『マッドサイエンティストの手帳』60
●かんべむさし『上ヶ原爆笑大学』
主な事件
・かんべむさしの青春記
・「むさしキャンパス記」の改稿版である
かんべむさし氏の『上ヶ原爆笑大学 新版むさしキャンパス記』が出た。
むかしからのファンには懐かしい一冊。「俺はロンメルだ」「決戦・日本シリーズ」につづいて出た、たぶん3冊目ではなかったか。
かんべむさしの青春記……というより、関西学院大時代、「広告研究会」というクラブの部活が中心になっている。
「爆笑大学」というタイトルは、まあ、出版社側の意向であろう。
初期の作品に見られた破天荒なギャグによる「爆笑」はない。むしろほろ苦いユーモアとペーソスで、その後の、たとえば「黙せし君よ」「片隅の決着」につながる全共闘体験と表裏をなす青春記であり、「課長の厄年」の課長の若い頃の顔がうかがえる。
ヒューマガジン社発行。
かんべむさしの作品、岩波の「世界」に連載された『烈火の哄笑』はまだ出ないのか?
ここでは「哄笑」である。青春記は「微苦笑」かな。ファンとしては、ぜひともまた徹底的な「爆笑」作品を書いてほしい。
ぼくの知るところで判断すれば、『上ヶ原爆笑大学』はほとんど素顔(青年期)である。「黙せし君よ」「課長の厄年」「急がば渦巻き」も、素顔に近い。「決戦・日本シリーズ」の主人公は……やっぱり素顔であったのかもしれないが、かなりヤケッパチの男である。「水素製造法」は? やっぱり、たまには「爆笑」「激笑」路線も読みたい。