は「軍艦島」見物であったが、午前中のクルージングは欠航(これは3日前に決まっていた)で、午後がどうかと迷っていたが、微妙。午後の便が出てもあとの移動時間が切迫しそうで、結局「軍艦島」は断念する。
客が少ない季節は快適だが、困ることもあり。
軍艦島は周辺をクルージングするだけで上陸はできないが、近い将来、上陸して観光できる可能性もあるらしい。ま、将来(といっても残り少ないけど)の楽しみとする。
有田へ移動して「九州陶磁文化会館」へ。これも専属料理人の趣味。ここもガラ空き。立派な建物で、陶磁器の展示も充実、しかも「無料」である。
ここで、同じ佐賀県内に佐賀県立宇宙科学館があることを知るが、引き返すにはちと遠いなあ。これも断念
伊万里を抜け、唐津・虹の松原の中を抜ける。砂浜へ出る道がわからないまま博多へ。
早めに着いたので15時からやっているもつ鍋屋「○慶」へ16時頃に入って、炙りもつなべで盛大にビール。
まあまあか。本当に行きたかった店は18時開店で間に合わないものなあ。
あと天神で専属料理人につき合って、大丸、三越、岩田屋のデパ地下巡り。要するに辛子明太子の銘柄チェックである。やはり岩田屋がいちばんの充実らしい。
「椒房庵」対「稚加榮」……「料亭の味」というのが船場吉兆事件で禍して「椒房庵」を購入。
地下鉄で福岡空港へ。と、ここでも明太子の競争激烈である。
伊丹へ飛行。
午後7時40分の博多の空。森山威男『hush-a-bye』を思い出すなあ……なんていっても、わかる人は少数だろうけど。
6月6日(金) 穴蔵/関空往復/野田氏の訃報/むさしくん
穴蔵にて溜まっている雑事の処理。疲労感はなし。
昼前に相棒の某君が来て、いっしょにクルマで関空に移動する。
某国へ送るタイムマシンの搬入である。
関空の国際貨物エリアに初めて入る。一時立入証を発行えば、意外に簡単である。
関空の西南端……人もクルマも意外に少ないが、コンビニやガソリンスタンドがあり、バス停まである。
南港の荷受場にくらべると静かなもの。
しかし、雰囲気は「ヴィズ・ゼロ」の世界である。
帰館したら、野田昌宏氏の訃報。
体調がよろしくないとは聞いていたが……最初に会ったのがTOKON2(65)、最後がヤネコン(99)だったかな。SF作家クラブ関係よりも、SF大会やコンヴェンションでお目にかかる方が多かった。それだけファンを大切にする……というよりも、SFに向き合う姿勢の正しい人にはものすごく親切な方であった。
ワールドコンに来られなかったのが無念だなあ。
夕刻、かんべむさし氏来穴蔵。
久しぶりに定員2名の「SF検討会」開催であるが、直前に野田さんの訃報あり、あまり盛り上がらず、通夜ムードのしんみりした飲み会になった。
6月7日(土) 穴蔵
終日穴蔵。
色々と溜まっている雑事の処理。
昼過ぎに某テレビ番組の「うどん特集」でおれが立ち食いうどんをすする場面が流れた。
5月1日に取材を受けたもの。
照れくさいから事前には誰にも予告していなかったのである。
と……夜、消息不明だった友人のTちゃんからとつぜん電話。
「テレビを見て思い出した」という。
何しろ阪神大震災の時から連絡がとれなくなって、どうしているのか気になっていたのである。
前職とは関係ない仕事をして、金が貯まれば海外へ行ったり、この2年ほどはベトナムに住んでいたのだとか。
神戸の住居は拠点としてそのままあるという。
まあよかったが……テレビの威力はあなどれんなあ。
6月8日(日) 穴蔵
終日穴蔵。
黙々と雑事の片づけ。
昼過ぎに秋葉原にド派手な通り魔出現のニュース。
加藤智大(25)なる男が裾野からわざわざトラック借りて上京してきたらしいが……はた迷惑なのは出身地・青森市の同級生であろうなあ。夕方からマスコミ殺到、アルバムや卒業文集狩りが開始されているはずである。
マスゴミ被害も報道してほしいところだ。
6月9日(月) 穴蔵/市内ウロウロ
定刻朝4時起床。
少しは仕事もするのであった。
慌ただしい日である。
9時に自転車で出て梅田ウロウロ。
先週末に関空に搬入したタイムマシン関係で色々な処理。
FAXが入るのでいったん帰館。
某国へメールとFAX。
またも梅田へ。
昼前に一段落ついたので、久しぶりに「ハチ」に寄ってランチ。
恒例8月8日の山下洋輔ライブのチケット、発売開始である。
前の方の席を予約する。
じつは8/8の前に宮崎で森山威男グループと山下洋輔ビッグバンドが出演するジャズフェスがある。
おれは今まで宮崎に行ったことがない。この夏はじめて行く予定である。友人諸氏と会場近くのコテージ借り切りという計画があって、ハチでちらっとそんな話をしたら、ハチママ「うちも紛れ込めるやろか」……うーん。おれが送り迎えやらないかんのかいな。
穴蔵に戻って、午後も雑事遂行。
よく働いたので、夜は専属料理人の作ってくれた数皿でビール。
仕上げに、先日博多で買った「椒房庵」の明太子で、某方面からいただいた弘前の「白神・貯蔵酒」……絶品!
