『マッドサイエンティストの手帳』15
●マッドサイエンティスト日記(1997年1月後半)
主な事件
・禁酒効果ありや
・雪とバリウム……内も外も白一色
・湯ノ山温泉
1月16日(木)
21時のNHKニュースでは、直木賞は板東真砂子。宮部みゆきさんは落選、受賞作を読んでいないから何ともいえないが……。SF的趣向にケチがついたのだとしたら嫌だなあと、よけいなことを想像する。
明日から禁酒することにする。
1月19日(日)
夕方、阪急デパートでノンアルコールビール10缶を買う。
禁酒中、食事がちょっと寂しいためである。
1月22日(水)
断酒5晩である。たいして飲みたくないが我ながら凄い。
しかし、飲まないとねなせ゜こうもSF的事件がないのか、会社の雑用ばかりがやたらはかどる。
1月23日(木)
朝、会社で健康診断。バリウムを飲む。
6泊7日の禁酒は、宮部さんが直木賞受賞までの願掛けではなく、この日のためである。しかし、これでγGTPが高いと悲劇だなあ。
寒波襲来、大雪で交通機関混乱。下剤を飲んだのでなにかと落ち着かない。窓外も体内も白く、まさにホワイトアウト。
1月24日(金)
午後、近鉄特急で難波から近鉄四日市経由、湯ノ山へ。
業界の集まりで某社の保養施設へ。
昨日の大雪がほとんど残っている。
「並行輸入」に関して討議。勉強にはなるが、SFへの応用はきかないな、と、最近、会社の仕事でもSF優先で考えてしまうこと多し。悔い改める必要はない……だろうなあ。
宴会のあと夜中まで雑談、あと、和室に5,6人、布団を並べて寝るわけだが、某社のいびきが凄まじい。だいたいが、修学旅行じゃあるまいし(以前のSF大会じゃあるまいし)、本も読まずに就眠というのがまず苦痛。さらにぼくの生活時間帯が午前4時からだから、もうこの種の出張は苦行でしかない。
最近、夫婦別室なる議論があるとか聞く。住宅事情のしからしむところか。わしゃ書物か女性かといえば、本を取りますなあ。ただ、最終的に「書庫に布団を持ち込む」まではしないだろう。阪神大震災以来、本棚のそばは、ちょっと怖い。賢明な男は、妻子を本棚の近くに追いやり、ひとり広間に布団を敷いて、読書しつつ就眠する。
1月25日(土)
樹氷の湯ノ山を早朝、逆逃避行のごとく脱出し、大阪へ。
兼任の子会社は本日も操業中であり、「出社」である。
午後、早めに切りあげて、夕方、播州龍野の実家へ。
昨年夏から帰省の機会が増えたが、古い倉庫を改造して書庫にする計画が進んでいて、工務店との打ち合わせである。1月ほどで完成しそうである。
龍野泊。外泊続きである。
1月27日(月) 夕方、落日の名所・海遊館へ。17時、チヌの海に沈む夕日とフェリーという絵はがき的光景に遭遇、デジカメを持っていなかったのが悔やまれる。
船越辰緒さんと久しぶりに会う。
船越さんは、同人誌NULLの同人のひとり。NULLに「遥かなる墓標」「数理錯乱機」という傑作がある。サントリー宣伝部からビール、ワインの営業畑を歩き、なんと早い時期からソムリエの資格をお持ちである。現在サントリー・ミュージアムの企画部長である。大学の先輩後輩ということもあって、ずいぶん面倒をみてもらった。博多勤務の時代には、松崎真治、梶尾真治氏らと「てんたくるず」を創刊したメンバーのひとりである。海の見えるレストランでワインを飲みながらしゃべる。船越さんの父君(94年逝去されている)はぼくが仕事でつき合いのある商社に長く勤務されていたという。偶然だが、現在貿易関係でいっしょに仕事をしている人は、古くから近代宇宙旅行協会の高梨純一氏と知合いであるという。大阪は狭いなあ。サントリー5に移って23時まで。
1月30日(木)
某辣腕セールスマンの口車に乗せられた……わけではないのだが、日本橋でモバイルギアを購入。以前、オアシス・ポケットを愛用していたのだが、視力が落ちて使いづらくなり、手放したいきさつがある。これは、オアシス・ポケットの再来の趣があるが、不思議なことに、視力が、近いところに再設定されたというか、新幹線で遠方を見ることがなくなったというか、また使える感触が戻ってきたのである。
もっとも、長いものは移動端末では書けない。ノートパソコンですら、姿勢が窮屈で、スケールの大きな話を書ける雰囲気がはなからないのである。
HomePage 自己紹介
作品リスト・クロニカル 書庫の片隅
SF同人誌「SOLITON」