『マッドサイエンティストの手帳』59
●マッドサイエンティスト日記(1998年4月前半)
主な事件
・(抹消)事項多発
・一族再会
・《異型コレクション4》『悪魔の発明』が出た
1998年
4月1日(水)
期の始めであるが(500行抹消……経済小説を書く機会があれば生かせるであるであろうか)ったことである。
4月2日(木)
昼休み、阪大病院へ友人を見舞いに行く。
病状については省略。
病室からは万博公園が一望できる。すぐ前に民博。……そういえば石毛館長は現在海外出張中、恒例の花見が少し延期になったのだなあ。
夕方、かんべ事務所に寄るために靭公園を抜ける。午後5時、みぞれが振りそうな寒さのなかで、公園の桜はきれいである。アホがもう焼き肉をやっている。
かんべむさし『上ヶ原爆笑大学』の見本をいただく。懐かしい「むさしキャンパス記」の新装版。事項で紹介する。
4月3日(金)
夕方、アトソン大阪分室に寄る。いからし氏と森山威男関係の情報交換。珍しく飲まず、そのまま帰宅。
4月4日(土)
世間は休みなれど出勤。
夜、レンタルビデオで「昨年度最大の話題作」というふれこみの「誘拐」を観る。なんじゃこれは。テレビの安手サスペンス・ドラマの作りで、B級映画ですらない。金がかかっていないとかの問題でなく、完全に作り方の問題。役者が「ビデオカメラを向けられた」演技しかしていない。
アホらしくなって、買ってきたCD「プレズ&テディ」(レスター・ヤング)「コンプリート・グラマシー5」(アーティ・ショウ)を聴く。スイングがいちばんいい。
4月5日(日)
家族4人で播州龍野の実家へ。父の13回忌で一族集合。
「武者行列」があるとかで、田舎町であるのに、観光客らしい客が多い。
中華料理店で会食。夕方帰阪。
夜、福田次郎「三島由紀夫 剣と寒紅」を読む。傑作である。安藤武「三島由紀夫日録」と照合……福田次郎の名は1箇所だけ登場している。
4月6日(月)
夜、インドネシアから一時帰国のO氏を囲んで、桂歌之助氏ら計4人でインドネシアの生々しい状況を聞く。贔屓屋→夕霧そば→サントリー5と流れて22時解散。
4月7日(火)〜10日(金)
サラリーマンは気楽な稼業とは……もうマンネリである。
4月11日(土)
終日ゴロ寝。
夕方から、居住している集合住宅の集まり、またも4月から理事を依頼される。数年前の議決事項に関して揉めごとあり、経過を記憶で説明する。その結果「次はあんたが適任」ということになってしまうのである。都合の悪いことを忘れる人のなんと多いことか。都心には住みたい……集合住宅という「ムラ社会」には住みたくない……。某ジュン氏がホームレスでいいからひとりになりたい、といったとかいわないとか……わしのレベルとは違うかな。
4月12日(日)
終日、集合住宅の管理組合に関する資料調べ。昨日の「揉めごと」の記録を全部まとめる。ぼくの記憶違いではないことは判明するが、発展的な作業ではないなあ。だれもが自分の発言と行動をきちんと記憶しておれば、こんな無駄な作業で1日無駄にすることはないのだが。……まあ、早川との裁判に圧勝したのも、この記憶力と記録癖があったればこそなのだが。……人間のクズ・今岡清のノーテンキさを思い出して、またも腹が立ってくる。「宇宙法廷ノート」、つづきを書かなくてはなあ。今岡清と五十嵐敬喜が赤っ恥をかく場面を書きたいためだけの長編なのだからなあ。
4月13日(月)〜14日(火)
うへっ(200行抹消……経済小説に生かせるであろうか)ったもんだぜ、たくもー。
4月15日(水)
『悪魔の発明』の見本届く。
廣済堂文庫から出ているホラー・シリーズ《異型コレクション》の4巻目。『悪魔の発明』はタイトルから想像がつくとおり、マッド・サイエンティストがメイン。先月、短編をひとつ書いて、精神状態が昂揚したというのは、この中の1篇、拙作「ハリー博士の自動輪」のことである。
拙作は別にして、力作異色作傑作が多い。テーマがテーマだけにそれぞれに面白いが、一編あげれば、芦辺拓氏の短編。ベースになった金子務氏の著作を以前に読んでいたから、背景がよくわかり、テーマの処理のうまさに感服する。筆力のある人だ。
このシリーズに関しては、井上雅彦氏の精力的な編集ぶりに脱帽である。
わが「ソリトン」も少し見習わなくてはなあ……。
なお、拙作に関して、井上さんは好意的な文章を書いてくれているが、ちょっとミスがある。ぼくが「日本SF界初の理工系作家」というのは間違いで、現代SFでは石原藤夫博士という先輩がおられ、さらにさかのぼれば、海野十三という大先輩が存在するのである。