博多と青森が大阪の食卓で出会う、また楽しからずや。
6月10日(火) 穴蔵/映画『神様のパズル』
4時前に起きる。
張り切って少しは仕事もするのであった。
SF系、最初の集配に間に合うようポストに投函。
昼前にタイムマシン系のドキュメント、こちらはEMSで某国に発送。
さらにドキュメントをPDF化して関係先にメールで送信。便利になったものである。
昼過ぎで全部片づいた。
午後、専属料理人と歩いて梅田へ。
梅田ブルク7へ映画『神様のパズル』を観に行く。
機本伸司さんの原作『神様のパズル』は、SFファンなら誰が読んでも「フェッセンデンの宇宙」の現代版と解釈する。ところが作者に訊いたら、かんべむさしの「水素製造法」から「宇宙製造法」というタイトルを思いついたのが契機という。(このことは『僕たちの終末』の解説で触れてますので、ぜひ買って読んでください)
さて、原作は主人公の天才少女を同じゼミの「普通の男子学生」の目で描く構成だった。
これが、映画では、双子の兄弟(秀才弟とロックやってる落ちこぼれ兄貴)が事情あって「入れ替わり」、宇宙論を何も知らない落ちこぼれの方がゼミに紛れ込むという設定になっている。
(この性格の違う双子の設定は「対称性の破れ」に引っかけてあるのだろう)
おっ、こりゃ本気で「水素製造法」をやるんかいな……と思ったら、(コメディの要素もあるが)比較的原作に忠実で、頑張って作っているというか、全体に好感の持てる作り方だった。
原作は「父娘の葛藤」がテーマだが、映画では若者の「自分さがし」に変わっている。
原作は学園青春小説のスタイルだが「大人の小説」、映画は「ロックと宇宙論」だからわりと騒がしく、ゼミでの講義や議論がやたら絶叫型なので疲れる。が、まあ「青春映画」なんだから、小津安二郎のタッチで撮るわけにもいかんだろうし。
最後の方にちょっと無茶(送電関係)もあるけど、スプリング8のロケや「田植え」部分の雰囲気もよく、原作の良さは十分残されている。
なんだか、原作は大傑作で、映画は原作の良さを残しているから佳作……みたいな感想になってしまったが、その通りなんだから仕方がない。いや、最近観たなかでは面白い映画である。主役の天才少女がなんだか「所帯やつれ」したような表情で(だから「超ひも理論」→「ヒモ」の妄想シーンは抜群に決まっていた)、おれの好みでないことが影響しているのかも。褒めてるのか貶してるのか、むろん褒めているのであります。
6月11日(水) 穴蔵
終日穴蔵。
仕事はせず、本を読んで過ごす。
面白い本を色々読んでいるのだが、そういえば、このところ感想を書いてないなあ。
近いうち集中してアップすることにしよう。
6月12日(木) 大阪→播州龍野
早朝の電車で播州龍野へ移動。
久しぶりに<下男モード>入りである。
下男(おとこし)仕事の合間にタイムマシン関係も少し。
ビジュアル・ベーシックを習得する必要が生じたが、この歳になると面倒になるなあ。
昼頃から隣接する農地が騒がしいと思っていたら、数時間で耕されて水が張られている。
耕作地が残っているのはいいことだと思うが、用心しなければいけないのは、水が張られたら、そこに生息していたS字型が「上陸」してくる可能性があることだ。
憂鬱な日々がつづくことになる。嗚呼……。
6月13日(金) 播州龍野の日常
相も変わらず下男仕事。
夏至が近く、明るくなれば起き暗くなれば寝るパターンの老母、起床が早い。しかも、老母は昨夜はなぜか午後10時まで本を読んでいた。
「下男」のおれとしては、老母が寝てからシャワー、焼酎一杯、老母が起きる前に起きて少しは仕事というパターンだから、本日の睡眠時間は5時間である。
下男は辛いのであった。
本日も雑事多し。タイムマシン関係でも色々発生。なんと某国データバンクから「調査」依頼まで来る。無借金でやっとるし、融資なんて受ける気はさらさらなし、部品購入は全部現金なのだから、「信用」調査される理由は希薄なのだが。
どこが「信用調査」を依頼したのだ?
