HORI AKIRA JALINET

『マッドサイエンティストの手帳』16

●マッドサイエンティスト日記(1997年2月前半)

主な事件
 ・北野勇作ベトナムへの壮途に
 ・カラオケ大会
 ・書庫の整理をしていたら……

1997年

2月1日(土)
 会社の暦では休日なれど自転車で梅田を抜けて出社。先月の成人病検診の結果が届いている。γGTP、思ったほど下がっていない。5泊6日程度の禁酒では効果なしということか…。5年前、2月断酒したら面白いように下がったことがある。あれが妙な自信につながったのがいけない。折を見て、また試みてみよう。
 帰途みぞれ。
 18時、梅田で北野勇作・草上仁・高井信氏と会う。
 昨年、ご父君逝去で落ち込んでいた高井信ちゃんの激励会の名目であったが、途中から北野勇作さんの壮行会・お祝いという会に変わる。勇作さん、明日からひと月ほどベトナムへ行くという。しかも、実質的には「新婚旅行」という。(まあ、今の時点では公開された情報であるからいいでしょう)
 予定も決めず、「現地相場」で生活する貧乏旅行……したがって、ボラれないために風体も現地風に変えているという。ふだんと変わっているとは思えないが……。
 写真は草上仁氏と出発前日の北野勇作氏。
 「玉の光」という居酒屋からサントリー5へ。ニューオリンズ・ラスカルズを聴く。


off


2月某日
 【標準的1日】がつづく。
 北野勇作氏がベトナム放浪中、地味で変化に乏しいく雑用のみ多い日が続く。
 猫鮫氏にならって「終日原稿」と書きたい気分だが、原稿はゼロのまま。
 参考までに、標準的1日はつぎのようなものである。

 今後【標準的1日】と書けば、
  午前4時起床   朝刊を読み、パソ通接続、メールと原稿ちょっと。
  午前7時朝食、  たいてい保守的和風の朝食。
  午前7時40分  出社。始業時間までの1時間がいちばん仕事が捗る。
  午前9時〜12時 電話、FAX、来客、会議
  午後1時前    たいてい麺類の昼食
  午後1時〜7時  電話、FAX、来客、会議、書類作成、伝票処理、退社。
  午後8時頃    自宅で何皿か並べてビール。
           メインデッシュは、
           和(煮)→洋(肉)→中華→和(生)→洋(パスタ)→和(揚)
           が標準的ローテーションであろうか。
           午後10時頃まで 読書
 というものである。
 変化に乏しいなあ。

2月7日(金)
 本日は珍しい部類に入る日である。
 勤務先関連、某取引先との宴会+カラオケ大会。
 製造業の製造部門、早くいえば工場関係の宴会は、業種を問わず、延々と居座って飲みながら議論を続けることで共通している。疲れることは疲れるが、商社関係よりはよほどつき合いやすい。業種の差、部門の違いがよく出る。「経済小説」を読むと、このあたりをいかに描写しているかで、作者の力量も判定できる。……高杉良の作品、嫌いではないが、飲む店のランクと役職がリニア関係で単純すぎるのが気になる。サラリーマン、誰もが出世すれば高い店で飲むように変わるとは限らないのである。
 社会経験のない作家はこのへんがへたくそだ。というよりも、描写を避けているふしがある。
 ベンチャー企業の宴会というのはどんな雰囲気なのか、興味あるところだ。
 帰宅午前1時。
 頭髪へのタバコの臭いの染みつきひどく、入浴洗髪。

2月8日(土)
 二日酔いにもめげず、播州龍野の実家へ。
 書庫のフローリング、ほぼ完成していて、スチールの本棚を設置する。
 この20年間、断続的に送っていたダンボールが50箱ほど。学生時代の蔵書が2階押入に山積み。その他、古い家のあちこちの本棚に色々な本が分散している。これを整理しなければならぬのかとうんざりしてくる。たぶん整理中に「発見」した本を読み出すから、整理に10年以上かかるのは確実だからである。
 2,3箱分広げたところで、福永武彦の「海市」「廃市」が出てきた。寒いので炬燵に入って読み出したら、もう夜である。

2月9日(日)
 殊勝にも墓参り。父の命日が2月10日なので、骨折が回復しきっていない母の代参を兼ねて、しきみを立てる。
「無精の代参」は好きな噺で、とくにマクラの「無精猫」が抜群に面白い。SOLITON運営の基本方針である「無精猫原理」はこの噺に由来するのだが、現実には墓参ほど面倒くさい行事もない。不精者がなかば命令とはいえ、面倒な墓参に行くのは矛盾している。炬燵で寝ていられるなら、それがいちばんなのではないか。
 ぼく自身は淀川への散骨で、墓も葬式もいらないから、むろん墓参りをしてもらう必要は毛頭ない。
 大岡昇平や山川方夫などの本を4,5冊持って帰阪。

2月上旬
 【標準的1日】がつづく。

2月15日(土)
 先週持ち帰った本+数冊を持って播州龍野へ。
 書庫の整理……のつもりが、古い雑誌を読む。
 昭和30年代の「宝石」など。
 横浜に「都落ち」しておられた時代の小林信彦氏の手紙が読者欄にあるはずで、「小林やよい」という名の文章はたぶんそのひとつであろうと見当がつく。


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