来週「調査」を受ける。こちらは怖いものなしだから、ひとつSF的インタビューをやってみよう。
刮目して待たれよ。
どんな「報告書」があがるのか、読んでみたいが、無理だろうな。
定刻18時にダレヤメ。
本日のメニュー。徳島の枝豆、豆腐工房のヤッコ、カレイの塩焼き、甘エビ、これに専属料理人が作ってくれたキンピラ、土佐煮、老母の作ったキュウリの酢揉みなど並べてビール。
本日は、老母は20時に就眠。
ほっ。
おれもシャワーを浴び、あとはキムチドバドバの盛岡冷麺と「神の河」水割りで仕上げ。
早寝するのである。
6月14日(土) 播州龍野→大阪
相も変わらず下男仕事。
本日、居間のコタツを片づけ、布団を干す。6月半ばまでの使用は新記録ではないか。今朝もちょっと肌寒かったほど。
昼前から「岩手・宮城内陸地震」報道一色となる。山間の被災地はまだ寒いらしい。
おれの場合、寒冷地への義捐金は惜しまない。明日にも受付開始か。月曜になるのかな。
昼前に隣接する水田で物音。
2時間ほどで田植えが終了している。
4ヶ月後に収穫か。半世紀前の記憶に照らすと、ずいぶん促成化されている印象だ。
午後の電車で帰阪。
専属料理人に「夏パスタ」をリクエストしていたら、夜は、プチトマトとブロッコリーをごちゃごちゃしたパスタ中心に、枝豆、ローストビーフ・サラダ、鰯とタマネギ・人参を酢でゴチャゴチャしたイタリア風なんとかなど並べてくれて、これでビール、微発泡白ワイン。さすがにおれが播州龍野で作るシンプル・メニューとはちがうなあ。
寝る。
6月15日(日) 穴蔵/天満JAZZ倶楽部
穴蔵にて粛々と雑事を片づける。といっても日曜なので、対外的な事項はすべて明日に送る。
午後、自転車で天六のワイルドバンチへ。
天満JAZZ倶楽部の例会。
本日はジャンゴ・ラインハルトの足跡を中心にジプシー・スイングの特集。ナビゲーターはSさん。遠路東京からの参加である。
ちなみに7月6日(日)にはスペシャル企画としてマイク・モラスキーさんのトークイベントがある。案内はこちら。現在フィークドワーク中の「日本のジャズ喫茶文化」に関するヴィヴィッドな報告が聞けるはずである。
夕刻、今度はSF関係。
写真集や古典芸能関係を専門とする「天五古書」で、高井信、山本孝一、柳田二郎というヘヴィ級コレクター諸氏と合流、バンチ近くのおでん屋(これまた昭和というよりも戦後のにおいを濃厚に残す店である)で2時間ほどガヤガヤ。故人となった作家の単行本未収録作品に関する情報など、びっくりする情報が色々。この世界も奥が深いが、おれは歳も歳だから深入りに注意しないと。成果だけを享受させていただく方針である。
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